2020年10月26日 報道ステーション

2020年10月26日 報道ステーション

10月26日の報道ステーションのレポートです。
今回検証するのは以下の点です。

・事実と異なる発言があった可能性がある
・様々な論点を取り上げた放送であった可能性がある

まずは放送内容を見ていきます。
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【放送内容】

小木逸平アナ(以下小木アナ)発効が決まった核兵器禁止条約に参加しないとする日本政府。被爆者たちは・・・

徳永有美アナ(以下徳永アナ):核兵器禁止条約の発効が決まったことについてこちら75年前の広島。長崎で被爆された方々が今日、会見を行いました。改めて条約には参加しないとする日本政府に対して被爆者の皆さんからは真っ先に批准すべき。なぜ、背を向けるのかと批判の声が上がっています。

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【VTR】

広島で被爆した児玉三智子さん(82):(批准国が50か国になったよ、と情報が来た時に、75年前に私の腕の中で亡くなったいとこのお姉ちゃんの姿が浮かんできました。

ナレーター:50の国や地域が批准したことで来年1月に発効することが決まった核兵器禁止条約。日本政府は、改めて参加しないとしました。

加藤勝信官房長官:核兵器禁止条約は我が国とは異なるものであることから、署名は行わない。抑止力の強化、維持を含めて現在の安全保障上の脅威に適切に対処していく必要がある。地道に現実的に核軍縮を前進させていくことがまさに現実的な対応策というふうに思う。

広島で胎内被爆した濱住治郎さん(74):現実的とおっしゃいましたけど、相手が持ったからと、私も持ちますよ。核を使ってもいいですよ、っていうことですよね。それで許せるのかっていう。それが被爆者のリアルティーだと思う。現実的な被害を体験した私たちの思い。

広島で被爆した木戸季市さん(80):日本政府の核政策を変えさせなければならない。禁止条約ができた今。そのチャンスではないか。

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【スタジオ解説】
徳永アナ:太田さんは核の問題の取材をずっと続けられていますよね。

太田昌克共同通信編集委員(以下太田氏):先ほどVTRに出ておられた児玉三智子さん。たまたま今年8月にお話をゆっくりお聞きする機会があったんですね。ご自身が体験された恋愛や就職での差別ですね。こういったことをご証言くださいまして児玉さんこうおっしゃっていたんですね。核兵器がなくなるまで私にとって戦争は終わらない。こうした児玉さんらはじめ被爆者の皆さんの思いが、私、核兵器禁止条約に結実している、込められていると思うんです。そういった意味でこの条約はまさに日本発の条約といっていいと思うんです。

徳永アナ:そんな中、日本政府はこの条約には参加しないということを表明しているわけですね。

太田氏:私はやっぱり菅総理にはご自身の言葉でまず被爆者の皆様方の努力や苦労を、心の底からまずねぎらってほしいと思います。そしてこの条約の理念に対しては明確な支持を表明していただきたい。核の傘とか日米同盟というのがあってなかなか署名はできないということなんですけど、単に拒否し続けるだけでなく核兵器に依存しない安全保障政策、安全保障体制をどう作っていくか、これも政策研究を始めてほしいと思います。この条約は、発効から1年以内に締約国会議という会合が開かれるんですけれども条約に署名・批准していなくともオブザーバー参加が可能なんです。私は、ぜひ日本の政府はこの会議にオブザーバーでもいいから代表団をしっかり送って議論に参加してもらいたいと思います。

小木アナ:今の段階で現実的には核軍縮といっても何か、言葉だけが浮いてしまっている。そんな感じもしますね。

太田氏:実際、米露の核軍縮、何も進んでいませんね。

小木アナ:そうですね。

【検証部分】
今回は、2021年1月に発効することとなった核兵器禁止条約に関する報道を取り上げます。

まず1点目の検証ポイントとして太田氏による以下の発言を取り上げます。

太田氏:児玉さんらはじめ被爆者の皆さんの思いが、私、核兵器禁止条約に結実している、込められていると思うんです。そういった意味でこの条約はまさに日本発の条約といっていいと思うんです。

太田氏は「核兵器禁止条約は被爆者の思いが込められたものであるため、日本発の条約といって良いと思う」、と述べていますが、それは事実ではありません。

この条約は2017年7月に国連で採択されたことがその出発点です。
日本が積極的に持ちかけて発効にこぎつけたというわけではなく、事実と異なります。またこの条約の発効と日本が唯一の被爆国であることは関連しているという訳ではありません。
こうした事実と異なる発言は視聴者に誤った印象を与えかねないだけでなく、以下の放送法に抵触する恐れがあります。

(引用開始)
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放送法4条
(3)報道は事実をまげないですること
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(引用終了)

続いての検証点ですが、核軍縮の議論であるにもかかわらず、中国に関わる論点が出てきていません。
中国は日本や台湾など、アジアの諸地域に軍事的挑発を繰り返しているのみならず、軍拡を続けています。
核兵器についても拡充を進めておりアメリカ国防総省は、10年後に中国は核弾頭を今の倍以上に増やすというレポートを出しています。

(引用開始)
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 9月1日、米国防総省(ペンタゴン)が中国の軍事力についてのレポートを発表した。それによると、中国海軍は、130隻以上の水上戦闘艦を含む約350隻の艦艇を保有。これは米海軍の約293隻を上回っている。さらに、現在200個程度の核弾頭保有数は、10年後には倍以上に増えるというのだ。

《デイリー新潮 中国、200個保有の核弾頭は10年後倍以上に…… 日本はこの脅威にどう対応すべきか
https://www.dailyshincho.jp/article/2020/09090601/?all=1
》より
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(引用終了)

核兵器を有していない日本が批准するかどうかことばかりが取り上げられ、実際に核兵器を有しており、軍拡を尚も進めている中国の論点が出てこないことは奇妙に思われます。
加藤官房長官も「脅威に対応していく」と発言しているのですから、実際の脅威に目を向けた報道が必要なのではないでしょうか。

このような放送は次の放送法に抵触する恐れがあります。

(引用開始)
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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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(引用終了)

視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。

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