TBS「サンデーモーニング」、2020年9月6日放送回の検証報告(後編)です。
今回の報告では、
① 自民党総裁選について報道された部分
② 立憲・国民合流新党の代表選について報道された部分
③ 「風をよむ」にて種苗法について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。
検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。
今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。
後編で検証するのは、
③ 「風をよむ」にて種苗法について報道された部分
となります。
では、さっそく放送内容をみてみましょう。
私たちの食生活にもつながる大きな変化が近い将来、起きるかもしれません。
先月22日、栃木県足利市の牛舎から3頭の子牛が盗まれました。栃木県ではほかにも盗難の被害があり、いずれも食用の黒毛和牛などで被害額は275万円に上ります。 さらに、群馬県を中心に10カ所以上で子豚の盗難が発生し、およそ670頭、被害額は2000万円に達しています。牛は個体識別番号がついており、盗まれたものは市場には出回らず、豚も出荷元が明確でないと流通はほぼ不可能と関係者は言います。犯行の狙いについては、闇ルートを持つ組織の関与を指摘する声もあり、見方はさまざまですが東京理科大学(知的財産政策)生越教授は「日本の豚や牛 そういう食材が非常に美味しいということが広まってその遺伝資源で儲けようと受精卵や精子の形にして、外国に持っていく、その可能性が大きいのではないか」と話します。
すでに始まっていると言われる農作物を巡る日本ブランドの流出。例えば高級ブドウ、シャインマスカットの苗が中国や韓国に流出、中国では香印翡翠などと命名され生産されています。
こうした動きに歯止めをかけるためとして、今年、農水省が国会に提出したのが種苗法の改正案。品種登録をすれば開発者に育成者権が与えられ権利保護や不正流出の歯止めにもなるという法律。しかし、この改正に一部の農家から自家増殖を制限するという内容に懸念の声が上がりました。自家増殖とは、農家が自分が収穫した作物から種をとりまたその種をまいて収穫を繰り返すという一般的な農業の形。従来、日本では新たに生まれた種や苗は公共のものと考えられ原則、自由に自家増殖することができました。ところが、ここ数年で事情が変わったといいます。
東京大学(農業経済学)鈴木教授「公共の種事業が廃止されその種を民間に譲渡するという法律もできた。そして「種苗法の改正」は種を持った人の権利を強化しようということ。公共の種をやめ企業のものにして(農家は)その種を買わないと生産できない。それが’’自家増殖に制限をかける形になり農家は心配になってきている」と説明しました。
世界の種苗市場は大手多国籍企業4社でシェア6割を握る寡占状態で、その影響もあり農業が衰退してしまった国もあります。
東京大学(農業経済学)鈴木教授「まさに種の安全保障。種を制するものは世界を制する、そういう事態が広がってきている。各国の農家が築き上げ守り続けてきた種を自国できちんと確保していけるように考えていくことが非常に重要」と述べました。
6月の国会で継続審議となった種苗法改正案。日本の農業はどこに向かっていくのでしょう。
【コメンテーター発言内容】
関口氏(要約):自分で作った作物から種取って、また次に作る、そういうのが当たり前だと思ってたら違ってきているということかな?ややこしい話だな。だけど、確かに自給率というのは日本は低いわけだから農業についてもっと関心持っていかないといけませんかね。
寺島氏(要約):ブランドというのはつまり技術力、技術をしっかり持ちこたえるためにはファンダメンタルズ、ベースのところを持ちこたえなきゃいけない。 農耕放棄地を42万ヘクタールにも増やし、37%まで自給率落とした。農家がしっかりと生きていけるような基盤というのを守っていかないと。本当に戦略的構想力が問われてきている、工業製品のブランド力もそう。日本のブランドだった製造業企業のブランドがどんどん後ろに下がってきているなという気がします。
大宅氏(要約):食べ物だけじゃなくて水源地だとかスキー場だとか、どんどん外国の人が買ってしまっているという状況がありますよね。知的所有権に対して日本はちょっと緩すぎる。
グローバリズムで日本の高いお米でなくても、オーストラリアで作れるようになったから輸入すればいいじゃないと、私も一時はそうかなと思ったが、中国では洪水で農地が流され食料不足、世界的に食料不足という状況になりつつある。自給率37%の日本はどうやって生き残るかというのは知的所有権みたいなものも絡んでくるんじゃないかなと私は思っています。
安田氏(全文):冒頭で豚・牛の盗難について出てきたんですが、あれは非常に深刻な被害だと思うので法的に一刻も早く裁かれるべきことだと思うんですがただ断定的に語れるということは非常に限られているのであの件に関しては捜査の行方を慎重に見ていきたいと思うんです。そのうえで種苗法なんですけれども、例えば育成者の方々の意図しない流出をどう直接的に防いでいくか、直接的な法改正の議論というのは非常に重要だと思うんですね。ただ、小規模農家さんも含めて、自家増殖を許諾制にしていきましょうということがこの目的に対してどこまで有効なのかということ、何か論点が混ざり合ってしまっている所もあると思うので束ね議論ではなくて切り分けていくことも一つだと思います。それからこの件に関しては非常に難しいのが市民間で議論すると、どうしても他国との嫌悪感情というのが混ざりがちだと思うんですね。あの国に流出しただったり、こんな国が自分たちの作物を盗んでいるということで、そういった他国への感情と結びつきがちだと思うので、それは冷静に切り離していきましょう、そのうえでファクトを積み重ねて対策を続けていきましょうということが大切だと思います。
萩上氏(要約):種苗法というのは、種を作った方の権利を守ることが大事で意図せぬ流出を防ぐことにもつながる。この種は公開すると決められるとか、ある一定の期間が過ぎたものについては自家増殖が引き続きできる、といった仕組みになっている。どのような仕方が農家の方の再生産にとってよりよいのかという議論はもう一度したほうがいい。
食料自給率という数字というのは結構曖昧としたもので、輸入が止まると食料自給率がむしろ高まる数字です。いざとなったときの食の安全保障は重要だが、こういった曖昧な概念に頼るのではなくて実態にそくしたような議論をベースから作ることが大事だと思います。
松原氏(全文):今VTRで種苗法って出てきたんですけど、私、2年前に種子法を廃止した、これを取材したんですね。これは米の種に外国の企業の参入を許す、認めるということなんですね。 どういうことかというと、これによってTPPに日本が入ったことによって、外国の障壁を減らさないといけないということで農家としてへ米の種まで買わなきゃいけないということになった。ただ、ほとんど議論されないまま、12時間の国会の審議で決まったんですね。だからわれわれ、例えば中南米の国では種が企業に独占されているというので大規模デモが起きたり、実は日本も野菜の種はすでに9割が外国産なんですね。私たち今回コロナ禍でマスクがほとんど中国じゃないかというのを思い知りましたよね。だからもう一度我々、本当諸根をグローバリズムの中においていいのかちゃんと考えた方がいいと思います。
以上が放送内容となります。
では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の点です。
1、松原氏の発言に政治的に公平でない恐れのある内容が含まれている
これについて解説します。
1、松原氏の発言に政治的に公平でない恐れのある内容が含まれている
松原氏は今回の報道で、以下のように述べています。
松原氏(全文):今VTRで種苗法って出てきたんですけど、私、2年前に種子法を廃止した、これを取材したんですね。これは米の種に外国の企業の参入を許す、認めるということなんですね。 どういうことかというと、これによってTPPに日本が入ったことによって、外国の障壁を減らさないといけないということで農家として米の種まで買わなきゃいけないということになった。なった。ただ、ほとんど議論されないまま、12時間の国会の審議で決まったんですね。だからわれわれ、例えば中南米の国では種が企業に独占されているというので大規模デモが起きたり、実は日本も野菜の種はすでに9割が外国産なんですね。私たち今回コロナ禍でマスクがほとんど中国じゃないかというのを思い知りましたよね。だからもう一度我々、本当諸根をグローバリズムの中においていいのかちゃんと考えた方がいいと思います。
要旨をまとめると、
・種子法廃止はTPPに日本が参加し、外国の障壁を減らすために米の種に外国企業の参入を認めるということになっている。
・これによって農家として米の種まで買わなきゃいけないことになった。
・中南米の国では種が企業に独占されていることで大規模デモが起きたりしている。
・実は日本も野菜の種はすでに9割が外国産になっている。
・私たち今回コロナ禍でマスクがほとんど中国からきているということを思い知った。
・我々はもう一度、本当に諸根をグローバリズムの中においていいのか考えるべきだと思う。
しかしながら、
・松原氏は今回の発言の中で「種子法廃止は日本がTPPに参加し、外国の障壁を減らすためのものである」という主張をしているが、種子法廃止は、民間企業の種子生産への参入を促し、国際競争力を高めることを目的としているといったような背景も存在する。
にもかかわらずそのような背景に言及せず、自らの主張のみを行う同氏の今回の発言は、政治的に公平でない恐れがある。
・また、松原氏は今回の言説は「種子法の廃止によって外国企業は日本の米種子市場への参入が可能となり、すでに国内の野菜種子の9割は外国産になっている現状を勘案するに、米の種についても外国企業に独占される恐れがある」という危機感をあおるものである。
・しかしながら、日本の野菜種子の9割は外国産であるとはいえ、その背景には
「野菜の種子は、我が国の種苗会社が開発した優良な親品種の雄株と雌株を交配することでより優良な品種が生産されるが、この交配の多くが海外で行われている」(農林水産省食料産業局知的財産課 「種苗をめぐる情勢」)
という事情があり、世界の野菜種苗市場のうち17%を日本企業が占めているという状況を考慮すると、外国企業による日本の野菜種子独占は起きていないと考えられる。
そのため、種子法が廃止され、外国企業による米の種子市場への参入がなされても、米の種子が外国企業に独占されるということは考えづらく、同氏の今回の発言は、別個の事実を羅列することでいたずらに危機感をあおるものであり、事実に反する恐れがある。
以上のことから、今回の報道での松原氏の発言は政治的に公平でなく、事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
以上が報告の後編となります。後編では政治的に公平でなかったり、事実と異なる内容を放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。
① 自民党総裁選について報道された部分
については、前編の報告をご覧ください。
② 立憲・国民合流新党の代表選について報道された部分
については、中編の報告をご覧ください。
公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。