2018年12月16日 サンデーモーニング(前編)

2018年12月16日 サンデーモーニング(前編)

サンデーモーニング、2018年12月16日の検証報告(前編)です。

今回の報告では、
辺野古埋め立てといずも空母化について報道された部分
河野大臣の「次の質問どうぞ」発言について報道された部分
以上2点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第2章第4条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを2つに分け、前後編でお送りいたします。
前編で検証するのは、
① 辺野古埋め立てといずも空母化について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容の要約を見ていきましょう。

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【VTR】
冒頭から、辺野古沿岸部への土砂投入が行われる映像と、市民らが激しく抗議活動を行う様子が流される。「沖縄の民意は、またも踏みにじる形となった」とナレーション。玉城知事は政府との対話を重視し安倍総理との会談を重ねてきた一方で、政府は移設手続を着々と進めていったと両者の姿勢の違いを強調。民意を顧みず、埋め立てを急ピッチで進める政府に対し「我々は絶対に諦めない」と玉城知事が演説をする様子が流される
続いて防衛艦「いずも」とアメリカ軍ステルス戦闘機F35Bが映し出され、F35Bがいずもを改修し、事実上空母化する政府の方針が明らかになったとナレーション。これに対し、攻撃型の空母の保有に当たるとの声が上がっていると問題提起。岩屋防衛相は、「攻撃型空母には当たらない」と会見で述べる映像が流され、必要な時にだけF35Bを搭載することを説明したとナレーション。専門家へのインタビュー映像に切り替わり、 F25Bが離着陸する映像とともに、 “今回の空母は災害救助には向かず、むしろ戦闘中の米軍支援を想定している”と専門家が指摘する映像が流される。VTRは“防衛における日米の一体化は、さらに進むことになるのでしょうか?”と疑問を呈するナレーションで締めくくられる。

【アナウンサーによるパネル説明】
①防衛艦「いずも」について
・憲法9条の下では、攻撃型空母は持てないとされてきたが、「いずも」は攻撃型空母に当たるのではないかと問題になっている
・政府は、「ほかに母基地がある航空機を時々の任務に応じて搭載するのは決して攻撃型空母にあたらない」と説明してきたが疑問は解消されていない
・専門家は「空母とは従来から攻撃型空母と捉えられており、防衛のための空母とするなら、遠くに戦闘機を運ぶ十分な説明が必要だ」と指摘している

②辺野古移設について
・県側は今後の対抗措置として、承認撤回の効力回復を求める法的措置を検討している
・対抗措置として、来年2月に辺野古移設の是非を問う県民投票を予定している
・しかし県民投票に法的拘束力はなく、宜野湾市などいくつかの市議会で県民投票について反対の意見書が可決されており、実際に行われるかは不透明な状況である

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【コメンテーターの発言】
寺島実郎氏:辺野古問題の本質は、日本政府と沖縄の問題ではなく、アメリカと日本がどう議論して向き合っていくかであるとコメント。21世紀の東アジアの安定のために在日米軍基地をどうしていくのか、もう一回本気で真剣にテーブルにつくべきタイミングにきていると述べた。また、F35の日本購入をはじめとして日本側のアメリカに対する過剰同調とも言える動きがあると指摘。日米連携の在り方について、「日本人としての誇りをかけてアメリカに過剰に同調する日本ではないことをきちんと示すべき」などと話した。

目加田説子氏:沖縄の海域への土砂投入は本当にグロテスクだと感じたと話した。玉城知事の会見での発言の続きを読み上げながら“民意をないがしろにし、頭ごなしに工事を進めることは、法治国家・民主主義国家において決してあってはならない”という玉城知事の言葉に対し、この通りだとコメント。玉城知事は根気強く対話での交渉を試みる一方で、聞く耳を持たない政府を見ていると、これが既成事実化されることで、他の場面でも民意を踏みにじる行為が行われるではないかという恐怖を感じたと話した。

松原耕二氏:日本は中国を非常に意識しており、多額の防衛費負担と住民の反対があったとしても、米軍の日本駐留を強く望んでいると指摘。急速に強まる中国の軍事力増強に警戒し、対抗しなければという思いが強いのではないかとコメント。国民が気づかないうちに着々と軍事力強化を進める政府には迷いがなく、突出ぶりばかりが目立つなどと話した。

涌井雅之氏:2015年に日米防衛協力の指針が策定され、日本防衛に対する米軍の役割が後退したことに大きな問題があると指摘。さらに、昔は保守の中に、沖縄の県民に寄り添う政治家がいたことで会話が成り立っていたが、今は全くないとコメント。自衛隊は、米軍を信用すべきか・自力で防衛するかの二者択一の悩みの中で、自ら打撃力を持たなくてはならないという焦りがあると述べ、これを国民にちゃんと説明すべきだと主張した。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。

1、目加田氏の発言内容に、事実と違う事柄が含まれている恐れがある
2、松原氏の発言内容に、事実と違う事柄が含まれている恐れがある
3、この報道全体が一つの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

1、目加田氏の発言内容に、事実と違う事柄が含まれている恐れがある
目加田氏はこの問題について、以下のように発言しています。

目加田氏(発言より抜粋):私もこの辺野古に参りまして、海もずっと見てきたなかで、土砂がああいう形で投入されていくのは本当にグロテスクだなというふうに思いました。(中略)(玉城知事が)“数々の違法な行為を行い、法を捻じ曲げ、民意をないがしろにし、県の頭ごなしに工事を進めることは、法治国家、そして国民に主権があるとされる民主主義国家において決してあってはならないこと。”この通りだと思うんです。(中略)その後にも引き続いて、地方自治を破壊する行為であるということもおっしゃっていて、これだけ民意がNOと(中略)(玉城知事が)話し合おうということで、何回も東京に来られているじゃないですか。でも、全然聞く耳を持たない。こういうやり方を見てると、本当このことに限らず、他の国民にいつでも、国が決めれば、もう何でも民意なんて関係ないんだっていうことが、既成事実化してしまうということが本当に怖い

要旨をまとめると
・土砂が海に投入されるのは本当にグロテスクだ
・「数々の違法行為を行い、法を捻じ曲げ、民意をないがしろにし、頭ごなしに工事を進めることは法治国家、民主主義国家としてあってはならない」という玉城知事の発言はその通りだ
・これだけ民意がNOと言っているのに工事を進めるのは地方自治を破壊する行為だ
・玉城知事は話し合おうということで東京に来ているのに政府は応じない、これは国が決めれば民意なんて関係ないということが既成事実化しているということだ。
というものです。

しかし、

・土砂の投入は埋め立て地を作る際などにも全く同じことを行うほか、中国が南沙諸島に建設中の人工島でも同じことが起きている。にもかかわらず、この米軍基地移設の件だけにこうした主観的かつ感情をあおるような内容を放送することは、政治的な公平性を欠き、特定の立場に視聴者を誘導する可能性が高い。
・辺野古移設にかかる全てのプロセスは合法的な手続きに基づいて行われている。したがって、この問題に違法性があるとする主張は事実に基づかない可能性が高い。
・国家の防衛は地方自治の問題ではなく、国家規模の問題である。国民の信任を経て成立している現在の政府が国民の代理として基地移設を進めているので、民意が無視されているという主張は当たらない。
・玉城氏が政府へ抗議するためにわざわざ東京に来ていたとしても、それは玉城氏の主張を正当化するものではない。

という、発言の内容や根拠を否定するような事実が存在しています。

以上を踏まえると、目加田氏の抜粋発言は政治的に偏っており、事実と異なる認識を視聴者に与える恐れがあると言えます。従って、この放送内容は放送法第2章第4条第2項「政治的に公平であること」、ならびに同第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、松原氏の発言内容に、事実と違う事柄が含まれている恐れがある
松原氏はこの問題について、以下のように発言しています。

松原氏(抜粋):(中略)自民党関係者に聞いても、中国を相当意識して、どっちかというと、日本政府の方が海兵隊に出ていってほしくない。出て行ってもらうと怖いから。とにかくいてくださいと。だから全額払います。そして、工事費がいくらになろうと、住民が反対しても、やりますと。そっちの色の方がもう強いんですね(中略)国民からしたらですね、いつのまにか日本が空母を持つようになり、いつのまにか防衛費が膨らんでF35をどんどん買うようになったりして、議論もないままどんどん進んでいくと。(以下略)

要旨をまとめると、
・自民党は中国を相当意識しているので、日本政府の方が海兵隊に出て行ってほしくないと思っている
・そのために工事費や住民の反対を気にせず米国に協力している
・国民からすると、日本がいつの間にか空母を持つようになり、防衛費が膨らんだり、F35を買うようになったりしている
というものです。

しかし、
・日米同盟は日本の安全保障の最重要事項であり、自民党が中国を意識しているかどうかなど全く無関係に日本には米海兵隊が必要であることは自明である。
・工事費などについても、米国との取り決めの元に行っており、むしろ米国の庇護が受けられるのであればそのくらいは安いという意見もある
・住民の反対については、国防という問題の特性上やむを得ない側面がないわけではないが、その分国庫支出金などを通して還元に最大限務めている。
・防衛費の問題と空母の問題、ならびにF35の問題は全く別の側面を持つ問題であり、これらを一緒くたに「議論のない急速な軍拡だ」とするのは主張として極めて乱暴である

という、発言の内容や根拠を否定するような事実が存在しています。

以上を踏まえると、松原氏の抜粋発言は事実と異なる認識を視聴者に与える恐れがあると言えます。従って、この放送内容は放送法第2章第4条、ならびに同第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「辺野古移設は民意を無視した暴挙だ」「米国に追従するだけでいいのか」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「国防はあくまでも国家の問題だ」「普天間に基地を残す方が危険だ」「日本の安全保障に米国は欠かせない相手だ」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の前編となります。前編では政治的に公平でなかったり、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

この続きの
河野大臣の「次の質問どうぞ」発言について報道された部分
については、後編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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