8月10日の報道ステーションのレポートです。
今回検証するのは以下の点です。
・政治的に公平な放送であったか
まずは放送内容を見ていきます。
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【スタジオ】
富川悠太アナウンサー:アメリカの高官が台湾を訪問しまして中国が猛反発です。
徳永有美アナウンサー(以下徳永アナ):アメリカのアザー厚生長官が台湾を訪れ蔡英文総統と会談しました。1979年の断交以降で最高ランクの高官による台湾訪問。なぜ、このタイミングだったのでしょうか。アメリカの狙いとは?
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【VTR】
アメリカ・アザー厚生長官(以下アザー長官)『この訪問は世界に冠たる台湾のパンデミック対応を参考にする絶好の機会です』
ナレーション(以下ナレ):台北で行われたアメリカのアザー厚生長官と台湾の衛生当局者との合同会見。アメリカと台湾は衛生対策でより協力を強めるという書類に署名しました。1979年に台湾と断交し中国と国交を樹立したアメリカ。今回のアザー長官の訪問は断交して以降アメリカで最高ランクの高官の台湾訪問とされています。
アザー長官『本日この場にトランプ大統領からの台湾に対する力強い支持と友好の意を伝えられることを光栄に思います』
台湾・蔡英文総統『ここ数カ月の間に台湾とアメリカは連携し、疫病対策に挑んでいます。アザー厚生長官の訪台は双方の防疫協力における重大で大きな一歩です』
ナレ:今日現在台湾の新型コロナウイルスの累積患者数はおよそ480人死者は7人で世界で最も感染防止策に成功した地域の1つとされています。アメリカは、その台湾とWHOに代わる新しい国際組織をともに立ち上げる構想を持っています。
アザー長官『今後生じうる健康への脅威に備え、アメリカと台湾は引き続き衛生に関する協力関係を強化していきます』
ナレ:狙いはそれだけではありません。アメリカと中国は互いに輸入する商品に高い関税をかけ合い貿易摩擦が続いています。また、経済スパイ活動に関わったとして中国総領事館の閉鎖を命じたアメリカに対抗し中国もアメリカ総領事館を閉鎖するなど米中関係は悪化の一途をたどっています。アメリカは台湾との協力関係を深めることで中国への牽制を強めているとみられます。一方、一つの中国の原則に違反するとして反発を強める中国。
中国外務省報道官『中国は一貫してアメリカと台湾の公式の往来に断固反対している。すでにこの件でアメリカに厳正な申し入れを行った』
ナレ:更に台湾の国防部によると2月に続き、今日午前中国軍の複数の戦闘機が台湾側の空域に入りました。アザー長官の台湾訪問をけん制する狙いがあるとみられます。
【コメンテーターによる解説】
徳永アナ:太田さんこの米中関係、悪化の一途をたどっているように見えるんですけど今後、どうなりそうですか。
共同通信社編集委員・太田昌克氏:今回のアザー長官の訪問ですけどトランプ大統領にしてみれば過去にも閣僚級の訪問があったわけだからこれ言ってみれば対中牽制のジャブみたいな感じなんです。しかし、中国にしてみれば領土主権を主張している台湾の問題核心的利益ですよね。先ほどあったビデオにもありました貿易や総領事館の閉鎖やファーウェイの排除というのでこの文脈の中でこういった長官の訪問をされることは中国にしてみればメンツが潰された、言ってみれば一撃を食らったという感じだと思うんですね。今後、心配すべきは偶発的な軍事衝突が起こりかねないのではないかという懸念なんですよね。先ほど、航空機が台湾の空域に近くまで行ったとかあとはトランプ政権は昨年来F16戦闘機を台湾に売却する動きであったり最近も迎撃用のミサイルパトリオットを台湾に売ることを決めましたから。なおかつ先月アメリカと中国が同じタイミングで南シナ海で軍事演習を行っているということで非常に、海と空を巡る軍事的なエスカレーションが高まっていく兆しを見せているんですよね。これから心配なのはやっぱり大統領選というファクターがありましてますます不安定化していくわけです。仮にトランプ大統領がより高位の例えばポンペオ国務長官とかを台湾に送るようなことがあったらこれはもう緊張は極限状態に陥りますし、台湾にも自制を求めないといけないんですよね。独立色を強めますと中国が激しく反発しますからぜひ日本外交はアメリカ、中国、台湾それぞれに対して慎重な行動を促すように働きかけていただきたいと思いますね。
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【検証部分】
台湾をめぐる米中対立について取り上げていきます。
今回検証するのは太田氏の解説です。
太田氏は「トランプ大統領がより高位の例えばポンペオ国務長官とかを台湾に送るようなことがあったらこれはもう緊張は極限状態に陥りますし、台湾にも自制を求めないといけない」と述べています。
注目ポイントは「台湾に自制を求めないといけない」という発言です。
中国は日本、インドなどさまざまな国々に圧力をかけ続け、東アジアでの緊張状態を生んでいます。
評論家の石平氏は日本、インド、イギリス、アメリカ、オーストラリア、カナダなどの国々と中国との関係が悪化していることに触れ、次のように記しています。
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中国と主要国との関係悪化は、全部中国の責任であるとは一概に言えないかもしれない。だが、中国自身にもやはり大きな責任と問題点がある。例えばCさんという人間は、Aさんとだけ喧嘩しているならどちらが悪いかはよく分からないが、しかしもし、CさんがAさんともBさんともDさんともEさんともFさんとも同時に揉め事や争いをしているなら、誰から見てもこのCさんに問題がある。Cさん自身のおかしさこそが、いろんな人とイザコザを起こす原因であるに違いない。中国という国は、まさにこのCさんなのである。
《石平 戦略性を失った習近平「四面楚歌」外交の末路
https://www.newsweekjapan.jp/sekihei/2020/07/post-11_2.php
》より抜粋
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インドでは国境紛争が続いており、今年6月にはインド兵に20人の死者が出ています。
今年1月に蔡英文総統の再選が決まると中国紙の環球時報は「軍事的圧力を用いることを含め、蔡氏の新たな挑発行動を抑え込む必要がある」などと記しています。
このような緊張状態を生んでいる根源は中国にあるにも関わらず、太田氏は中国ではなく、台湾に自制を求めると述べているのです。
これは政治的に公平な意見と言えるでしょうか。中国を利する発言と言えるのではないでしょうか。
このような放送は次の放送法に抵触する可能性があります。
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放送法4条
(2)政治的に公平であること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。