2020年9月15日 報道ステーション

2020年9月15日 報道ステーション

9月15日の報道ステーションのレポートです。
今回検証するのは以下の点です。

まずは放送内容を見ていきます。

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【スタジオ】

小木逸平アナウンサー(以下小木アナ):続いて、明日発足します菅内閣で固まった顔ぶれをご紹介します。まずは副総理兼財務大臣の麻生太郎さん、再任です。そして、注目の官房長官ですが加藤勝信さんが厚労大臣から横滑りとなりました。外務大臣は茂木さんが再任。
防衛大臣が安倍総理の実の弟であります岸信夫さん、初入閣です。そして厚労大臣には田村さん。石破派からも入りました。経済再生新型コロナ担当で西村さん再任です。経済産業大臣が梶山弘志さん、再任です。国家公安委員長の武田良太さんは総務大臣に横滑りとなりました。そして、法務大臣ですが上川さんが再入閣ということです。文科大臣に萩生田さんが再任。国交大臣、赤羽さんが再任。農林水産大臣は前の官房副長官だった野上浩太郎さんが初入閣。環境大臣、小泉進次郎さん再任です。復興大臣で平沢勝栄さん初入閣になります。防衛大臣の河野太郎さんは行革担当に横滑りとなりました。オリンピック・パラリンピック担当は橋本聖子さん、再任です。元総務副大臣の坂本哲志さんが一億総活躍担当大臣として初入閣です。元環境副大臣、井上信治さんが万博担当で初入閣です。菅さん肝煎りのデジタル担当大臣には科学技術担当大臣を務めましたITに強い平井卓也さんとなります。ご覧のように顔ぶれが固まったということですが14人が安倍内閣で閣僚を務めた経験がある人で5人が初入閣ということになりました。まず、俯瞰しまして感想はどうでしょう。

後藤謙次氏(以下後藤氏):やっぱり安倍カラーが濃厚な派閥均衡人事ということがいえると思います。しかも、それぞれ仕事師なんですが、菅新総裁、次の総理大臣ですね。菅さんとの距離感が入閣するかしないか。つまり信頼できるかどうかが菅さんの判断基準にあったと思います。

小木アナ:そして注目だったのが官房長官人事でしたが、加藤勝信さんになりました。このわけといいますか…。

後藤氏:1つは安定感がある。加藤さんは答弁能力も高いですよね。この内閣は誰が官房長官をやっても7年8か月の菅さんにはかなわないわけです。いわば菅内閣総理大臣兼官房長官というそういう内閣だと思います。菅さんは官房長官の条件に3つの条件を提示した。
官房長官にふさわしい人を。1つは、1日2回の記者会見をこなせる人。省庁の縦割りの壁をぶち破れる人。それから国会対策ができる人という条件があったんですが結果として、ほかになかなかそれを全部満たす人がいなくて結局、信頼関係と安心して仕事ができる。自分のノリを超えない。官房長官が総理大臣を超えるような発言をしないということが菅さんの最大の起用条件だったと思います。

徳永アナ:加藤さんのプロフィールをまとめてありますが加藤さんのお人柄ですとか仕事ぶりというのはどのような感じなんでしょうか。

後藤氏:まさに官庁中の官庁と言われた大蔵省に入省してそのあとも財務省に入りました。
大蔵省出身のエースですよね。これまで安倍内閣は経済産業省内閣と言われましたが
この加藤さんが官房長官に就任することによって財務省が復権するのではないかという見方もあるぐらいある面で、財務省の予防になって登場すると。しかも手堅い、あらゆる政策に精通していますからこなせるということも重要になるわけですね。ただ、安倍総理と極めて近いということなので安倍さんの信頼も厚い。つまり安倍さんの、ある面で政治的継承、政策的継承これもできる人が加藤さんだと思います。

小木アナ:ただ、菅さんがほぼ官房長官を兼務するような状態だったというお話を聞くと
例えば、縦割りを打破するとかそういった力を期待してというわけではあまりないということですか。

後藤氏:むしろ記者会見とか調整能力とかあるいは官僚の動向とかそういう考え方を加藤さんは伝える役割じゃないかと。つまり打破するのは行革担当大臣に内定した河野太郎さん。

小木アナ:河野太郎さんが行革担当大臣になったのはこれはどうなんですか?

後藤氏:驚きでしたね。最初は官房長官候補にも名前が挙がっていたんです。ただ、一時期解散に触れた発言をしたので、危ないかなということになりましてそのあと、総務大臣説が今日、ずっとあったんですね。

小木アナ:総務大臣じゃなかったですね。

後藤氏:自民党執行部からクレームがついたという説もあるんですが、結局、行革担当という縦割りを打破ということですが、行革担当大臣は内閣府に置かれますから。つまり手足となる省庁が足元にないんですね。つまり、行革とはいいながらなかなか推進力をどこで得るのかつまり河野さんの突破力が本当に生かせるのか。言葉の突破力はあるにしても、実際の突破力をどこまで出せるかどうかは総理大臣になる菅さん自身の意向が強く反映するんじゃないかと思います。

小木アナ:いろいろ聞きたいことはあるんですがちょっと驚いたのが万博担当大臣が独立してあるというのは何らかの配慮でしょうか。

後藤氏:私はそう思いますね。2025年の大阪万博について影響力のある、菅さんが極めて親しい関係にもある日本維新の会に対して万博を本気で応援しますというメッセージを多分、送ったんだと思いますね。 これは非常に関心のある人事です。

小木アナ:それから実の弟であります岸信夫さんが防衛大臣に。これは意味としてはどういったことが考えられますか?

後藤氏:鶴の恩返しの側面もありますがと同時に安倍さんが最後にミサイル防衛について
談話を発表しましたね。きちんと談話をまとめてほしいと。その談話の実行を担保する。まさに弟さんである岸信夫さんが、それを実行するという証しですよという安倍さんに対する、ある面で菅さんのメッセージといっていいと思います。

小木アナ:継承をちゃんと形にして見せたということですか。

徳永アナ:そして菅さんですがこれまで安倍政権時代は官房長官として官邸主導というのを推し進めてきた部分もあると思いますが、今後、菅さんがいざ総裁になるとなると、官邸主導というのは今後、更に強くなっていくんでしょうか?

後藤氏;というよりは今回、二階さんの影響力が非常に大きかったですからやはり党と調和をしていこうと。これまでも菅さんは毎週、国会開会中に、火曜日の朝に、官房長官と森山国会対策委員長と先ほどちょっと申し上げましたが、林幹事長代理の3人と、必ず朝食を火曜日にともにしていたんです。そこで官邸との疎通を図っていた。多分、今度もその延長の中で官邸の独走というよりはそういう調和を取りながら持っていくといういわば一強体制から集団指導体制へ移っていくという政権になるんじゃないかと思います。

徳永アナ:安倍政権時代より自民党役員の人事にもありますが自民党全体として調和をとっていくと。

後藤氏:調和と、あとは党側の影響力が増大すると思います。

小木アナ:このバランスが非常に大切な内閣になってくるということですね。あと、肝煎りとしてデジタル。この部分なんですが、非常にITに詳しいとされる平井さんになりました。 この辺りは力の入れようは見えますか?

後藤氏:菅さんは今回の自公合意の中でもデジタル化ということをきちっと書き込んでいます。デジタル社会。そういう意味では、ここは菅さんの1つの目玉政策として推進役になるんだと思います。

小木アナ:続いて注目の解散・総選挙は一体どうなるのかについてこのあとも後藤さんに伺っていきます。

【CM】

小木アナ:速報が入ってきました。自民党の菅総裁は明日、行う新閣僚人事で国家公安委員長に小此木八郎氏を起用する方針を固めました。小此木氏は安倍内閣でも2017年から
2018年まで国家公安委員長を務めていました。小此木さんと菅さんというのはやはり近いですよね。

後藤氏:近いどころか兄弟分みたいなものです。小此木さんのお父さんに今度の菅総理大臣が秘書として仕えて、政治の道に入ってきたわけですから。まさに一心同体と言っていいと思います。

小木アナ:顔ぶれが固まってきたという全容をご紹介しましたが注目は解散・総選挙がいつあるのかという早期というふうにみるのかもっとギリギリのところなのか、これは後藤さんはどうご覧になりますか?

後藤氏:私は、当初は早期にすぐやるのではないかとみていたんですが、菅新総裁の記者会見を見ているとまず仕事をしたいということを言っていますね。それからコロナによって総裁選は簡易なものにしたと。その簡易なものに総裁選をしておきながらすぐ選挙で、全ての有権者が参加するような選挙をやって大丈夫なのかと。ここでコロナが例えばクラスターでも発生したら、その政権は、そのように終わってしまう危機感が党内にもあります。

小木アナ:クラスターは選挙事務所とかそういうところで。

後藤氏:街頭演説とか。それが心配だということと菅さん自身が仕事をしたいということをおっしゃいましたよね。そして注目をしていたのは一番早い選挙ですと10月2日に臨時国会の召集があるのではとみられていましたが、今日取材をしますと10月下旬以降になると。臨時国会の召集が。となると、年内選挙は非常に厳しくなってきて結果として、今日の自公合意で1番、2番の項目がコロナなんですね。つまり、コロナをやらないとやれないよということは公明党がタガをはめたということも言えまして。なかなかそこは厳しいと思います。

小木アナ:そうなると意外とタイミングがなかなかなくなってくる。

後藤氏:2か所です残ってるのは。1つは来年1月の通常国会冒頭。それと、もう1つは任期満了に近い五輪、総裁選、総選挙というホップステップジャンプ論がありますが、そこまでいってしまうんじゃないかと。

徳永アナ:となると、菅総裁は実務をバランスの取れたこの中で積み上げていく感じですか。

後藤氏:色を出したいということを繰り返すというのはありますね。それだけにある面で仕事ができる着実な閣僚を、さっき吉野さんのリポートにもありましたが、そういうことをやっていこうということじゃないかと思います。

徳永アナ:太田さん、ここまでいろいろ見えてきましたが、新政権の印象をどのようにご覧になりますか?

太田氏:後藤さんのお話をお聞きしていてさすが苦労人で人情、義理堅いという意味である意味、施し返し内閣かなという感じがします。やっぱり注目したいのは私は麻生さんが内閣に残って内閣には菅さんもいらっしゃいますし党には二階幹事長森山国対委員長という強力なタッグが残ると。まさに安倍政権の骨格が残っている。それはプラスとマイナスの両面があると思います。先ほどまでご説明があったようにやっぱり1つは継続性ですね。それから安定性。継続性というのはイージス・アショアに関することとか政策の継続性があるということが担保できる。安定性があるゆえに実務型であるゆえに自分のタイムテーブルで一番いいタイミングで解散を打てるそういう安定志向の内閣だと思うんですね。一方で、我々国民が気をつけないといけないのはマイナスの面。何かと申し上げますと。私、一番心配しますのは国会監視機能の低下ということだと思うんですね。モリカケ、桜河井夫妻の1億5000万。それからコロナ再燃7月にあった野党の国会開催要求ですね。こういうのを一生懸命防波堤になって安倍官邸を守ってきたのがやっぱり、森山国対委員長や後ろ盾の二階さんだったと。これが続いていいのかという問題なんですね。野党は残念ながらいまだ多弱ですね。国会監視がすなわち低空飛行が続くわけです。政治に緊張感がなくなる。その行きつく先は何だろうか。私は菅一強だと思います。それが果たして本当に国民に信頼される政治、パブリック・トラストの回復に至るかどうかはいささか疑問ですね。

小木アナ:後藤さんにもお伺いします。明日誕生します菅政権。あえて課題を挙げるとするとどんなことでしょうか。

後藤氏:改革意欲を持った人と言われますが、本当にどの人がそうなのかという疑問がありますし。派閥にとらわれないと言っていましたが、やはり派閥均衡であると。そして菅さん自身が確かに1つ1つ課題を掲げています。デジタルだとか携帯電話の料金値下げだとか。
そうではなくて我々、もう1つ山の向こう側の日本の景色はどうなんですかという大きいビジョンを、菅さんが今後も今までも時間が足らなかったですがそれをきちっと掲げられるかどうか。

小木アナ:日本はどこに進んでいくか。

後藤氏:安倍総理のように地球儀を俯瞰する外交とかそういう大きなものをぜひ、提示してもらいたいと思いますね。

小木アナ:後藤謙次さんにお話を伺いました。どうもありがとうございました。

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【検証部分】

新たに発足する菅政権に関する報道を取り上げます。
検証する発言は次の部分です。

太田氏「(安倍政権が残したマイナス面は)国会監視機能の低下ということだと思うんですね。」
「モリカケ、桜河井夫妻の1億5000万。それからコロナ再燃7月にあった野党の国会開催要求ですね。(森山国対委員長や後ろ盾の二階さんが)こういうのを一生懸命防波堤になって安倍官邸を守ってきた」
「国会監視がすなわち低空飛行が続くわけです。政治に緊張感がなくなる。その行きつく先は何だろうか。私は菅一強だと思います。それが果たして本当に国民に信頼される政治、パブリック・トラストの回復に至るかどうかはいささか疑問ですね。」

後藤氏「菅さん自身が確かに1つ1つ課題を掲げています。デジタルだとか携帯電話の料金値下げだとか。そうではなくて我々、もう1つ山の向こう側の日本の景色はどうなんですかという大きいビジョンを、菅さんが今後も今までも時間が足らなかったですがそれをきちっと掲げられるかどうか。(が重要である)」

太田氏は国会監視機能の低下によって安倍一強、菅一強に繋がる。そして国会監視はモリカケなどの野党の追及から森山国対委員長や後ろ盾の二階さんが一生懸命防波堤になって安倍官邸を守ってきたことと、野党が弱いことによって引き起こされている、と解説しています。

政府が強くなりすぎている状態を危惧した発言であると思われますが、議院内閣制では国会の信任を元に政権が作られるため、国会での論戦は「アリーナ型」になります。
議院内閣制では審議日程を政府主導で決めることができ、政府提出の法案が可決されることを前提とした論戦となり、見せ物としての要素が強くなるため「アリーナ型」と呼ばれます。
衆議院の多数派が内閣を承認し、野党=少数派となるため、この形になるのは当然と言えば当然です。

そうした政権を良しとするか、否とするかは全て選挙で決まります。
特に小選挙区での選挙制度が導入されたことで、二大政党制的な政治勢力ができ、政権交代が起こりやすいはずなのです。
それでも安倍政権が続いてきたということは言うまでもなく、民意に支持され続けてきたからです。
最終的に安倍政権の功績を認める声は朝日新聞の世論調査でも70%を超えているのです。
太田氏は「国民に信頼される政治、パブリック・トラスト」が失われているとしていますが、国民の信があったからこそ、安倍政権は7年半も続いたのです。

次に後藤氏の発言です。後藤氏は「(大きいビジョン」が菅政権にないとしています。
しかし、そもそも菅総理は安倍政権の継続を打ち出しているのですから、安倍晋三前総理がもっていたビジョンを確認する必要があります。
例えば「憲法改正」、「日米印豪によるダイアモンド構想」などの安倍前総理が打ち出したビジョンを菅総理は継承するでしょう。

また菅政権の独自色にもしっかりと注目すべきです。
例えばデジタル庁の新設や行政・規制改革です。
デジタル庁を作り、行政改革が進めば行政の効率化が期待されます。
そして、そこで浮いた予算をさまざまな箇所に使うことができます。

これにはさまざまな省庁や既得権側からの反発が予想されますが、そこに菅政権が取り組もうとすることでビジョンを示しているといえます。

このような放送は次の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。

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