11月8日のサンデーモーニングのレポート中編、衆議院予算委員会における日本学術会議の任命拒否問題をめぐる議論について報道された部分です。
今回検証するのは以下の点です。
・事実をまげない報道であったか
まずは放送内容を確認していきます。
——-
【VTR】(要約)
11日2日月曜日の予算委員会で、日本学術会議の任命拒否問題に関し、野党は激しく菅総理に迫った。6人を拒否した理由を尋ねられると、菅総理は「個別の人事には答えられない」と答弁。総理が総務大臣時代にNHK改革の担当課長を更迭した件について言及されると、「政策に反対しており、すでに表になっている人事だから(問題ない)」と反論した。さらに拒否された6人の名前をいつ知ったのかと問われると、「99名の決済をする前。杉田副長官から聞いた」と杉田副官房長官の関与を明らかにした。また総理が拒否理由を「多様性」としたことについては、「女性の割合は水準に達しているが、大学は偏っている」と説明した。
5日木曜日には、野党は杉田氏と内閣府の協議記録の提出を求めたが、政府は拒否している。
——-
【パネル解説】(要約)
学術会議問題で、拒否した6人について総理は「加藤陽子氏以外は承知していない」と発言。しかしこれまで総理は「総合的・俯瞰的な活動を確保する観点から判断」と説明しており、知らないのにどうやって判断したのかという声が上がっている。また拒否理由について、「人事に関することなので答えを差し控える」と答弁しているが、著書では総務相時代に官僚を更迭したエピソードを公表しており、野党は反発している。
また、2050年までに温室効果ガス実質ゼロを掲げ、原子力を含めあらゆる選択肢を追及するとしながらも、「原発の新増設については現時点で考えていない」と説明。これに対し野党は「ほとんどの原発は耐用年数が訪れる。矛盾している」と指摘している。
——-
【コメンテーターによる解説】(一部要約)
福山大学客員教授 田中秀征 教授:(拒否された)6人の会員資格について調べたどうかが問題になっているけど、問題は任命した99人についても総理が調べておかなければならきゃいけないということ。温暖化の問題では期待していますが、今のような問題の片づけ方では政権にとって致命傷です。ですから6人をさっさと追加で任命して、混乱に対しては謝罪してもらいたいです。学術会議の在り方についてはその後に議論すればいい話です。(要約)
ジャーナリスト 青木理 氏:一般的な人事って考えると、人事のことは説明しないと納得しそうになっちゃうんですけど適切かどうか別にして任命権を使ってある人たちに不利益を課したわけですよ、これは説明しないと、大いに将来に問題を残すというのが一つと、もう一個だけ。杉田さんがVTRに登場しましたけど杉田さんはもともと警備公安警察出身なんですね。警備公安警察というのは政治的な思想が背景の犯罪の情報収集をしている人で、一種の思想警察みたいなところがあって、その方がこの6人をどうも排除することを主導したんだとすると思想によるパージというか、思想によって特定の人を排除したということが疑われるわけですよ。というか少なくとも僕らはそう見るわけですよ。そうなってくると、そうだったらそうだと説明していただかないと困るし、そうじゃないんだったらそうじゃないということを明確にしてもらわないと、いろんな意味で秀征さんがおっしゃったように政権も保たないし、日本社会・日本政治の今後に大きな禍根を残すと思います。
【検証部分】
今回は、日本学術会議の任命拒否問題についての報道を取り上げました。今回問題となるのは、青木氏の発言が事実と異なる点です。該当する箇所を確認します。
青木氏の発言の中で事実と異なっているのは、「杉田さんがVTRに登場しましたけど杉田さんはもともと警備公安警察出身なんですね。警備公安警察というのは政治的な思想が背景の犯罪の情報収集をしている人で、一種の思想警察みたいなところがあって、その方がこの6人をどうも排除することを主導したんだとすると思想によるパージというか、思想によって特定の人を排除したということが疑われるわけですよ。というか少なくとも僕らはそう見るわけですよ。」という部分です。
この部分を要約すると、杉田氏は、警備公安警察の出身であり、そこは思想警察のようなものである。そして今回の任命拒否も思想によるパージなのではないかという内容でした。パージであるということについては、「疑われる」という表現にとどめ断定を避けていますが、合理的な根拠が全くなく意図的に一部の人々を貶める発言といえます。
まず、警備公安警察が思想警察であるという指摘についてです。これは全く事実ではありません。警備公安は公共の安全と秩序の維持を目的とし、スパイやテロなどへの対応を主な職務としています。これは国民の安全を守ることを目的としており、特定の思想を取り締まるといったことは決してありません。青木氏は警備公安の職務内容をいわゆる思想警察のようなものと似通っていることを根拠に、警備公安警察を思想警察だとしています。たしかにスパイやテロは他の犯罪に比べ、特定の思想や政治的な主張を伴った犯罪が多いかもしれません。しかしそれを理由に警備公安が思想の取り締まりをしているとみなすのは安直な認識です。
同じ理由から、青木氏の主張する、今回の任命が思想に基づくパージであるということも、根拠が全く伴わない発言であることは明らかです。上でも述べたように、警備公安の職務は思想を取り締まることではありません。そのためその出身である杉田氏による任命拒否はパージの可能性があるという主張も妥当ではありません。
このような青木氏の根拠のない発言は、杉田氏はもちろんのこと、警備公安に従事している、もしくは従事していた方々を侮辱する発言です。警備公安の方々は、時に危険と隣り合わせの中で日本の法秩序を維持し、国民の安全を守るために職務に従事しています。青木氏の事実とは異なる侮辱的な発言は、警備公安に従事する方々の名誉を損なうものです。
さらにはこのような発言をメディアがすることによって、警備公安に対して間違った認識が広まり、いわれのない差別や偏見につながる可能性があります。
このような放送は次の放送法に抵触する恐れがあります。
————————————————————————————–
放送法4条
(3)報道は事実をまげないですること
————————————————————————————–
視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。