2020年8月24日 報道ステーション

2020年8月24日 報道ステーション

8月24日の報道ステーションのレポートです。
安倍首相が辞任を表明する前の報道ですが、安倍政権を総括するような放送がなされていました。
今回検証するのは次の点です。

・様々な論点を取り上げた放送だったか
・事実を正しく伝えた放送だったか

まずは放送内容をみていきます。
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【スタジオ】
小木逸平アナウンサー(以下小木アナ):健康不安説が広がる中で連続在職日数が歴代最長となりました。第2次政権発足後連続の在職期間が歴代最長となった安倍総理ですが今日は先週に引き続きまして都内の大学病院を訪れました。持病が悪化しているのではないか。そんな見方が広がっています。

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【VTR】
ナレーション(以下ナレ):今朝、再び病院を訪れた安倍総理。

井澤健太郎記者:安倍総理が今、病院から出てきました。車へと乗り込みます。およそ3時間半以上の滞在となりました。首相官邸へと向かいます。

ナレ:官邸側は先週の受診時にまた来るよう言われていたと説明しています。

安倍晋三総理大臣(以下安倍総理)『(Q.現在の体調は)(Q.連続在職日数が歴代最長に受け止めを)政治においてはその職に何日間在職したかではなくて何を成し遂げたかが問われるのだと思いますが、この7年8カ月結果を出すために一日一日全身全霊を傾けました。その積み重ねの上にきょうの日を迎えることができたのだろうと思います。きょうは先週の検査の結果を詳しく伺い追加的な検査を行いました。体調管理に万全を期してこれからまた仕事を頑張りたい。(Q.検査の結果や内容は)きょうは検査、再検査を行ったところであります。またそうしたことについてはお話をさせていただきたい』

ナレ:連続在職日数は2799日を迎え佐藤栄作元総理の記録を抜きました。最優先課題として掲げてきたのが経済政策です。

2013年の安倍総理『アベノミクスは“買い”だ』

ナレ:日経平均株価は2万円台を回復しました。安倍カラーを前面に打ち出した政策にも取り組みました。特定秘密保護法の成立更に、集団的自衛権の行使容認。反対の声を押し切って実現させました。たびたび、支持率急落の局面を迎えながら長期政権の原動力となったのが…。

2014年の安倍総理『アベノミクス解散であります』

ナレ:国政選挙での勝利です。ただ、安倍一強はひずみも生み出しました。

2017年の安倍総理『私や妻がもしかかわっていたのであれば私は総理大臣を辞める』

ナレ:森友問題では公文書の改ざんが発覚。桜を見る会でも、野党から権力の私物化だと追及を受けました。今年に入ってからは新型コロナの感染が拡大。

今年4月の安倍総理『緊急事態宣言を発出する』

ナレ:失速していたアベノミクスに追い打ちをかけ国内総生産は戦後最大の落ち込みとなりました。「報道ステーション」がこの週末に実施した世論調査では安倍総理の7年8か月の政権運営について評価する人は45%で評価しない人は39%でした。内閣支持率は37.4%で先月の調査からやや回復しましたが、依然として低い水準です。自ら先頭に立って誘致したオリンピック・パラリンピックは延期となり来年9月には自民党総裁としての任期満了を迎えます。しかし、ここにきて健康不安が取りざたされています。安倍総理は2007年の参院選に大敗したあと持病の潰瘍性大腸炎が悪化し突然、辞任した経緯があります。今回、その持病が悪化しているとの見方が広がっています。

政府高官『持病の薬が効いてないようだ。病院で薬のバランスを調整したそうだ』

ナレ:健康不安説に揺れる安倍政権。後藤謙次氏に聞きました。

ジャーナリスト 後藤謙次氏(以下後藤氏):17日に最初の健康診断で慶応大学病院に行ったときは2つの受け止めがあった。一つはもう幕引きの時期だという見方と、もう一つは治療しながら公務を続ける。追加的な検査を受けたということを安倍さん自身がおっしゃっているので、この結果を聞きにまた次に行くと。そう遠くない時期に再び慶応大学病院に行くというのが見えてきた。となると当面は治療を続けながら公務を続けるという選択を現段階ではとったのではないか。安倍総理は13年前に一方的に記者会見をして辞めて、その後に今回と同じ慶応大学病院に入院している。その退陣の仕方が政権を放りだしたと(批判された)。今度のパターンもそれだけは何とか避けたいという思いは強いと思う。

【検証部分】

安倍政権が長期政権となった理由、そして安倍政権の問題点と今後の評価といった論点で安倍政権について放送されていました。

今回検証したいのは太田氏の次の発言です。

「異論や少数意見にも耳を傾ける。そして議論を重ねるという丁寧なプロセスですよね。振り返ってみますとこの点において、安倍政権には私は不十分な点が多いと思うんですね。」

太田氏は集団的自衛権や(太田氏が言うところの)共謀罪について安倍総理は説明が足りていないと言いたいようです。
しかし、実際はメディアが正しく情報を発信してこなかったがために、重要政策へのマイナスな印象が根付いてしまった可能性が極めて大きいのです。
またそれら重要政策で得られるメリットなどについて触れられることはありませんでした。

冒頭の方でも安倍政権が長期政権となったことについて

「特定秘密保護法の成立更に、集団的自衛権の行使容認。反対の声を押し切って実現させました。たびたび、支持率急落の局面を迎えながら長期政権の原動力となったのが…。国政選挙での勝利です。」

と放送されていました。

特定秘密保護法やテロ等準備罪などが制定される時にメディアは世論を煽りに煽りました。
例えば特定秘密保護法が制定されるときの朝日新聞では次のように取り上げられていました。

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俳優の藤原紀香さんは今月13日、ブログにこう書き込んだ。「真実を知ろうとして民間で調査している人やマスコミ関係者などが逮捕されてしまう可能性があるって……。日本は民主主義国家ではなくなってしまうのかな」
 藤原さんが指摘したのは、安倍政権が臨時国会に提出する特定秘密保護法案のことだ。法案では、防衛や外交など4分野が「特定秘密」に指定される。法案の概要によると、秘密を漏らした人はもちろん、秘密を知ろうとする行為も処罰対象になりかねない。

《朝日新聞 2013年09月19日(秘密保護法案 読み解く:1)記者の取材活動も処罰される?》より抜粋
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他にも「報道の自由が阻害される!」と様々なメディアで取り上げられていましたが、特定秘密保護法は外交・安全保障に関する情報の保護を行い、諸外国との情報のやりとりを円滑化するためのものです。
この重要性についてはほとんど報じられることなく、国民や報道の自由が侵害される危険性ばかりが論点となりました。

この法律ができてから6年以上が経ちますが、報道の自由が阻害されたというニュースがあったでしょうか?
メディアはこれまで通り報道の自由を謳歌しているということができるのではないでしょうか。

それからテロ等準備罪についてもメディアは「共謀罪」などと呼び、煽りに煽りました。
しかし、施工から2年以上経ってもこの法律が適用された事例はありません。

集団的自衛権の行使についても共産党が言い出した「戦争法案」という呼び方をメディアも使い、世論を煽りました。

アメリカとの同盟関係が半世紀以上続いてきた日本において、(自覚は無くとも)日本は朝鮮戦争やベトナム戦争で戦争に参加していた、と言うことができます。
戦争への参加は何も戦うことだけではありません。沖縄など基地提供を行ってきたのですから、兵站としてアメリカのサポートを行なってきたのです。

それを今更、戦争法案などと呼ぶのは周回遅れの議論でしたが、メディアは盛んにこの法案を取り上げました。
一方で、同盟国をしっかり守っていく重要性や、この法案の必要性について報じることはほとんどありませんでした。

森友学園や加計学園の問題ついても同様です。
森友学園では、国有地の値引きという大きなテーマにおいて野田中央公園や朝日新聞などの新聞社が格安で取得した国有地などのテーマについて向き合うことはありませんでした。

加計学園では、今年3月にご逝去された加戸前愛媛県知事の重要な発言について取り上げられることはほとんどありませんでした。

要するにメディアは安倍政権などがしてきた説明を十分に報道することなく、「説明不足」と言い続けてきたのです。

このように安倍政権が行ってきた政策の重要性などを国民にしっかり伝えることができていない要因は安倍政権だけの問題ではありません。メディアにもその責任があるのです。
この事実に向き合わずに安倍政権だけを批判するという放送は次の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(3)報道は事実をまげないですること
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。

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