2020年6月28日 サンデーモーニング(前編)

2020年6月28日 サンデーモーニング(前編)

サンデーモーニング、2020年6月28日分の検証報告(前編)です。

今回の報告では、
① 河合夫妻買収事件について報道された部分
② 沖縄の追悼式典の話題からイージスアショアについて報道された部分
③ 専門家会議廃止について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

前編で検証するのは、
① 河合夫妻買収事件について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

【VTR要約】
昨年の参院選での河井夫妻の買収事件でお金を受け取った人が次々に告白を始めました。10年前、河井克行容疑者は「既製のものがぶっ倒れないと新しいものは出てこない」と民主党政権のもと、下野した自民党政権への冷めた思いを語りました。初当選を果たした1996年の衆議院選挙、その直前まで秘書だった男性は、「広島県議会 市議会議員 町会議員 有力な地域の方への袖の下ですかね。(箱は)煎餅だったと思う。その下にちょっとお金を入れて」と話し、克行容疑者が現金を配るところを見たといいます。
河井夫妻による買収容疑で名前の上がった市長や地方議員らは、現金の受け取りについてこれまでの発言を次々と一転させています。三原市の天満市長は「金銭の授受はない」と発言した2日後、150万の授受があったと告白しました。

以下、記者会見等のVTR内やりとり
(23日三原市役所)
記者「政治生命をかけて授受はないですか」
天満市長「そうですね、はい」
(25日三原市役所)
天満市長「河井克行氏から現金150万円の授受があったと申し上げる。私はかなり強く否定したがそれでも取っておけということで二人の秘密というかこれを作るということで理解した。」

安芸高田市の児玉市長は4月には明確に受け取りを否定。
(今年4月)
児玉市長「今回そういったことは一切ございませんので」
金曜日には頭を丸めて会見に臨み…
(26日安芸高田市役所)
児玉市長「現金の授受については2回ございます。どちらも案里氏への参議院選挙の協力をにおわせるものでした。」
総額60万円を受け取ったことを認め、謝罪しました。

さらに広島市議では
(26日広島市役所)
石橋広島市議「二人だけの秘密だからね、わかったね。といってねじ込まれる格好だった。本心が言えないのは私の中ですごく呵責があった。こういうことで苦しめられる人を家族にしても誰一人増やしてはいけないなと」

府中町の町議では
(26日広島・府中町)
記者「新聞に出ている通りですか」
繁政府中町議「出ている通りです」
去年5月、広島県府中町の町議は克行容疑者に安倍総理からと言われ現金30万円が入った封筒を渡されたといいます。

(26日広島県議会)
記者「お金をみた瞬間どういう意味だと」
沖井広島県議「これはやばい、危ないと。本来はその場で返すべきだった。そういうことがなかなか難しかった」

河井夫妻から現金の提供を受けたとされるおよそ40人、そのうち13人が現金の受け取りを認め謝罪しました。受け取りを認めれば、公職選挙法に問われる可能性もありますが認めて謝罪することで一部にはみそぎを済ませようという意図も見え隠れしています。河井容疑者は現在、東京地検特捜部の調べに対し現金の提供自体は認めているといいますが、票の取りまとめを依頼する目的ではなかったとして容疑を否認しています。
河井夫妻を巡って政界に動揺が走る一方、東京では安倍総理、麻生副総理、菅官房長官ら4人の会合が持たれました。3年前、このメンバーが集まった2カ月後、衆議院を解散したこともあり新型コロナの感染と買収事件の波紋が続く中、永田町では解散説がささやかれ始めています。

スタジオでは橋谷アナがフリップを使って説明しました。
告白ドミノだけではなく、辞職ドミノが起きています。現金の授受を認めた安芸太田町長や三原市長が辞職を表明しました。三原市は参議院で落選した溝手氏の地元で、当初溝手氏を支援していた天満市長は、選挙中は案里容疑者の支援にも回るなど溝手氏の陣営が切り崩しをされた形です。一方、自民党本部から河井夫妻に渡された1億5000万円について、逮捕前に二階幹事長は、買収の原資になった可能性を否定していたが、木曜日に党としては支出をしたがその先はどうなったか細かく追及していないと説明を変えました。国会は閉会中ですが、野党はこの政治資金について追及する構えです。

【コメンテーター発言内容】
関口氏(要約):普通こういうことってみんな隠すけど、ベラベラ喋りだしちゃった印象を僕は持つんですが不思議な現象ですよね。

田中(秀)氏(全文):僕はそれにしては人数多過ぎるから、こうなるというふうに思いましたよ。誰かがしゃべったら、みんなそういうことになるから。だけど、ほとんどと言っても僕はいいと思うんですが、受け取ってうれしかったと思っている人は本当に少ないんですよ。だから河井さんは一番それにびっくりしていると思うんですよね。受け取って喜んでるだろうと。結局、受け取った場所で波風立ててないという気持ちのほうが優先されるからもう持ち帰ってからみんな家族で見て、それで困っているわけですよ。 誰かが1人言えば、バーッと言い出しちゃったと。要するにこういう金を受け取って喜ぶ人が配る人なんですよ。そういうことなんだ。一般的にこういうことしないですよ。政治家ってのは、そういうものをするものだと思ってる人多いかもしれないけれど、そういう金はみんなもらいたくないんですよ。 だけどそこで断れないという、誰かが告白したからわれわれも行こうという話で河井さん、一番びっくりしてるでしょう。こういうことで人を動かそうという人がこういうことで動かされる人なんですよ。要するに金で動かそうとする人が金で動く人なんだ。だから1億5000万の流れを追って誰が動かそうとしたか、どういう形で動かそうとしたか徹底的に調べないといけないということと、もう1つ言いたいのは、この人を法務大臣にしたわけですよね、安倍総理は。それで任命責任というけれども、うかつでそういう人物だと知らなかったという、そういう任命責任もありますよ。よく知らないでと。しかし自分の補佐官をやったとか、党のときには特別補佐をやったとか一番身近に置いておいたから、知らなかったとか迂闊だったとは言えないですよ、このことについてはね。だからこれと黒川さんの検事総長うんぬんという話とあわせるとやっぱり総理はそういう人を身内、周りに置いて自分を守らせようとしたんじゃないかという誤解が生じる。それが本当に誤解だとしたら、総理はとことん説明責任を果たさなきゃだめですよ。これは安倍総理個人の責任じゃなくて、日本の政権そのものの信頼の問題だから非常に大きな問題で、この河井事件ですよね。政権そのものの在り方の問題、それから任命責任、ただ任命責任は私にありますと、お詫び申し上げますで済む話ではないですよね。そう思いますよ。

田中優子氏(要約):国会議員によって、地方自治体の市長や議員たちが支配されているという構図は長い間、あそこでは続いているんじゃないかなと思いました。本来、政治家というのは社会の情勢についてちゃんと皆さんに説明をして、政策を説明し尽くしてコミュニケーションをとるというのが政治家の在り方だが、その能力がないからお金で支配するしかないということだと思います。その脈を断ち切らないとまともな地方政治ってできないんじゃないかと思いましたね。

大島氏(全文):告白ドミノがあって、坊主になる人がいたりだとか泣き出す人がいたりとか、これは報道も広島のこの件がおもしろいからというか、劇場化していくような気がするんですね。だけど本当は、一番重要なのは自民党から1億5000万円というお金が渡っていると、そっちのほうじゃないかと私は思っています。検察がそちらのほうに踏み込むかどうかという、これからは検察が問われていくのかなと思います。

幸田氏(要約):さっきVTRの中で安倍さんからだよと渡したと、決して安倍さんのポケットマネーではなく、我々の税金なわけです。今まで日本の一般会計の予算は80兆だったが、今回160兆を超えた。税収が当初は63.5兆を見込んでいたが60兆をきる大変な財政状況なんです。ウイルスとの共存といいますが借金との共存の時代でもある。次に選ぶ政治家にそういう視点も含めて考えていかなきゃいけないというのをちょっと腹立たしく思いながらこの事件を見てました。

松原氏(全文):おっしゃるように、私も1億5000万円が渡ったことがキーだと思っているんですけれども、そもそも発端は何でこんなことになったのかというと安倍総理の私的な恨みじゃないかと正直思うんですね。溝手さんとは過去の人と言われて確執があったと言われた。極端に言うと、溝手さんを落としたかったんじゃないか。つまり2013年の前の選挙でも、実は安倍総理は2人立てたがっていたということを当時の幹事長の石破さんが言ってるんですね。でも、石破さんは、あそこは自民党2人通すのは無理だから、これは禍根が残るからやめましょうと言って結局実現しなかったんですね。ところが2019年にまた立てたということで考えられないお金が、1億5000万円が渡り、安倍総理は自分の秘書を送り込んだことになった。そして結果、溝手さんが落ちた。河井さんはご褒美のように法務大臣になったと。そうでないというならば、ぜひ1億5000万円を誰がどう決めたのかそれをきっちり国会で安倍総理自身がちゃんと説明すべきであるというふうに思います。

関口氏(全文):どうも話、聞いてると、2人受けさせたいという気持ちよりも1人落としたいということだったんじゃないかと見えちゃうよね。

田中(秀)氏(全文):僕は広島県の大学40年以上行ってるから、県民みたいになっているところがあるんですけれども今おっしゃったように言われてますよ、地元ではね。それが誤解であるか義解であるかわからないけれども。そう言われてますよ。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。

1、田中(秀)氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、松原氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

1、田中(秀)氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
田中(秀)氏は今回の報道で、以下のように述べています。

田中(秀)氏(抜粋):もう1つ言いたいのは、この人を法務大臣にしたわけですよね、安倍総理は。それで任命責任というけれども、うかつでそういう人物だと知らなかったという、そういう任命責任もありますよ。よく知らないでと。しかし自分の補佐官をやったとか、党のときには特別補佐をやったとか一番身近に置いておいたから、知らなかったとか迂闊だったとは言えないですよ、このことについてはね。だからこれと黒川さんの検事総長うんぬんという話とあわせるとやっぱり総理はそういう人を身内、周りに置いて自分を守らせようとしたんじゃないかという誤解が生じる。それが本当に誤解だとしたら、総理はとことん説明責任を果たさなきゃだめですよ。これは安倍総理個人の責任じゃなくて、日本の政権そのものの信頼の問題だから非常に大きな問題で、この河井事件ですよね。政権そのものの在り方の問題、それから任命責任、ただ任命責任は私にありますと、お詫び申し上げますで済む話ではないですよね。そう思いますよ。

要旨をまとめると、
・安倍総理には河井氏を法務大臣に任命した任命責任がある。
・安倍総理は河井氏や黒川検事長のような人を周りに置き、自分を守らせようとしているのではないか。
・この問題は安倍総理個人の責任ではなく、日本の政権そのものの信頼の問題であるため、お詫び申し上げますだけで済む話ではない。

というものです。

しかしながら、
・「安倍総理には河井氏を法務大臣に任命した任命責任がある」という田中(秀)氏の主張は、「河井氏が公職選挙法違反を行っていたことを事前に把握することは難しい」などといった反対意見もある中、一方の意見にのみ偏った主張である。

以上のことから、今回の報道での田中(秀)氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

2、松原氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
松原氏は今回の報道で、以下のように述べています。

松原氏(抜粋):私も1億5000万円が渡ったことがキーだと思っているんですけれども、そもそも発端は何でこんなことになったのかというと安倍総理の私的な恨みじゃないかと正直思うんですね。溝手さんとは過去の人と言われて確執があったと言われた。極端に言うと、溝手さんを落としたかったんじゃないか。つまり2013年の前の選挙でも、実は安倍総理は2人立てたがっていたということを当時の幹事長の石破さんが言ってるんですね。でも、石破さんは、あそこは自民党2人通すのは無理だから、これは禍根が残るからやめましょうと言って結局実現しなかったんですね。ところが2019年にまた立てたということで考えられないお金が、1億5000万円が渡り、安倍総理は自分の秘書を送り込んだことになった。そして結果、溝手さんが落ちた。河井さんはご褒美のように法務大臣になったと。そうでないというならば、ぜひ1億5000万円を誰がどう決めたのかそれをきっちり国会で安倍総理自身がちゃんと説明すべきであるというふうに思います。

要旨をまとめると、
・この問題の発端は安倍総理の個人的な恨みだと思う。
・安倍総理は確執があった溝手氏を落選させるために広島選挙区に2人候補を擁立し、河井陣営に1億5000万円を交付したのではないか。
・河井氏が法務大臣に任命されたのは、溝手氏が落選したことに対するご褒美ではないか。

というものです。

しかしながら、
・「この問題の発端は安倍総理の個人的な恨み」「確執があった溝手氏を落選させるために広島選挙区に2人候補を擁立し、河井陣営に1億5000万円を交付した」であるという主張は、あくまで憶測に基づいた意見でしかなく根拠に乏しい。そのため、松原氏の発言は事実に反する恐れがあり、政治的に公平ではない。
・また、「河井氏が法務大臣に任命されたのは、溝手氏が落選したことに対するご褒美」という主張は、河井氏が法務大臣任命以前に、当選7回、内閣総理大臣特別補佐官、法務副大臣、副幹事長などといった党・政府要職を歴任してきた経緯からみて、必ずしも河井氏が法務大臣に任命されたことが「ご褒美」なサプライズ人事であるとは言い難い。そのため、松原氏の発言は事実に反する恐れがあり、政治的に公平ではない。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での松原氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

———————————————————————————————————————-
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「安倍総理には任命責任がある」「安倍総理は溝手氏を落選させるために広島選挙区に2人を擁立し、河井陣営に1億5000万円を交付した」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「河井氏が公職選挙法違反を行っていたことを事前に認識することは不可能である」「前回選挙の結果からみても得票数的に広島選挙区で自民党が二議席を獲得することは必ずしも無謀な目標ではなかった」「知名度がある溝手氏と新人の河井案里氏に、同額の資金を交付すること自体不適切」などといった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第3号「政治的に公平であること」、同第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の前編となります。前編では、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

この続きの
② 沖縄の追悼式典の話題からイージスアショアについて報道された部分
については中編の報告をご覧ください。

③ 専門家会議廃止について報道された部分
については後編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

サンデーモーニングカテゴリの最新記事