9月27日のサンデーモーニングのレポート前編、中韓と菅政権の関係について報道された部分です。
今回検証するのは以下の点です。
・さまざまな論点を取り上げた報道であったか
まずは放送内容を確認していきます。
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【VTR要約】
24日、韓国国防省はヨンピョン島周辺の海域で行方不明になっていた海洋水産省の男性職員が北朝鮮側に殺害されたと発表しました。男性は漁業指導船の船員で、みずから海に飛び込み北朝鮮海域で漂流していたところを射殺され、遺体を焼かれたといいます。翌日韓国大統領府は金正恩党委員長から「申し訳なく思う」との異例の謝罪を受け取ったことを明らかにしました。しかし、北朝鮮側は遺体を焼いたことなどについては否定しており両者の主張は食い違いを見せています。
菅総理は外交デビューとして24日、文在寅大統領と日韓での電話会談に臨みました。電話会談後「日韓両国はお互いにとって極めて重要な隣国であり、北朝鮮問題をはじめ日韓 日米韓の連携は重要であると思っている。」と述べました。
25日には中国の習近平国家主席と電話会談を行い、「二国間及び地域国際社会の諸課題について緊密に連携していこう。そういうことで一致をいたしました。」と述べました。電話会談では尖閣諸島を念頭に、中国の公船が東シナ海の日本領海の接続水域を頻繁に航行していたことなどについて懸念を伝えました。その中国軍は26日、多数の短距離弾道ミサイルを同時に発射する訓練映像を公開。アメリカとの関係を深める台湾をけん制する狙いがあるとみられます。
25日、国連総会で菅総理は「新型コロナウィルス感染症から命を守るために治療薬・ワクチン・診断の開発と途上国を含めた公平なアクセスの確保を全面的に支援していきます。」とビデオ演説を行いました。そして、人類が疫病に打ち勝った証しとして来年夏の東京オリンピックを開催する決意を示しました。さらに、北朝鮮による拉致問題を巡っては、条件をつけずにキム・ジョンウン党委員長と会う用意があると述べました。
スタジオにて橋谷アナの説明
オーストラリアのモリソン首相をはじめ各国の首脳と電話会談を行いました。連携の強化、そしてコロナ対策で協力することなどで一致してます。中国ともこの連携強化では一致しています。その一方で、欧米・オーストラリア・インドの首脳に対しては中国の海洋進出を念頭に置いた’’自由で開かれたインド太平洋の実現’’これに向けた協力を呼びかけまして、中国への警戒感をにじませました。韓国に対しては協力がはっきりと示されていません。
【コメンテーター発言内容】
姜尚中氏(全文):就任、発足なんで自動車でいうと仮免許みたいなものですね。まだ国会で所信表明演説もしてないわけですから、たぶん外務省がふりつけて、ある程度無難にやろうと。ただ、僕は安倍外交の負の遺産は何であるのかということを総括しないと、とりわけ価値観外交安倍さんの特異な歴史観外交だったと思うんです。その歴史観外交が日韓関係だったり日中関係、対北朝鮮。 たぶん菅さんはそういう特異な歴史観を持っていないので、僕は逆にある程度脱安倍化が進む可能性もあるし、逆にこのまま継承していくのかどうか、それが問われてくるんだと思うんですね。 国会でしっかりと菅ドクトリンと彼らが考えているものがあればそれをしっかりと押し出していくべきだし、歴史観外交というのは極めて原理主義的な外交で行き詰まっていたと、行き詰まったものをそのまま継承すればまた行き詰まるしそれはどうするのかというのは菅さんにとってもある種ジレンマでしょうね。
目加田氏(全文):菅さんは就任されたときに基本的に安倍政権をそのままある程度継続していくという趣旨のことをおっしゃったじゃないですか、外交もそういう意味では安倍政権と同じような優先順位などで展開していくのかなと思うんですが、やはり安倍外交の負の遺産はどこにあったのか検証がなければ、成功体験であれば、それを継続していくことはあると思うんですけど、そうでないのであれば、逆にどういう方向転換をしていく必要があるのか、まだそういうことについて、きちんと菅さんのお言葉で説明されていないので、基本的には11月のアメリカの大統領選挙の結果待ちの側面があると思うんですけど、でもどこに優先順位をつけていくのか。先ほどの国連演説でも菅さんは安全保障とか核軍縮のこととかもおっしゃっているんですよね。ですからもう少し幅広く、従来の安倍政権とは違う外交でどういうことに取り組んでいくのかということをきちんと説明してほしいなと思っています。
藪中三十二士(全文):地道なスタートだと思うんですね。いずれにせよ、今はまだ就任した挨拶という程度ですから、あまり肩ひじ張ってやる必要はないと思うんですが、まさに菅さんの人柄というか、政治の姿勢として実務型というのはよく言われますよね。 そういう特徴を生かしていったらいいと思うんです。具体的には、もちろんアメリカとの基軸というんですか日本外国の機軸としてのアメリカとの関係は大事ですが、同時に実務者としては近隣諸国ともやはり大事な関係だと、そういうバランスをとっていけばいいので、日本の置かれた立場はそう悪くないと思うんですね。 アメリカからも中国からも、わりと日本に言ってくれる中できっちりと実務的な対応、その中で1つ韓国との関係なんですけれども、2 まさに実務型ということでいえば、輸出管理の問題がありますね。あれをさっと議論をしていこうと、もっと早く進めていこうと、それできちっと韓国が輸出管理をした、それじゃ、元へ戻しますとか、そういう実務的な取り組みというのをぜひしていただきたいと思います。
青木氏(全文):韓国のところに矢印がないのが、やはり気になるんですよね。中国の覇権主義とどう対立するかもそうですし、米中がこれからたぶん何十年のスパンで対立していくだろうというのもそうですし、拉致問題も含めた北朝鮮とどう対峙するのか含めたときに韓国との関係というのは立て直す必要があるんですよね。あえていえば姜さんが歴史観外交とおっしゃいましたけど、僕に言わせれば妙な歴史観を振り回して過去の問題でいまだに韓国との関係がおかしくなっちゃっている、もちろん韓国にも問題はあるんだけれども、妙な歴史観を振り回して過去に拘泥するような外交じゃなくて社会体制、政治体制、同じうする、ある種唯一の隣国なので、韓国との関係を立て直してアメリカ、中国、北朝鮮と対峙するというような体制をまさにそれは実利だと思うんですけど、そういう体制を作り直していただきたいなと思います。
【検証部分】
この報道では、菅総理の外交方針に大きな注目が当てられています。中でも、安倍政権の負の遺産を受け継ぐのか、それとも新しい方針を採るのかという点が議論されています。
コメンテーターが繰り返し言及していた「負の遺産」が一体何を指しているのか、番組中では明確に示されていませんでしたが、おおよそアジアの国々との関係、なかでも日韓関係の悪化のことを指していると考えられます。
たしかに現在の日韓関係は戦後最悪の状況ともいわれています。しかし、その責任を安倍政権に帰することは妥当なのでしょうか。現在の日韓関係に影響を与えている事柄として、大きく慰安婦問題、徴用工問題、輸出管理の問題が挙げられます。それぞれの問題について、なぜ、どのような経緯をたどって現在の対立状態に行き着いたのかを確認します。
慰安婦問題の始まりは第二次世界大戦にさかのぼりますが、2015年、安倍政権と韓国の朴政権との間で、「最終的かつ不可逆的な解決」である日韓合意を締結しました。このとき、総理自ら反省とお詫びを表明し、元慰安婦を支援する財団も設立されました。この合意によって日韓の慰安婦問題は解決され、以降は争いの種とはならないはずでした。しかし、この合意は2017年に文政権によって覆されます。そして現在は、解決に至ったはずの問題を文政権が掘り返し、日本に謝罪と賠償を求めている状況です。
次に、徴用工問題について検討します。こちらも問題の始まりは徴用が行われた第二次世界大戦にさかのぼりますが、戦後の1965年に日韓請求権協定が締結されました。この協定では、日本側が徴用を行ったことへの賠償などを約束し、それによって徴用工問題を「完全かつ最終的に解決」することとなりました。しかしこの請求権協定も、慰安婦合意と同様に文政権によって、2018年に反故にされてしまいました。そして追加の賠償を請求し、それに応じない企業の資産を差し押さえています。
最後に、輸出管理の問題について検討します。輸出管理というのは、日本が輸出する物資が大量破壊兵器などに転用されないことを確認することによって物資の輸出が可能になる制度です。つまり、日本が韓国に輸出する物資の一部が、大量破壊兵器などに転用される恐れがあれば輸出を止める、または個別許可制にすることができます。実際に韓国の法整備の不備は度々指摘をされていた点であり、今回は法整備やその運用に関して、日本にとって信頼に足る状況にないと判断されたのです。そしてこの判断は、日本が輸出者の責任として単独で行うものであり、韓国との交渉といった外交で解決する問題ではありません。
このような経緯を踏まえると、日韓関係の悪化は安倍政権の外交の失敗によるものだとは必ずしもいえません。しかし、今回の報道ではこのような点に言及されることはありませんでした。
このような放送は次の放送法に抵触する恐れがあります。
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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。