2020年7月5日 サンデーモーニング(前編)

2020年7月5日 サンデーモーニング(前編)

TBS「サンデーモーニング」、2020年7月5日放送回の検証報告(前編)です。

今回の報告では、
①「風を読む」にて香港問題について報道された部分
②レジ袋の有料化について報道された部分
③水害タイムラインついて報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

前編で検証するのは、
① 「風を読む」にて香港問題について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

【VTR要約】
香港に対して国家安全維持法を施行した中国。映画「慕情」でも描かれた1950年代の香港は、日本軍による占領が終わりイギリスの植民地統治が再開し、アジアの貿易拠点として経済発展を遂げていきました。1982年9月、清から99年間の約束で借りた香港の返還問題を話し合うため、イギリスのサッチャー首相が北京を訪れます。
当時の中国は文化大革命による政治・経済の混乱から新たに最高指導者となったトウ・ショウヘイ氏のもと改革開放をうたい、市場経済制を積極的に取り入れることを試みていました。 「白い猫でも黒い猫でもネズミを取るのが良い猫だ」トウ・ショウヘイ氏が語った有名なこの言葉は社会主義や資本主義といったイデオロギーにかかわりなく経済的利益を重視する姿勢を表しています。
会談でトウ・ショウヘイ氏が提案した一国二制度は、もともと台湾統一をにらんで生まれた構想でした。その背景を中国問題グローバル研究所・遠藤誉所長は「改革開放が始まってからまだ間もない時、その中国から見たら香港は本当に眩いばかりの輝かしい素晴らしい都だった。だからトウ・ショウヘイ氏は改革開放をなんとしても前に進めたい。市場経済の香港から力を得たいと一番願っていた。」と説明します。
トウ・ショウヘイ氏にとって香港を通じて世界経済と深く関われる利点は極めて大きいものでした。当初、鉄の女サッチャー首相が提案した期間は100年、これに対してトウ・ショウヘイ氏の最初の答えは10年。サッチャー首相はトウ・ショウヘイ氏の巧みな交渉術にほんろうされ結果、50年に落ち着いたといいます。そうした結果を象徴するかのように交渉後、サッチャー首相は階段を下りる途中で転倒し、中国では今も鉄の女のつまずきとして歴史に刻まれる一コマとなりました。
1984年、一国二制度を50年変えないとする共同声明に署名し、1997年7月に香港の主権を中国に返還することを決定しました。1997年7月、香港は155年ぶりに中国に返還され、中国は香港を通じて外資を取り入れ年率10%を超える急速な経済成長を遂げ上海や深センといった、新たな経済拠点を築いていきました。2017年、香港返還20年記念式典に出席した習近平国家主席「一国という意識を高め 一国の原則を堅く守る必要がある」と語りました。
今に至るこうした強硬な姿勢の背景について遠藤氏は「一般国民も本当に香港に対する憧れはものすごくて、高嶺の花のような素晴らしい存在だった。しかし今や本土の方がGDPという意味ではリッチになったし、そういう意味での憧れはもうありません。そうすると(香港が)非常に厄介な存在になってきた。」と中国にとって香港が持つ意味の変化について話します。50年変わらないはずだった香港は、あと27年を残し、一国二制度は失われようとしています。

【コメンテーター発言内容】
関口氏(要約):日本人にとっても香港って、何か楽しいところ、憧れのところみたいな時代があった。近いから観光客も多かったと思うがこれがもうなくなっていっちゃうのかな。

寺島氏(要約):国家安全維持法は秘密法だったが、38条に域外適用、つまり香港だけでなく海外にも適用しようというのがわかってきた。一番の狙いは世界にいる7000万人の在外華僑・華人。こと香港とか台湾に関してはグリップしていくぞと意思を示している。中国が発展したのは在外華人・華僑のバックアップというのもある。台湾 シンガポールの華人・華僑の中国に対する失望と嫌悪感など、中国は失ってるものも大きい。中国が動けば動くほど脱中国というか、厳しく見つめる目が高まってきている。本当に中国が賢いのかということで、僕なんか首傾げますね。

元村氏(要約):一国二制度は、香港の経済的な存在感を利用するための方便だったのか、あるいは経済は一国二制度だけれども政治については一国なんだという、鎧が剥がれたような失望感があります。香港を愛する人たちの心を踏みにじるようなことで、しかも民主主義の危機ということ、メディアに対しても逆風になると危機感を覚えています。

安田氏(要約):権利を守りたいという当たり前の声をむしり取ってしまう法律だと思う。強大化していく権力にとって都合がいいのが世界が沈黙していくことだが、イギリスが香港市民を受け入れる姿勢を示している。今後香港から日本に逃れてくる人がいたとして、これまで難民に対して門戸を閉ざしてきた日本政府や日本からの排斥を訴える人たちはどう反応するのか、世界の中での日本の姿勢も問われていると思います。

藪中氏(全文):まさに民主主義体制に対しての崩壊危機、香港がこれからどうなるか。それからまた、台湾にどう出ていくのかというのがありますけれども、全体に言って、アメリカ・トランプがあんまり人権の問題、民主主義の問題に関心がないんですね。米中は対立してますけれども。そこで今回もう一個、象徴的なのはG7がこれまだ崩壊、ばらばらだとEUが渡航禁止解除というときにアメリカを解除しなかったんですね。中国を解除したと、これもありますけれど、ですから今後のことを言うとアメリカの大統領選挙、トランプさんがどうなるかというのもこういうコロナ後の世界の体制に大きな影響を持つと思います。

青木氏(全文):天安門事件のころを思い出すんですけどね、中国はいずれ変わるだろうってみんな思ってたし変わらざるをえないだろうと思っていたんだけど、変わらないどころかむしろ強権体制が強くなっていて、ただ一方で世界最大の工場でありマーケットであるから難しいんですけど、皆さんおっしゃるように国際社会が声をそろえて民主主義とか人権とか自由ということを中国に言い続けるしかないだろうと思うんですが、ただ、アメリカもどうもポピュリズムというか変な、おかしなことになってるし、今日、番組で取り上げましたけど、ロシアもプーチン大統領の独裁体制、つまり、世界中で強権と独裁とポピュリズムみたいなものと民主主義とか自由、知性というものがずっと対峙しちゃって、前者のほうがだんだん強くなってる気がするんですよね。という状況を考えてくると、この番組もメディアですし、僕らもジャーナリストなんて仕事をしていると仕事をしていると本当に腰を据えて戦うべき局面かなと。頑張らなくちゃなという状況ですよ、世界的にね。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。

1、藪中氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

1、 藪中氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
藪中氏は今回の報道で、以下のように述べています。

藪中氏(抜粋):まさに民主主義体制に対しての崩壊危機、香港がこれからどうなるか。それからまた、台湾にどう出ていくのかというのがありますけれども、全体に言って、アメリカ・トランプがあんまり人権の問題、民主主義の問題に関心がないんですね。米中は対立してますけれども。そこで今回もう一個、象徴的なのはG7がこれまだ崩壊、ばらばらだとEUが渡航禁止解除というときにアメリカを解除しなかったんですね。中国を解除したと、これもありますけれど、ですから今後のことを言うとアメリカの大統領選挙、トランプさんがどうなるかというのもこういうコロナ後の世界の体制に大きな影響を持つと思います。

要旨をまとめると、
・トランプが人権問題・民主主義問題に関心がない。
・象徴的なのは、EU諸国が渡航禁止解除する際、アメリカは渡航解除していないのに、中国は解除している。トランプ氏の対応によって今度の世界の体制は変化するだろう。

というものです。

しかしながら、

・トランプ氏はウイグル人権法案に署名や、香港人権法に反発などしており、「人権問題に関心がない」という主張は根拠に乏しく事実に反する恐れがある。
・また、香港の人権問題についてトランプ氏の関心がないという点のみを批判し、中国自体の行動を批判しない藪中氏は政治的に公平ではない。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での藪中氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

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2、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
青木氏は今回の報道で、以下のように述べています。

青木氏(抜粋):天安門事件のころを思い出すんですけどね、中国はいずれ変わるだろうってみんな思ってたし変わらざるをえないだろうと思っていたんだけど、変わらないどころかむしろ強権体制が強くなっていて、ただ一方で世界最大の工場でありマーケットであるから難しいんですけど、皆さんおっしゃるように国際社会が声をそろえて民主主義とか人権とか自由ということを中国に言い続けるしかないだろうと思うんですが、ただ、アメリカもどうもポピュリズムというか変な、おかしなことになってるし、今日、番組で取り上げましたけど、ロシアもプーチン大統領の独裁体制、つまり、世界中で強権と独裁とポピュリズムみたいなものと民主主義とか自由、知性というものがずっと対峙しちゃって、前者のほうがだんだん強くなってる気がするんですよね。という状況を考えてくると、この番組もメディアですし、僕らもジャーナリストなんて仕事をしていると仕事をしていると本当に腰を据えて戦うべき局面かなと。頑張らなくちゃなという状況ですよ、世界的にね。

要旨をまとめると、
・国際社会が中国に対して民主主義や人権や自由とかをい続けるしかない。
・ロシアと同様に、アメリカにポピュリズムが台頭しおかしくなっている。
・世界中で強権、独裁、ポピュリズムが民主主義、自由、知性と対峙しており、前者のほうが強くなっている。

というものです。

しかしながら、
・アメリカはそもそも民主主義国家であり、国民から選ばれた人間が大統領になる。故に、「ロシアと同様にアメリカはポピュリズムでおかしくなっている」という青木氏の主張は明らかに事実に反し、また政治的にも公平的な視点で述べられていない。

など、発言内容とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での青木氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「アメリカが中国の人権問題に配慮していない」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「中国の体制自体に問題がある」「人権問題を引き起こしている中国、習近平を批判すべきである」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第3号「政治的に公平であること」、同第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の前編となります。前編では、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

この続きの
② レジ袋の有料化について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。
③ 水害タイムラインついて報道された部分については後編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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