サンデーモーニング、2019年3月3日分の検証報告(前編)です。
今回の報告では、
「統計不正」問題と沖縄の県民投票について報道された部分
ドナルド・キーン氏が亡くなった件について報道された部分
以上2点について検証し、その問題点を探りたいと思います。
検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。
今回はレポートを2つに分け、前後編でお送りいたします。
前編で検証するのは、
「統計不正」問題と沖縄の県民投票について報道された部分
となります。
では、さっそく放送内容をみてみましょう。
【VTR要約】
特別監察委・樋口委員長による記者会見映像が流される。「隠蔽行為があったとは言えないと判断したしました」と述べる映像の後、第三者委員会による再調査の結果、組織的隠蔽はなかったと結論付けたと伝えられる。映像は翌日の予算委員会の国会答弁に切り替わり、樋口委員長と安倍総理が答弁を行う様子が流される。
引き続き予算委の映像が流されながら、沖縄の県民投票の結果について「野党から厳しい質問が飛びました」と辺野古移設問題にテーマが切り替わる。県民投票の結果72.15%が埋め立て反対との判断を示したと伝えられ、共産党・赤嶺議員が「真摯に受け止めると語った安倍総理にその真意を質した」とアナウンス。安倍総理が「沖縄の基地負担の軽減に取り組んでいかなければならない」と答弁する映像の後、玉城知事が首相官邸を訪れ、会談を行う映像に切り替わる。工事を直ちに止めるよう求めた玉城知事に対し、安倍総理は「負担軽減に向けて結果を出していきたい」と答える様子が流される。玉城知事は日米両政府に沖縄を交えた3者協議の場を設けるよう提案したが、安倍総理から回答はなかったと伝えられる。
「今後、安倍総理は沖縄の民意とどう向き合っていくのでしょうか」と疑問投げかける言葉を最後にVTRは終了した。
【アナウンサーによるパネル説明】
沖縄県民投票の結果について、棒グラフを用いてパネル説明。
・賛成19.10%、反対72.15%、どちらでもない8.75%
・政党別の内訳(反対票)
自民党支持層48.0%
公明支持層64.8%
無党派層82.8%
・無党派層は8割以上を埋め立て反対が占めた
・辺野古移設をめぐる主な出来事について
1995年 米兵による少女暴行事件
1996年 普天間基地返還で日米合意、第1回沖縄県民投票
1999年 移設先を辺野古へ閣議決定
2017年 埋め立て開始
【コメンテーターの発言】
田中秀征氏(要約):1996年に基地返還の合意が決まったときは橋本内閣の閣僚だったので、橋本さんから報告を受けて僕はすごく喜んだ。日米合意からこの23年間で辺野古をめぐる情勢変化がいろんな形で起きているので、今まで通りやっていっていいのか心配している。工事の規模・費用・時間の増加、周辺国の国力の劇的な変化(特に中国)、海兵隊の必要性の変化、兵器装備の高度化、世論の分裂、この23年間でいろいろな変化があった。これからの10年間は朝鮮半島の有事、台湾有事、いろんなことが想定される一番大事な時期。(安倍総理には)これまでの考え方でいいということを我々に分かる形で検討してほしい。本土と沖縄が本音でじっくりと話し合わなければならないと思う。
高橋純子氏(全文):そうですね。国会の方は、やっぱり組織的な隠蔽がないというふうに「隠蔽」という言葉ですね、自分たちに割と都合よく解釈して、そしてないと言うふうに言う。沖縄に対しては、「真摯に耳を傾ける」とかですね、「沖縄に寄り添う」と言ってますけれど、まあ客観的に見て、えっどこが?っていう感じがします。やっぱりこう決まり文句を自分たちで勝手に言葉を定義して決まり文句で受け流していくような政治。こういう不誠実な政治っていうものを、やっぱりおかしいんじゃないかなというふうなことを私達が声をあげていかなきゃいけないんじゃないかなと。それが、私たちが沖縄県民に寄り添うということなのではないかなというふうに思います。
青木理氏(全文):沖縄の県知事選、僕も取材に行ったんですけれど、どこをきっても全部反対なんですけれど、重要なのは、玉城さんの知事選での得票数を、今回反対の得票数が超えちゃったんですよ。つまり、沖縄をそこまで追いつめて、玉城さんとしても自分の得票数よりも反対の方が多いんだから、交渉の余地ってのはもうないんですよ。だからむしろ、玉城さんの手足を縛っちゃったっていうのが一つと。もう一つは今、秀征さんがおっしゃいましたけど、これね、90mの軟弱地盤ってのが新たに分かって。こんな工事、日本で前例がないんですよ。やるための船もないんですよ。で、しかも県知事が承認しないと設計変更っての認められないんですよ。つまりね、このまま突き進んでも、多分つくれないんですよ。だから引き返すんだったら本当にここで引き返して、その沖縄県と日本政府が一緒になってアメリカときちんと向き合って、その辺野古の基地の在り様っていうのをいろんな情勢変化も含めて考え直すっていう、ひょっとすると政府が立ち戻れる最後のチャンスかもしれないっていうふうに僕は思いましたね。
以上が放送内容となります。
では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の2点です。
1、高橋氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
4、パネル説明の内容が視聴者に事実と異なる認識を与える恐れがある
それぞれ順を追って解説します。
高橋氏の内容が視聴者に事実と異なる認識を与える恐れがある
高橋氏は今回の報道で、以下のように述べています。
高橋氏(抜粋):そうですね。国会の方は、やっぱり組織的な隠蔽がないというふうに「隠蔽」という言葉ですね、自分たちに割と都合よく解釈して、そしてないと言うふうに言う。沖縄に対しては、「真摯に耳を傾ける」とかですね、「沖縄に寄り添う」と言ってますけれど、まあ客観的に見て、えっどこが?っていう感じがします。やっぱりこう決まり文句を自分たちで勝手に言葉を定義して決まり文句で受け流していくような政治。(以下略)
要旨をまとめると、
・国会は「隠ぺい」の定義を都合よく解釈して「隠ぺいはなかった」としている
・沖縄について「寄り添う」と言っているが、客観的に見て寄り添っていない
というものです。
しかしながら、
・中立の立場の第三者委員会が調査した結果「隠ぺいがなかった」と判断したもので、これを国会が隠ぺいを無視しているという高橋氏の主張は事実を「都合よく解釈」したもので、妄言と言わざるを得ない。
・「沖縄に寄り添う」というのは「100%沖縄の言うことを聞く」ことではない。また、客観的に「どこが寄り添っているのか」という主張は高橋氏個人の見解に過ぎない。
など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での高橋氏の発言は事実にそぐわないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
青木氏の内容が視聴者に事実と異なる認識を与える恐れがある
青木氏は今回の報道で、以下のように述べています。
青木氏(抜粋):(中略)重要なのは、玉城さんの知事選での得票数を、今回反対の得票数が超えちゃったんですよ。つまり、沖縄をそこまで追いつめて、玉城さんとしても自分の得票数よりも反対の方が多いんだから、交渉の余地ってのはもうないんですよ。だからむしろ、玉城さんの手足を縛っちゃったっていうのが一つと。もう一つは今、秀征さんがおっしゃいましたけど、これね、90mの軟弱地盤ってのが新たに分かって。こんな工事、日本で前例がないんですよ。やるための船もないんですよ。で、しかも県知事が承認しないと設計変更っての認められないんですよ。
要旨をまとめると、
・今回の辺野古移設に関する県民投票で、玉城氏の知事選の得票数を反対の得票数が超えたことから、交渉の余地はもうない(ので移設をやめるべき)
・90mの軟弱地盤を工事した前例はなく、県知事が承認をしなければ設計の変更は認められない。よって基地の建設は不可能である。
というものです。
しかしながら、
・今回の選挙は法的効力を持たない(サンデーモーニング検証報告 1月20日(後編)を参照)
・今回の選挙は「特定の政策について問う」もので、通常の選挙と違い「当該争点に興味がない人間は行かない」という特徴を持つ。今回の選挙は投票率が52%であり、県民の約半分がこの争点(辺野古移設)に興味がなかったと言える。したがって県民の総意として「辺野古への移設反対」とは言えない恐れが高く、交渉の余地がないとは言えない。
・安全保障は国民の意思で選出された政府の管轄であり、交渉の余地がないとは言えない。
・防衛省の見解では70mの施工例が海外に存在し、地盤を確認したところ70mの施工で対応可能との見解を示している(注:放送時点で防衛省見解は未発表)
・県知事が設計変更を承認しない場合政府は県を提訴することも検討しており、基地の建設が完全に不可能とは言えない
など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での青木氏の発言は事実にそぐわないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「政府は沖縄の民意に向き合い移設をやめるべきだ」「政府は真摯に問題に向き合っていない」という立場に立った意見のみが出てきました。
ですがこの問題に関しては「安全保障は国の管轄で国民の意向も尊重すべきだ」「真摯かどうかというのは個人の主観に過ぎない」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。
以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。
以上が報告の前編となります。前編では、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。
この続きの
「統計不正」問題と沖縄の県民投票について報道された部分
における、
検証4「パネル説明の内容が視聴者に事実と異なる認識を与える恐れがある」
ならびに、
ドナルド・キーン氏が亡くなった件について報道された部分
については、後編の報告をご覧ください。
公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。