サンデーモーニング、2020年8月30日分の検証報告(後編)です。
今回の報告では、
① 「風をよむ」にて安倍長期政権ついて報道された部分
② 安倍政権の辞任について報道された部分
③ 黒人銃撃事件について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。
検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。
今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。
後編で検証するのは、
② 安倍政権の辞任について報道された部分
検証4「青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている」
ならびに、
③ 安倍政権の辞任について報道された部分となります。
では、さっそく②の検証3をみてみましょう。
4、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
青木氏は今回の報道で、以下のように述べています。
青木氏(抜粋)一強長期って、そのとおりなんですけど、本当に一強だったのかと思うんですよね。選挙制度のせいだと思うんですが、自民党内の派閥もほとんど力を失っちゃった。党執行部の力が強まった、それから民主党政権が失敗だったかどうかの総括もしなくちゃいけないけど野党がとにかく多弱だと。 メディアも分断されて、つまり周辺が全部陥没しちゃったので何か一強に見えちゃったと。だから関口さんがツキとおっしゃいましたけど、ある意味、周辺が陥没したことのツキが一定の長期にしてしまったという気がするんですね。ということはつまり、やっぱり政治の恐るべき貧困の中で、この8年間、このあと出てくると思うんですけどいろんな戦後の矜持みたいなものが結果的に破壊されてしまった。だからこの8年間をこういう形で過ごしてしまったことが今後どうなるのか、きちんと総括して一歩前に踏み出さないと、この8年間取り戻せないくらいのいろんな負の遺産もあるんじゃないかということを今日考えてみたいと思います。
要旨をまとめると、
・本当に安倍一強だったのか、選挙制度のせいで自民党の派閥の力も失った。
・安倍一強に見えたのは野党が乱立し、それぞれ弱かったからだ。
・8年間で戦後の矜持が破壊されてしまった。この8年の影響がどうなるのか、総括しないと負の遺産ができてしまう。
というものです。
しかしながら、
・「8年間で戦後の矜持が破壊された」という青木氏の主張ではあるが、むしろ安倍政権は戦後レジームの脱却を掲げ、安保法案成立をさせる等、安全保障の礎を築いたという意見などもあり、一概に安倍政権が戦後の矜持を破壊したとは言えない。その点、青木氏の主張は安倍首相について否定的な意見しか述べておらず、政治的公平性に欠ける。
など、発言内容とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での青木氏の発言は政治的に公平ではない恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」に違反する恐れがあります。
続いて、
③黒人銃撃事件について報道された部分となります。では、放送内容を見ていきましょう。
また繰り返された警官による黒人銃撃事件。大統領選への影響もありそうです。
28日、テニスの全米オープンの前哨戦に登場した大坂なおみ選手。Tシャツの胸には「ブラック・ライブズ・マター=黒人の命も大切だ」というメッセージが。 大坂選手が抗議の意思を示したのは23日、アメリカ・ウィスコンシン州で起きたこの事件でした。
銃を構え、黒人男性の後を追う警官男性が車に乗り込もうとすると、警官が黒人男性の背中に7発発砲。警官らは家庭内のトラブルと通報を受けていました。男性は子どもたちの目の前で撃たれ、下半身にまひが残る大けがを負ったのです。
銃撃の瞬間を撮影していた人は…「動画を公開しなければ、警察は発砲を正当化するために何でも捏造しかねないと思った。」
この動画がネットで拡散され、抗議デモが広がったのです。一方、25日にはデモの現場に武装した集団が現れこんな事件を起こしたのです。デモの参加者が武装した男に撃たれ、2人が死亡、1人がけがをする事態となったのです。発砲して逮捕されたのは17歳の白人少年。現地メディアによると、少年はトランプ支持者で警察を支援するため、隣のイリノイ州から駆けつけてきたといいます。アメリカでは今、人種差別に抗議するデモ隊を過激な暴徒と決めつけ、非難する動きも起きているのです。
トランプ氏を大統領候補として正式に指名した24日の共和党大会では、6月に抗議デモが行われた際、デモ参加者を銃で威嚇し、訴追されたマクロスキー夫妻が登場。
パトリシア・マクロスキー氏「米国は銃を持つだけでなく自衛のために使う権利が保障された偉大な国です。」抗議デモを批判した上で銃規制に反対するトランプ大統領への支持を訴えたのです。
全米に衝撃を与えた警官による黒人男性への銃撃事件。民主党のバイデン候補は、黒人男性の親族と連絡を取ったことを明かし、こう訴えました。
26日バイデン氏Twitterより「今こそ団結し傷を癒やし正義を貫こう。この国の暴力と制度的な人種差別を終わらせよう。」
一方、27日、選挙活動には利用しないという慣例を破ってホワイトハウスで受諾演説に臨んだトランプ大統領は差別の解消でなく、取り締まりの強化を訴えたのです。
トランプ大統領「我々は法執行機関。警察の力を取り戻さなければならない。暴徒の支配を許してはならない。」大統領選挙まで2カ月余り。アメリカは揺れています。
【コメンテーター発言内容】
杉浦みずきアナ(全文):人種差別問題について2人の次期大統領候補の対応は全く違います。民主党のバイデン氏は、今回の銃撃事件のあとアメリカの制度的な人種差別を終わらせようとのメッセージを発信。一方、トランプ大統領は演説で、暴徒の支配を許してはならないと述べたものの、人種差別問題には触れませんでした。支持率の推移を見ると、バイデン氏のリードが続いていますが、5月に起きた黒人男性が警官に拘束され死亡した事件や、今回の銃撃事件はトランプ大統領の支持率にはあまり影響していません。さらに世論調査の内訳を見ると、白人からの支持率はトランプ大統領が4ポイントリード。一方、黒人からの支持率ではトランプ大統領は12%と、バイデン氏と比べて低く、もともと支持層でないことも人種差別問題に積極的ではない理由とみられています。
横江氏(要約):黒人銃撃事件が選挙に影響を与えるかという視点で考えますと、トランプ大統領に非常に不利になるということではないんですよね。支持率が42.5%であっても、トランプ大統領って選挙では強い、隠れトランプがあります。大統領選は、投票率が60%、二大政党制ですから接戦州であれば30%以上とれば勝てるんです。暴徒化しているところがあると、安全考える人たちは、差別主義者に見られると嫌だからトランプを支持するとは口には出さない。30%はとれてしまう可能性があるというのが現状です。
(関口氏≫だけど、その前に暴動を収めてくれないとね。)
トランプさんの考え方だと、何で抑えるかというと警察になってしまう。 社会的に分断を抑えようということになっていないところがやはり5割以上の人が反対する、でも5割以上は選挙では要らないというジレンマが出てます。
以上が放送内容となります。
では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の2点です。
1、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
それぞれ順を追って解説します。
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1、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
杉浦アナウンサーは今回の報道で、以下のように述べています。
杉浦アナ(抜粋):人種差別問題について2人の次期大統領候補の対応は全く違います。民主党のバイデン氏は、今回の銃撃事件のあとアメリカの制度的な人種差別を終わらせようとのメッセージを発信。一方、トランプ大統領は演説で、暴徒の支配を許してはならないと述べたものの、人種差別問題には触れませんでした。支持率の推移を見ると、バイデン氏のリードが続いていますが、5月に起きた黒人男性が警官に拘束され死亡した事件や、今回の銃撃事件はトランプ大統領の支持率にはあまり影響していません。さらに世論調査の内訳を見ると、白人からの支持率はトランプ大統領が4ポイントリード。一方、黒人からの支持率ではトランプ大統領は12%と、バイデン氏と比べて低く、もともと支持層でないことも人種差別問題に積極的ではない理由とみられています。
要旨をまとめると、
・民主党のバイデン氏は人種差別を終わらせようとメッセージを発信している一方、トランプは人種差別問題には触れていない
・今回のトランプの支持率にあまり影響はしていなく、白人からの支持率はトランプ氏がリードしている。
というものです。
しかしながら、この問題について「トランプ支持者が黒人銃撃問題を発生させた」「これは人種差別問題である」という立場に立った意見のみが出てきました。
ですがこの問題に関しては「『警官の黒人差別が原因』という根拠が示されていないにも関わらず、黒人差別問題と一方的に決めつけるのはおかしい」「バイデン氏はこの問題が起きた原因に対して述べておらず不誠実」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。
以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第3号「政治的に公平であること」、同第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。
以上が報告の後編となります。後編では政治的に公平でなかったり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。
① 「風をよむ」にて安倍長期政権ついて報道された部分
については前編の報告を、
②安倍政権の辞任について報道された部分については中編の報告をご覧ください。
公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。