サンデーモーニング、2020年7月26日分の検証報告(前編)です。
今回の報告では、
① 新型コロナウイルスに関してGo Toキャンペーンと医療体制について報道された部分
② 東京オリンピックの記念イベントについて報道された部分
③ 「風をよむ」にて基礎研究と資金について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。
検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。
今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。
① 新型コロナウイルスに関してGo Toキャンペーンと医療体制について報道された部分
前編で検証するのは、
となります。
では、さっそく放送内容をみてみましょう。
【VTR要約】
夏休みの旅行を促すGoToトラベルキャンペーンが始まり、4連休は人々が動き、和歌山県の白良浜海水浴場や大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパンなどにぎわいました。
大阪府では新規感染者が連日100人を超えており、23日吉村知事は「市中感染は徐々に広がってきているのは間違いない」と述べました。愛知県で過去最多となる97人、全国でも過去最多の感染者が確認される地域が続出してます。
GoToトラベル開始の22日、首相官邸にて安倍総理は「とにかく三密を避けるなど感染予防を徹底していただく。国民の皆様のご協力をいただきながら慎重に経済活動を再開をしていく。その方針に変わりはありません。」と述べました。
記者が「様々な疑問はあるが総理自ら国民に説明する考えは?」と問うと、「西村担当大臣からもまた官房長官からもほぼ毎日ご説明をさせていただいている。専門的な見地からのいろんなお話もいただきながら、丁寧に説明もさせていただきたい」と答えました。
同じ22日、日本医師会中川会長は「我慢の四連休としていただけないでしょうか。国民の皆様におかれましては初心にかえって、県境を超えた移動や不要不急の外出を避けていただきたくお願いいたします」と述べました。
23日、東京都では過去最多となる366人の新規感染者を確認し、全国でも過去最多の981人の感染者が確認され、24日には累計で3万人を超えました。観光地からは、できれば来て欲しいけど、クラスターや感染者が出たりとか考えると来て欲しくないと複雑な心境の声がありました。
キャンペーンスタート前日に行われた観光事業者への説明会では事業者から疑問が続出しました。
すでにキャンペーンがスタートしたにもかかわらず、補助の対象になるホテルや旅館は決まっていないのです。見切り発車の状況に、ニューとみよし・富岡社長は「何をどうしろという指示がないものですからとても困っています」と話し、制度の不備が次々と明らかになっています。
熱海聚楽ホテル・森田社長は「しっかり制度設計していただいてもっと大きな経済効果が得られる時期まで待っても我々としてはその方が良かったかと思います。これだけGoToに対しての悪いイメージが毎日流れていますと、お客様の「旅行に行きたい」気持ちすら冷ましてしまっている。」と話しました。感染が広がる中、キャンペーン開始に疑問の声が上がっています。
スタジオでの橋谷アナの説明。
東京都の新規感染者の数は、5日連続で200人を超えています。木曜日には366人、そのうち225人の感染経路が分かっていません。この経路不明者が増えると市中感染が広がると言われているが、火曜日までの1週間で一日平均122.3人と前の週に比べて1.5倍に増えています。このペースで増え続けますと感染経路不明者だけで4週間後には5倍のおよそ610人、そして8週間後には25倍のおよそ3060人になるということです。
【コメンテーター発言内容】
松本氏(要約):感染症を抑え込むような世の中の動きは残念ながらなく、まだしばらくはここから感染者数は確実に増えていくと思われます。今後、感染経路不明の方が増えていくと確実に医療の状況は破綻していきます。
今この時点から対策をすれば鈍らせることはできるが、国や自治体が積極的に何か新しい対策を出してくることがなく、個人の行動に委ねられている。それは限界があるのでしばらく感染者増加は避けられないし、もう第1波超える勢いで感染者増えていくのではないかと思います。なんでこれを第2波と言わないのかが分からないんですけど。東京とか中心で感染者が多かったが、GoToで人が広がっていきますので、今まで感染者がいなかった県だとかでも新たな感染者が出て、クラスターができる可能性がありますね。
松本氏コメント後に橋谷氏がGoToトラベルを巡って小池知事と政府について説明。
橋谷氏(要約):GoToトラベルを巡ってこの連休の過ごし方について、東京都の小池知事は外出はできるだけ控えていただきたいと述べています。これについて聞かれた菅官房長官は、外出する際に三密を避けるなど感染防止を徹底してくださいと述べるなど、違いが見える。一方で安倍総理は、この1カ月あまり官邸内で立ったまま取材陣の質問に答えるぶら下がり取材には応じていますが先月18日の記者会見以降、正式な記者会見を開いていないほか、国会答弁の場にも立っていない。
関口氏(要約):今の政府の在り方、国会の在り方をどうご覧になっていますか?
田中秀征氏(全文):一言で言うと指揮者のいないオーケストラみたいになってるんですよね。例えば、旅行している人、していない人、両方とも自分の行動がこの情勢の中で役に立ちたいと思っているんですよ、経済の再生でも感染阻止でも。とにかくどっちに比重を置いていいか分からない、全く異質な問題だから、これを判断するのは政治ですよ、政治家。 要するに総理大臣ですよ、最終的に官房長官と再生大臣がどうのこうのという話ではない。立ち止まって一言言うなんて話じゃない、総理はそうしているけれども。結局、最高責任者の総理大臣が熱意と覚悟を示さなかったら進まないですよ、みんなが戸惑ってるだけでね。そもそも国会を閉じたのが間違っているんだけれども、1週間に一遍は2~3時間でもとことん記者会見、どんな質問でも受けてやる、そしてきちっとそこから1つの、今やるべきことの指針を出さなかったら何をしていいか分からないという状況が続いている。これはいいこと何もないですよね。
浜田氏(全文):GoToトラベルキャンペーンについて前倒しをした責任は誰にあるのか非常に感じます。感染が拡大している最中に前倒しになったわけですけれども、もちろん感染拡大という意味でも非常に厳しい状況だと思いですがあるホテル業者の方に話を聞くと、情報の非対称性があるということを言われたんです。つまりキャンペーンを請け負っている事務局に入っている大手の旅行会社とか大手のオンラインのトラベルエージェンシーは非常に制度設計をしているので情報があるわけです。でも、先ほどVTRのあったように末端のホテル業者の方や小さい旅行業者の人に何も情報もなくて準備もできないような状況だと。となると、早くに準備が出来ている大手とそうでないところと当然お金が入ってくる量も違いますし、これはその人たちに言わせると旅行業者を救うためのキャンペーンなのに一体誰のためのキャンペーンなのかということで声を上げてらっしゃいます。しかもこれで感染が拡大したら、ますます旅行に皆さんにが行きたがらなくなってしまう。となると非常に観光業界に対してむしろマイナスの影響になるんじゃないかということを心配しております。
以上が放送内容となります。
では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の2点です。
1、浜田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
それぞれ順を追って解説します。
1、浜田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
浜田氏は今回の報道で、以下のように述べています。
浜田氏(抜粋):あるホテル業者の方に話を聞くと、情報の非対称性があるということを言われたんです。つまりキャンペーンを請け負っている事務局に入っている大手の旅行会社とか大手のオンラインのトラベルエージェンシーは非常に制度設計をしているので情報があるわけです。でも、先ほどVTRのあったように末端のホテル業者の方や小さい旅行業者の人に何も情報もなくて準備もできないような状況だと。となると、早くに準備が出来ている大手とそうでないところと当然お金が入ってくる量も違いますし、これはその人たちに言わせると旅行業者を救うためのキャンペーンなのに一体誰のためのキャンペーンなのかということで声を上げてらっしゃいます。しかもこれで感染が拡大したら、ますます旅行に皆さんにが行きたがらなくなってしまう。となると非常に観光業界に対してむしろマイナスの影響になるんじゃないかということを心配しております。
要旨をまとめると、
・あるホテル業者は、GoToトラベルは情報の非対称性があるといっている。
・大手旅行関連会社は制度設計にもかかわっているため情報があるが、末端のホテル業者や旅行業者には何の情報もなく準備ができていない。
・早くに準備が出来る大手とその他都では当然お金が入ってくる量も異なるため、末端の旅行業者などは「旅行業者を救うためのキャンペーンなのに一体誰のためのキャンペーンなのか」と声を上げている。
・しかもこのキャンペーンの結果感染が拡大したら、国民はますます旅行に行きたがらなくなってしまい、観光業界に対してむしろマイナスの影響になるんじゃないかと心配している。
というものです。
しかしながら、
・この問題には「GoToキャンペーンによる観光産業支援は早急に行う必要があり、大手旅行会社等を通じて素早い制度設計を行う必要性があった」や「末端のホテル業者や旅行業者全てに説明会などを開いていては、新型コロナウイルス禍の影響で急速に冷え込む観光産業が取り返しのつかない状況になってしまう」などといった背景がある。
・にも関わらず、それらの背景を一切無視し、「情報の非対称性」などのみを取り上げてGoToトラベルキャンペーンの制度欠陥を主張する同氏の発言は事実に反する恐れがあり、政治的に公平ではない。
以上のことから、今回の報道での大宅氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
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2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して、「Go Toトラベルキャンペーンは感染拡大を生みかねない」「経済対策よりも感染対策を重視すべきである」という立場に立った意見のみが出てきました。
ですがこの問題に関しては「Go Toトラベルキャンペーンは瀕死状態の観光産業やその周辺産業を復活させるために必要不可欠である」や「経済対策を重点的に行わなければ、感染症が広がる以上のダメージを負うことになる」などといった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。
以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第3号「政治的に公平であること」、同第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。
以上が報告の前編となります。前編では、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。
この続きの
② 東京オリンピックの記念イベントについて報道された部分
については中編の報告をご覧ください。
③ 「風をよむ」にて基礎研究と資金について報道された部分
については後編の報告をご覧ください。
公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。