2018年12月30日 サンデーモーニング(後編)

2018年12月30日 サンデーモーニング(後編)

サンデーモーニング、2018年12月30日分の検証報告(後編)です。

今回の報告では、
韓国海軍のFCレーダー照射について報道された部分
日本のIWC脱退について報道された部分
以上2点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを2つに分け、前後編でお送りいたします。

後編で検証するのは、
②日本のIWC脱退について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

【VTR要約】
菅官房長官が記者会見で、IWC脱退を表明する映像が流される。IWCは1982年に資源枯渇を理由に商業捕鯨の一時停止を決議し、日本の捕鯨は約30年間「調査目的の捕鯨」に限られており、90年頃からは資源量は回復していると一貫的に主張してきたとナレーション。IWC総会の映像に切り替わり、日本は今年、21回目の商業捕鯨の再開を提案したが否決され、今後も受け入れられる見通しがたたないことから、脱退への動きを加速させたと説明した。
 野党の会見映像に切り替わり、「トランプ大統領のまねみたいなことはやめた方がいい」と述べる小池書記局長の映像の後、豪・NZ外相らが日本を厳しく非難したとナレーション。
 脱退表明後の自民党捕鯨議連・総会の様子が映し出され、「地域の活性化につながる」と歓迎の意を示したとナレーション。鯨の追い込み漁を続ける和歌山県・太地町の三軒町長が、自民党本部でインタビューに応じ、「心から感謝したい」と述べる映像が流される。感謝の相手は二階幹事長だとナレーション。二階幹事長が記者団の質問に対し、「どうして他国の食文化に文句を言ったり、高圧的な態度で出てきたりする国がありますか」と反論する様子が流される。
元IWC日本代表代理へのインタビュー映像へと切り替わり、「何か利益が一つでもあるのか」と疑問を呈する発言とともに、CMへ。CM後、ナレーションで商業捕鯨は領域・EEZに限定して行うとする日本の立場が説明された後、再びインタビュー映像に戻り「自分たちの利益だけに限定して閉じこもり、対話も拒否して、こんな道が良いとは到底思えない」と元IWC日本代表代理が述べる映像が流される。

【アナウンサーによるパネル説明】
・IWC脱退に伴い、来年7月から30年ぶりに商業捕鯨が再開される
・捕鯨賛成国は41か国、反対国は48か国と、反捕鯨国の加盟が増加しており保護に偏っている
・IWC加盟国のアイスランドとノルウェーは、商業捕鯨の一時停止決定後に異議申し立てを行い、現在も商業捕鯨を行っている
・日本も過去に異議申し立てを行っていたが、反捕鯨国のアメリカに同調し後に撤回し、商業捕鯨を行ってこなかった
・IWCは、大型の13種類の鯨を管理対象としているため、日本では小型の鯨に限り捕鯨を継続している
・日本は、商業捕鯨再開が受け入れられる見通しがたたないことから、脱退したとみられている
・脱退に伴い、南極海や北西太平洋への調査捕鯨ができなくなり、日本の捕鯨は領海・EEZの範囲内かつIWCに準じた捕獲枠でのみ行われるようになる
・これまで日本が主張してきたクロマグロの漁獲枠拡大・サンマ漁獲制限のついても、元IWC日本代表代理は、「今回のIWCからの脱退で説得力ななくなってしまう」と指摘している

【コメンテーターの発言(一部要約)】
谷口真由美氏:なんかあの、鯨に関してっていうのは、なんとなく感情的な議論が日本でも目立ってて、すごくナショナリズムと親和性が高いなと思ってるんですね。だけど小松さん(元IWC日本代表代理)がおっしゃるみたいに、例えば、利益があるのかっていうふうに考えると、南極海からの調査捕鯨の撤退はいいとしますけど、商業捕鯨を求めてきた日本、南極海での商業捕鯨を求めてきた日本にとっては、これは実は外交的な失敗なんですよね。それから日本周辺での商業捕鯨の実施も実は簡単ではなくて、日本も加盟してる海洋法条約によると、鯨類の魚類の保全管理というのは、適当な国際機関を通じて活動しなきゃいけない、必要があるんです。それでいうと、日本は、国際社会における法の支配というのを外交の大原則にしてるわけですから、本土も含めて、日本の信頼性っていうのがものすごく低下したということで、小松さんのおっしゃる通り、本当にその国際機関の中での説得力ってのが日本がなくなってしまうという意味でいうと、私は外交的な失敗だと思います。

竹下降一郎氏:今、鯨ってあんまり食べないですよね。東京を見てても消費量は減ってますし、1960年代に20万トンあったのが、今はまあ数千トンと。これだけの消費量減ってる中、果たして日本の食文化と言えるのかってのはかなり問い直した方がいいと思います。今あの、海外のインターネットを見てるとですね、今、Japan is killing whales.日本は鯨を殺してるとまで、見出しがたっちゃってるんですよね。インターネット、あるいは今度、オリンピックによって、日本固有の文化と、世界的なグローバルの文化が必ず衝突すると。そのときにこれは、どうしても守らないといけない日本の文化と言えるのか。あるいは、単に意地になってですね、向こうがワーワー文句言ってきたから、防御のために、いわゆる敵対的な文化保護のために、これが日本の食の文化だと過剰に反応すべきなのか、今一度冷静になって考えるべき。僕はちょっと鯨好きですけれど、ただ本当に日本全体の文化といえるのかというのは、もう一回考え直さなきゃいけないなと思います。

松原耕二氏:(関口氏の「議論が食い違ったまま時間がたち、堪忍袋の緒が切れたのでは?」という言葉に対し) そんな感じがする。今回のIWC脱退を含め、議論なしでいつのまにか決まっていくことが最近増えている気がする。政府を国民主権で作っていくのがものすごく大事だということを今回改めて感じた。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の2点です。

1、谷口氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、竹中氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

1、谷口氏の発言に、視聴者に誤った印象を与えかねない内容が含まれている
谷口氏は今回の報道で、以下のように述べています。

谷口氏(抜粋):なんかあの、鯨に関してっていうのは、なんとなく感情的な議論が日本でも目立ってて、すごくナショナリズムと親和性が高いなと思ってるんですね。それから日本周辺での商業捕鯨の実施も実は簡単ではなくて、日本も加盟してる海洋法条約によると、鯨類の魚類の保全管理というのは、適当な国際機関を通じて活動しなきゃいけない、必要があるんです。それでいうと、日本は、国際社会における法の支配というのを外交の大原則にしてるわけですから、本土も含めて、日本の信頼性っていうのがものすごく低下したということで、小松さんのおっしゃる通り、本当にその国際機関の中での説得力ってのが日本がなくなってしまうという意味でいうと、私は外交的な失敗だと思います。

要旨をまとめると、
・捕鯨に関しては感情的な議論が目立ち、ナショナリズムと親和性が高い
・海洋法条約で鯨類の保全管理は国際機関を通して活動することとされている
・脱退は国際社会における法の支配を原則とする日本にとって国際社会における信頼性低下につながる
・国際機関での説得力がなくなる
というものです。

しかしながら、
・「感情的な議論が多い」という主張と「ナショナリズムと親和性が高い」という主張には全く根拠がない。
・日本はIWCを脱退こそすれどオブザーバー参加は続ける方針で、種の保存に係る活動を完全に放棄するわけではない。
・日本が国際社会における信頼を勝ち得ている理由は実に多岐にわたるため、捕鯨という一つの問題の成り行きだけで国際社会の信頼性低下、国際機関(どこかはさておき)における発言力の低下を招くことはあり得ない。

などと、谷口氏の発言と異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での谷口氏の発言は事実にそぐわないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、竹中氏の発言に、視聴者に誤った印象を与えかねない内容が含まれている
竹中氏は今回の報道で、以下のように述べています。

竹中氏(抜粋):今、鯨ってあんまり食べないですよね。東京を見てても消費量は減ってますし、1960年代に20万トンあったのが、今はまあ数千トンと。これだけの消費量減ってる中、果たして日本の食文化と言えるのかってのはかなり問い直した方がいい(中略)インターネット、あるいは今度、オリンピックによって、日本固有の文化と、世界的なグローバルの文化が必ず衝突すると。そのときにこれは、どうしても守らないといけない日本の文化と言えるのか。あるいは、単に意地になってですね、向こうがワーワー文句言ってきたから、防御のために、いわゆる敵対的な文化保護のために、これが日本の食の文化だと過剰に反応すべきなのか、今一度冷静になって考えるべき。

要旨をまとめると、
・鯨は今あまり食べないので日本の文化といえるのか問い直すべき
・国際文化と日本文化が衝突した際、この文化は守るべきものなのか問うべき
・意地になって過剰に反応すべきではない
というものです。

しかしながら、
・消費量と文化かどうかという問いはまったく別の論点であり、両者の間に直接的な因果関係性はない。
・国際文化が必ずしも優先されるべきものだという決まりはない。捕鯨に関しては一部の反捕鯨国が過剰に反対しているという背景も存在するため、国際文化と言い切れるかどうかにも疑問が残る。
・日本が意地になって過剰反応していることを示す証拠は何もなく、妄想レベルの発言と言わざるを得ない。

という、竹中氏の発言とは異なる事実が存在しています。

以上のことから、今回の報道での竹中氏の発言は事実にそぐわないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「日本のIWC脱退は問題だ」「国際社会に離反する動きだ」「政府の暴走、ナショナリズムの暴走だ」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「IWC脱退は日本の正当な権利だ」「国際社会は鯨だけで回っているわけではない」「捕鯨とナショナリズムとは関係ない」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の後編となります。後編では事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

①韓国海軍のFCレーダー照射について報道された部分
については、前編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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