2020年11月8日 サンデーモーニング(前編)

2020年11月8日 サンデーモーニング(前編)

11月8日のサンデーモーニングのレポート前編、アメリカ大統領選挙の結果について報道された部分です。

今回検証するのは以下の点です。

・政治的に公平な報道であったか
・事実をまげない報道であったか

まずは放送内容を確認していきます。
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【VTR】(要約)
 激戦区であったペンシルベニア州とネバダ州をバイデン氏が制し、ほぼ当選確実と報道されているアメリカ大統領選。予測開票率は99%、まだ集計されていない郵便投票の票は6万余りあるが、バイデン氏が3万4000票以上リードした時点でアメリカメディア各社はトランプ氏の逆転は不可能と判断した。
 当選を受け、バイデン氏は国民に対し感謝するとともに国家として団結するときだと呼びかけた。一方のトランプ氏は開票を巡り不正があったと主張し、法廷闘争に持ち込む可能性を示している。

【コメンテーターによる解説】(一部要約)
関口宏 氏:この裁判がこういう形になったことについて、皆さんに一言ずつ伺っていきましょう。秀征さんは?

福山大学客員教授 田中秀征 氏:ほっとしてます。アメリカ大統領は世界のリーダーなので常識の通じる人であってほしいと思っていますし、アメリカ大統領が非常識だと、ほかの国まで非常識なリーダーが出てきてしまう。だから、一つの転換点だと歓迎していますしトランプさんにも潔いという意味での常識を示してもらいたいです。(要約)

中央大学教授 目加田説子 氏:12年前の選挙でオバマさんと戦ったジョー・マケインさんは、敗北宣言で支持者に対し、どんな違いがあろうと私たちは皆アメリカ人なので、オバマさんにぜひ協力する努力をしてほしい、とスピーチしました。今、みんながこの言葉に耳を傾けてほしいと思いますし、トランプさんはこの結果を尊重し、バイデンさんの政権移行に協力してほしいと思っています。(要約)

立命館大学客員教授 薮中三十二 氏(以下薮中氏) :今回のは結局、トランプさんの4年間、国民の審判だったと思うんですね。今、みんな感じてるところだと思いますけど、トランプさん、大統領が先頭に立って国民を分断するとか、対立をあおると、そういう4年間だったわけですけれども、それに対して国民がもう疲れたということなんじゃないかと思うんですね。これからどうなるかですけれども、もうこれはゲーム・イズ・オーバーと勝負あった、バイデンさんの勝利が確定した。FOXニュースもトランプ系統ですけれども、もう大々的に、次はバイデン大統領になったと。

関口氏:FOXニュースも伝えましたか。

薮中氏:伝えました。それから2000年のときに法廷闘争したんですけど、あれはフロリダ州で537票という違いだったんです。だから再集計でどうなるか分からないと。今回の場合も数万票、各州で違いますからね、だからそういう意味ではもう無理だなと。最終的には(トランプ大統領に)誰がもう親分と、誰が首に鈴をつけるかどうかですね。それが、俺はまだ頑張るんだという感じでやるんだと思いますがみんなもうだめだというのは分かってきている、保守党も含めてね。

関口氏:抵抗すればするほど、トランプさんもそうだけど、共和党がどんどんイメージダウンしていくような。

薮中氏:共和党の中でも、もうやめようよというのが本当はある。ところが大統領にもうやめましょうと言う勇気が(ない)、(言えるとしたら)たぶん、イヴァンカさんとか家族だと思いますけどね。

ジャーナリスト 安田菜津紀 氏:バイデンさんが当選確実になることで、このままいけばカラマ・ハリスさんが女性初の副大統領になります。またアメリカ議会選挙でも、マイノリティ当事者の当選が過去最多になるということが伝えられています。一方、トランプさん的な排外主義も根強く残ると思いますが、今回それを押し返すエネルギーも残されていることが分かったので、そのエネルギーを理不尽にそがないよう進められるかが重要点の1つかなと思います。(要約)

ジャーナリスト 青木理 氏:皆さんのおっしゃる通りだと思いつつ、トランプさんがこれだけ善戦したことを見ると、それだけ中間層が崩壊し格差が広がったことで苦しんでいる人もいるということを考えなくちゃいけないと思います。一方で気候変動の問題に対する悲鳴もある。だからバイデンさんが勝っても矛盾は何も解決されてなくて、トランプさんが生み出した力はアメリカの中で相変わらずくすぶっているし、ヨーロッパも日本もそう。資本主義も限界にきていて、また間欠的にトランプ的なものが出てくるだろうし、それと向き合うわれわれの仕事はまだ始まったばかり、始まってもいないのかもしれないな、と今回の選挙で思いました。(要約)

【検証部分】
今回取り上げたのは、アメリカ大統領選挙の投開票に関しての報道です。投票日から数日が経ち、バイデン氏の当選が確実となったと報道しています。しかしこの報道は、政治的に公平ではなく、事実と異なる発言が見られます。順に確認します。

まず、政治的に公平ではないという点についてです。5人のコメンテーターのなかに、選挙に不正の疑いがあり再集計や法廷闘争が必要だというトランプ氏の主張を取り上げた人はいませんでした。多くのコメンテーターが、諦めが悪いと批判をしています。さらに、田中氏はトランプ氏を非常識としてトランプ氏の敗北にほっとしていると発言しています。片方の候補に肩入れをするにとどまらず、田中氏からのこの発言は、明らかに公平性を欠いているといえます。

次に、事実と異なる発言について確認します。該当するのは藪中氏の発言、「これからどうなるかですけれども、もうこれはゲーム・イズ・オーバーと勝負あった、バイデンさんの勝利が確定した。FOXニュースもトランプ系統ですけれども、もう大々的に、次はバイデン大統領になったと。」です。
藪中氏の発言では、勝負は完全に決着したとされています。さらには直後で関口氏が「FOXニュースも伝えましたか。」、「じゃあもう」という、あたかもそれが確実であるかのような発言をしています。

しかし実際には、今回の選挙では不正が行われた疑いがあります。報道の時点で不正が行われた証拠は挙がっていませんが、複数の州で不正が疑われる事例がありました。この疑いを検証するのはメディアではなく司法です。にもかかわらずメディアが早まって不正はないというような報道をし、諦めが悪いなどと批判するのは適切ではありません。

さらに藪中氏は、2000年の法廷闘争の際の票数差を引き合いに出し、結果がひっくり返る可能性はないとしています。しかし、この発言にも問題があります。
まず、数万票の差があればひっくり返る可能性はないとしている点です。たしかに2000年の法廷闘争よりも差は開いていますが、アメリカの州ごとの人口からするとそれは数%やそれ未満であり、不正の判明によって覆せないと断言することはできません。
また、藪中氏は結果が覆る見込みがないという理由で再集計や法廷闘争は必要ないとしています。しかし、結果が変わらなければ不正が放置されてもよいのでしょうか。選挙は民主主義の根幹であり、公正に行われて初めて意味があります。そのような選挙で不正があることは、結果の如何に関わらず認められません。しかし藪中氏は、勝敗をひっくり返すことができないから検証の必要はないという主張をしています。

今回のアメリカ大統領選挙に関する報道は、全体を通して政治的な公正性に欠けており、また藪中氏の発言からは事実とは異なる発言がありました。

このような放送は次の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(2)政治的に公平であること
(3)報道は事実をまげないですること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。

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