11月8日のサンデーモーニングのレポート後編、大阪都構想の住民投票による否決について報道された部分です。
今回検証するのは以下の点です。
・さまざまな論点を取り上げた報道であったか
まずは放送内容を確認していきます。
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【VTR】(要約)
11月1日日曜日、大阪市を廃止して４つの特別区に再編する、大阪都構想への賛否を問う住民投票が投開票された。結果は、およそ１万７０００票の僅差で反対が賛成を上回り５年前に続いて再び否決。
都構想を推進してきた大阪維新の会の代表、松井大阪市長は敗因を己の力不足だとして、任期終了の２年半後に政界を引退する意向を表明した。一方、今回、大阪都構想に賛成の立場を取っていた公明党の山口代表も、広く浸透を図りきれず申し訳ないと謝罪した。
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【コメンテーターによる解説】
福山大学客員教授 田中秀征 氏：この問題、難しいんですよね。どこがどう変わるのかということについて一般の人たち、僕から見ても難しい問題で、それをコロナの大変な時期に投票で決めるという話なのかとちゅうちょしますよね。それは非常に大きな影響を与えたと思いますね。投票結果にもね。
関口宏 氏：薮中さん、大阪の方ですよね。
立命館大学客員教授 薮中三十二 氏：私大阪なんですけれども大阪府下なんです。今度のは、よく分からないというのは市を廃止するということで、大阪都構想というよりは大阪市をまず廃止しましょうと。どう変わるのか、何をするのか、もうひとつよく分からなかったですよね。もともと、確かに大阪府と大阪市がダブってるのでまずいよねと、行政が余りうまくいってないよねと。だいぶよくなったんですね、これでそれ以上にどうするのというのがよく分からないなという感じでみんな考えてたと思いますね。
【検証部分】
今回取り上げたのは、大阪都構想が住民投票によって否決されたという報道です。この報道で問題となるのは、コメンテーターの発言が一面的で必要な論点を挙げていない点です。
大阪都構想については、田中氏、藪中氏からコメントがありました。両氏ともに、大阪都構想は難しいから分からないとしています。藪中氏は、大阪市の廃止について、またかつての二重行政の解消について言及していますが、結局は「よく分からない」と結論づけてしまっています。
たしかに大阪都構想は複雑で、国民にとって分かりづらい面はあると考えられます。しかし、今回の報道は難しいの一点張りで、最も言及するべき大阪都構想の是非については取り上げられませんでした。政治におけるメディアの役割は、政治的な事実を報道、解説することにあります。ですので取り上げられるべき論点は、大阪都構想を推進する側と反対する側の主張であるはずです。それがたとえ分かりにくかったとしても、事実を曲げずにそれを分かりやすく伝えるのがメディアの役割です。それをせずに、難しいの一言で済ませてしまうのはあまりに視点の狭い報道と言わざるを得ません。
実際に都構想を推進する人々は、現在のさまざまな施設の建設やインフラ整備などにおける大阪市と大阪府の二重行政の無駄を指摘し、都構想の実現により効率的にそれらを行うことができるようになるとしています。また、財源自体を削ることはないので大阪市、大阪府が提供していたこれまでの住民サービスは維持される、もしくは向上するとの主張をしています。一方で都構想に反対する人々は、既に二重行政は解消されている、もしくは都構想以外の方法で解消できるとし、さらには都構想にかかる費用は膨大であるとの主張をしています。それに対して都構想を推進する人々からは、費用はそれほどかからず、むしろ長期的には無駄の削減により財政支出を抑えられると主張しています。
今述べたのは、都構想をめぐる議論の一部ですが、本来コメンテーターが議論するべき論点はこのような点ではないでしょうか。都構想の実態を分析し、報道するのがメディアの役割にも関わらず、それらについての言及はほとんどありませんでした。
その代わりに、「難しい」「よく分からない」という評価を下して済ませています。これでは視聴者は、推進派と反対派がそれぞれどのような主張をしているのかを理解できませんし、視聴者がどちらの主張を支持するかを判断することも不可能です。このような報道は、論点が極端に狭い報道であるといわざるを得ません。
このような放送は次の放送法に抵触する恐れがあります。
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放送法４条
（４）意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。