TBS「サンデーモーニング」、2020年8月2日放送回の検証報告(中編)です。
今回の報告では、
①新型コロナウイルスの家庭内感染ついて報道された部分
②「風をよむ」にて米中新冷戦について報道された部分
③韓国に設置された土下座する安倍首相について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。
検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。
今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。
中編で検証するのは、
②「風をよむ」にて米中新冷戦について報道された部分となります。
では、さっそく放送内容をみてみましょう。
【VTR要約】
1962年 ソ連がキューバにミサイル基地を建設したことから核戦争寸前にまで至ったキューバ危機。米ソの冷戦は、世界を破滅の瀬戸際にまで追い込みました。それからおよそ60年、世界は再び新たな冷戦の危機を迎えています。
「アメリカの一部勢力が中米関係をいわゆる新冷戦に向かわせようとしている。」中国の王毅外相が語った新冷戦。今回の当事者は、かつての米ソではなく、アメリカと中国。その対立は日増しにエスカレートしています。
7月27日、中国当局はアメリカ側に成都のアメリカ総領事館の閉鎖を命令し、職員らが退去しました。同月21日アメリカ政府が在ヒューストン中国総領事館がスパイ活動の拠点になっていると指摘し閉鎖を通告したことへの対抗措置とみられます。
28日には中国が実効支配を進める南シナ海を巡って、ポンペイオ国務長官は「我々はオーストラリアと共に南シナ海での法の支配を改めて主張していく」と中国の主張を無効とする米・豪共同声明が出しました。これに対し中国外務省報道官は「米豪両国が中国の脅威を誇張し、一連の問題で中国を中傷したことに強烈な不満と断固とした反対を表す」と一歩も引かない姿勢を表明しました。
かつての冷戦はあわや核戦争といった軍事面の対立に至りましたが、今回の新冷戦はいまや地球上だけでなく、相次いで火星探査のロケットを打ち上げるなど宇宙にまで広がりを見せています。去年12月にはアメリカは中国などに対抗し宇宙軍を創設しています。
また軍事面だけでなく経済面での対立も深まっており、中国との貿易戦争だとトランプ大統領は語りました。アメリカはファーウェイなどの中国ハイテク企業の排除を強めています。さらに香港について、中国政府が「香港国家安全維持法」を施行すると、アメリカは「香港自治法」を制定、香港の自治の侵害に関わった中国高官らに制裁を課すとしました。
中国に対抗するため、改めて民主主義陣営の結束を呼びかけたアメリカのポンペオ国務長官。これに対し、中国の国営新華社通信は先月25日、「イデオロギーの対立をあおりアメリカに追随するもので反中華圏を寄せ集め、中国とアメリカが対抗する新冷戦をたきつけた。」と非難しました。
さらに新型コロナウイルスのワクチン開発を巡って競争が激化する中アメリカ司法省は、ワクチンの開発データなどを巡ってサイバー攻撃を仕掛けたとして中国人ハッカー2人を起訴しました。
かつての冷戦同様、今後、世界を二分するような対立に至るのか。米中の新冷戦はどこへ向かうのでしょうか。
【コメンテーター発言内容】
関口氏(要約):昔の米ソの冷戦というのは何か大物同士で争っていたという感じがするんだけど、何かね、変なところで争ってるなという気が僕はしちゃうんですけど、どうですか?
寺島氏(全文):米中新冷戦論にうかつに乗らないことと一言申し上げたいですね。どちらも失敗してると、コロナで、そして香港、台湾に象徴される中国の失敗。それから米国のコロナで15万5000人死んでるというあらゆる面で同盟国さえ束ねる力を失いつつある。 逆に日本は米中2局だとか、新冷戦なんて認識しちゃったらアメリカについて中国を封じ込めようという側につくしかないみたいな選択肢になっちゃうんですね。日本の役割はアメリカをアジアから孤立させない、中国を国際社会の責任ある当事者として招き込むというその粘り強い役割を日本が果たすんだというぐらいの外交の軸をはっきり持つべきだろうなと僕は思います。
大宅氏(全文) :中国をわれわれの仲間の内に入れましたよね。共産主義国家だけれども、経済がよくなれば日本みたいに民主化が進むんじゃないかという希望的観測で中国がわれわれの制度の中に入ってきた、結局、今どういう状態になっているかというと経済戦争からイデオロギー戦争になって、アメリカでは共産党悪者説みたいになってしまっている。中国の世界制覇を目指す壮大な未来図というのは絵空事かと思っていたんですが、かなりのことをやりつつある。でも一方でアメリカというのが自国ファーストならまだいいんだけれども、自分の当選しか考えてないような、何するか分からないような人であるという、どっちもどっちという状態だと思うんですね。その中で日本は本当にどうするのかという軸をしっかり持たないと長い歴史が中国とはあるわけですから、アメリカより分かってるはずの日本がやらなきゃいけないことというのがしっかりあるはずだと思います。
元村氏(全文):新たな同盟を呼びかけていましたよね、アメリカ。でも、アメリカはもともとパリ協定離脱し、イラン核合意も離脱し、WHOからも離脱しようとしている。そういった流れとは全く反対でどの口が言う?という感じを私は受けるんですね。かつての大国が、共産党という悪のレッテルを貼っていじめようとしているというふうに見えてしまう。大国なら大国なりに、きちんと大人の対応をすべきだと思うし中国は中国で、民主化とか人権問題も大変、課題が山積してると思うんですね。これから地球の持続可能性のために頑張らなきゃいけないときに何けんかしているの? それから宇宙とか科学とかいう本当は協力すべきところまでこうやって分断が進んでいることを本当に嘆かわしいと思いますし、アメリカ大統領選のあとに期待したいと私は思ってるんですけどね。
藪中氏(要約):ポンペオさんはあたかも昔の冷戦時代の共産主義が悪いんだということでやっています。ただ、基本はこれは覇権争いであると。日本は米中を見ながら日米はもちろんしっかり、中国とも特に東シナ海でどうやって平和を作るのかとかいろんな格好で日本ができることがある。アジアの自由な、そして平和を作っていくリーダーにならないといけないですね。
青木氏(要約):基本覇権争いだと思うが、世界が相互依存になっていて、経済的には中国と共存していくしかない。ましてや日本は地政学的にはそういう位置にいるんだけど。じゃあ何が大事かというと人類として普遍的な価値、人権だったり、何よりも自由というものに対しては官民問わず日本が粘り強くいうべきことは言っていくことが大切。アメリカに媚び諂って、武器を爆買いしている場合では無いと思う。日本がいうべきこと、どうやって共存して平和体制作っていくのかという与え裏を大事にしつつでもやっぱりいうべきことはいう、それができているかというとまだちょっとできていない感じはしますよね。
以上が放送内容となります。
では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の4点です。
1、寺島氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、大宅氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
4、元村氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
それぞれ順を追って解説します。
1、寺島氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
寺島氏は今回の報道で、以下のように述べています。
寺島氏(抜粋):米中新冷戦論にうかつに乗らないことと一言申し上げたいですね。どちらも失敗してると、コロナで、そして香港、台湾に象徴される中国の失敗。それから米国のコロナで15万5000人死んでるというあらゆる面で同盟国さえ束ねる力を失いつつある。 逆に日本は米中2局だとか、新冷戦なんて認識しちゃったらアメリカについて中国を封じ込めようという側につくしかないみたいな選択肢になっちゃうんですね。日本の役割はアメリカをアジアから孤立させない、中国を国際社会の責任ある当事者として招き込むというその粘り強い役割を日本が果たすんだというぐらいの外交の軸をはっきり持つべきだろうなと僕は思います。
要旨をまとめると、
・米中新冷戦論に迂闊に日本は介入してはいけない
・米中の対立を意識すると日本は中国を封じ込めるアメリカ側につくという選択肢になってしまう。
・日本の役割はアメリカをアジアから孤立させないことと、中国を国際社会の責任ある当事者として招きこむことだ。
というものです。
しかしながら、
・日米安保条約を締結しているのだから、アメリカと中国が対立したらアメリカ側につくのは至極当然のことであり、米中の対立を意識しなくても当然アメリカ側につく。
・また、近日の中国の国際社会における動向を鑑みると、国際社会から非難されるべき人権問題など数多く抱えており、その点を述べずアメリカを批判することは政治的公平性を欠く。
など、発言内容とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での寺島氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
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2、大宅氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
大宅氏は今回の報道で、以下のように述べています。
大宅氏(抜粋):中国をわれわれの仲間の内に入れましたよね。共産主義国家だけれども、経済がよくなれば日本みたいに民主化が進むんじゃないかという希望的観測で中国がわれわれの制度の中に入ってきた、結局、今どういう状態になっているかというと経済戦争からイデオロギー戦争になって、アメリカでは共産党悪者説みたいになってしまっている。中国の世界制覇を目指す壮大な未来図というのは絵空事かと思っていたんですが、かなりのことをやりつつある。でも一方でアメリカというのが自国ファーストならまだいいんだけれども、自分の当選しか考えてないような、何するか分からないような人であるという、どっちもどっちという状態だと思うんですね。その中で日本は本当にどうするのかという軸をしっかり持たないと長い歴史が中国とはあるわけですから、アメリカより分かってるはずの日本がやらなきゃいけないことというのがしっかりあるはずだと思います。
要旨をまとめると、
・経済が良くなれば、民主化が進むと考え、共産主義国家の中国を国際機関に入れた。
・しかし、今は経済戦争からイデオロギー戦争になっており、アメリカは共産党を悪者に見立てている。
・トランプは自身の当選しか考えておらず、中国とアメリカはどっちもどっちである、
・このような中で日本はどうするのかという軸を持たないといけない
というものです。
しかしながら、
・「アメリカは共産党を悪者と見立てている」とアメリカを批判し、人権問題等様々な問題を抱えている中国を持ち上げる主張は政治的に公平性を欠く。
・また、「トランプは自身の当選しか考えていない」という主張には、具体的に何をもって当選のことしか考えていないのか述べておらず、根拠に乏しく事実に反する恐れがある。
など、発言内容とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での大宅氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「国際協調路線を外れているアメリカは非難すべき」「日本は中国と協調すべき」という立場に立った意見のみが出てきました。
青木氏氏(抜粋): アメリカに媚び諂って、武器を爆買いしている場合では無いと思う
など、こうした姿勢が顕著にみられる発言もありました。
ですがこの問題に関しては「中国と協調する前に、ウイグルチベットなどの人権問題等の課題や領土問題を解決すべき」「アメリカを批判するなら、中国の実情にも触れるべき」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。
以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第3号「政治的に公平であること」、同第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。
以上が報告の中編となります。後編では政治的に公平でなかったり、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。
この続きの
② 「風をよむ」にて米中新冷戦について報道された部分
検証4「元村氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている」
ならびに
③ 韓国に設置された土下座する安倍首相について報道された部分については、
後編の報告をご覧ください。
① 新型コロナウイルスの家庭内感染ついて報道された部分
については前編の報告をご覧ください。
公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。