11月9日の報道ステーションのレポートです。
今回検証するのは以下の点です。
・事実に基づいた報道であったか
・政治的に公平な報道であったか
まずは放送内容を見ていきます。
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【放送内容】
徳永有美アナウンサー(以下徳永アナ):続いてはアメリカ大統領選挙です。
勝利を確実にした民主党のバイデン氏は演説から一夜明けて事故で亡くなった最初の妻や子供たちが眠る墓地を訪れました。一方のトランプ氏ですが2日連続でこのようにゴルフに興じています。敗北宣言をする予定はあるのでしょうか?
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【VTR】
ナレーター:ホワイトハウス前の様子です。勝利宣言から一夜明けてもバイデン支持者は歓喜に沸いていました。
バイデン支持者1:この4年間は大変でしたが、一歩前に進むことができました。
バイデン支持者2:必要なのは誠実な気持ちで人助けする人物です。
ナレーター:ホワイトハウスの現在の主はというと車に乗り込み外出です。沿道からはこんな声が…。
バイデン支持者:敗北者!敗北者!(Loser!! Loser!!)
ナレーター:向かったのはゴルフ場でした。2日連続です。前の日のプレー中にバイデン氏勝利確実の一報が入ってきましたがどういう心境なのでしょうか。その帰り、今度は支持者たちが待っていました。大声援に気を良くしたようで支持者にはこの表情。ただ、ここから逆転のシナリオが見通せているとは言い難い状況です。すでに獲得した選挙人の数はバイデン氏279に対しトランプ氏は214。仮に、残る州が現在の情勢のまま集計を終えると、306対232と大きな差がつくことになります。問題はトランプ氏が敗北を受け入れるかどうかです。
トランプ大統領のツイッター:いつから時代遅れのメディアが次の大統領を決めるようになったんだ。
ナレーター:郵便投票で不正があったと訴え週明けも訴訟を起こす方針のトランプ陣営。
ただ、今後を巡る情報は錯綜しています。
ABCニュース:名誉ある撤退を説得する方法につちえメラニア夫人らが議論している。
ナレーター:トランプ応援団とも呼ばれる保守系のFOXニュースでも…。
FOXニュース:法廷闘争しても選挙結果が変わらないなら、トランプ大統領は敗北を認める。
ナレーター:一方で、息子たちは法廷闘争に突き進む考えのようです。
ドナルドジュニア氏のツイッター:不正選挙が調査されるまでアメリカは選挙を信用しない。
ナレーター:娘イバンカ氏の夫クシュナー上級顧問もこんな提案をしているそうです。
CNN:トランプ大統領は投票の再集計を求めるため、全米で周回を開くようクシュナー氏らに勧められている。
ナレーター:共和党内の意見もさまざまです。トランプ氏と親しいグラム上院議員はトランプ陣営と同様証拠を示さないまま不正があったと主張しています。
グラム上院議員:トランプ陣営はペンシルベニア州の郵便投票を全部調べた。おそらく100人以上は死者の名義で15人は死者と確認した。
ナレーター:一方で、こんな声も…。
ロムニー上院議員:1万票以下の僅差の州もあるからトランプ氏には再集計を求める権利がある。再集計で結果が覆るかもしれない。ただ結果が変わらないなら受け入れるだろう。「不正選挙」や「選挙が奪われた」この言葉は独裁者が使うものだ。
ナレーター:トランプ氏の岩盤支持層も決して最後まで負けを認めるべきではないと言っているわけではありません。
トランプ支持者:訴訟で選挙が「合法だった」となれば受け止めるしかない。
ナレーター:一方の、民主党バイデン氏。勝利宣言から一夜明け訪れたのは地元・デラウェア州の自宅近くにある墓地。
新谷時子レポーター:バイデン氏、現在教会での礼拝を終えて墓地を訪れています。事故で亡くなった最初の妻と娘そして、長男の墓参りをしているとみられます。
ナレーター:48年前に事故で亡くなった最初の妻と当時1歳の娘。そして、5年前に脳腫瘍で亡くなった長男が眠る場所です。家族への報告を終え早速、政権移行に向けて始動します。新型コロナに経済、温暖化対策などトランプ大統領の政策を大きく転換させるとみられるバイデン氏。9日に会見を開きコロナの対策チームについて発表する予定です。週明けの今日、マーケットはバイデン氏の勝利に即座に反応しました。
井澤健太朗レポーター:午後の取引が始まりましたが日経平均株価どんどん値を上げています。現在520円以上値を上げています。
投資家:びっくりしましたね。こんなに上がるなんて。結構、みなさんホッとしているのかな。
ナレーター:日経平均株価の上げ幅は一時600円を超えました。
岩井コスモ証券:アメリカで週末にバイデン勝利宣言で今日、日本も600円高してる。
ナレーター:終値は1991年11月5日以来29年ぶりの高値となっています。
岩井コスモ証券投資情報センター林卓郎センター長:日本だけでなくアジアの株式市場、売国株も先高期待が高まっていまして、世界同時株高という様相を呈しています。バイデン氏の勝利と上院での共和党の郵政確保で米国の政策リスクがかなり軽減されたという捉え方をしています。
ナレーター:日本との関係はどうなっていくのでしょうか。対中国、対北朝鮮でアメリカとの連携は欠かせません。
加藤勝信官房長官:日本政府としてはバイデン候補が大統領選に勝利したと認識をしている。具体的にどう意思疎通をとっていくのというのはまさにこれから構築していくことでありますが、緊密な意思疎通を図っていくことは非常に大事であります。
菅義偉総理大臣:バイデン氏と私の電話会談、また訪米については現時点ではまだ何も決まっていませんが、今後タイミングを見て調整していきたい。
外務省幹部:トランプ氏みたいな無茶はしないと思うが、中国に厳しい姿勢をとるのは変わらないだろう。オーストラリア、インド、ASEANなど周辺国との関係強化がより大事になる。
ナレーター:北朝鮮は今のところ何も反応していませんが中国はというと特に祝意を示すことはなく…。
中国外務省王文斌副報道局長:中国の態度表明は国際的慣例に従って行います。
ナレーター:バイデン氏が大統領になるとウイグル自治区など人権問題で厳しく対応するとされています。
中国外務省王文斌副報道局長:互いの内政に干渉しない原則のもと意見の違いをコントロールすべきだ。アメリカの新政権には中国政府に歩み寄ってほしいと願っています。
ナレーター:トランプ政権時代中東政策は大きく変わりました。天敵であるイラン革命防衛隊の司令官はこのような画像とともにメッセージを出しています。
イラン革命防衛隊トランプからバイデンに人形のマスクが変わっただけだ。
ナレーター:また大使館のエルサレム移転などで煮え湯を飲まされてきたパレスチナからはアッバス議長がバイデン氏が選挙に勝利して次期アメリカ大統領となることをお祝い申し上げる。パレスチナ市民の自由、独立、正義、名誉を実現していけることを楽しみにしていると声明を出しています。一方で、トランプ政権と蜜月時代を送ったイスラエルのネタニヤフ首相からは…。
イスラエルネタニヤフ首相:バイデン氏とは40年近くにわたって個人的で親密な関係にあり、イスラエルの親友だと認識している。トランプ大統領はエルサレムとゴラン高原の主権認定、イランへの強い姿勢、歴史的な平和合意など、両国の関係はかつてない高みへの引き上げてくれた。ありがとう、トランプ大統領。
ナレーター:世界中がバイデン政権に向け動き出す中不確定要素となっているトランプ氏の敗北宣言。大統領選で負けた側は勝者に祝意を伝え敗北宣言を行うのが通常です。現職の大統領としてクリントン氏に敗北したブッシュ氏。
ジョージ・H・W・ブッシュ大統領(1992年):民意は示された。我々は民主主義の制度を尊重する。総力を挙げてクリントン陣営と緊密に連携し、円滑な権力の以降を約束する。
ナレーター:オバマ前大統領に敗れたマケイン氏。党派を超える団結を訴えたスピーチは
名演説と呼ばれました。
マケイン候補(2008年):先ほどオバマ上院議員に連絡をして祝意を・・・(ブーイング)・・・お願いです。
ナレーター:オバマ氏へのブーイングを制止します。
マケイン候補(2008年):私を応援してくれた国民にもオバマ氏を祝福するだけでなく、次期大統領に善意をもって接し折り合いと妥協点を見出し、違いを乗り越え、緊迫した時代の中でも繁栄と安全を回復し、より良い国を次世代に残せるように呼びかけたい。
ナレーター:戦いが終われば勝者も敗者もない。建前といえば建前かもしれません。でも、124年前から続くアメリカの民主主義の慣習です。もしトランプ氏が敗北宣言をしなければそれが途切れることになります。
【スタジオ解説】
小木逸平アナウンサー(以下小木アナ):どんなに激戦でも敗北宣言が行われてきたわけなんですが、それが、いまだ行われない状況ですけれどもトランプ大統領やホワイトハウスに新たな動きがあるんでしょうか。ホワイトハウス前に布施記者がいます。布施さん、今の状況を伝えてください。
布施哲記者:私、ホワイトハウス前に来ています。こちらのフェンスはホワイトハウス前の公園を囲っているフェンスなんですが、ずらっとブラック・ライブズ・マター黒人差別に反対するビラが貼られています。そして、上にはユー・アー・ファイヤード、トランプさんはクビだというポスターもあります。そして、このフェンスの向こう側に見えるのがホワイトハウスになります。ホワイトハウスの手前赤いクレーンが動いているのが見えます。構造物を作っている様子が見えます。 ステージなのでしょうか。何かの建設が進んでいる様子が分かります。バイデン氏勝利確実が伝えられた直後はこちらの現場ものすごい数の人で埋め尽くされたんですが今は人はまばらでして閑散としています。ワシントンDC、いつもどおりの平日の朝を迎えています。
小木アナ:メッセージには包囲されているような状況にも見えますけれどもただ、そんな中でも敗北宣言は出さないというトランプ大統領ですが何か、奥の手のようなものはあるんでしょうか。
布施記者:複数の関係者によりますとトランプ大統領負けが確定すれば受け入れると。その場合、政権移譲にもちゃんと協力するんだということです。ただ、負けかどうかが確定するのはあくまで法廷闘争の場だという姿勢です。このトランプ大統領の強硬路線ですが、身内の共和党からも批判の声が出ています。証拠を示していないとかそもそも選挙結果が変わることはないじゃないかといった声ですね。しかし法廷闘争を仕切るジュリアーニ氏は至って大まじめです。ペンシルベニア州の投票所で共和党側の立会人が排除されたと。排除されていた時間の間に処理された80万票は無効票だと主張しています。つまり80万票の無効票でペンシルベニアでの選挙結果を覆そうというわけです。証拠がないという批判に対してもジュリアーニ氏は動画があるんだとペンシルベニア州だけで70人の証人がいると主張していて今後、最大で10件の提訴を予定しています。トランプ陣営、実は一昨日法廷闘争をやっても結果は変わらないとして娘婿のクシュナー氏にトランプ大統領に進言するよう求めたんですがクシュナー氏はそれは私の仕事ではないと断ったそうです。このように、トランプ大統領に鈴をつける人間が出てこない中でトランプ大統領のほうは選挙集会並みの規模の集会を開いて、徹底抗戦をアピールする計画を立てています。
小木アナ:まだ徹底抗戦ということですか。このあと、スタジオにはアメリカ政治とアメリカ社会に詳しい慶應義塾大学の渡辺靖教授に来ていただきました。よろしくお願いします。
トランプ大統領、何か勝算はあるんでしょうか。この後先生に詳しく話を伺って参ります。
徳永アナ:ここからは慶應義塾大学の渡辺靖教授にお話を伺っていきます。どうぞよろしくお願いします。
小木アナ:バイデン候補の勝利が確実となっている中それでも徹底抗戦というトランプ大統領が勝つ方策は何かあるのかということも含めましてじっくり先生にお話を伺ってまいりますが。まず、顧問弁護士を務めているのが元ニューヨーク市長で有名なジュリアーニ氏なんですが、ジュリアーニ顧問弁護士は最大10州で不正が行われたとしてそこで提訴を検討しているということです。すでにトランプ陣営それから共和党などが、それぞれの激戦州で訴訟を起こしていますが、一部、もうすでに退けられたものもあります。 特に激戦だったペンシルベニア州は1つだけじゃないんです。1つ目、開票停止を要求したものに関しては退けられましたけども、3日午後8時以降到着の郵便投票は無効であるという提訴内容だったりほかにも、いくつか提訴をしているということなんですが、これらの訴えなんですけれども先生、何か認められる可能性は証拠も含めてどうなんでしょうか。
慶應義塾大学渡辺靖教授(以下渡辺教授):結果を覆すのは難しいんじゃないかと思います。報道されている限りではトランプさん側の主張はかなり根拠が薄いものが多いように思います。ただ、とにかく提訴をどんどん行ってそのうち1つでも認められれば次のステップが見えてくるということなんでしょうね。そして、ほかの州もペンシルベニアのケースを参照して引き合いに出すような形で主張を強めてくると。
小木アナ:ほかのところでも同じことを起こすかもしれないと。
渡辺教授:そういう意味はあるのかなと思いますね。
小木アナ:そうするとどんどん引き延ばされていくなかなか決まらず確定しないということになってくるかもしれませんが、それが狙いともいわれていまして12月8日に各州の選挙人が結果が確定する期限なんですけど確定しなければ200年ぶりらしいですね。
2021年来年の1月6日に下院議員が1つの州で1人が代表になって投票して大統領を選出するというそういう一応決まりがあると。下院の議員数は今の情勢では、民主党のほうが勝っているんですけど、1州1人の代表ですのでカリフォルニア州でどれだけ民主党が勝っていてもそこだけで1票です。ですので、票としては共和党はまだ未定のところもありますが26票ある。そうなると先生ここまで持ち込めば勝てるという勝算があるのかもしれませんがそこまでいきますか?
渡辺教授:ポイントは共和党なりトランプさんの支持者がどこまでトランプさんを守りたいかにかかっていると思います。ここまで進むとなると訴訟の費用も莫大ですし、下手をすると共和党のイメージダウンにもつながると思うんですよね。なので、総じて可能性は低いのではないかなと思います。また、報道されている範囲でいうと、むしろ支持者がどんどん離れていっているような雰囲気も出てきていますので可能性としては1割程度なのではないかなという気もしてます。
小木アナ:でも、ギリギリ1割ぐらいはあるということですか。
徳永アナ:そして、渡辺先生、日本をはじめ世界の首脳がバイデン氏に対して次期大統領として祝辞を述べているということなんですが。それでも、トランプさんは訴訟の構えを崩さないということなんですか?
渡辺教授:彼の人生において負けという言葉はないのかもしれませんね。今回の選挙結果も負けたのではなくて盗まれたんだと。じゃあ誰が盗んだかというと民主党でありエスタブリッシュメントであるんだと。自分はそれに戦ってる存在なんだと。いってみれば反エスタブリッシュメントのヒーロー的存在になってこれからのアメリカ政治にも一定の影響力を保持し続けようとしているんだと思います。
徳永アナ:分断ともいえる反エスタブリッシュメントいわゆる反エリートというか、そこの人たちをくすぶり続けるといいますか、そこの支持を維持していきたい思惑があるんですか?
渡辺教授:自分は人々のために戦ったけど、今回引きずり降ろされたのはエリートのせいだという構図を作りたいと。
徳永アナ:バイデン氏ですがすでに政権チームを発足しているようなんですけどトランプ氏が主張を続けていくとバイデン氏も、なかなか身動きが取れないという状況になっていくんですか。
太田昌克共同通信編集委員:心配なのが新しい政権を来年1月20日からすぐ始動しなきゃいけないんですよね。従って本来選挙が終わったらすぐに引き継ぎ政権移行が始まらないといけない。特に日本にも関係してきます安全保障政策ですよ。北朝鮮の核ミサイルの開発状況が今どうか。テロの兆候はないのか。こういった最高度の国家機密を現政権が次の、きたるべき政権の幹部にきちんと情報提供して引き継ぎすることが大事なんですよね。
選挙前に話した民主党の関係者もこの点を心配してたんですね。トランプ政権が実は、こうして引き継ぎに非協力的な態度をとるんじゃないかという懸念されていた人がいたんですね。それが今、起こりかねない。思い出しますのが20年前のブッシュ対ゴアの36日間ですかね。法廷闘争があった。そのために政権移行が遅れてブッシュ政権の布陣を固めるのも随分時間がかかったんですね。そのあとに、9・11。同時多発テロが起きてしまった状況があったんですよね。あの時は、テロを調べた独立調査委員会が実はこんな勧告を出しています。今後は政権移行をより迅速に行う必要がある。特に去りゆく政権はアメリカの脅威に関する情報を一刻も早く提供すべきだ次の政権に。そういう勧告まで出しています。
徳永アナ:本当に空白は許されないということですね。
小木アナ:安全保障を考えると早く移行したほうがいいんでしょうが、それでもやっぱりトランプ大統領も現役の大統領としては一番多い得票数7100万票以上とっているということなんですね。渡辺先生今、だんだん味方も少なくなってきているという話もありましたがでも、これだけの人が投票したということになりますと、今回、1億5000万人ほどが投票したといわれるのでざっくり半々なわけです。この分断をどうやってバイデン候補が修復していくのか。この後聞きます。
徳永アナ:引き続き、渡辺教授にお話を伺っていきます。渡辺さん、この選挙戦でアメリカの分断は更に深まったように思いますが、バイデン氏はこれからその分断というものを修復・融和することはできるんでしょうか?
渡辺教授:トランプ大統領はひたすらフェイクだとか、敵だとかというメッセージを繰り返して分断をあおってきたところがあるんですね。そうしたメッセージがなくなるだけでもアメリカのムードは変わってくると思います。ただ、もう2年後には中間選挙があってそして、それが終わればまた次の大統領選へモードが切り替わっていきますので、やはり、大幅な修復はなかなか厳しいんじゃないかなというのが私の率直な印象ですね。
徳永アナ:相当難しいんだ、と思うんですけどバイデンさんは分断という高い壁みたいなものを取り払っていくために具体的にどんなことをしていけばいいですか。
渡辺教授:一般論でいえば景気が上向きになれば大体、政権に対する求心力は高まっていきますね。ただ、難しいのはバイデンさんからしてもトランプ支持者にあまり寄り添いすぎると今度は自分の支持者から反発を食ってしまうので、あまりイデオロギー対決のような構図にしないこともまた重要ですね。
徳永アナ:そうなると経済がすごく大事になってくると。そうなると半分のトランプさんに投票した人にとっては暮らしが良くなるんじゃないかという光が見えてくるのかもしれないという。
渡辺教授:おっしゃるとおりです。
小木アナ:構造的にもいろいろ変化が、白人層がだんだん、人口の50%を割ってきたりというのもあると思いますがそうなると将来的にも分断がなかなか修復する見込みがないということがあるんでしょうか?
渡辺教授:白人の中には今のアメリカにおいてはマイノリティーばかり優遇されて、まるで今の自分たちが白人である、そのこと自体が悪いことなんだという引け目を感じなきゃいけないということで居心地の悪さを感じている人もいて、ますます人口構成が多様化していく。
小木アナ:マイノリティーにどんどん自分たちがなっていくんじゃないかと。
渡辺教授:多様化していくに従ってその反発が新たな分断の温床になっていく可能性も、やっぱりあるんだろうと思います。
徳永アナ:あらゆる対立構造分断というのがあると思うんですがその辺りは難しいと思うんですが太田さんは今後、バイデンさんのどんなところに注目されていきますか?
太田昌克共同通信編集委員:私は昨日のバイデンさんの勝利演説を聞いていまして、やっぱりアメリカというのは民主的な国際秩序をけん引していく。そのためには我々が良き模範となって品格を示しながらこれを力にして、国際社会をリードするんだという非常に明確なメッセージを出してるんですね。しかし、一方今回、トランプさんが7100万票もとったということでこれはある意味、アメリカの内向き傾向を示していると思うんですよね。
したがって、バイデンさんが国際協調路線にのっとった外交を展開するにはまず国内政策。分断の現実を踏まえながら内政や経済できちんと、トランプ支持層に果実を示すことが必要じゃないかと考えますね。
【検証部分】
今回は大統領選挙に関する報道を取り上げます。
まず検証したいのは次の発言です。
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徳永アナ:渡辺さん、この選挙戦でアメリカの分断は更に深まったように思いますが、バイデン氏はこれからその分断というものを修復・融和することはできるんでしょうか?
渡辺教授:トランプ大統領はひたすらフェイクだとか、敵だとかというメッセージを繰り返して分断をあおってきたところがあるんですね。そうしたメッセージがなくなるだけでもアメリカのムードは変わってくると思います。ただ、もう2年後には中間選挙があってそして、それが終わればまた次の大統領選へモードが切り替わっていきますので、やはり、大幅な修復はなかなか厳しいんじゃないかなというのが私の率直な印象ですね。
徳永アナ:相当難しいんだ、と思うんですけどバイデンさんは分断という高い壁みたいなものを取り払っていくために具体的にどんなことをしていけばいいですか。
渡辺教授:一般論でいえば景気が上向きになれば大体、政権に対する求心力は高まっていきますね。ただ、難しいのはバイデンさんからしてもトランプ支持者にあまり寄り添いすぎると今度は自分の支持者から反発を食ってしまうので、あまりイデオロギー対決のような構図にしないこともまた重要ですね。
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以上のようにトランプ大統領が分断を招いているといった発言が目立ちます。
しかし、アメリカ国内において分断が進んできたのは民主党の選挙戦略に依るところが大きいといえます。
米民主党は選挙戦略として「アイデンティティ戦略」というものを採用しています。
米国政治に詳しいアナリストの渡瀬氏はこれについて近著の中で次のように述べています。
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民主党陣営が社会の分断を作り出す際に強調する手法は「属性ラベリング」である。
例えば、所得、人種、学歴、性別、などの客観的に確認可能なデータを基に対象者を区分し、人々を一定の共通項を持った層にグルーピングする。そのグループには「◯◯のように考えるべきだ」という政治的メッセージをセットで提供する。
あらゆる問題の原因を「アイデンティティに起因するもの」として再定義し、対象となる人々に政治的な動機付けを行うことで、ボランティアに動員するのだ。
《渡瀬裕哉『2020年大統領選挙後の世界と日本』(すばる舎 2020年)61-62頁》
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このアイデンティティ戦略はSNSの発達により、より分断が進んでいます。
具体例としては黒人の権利を主張した”Black Lives Matter”や女性の権利を主張した”ME TOO”運動などが挙げられます。
これらの運動では戦略的に民主党が煽り、対トランプの分断を演出した選挙戦略の一環と評価できます。
このような民主党の動きを無視した形でトランプ大統領に分断の責任があるとする報道は次の放送法に抵触する恐れがあります。
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放送法4条
(3)報道は事実をまげないですること
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次に検証したい太田氏の以下の発言です。
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太田昌克共同通信編集委員:私は昨日のバイデンさんの勝利演説を聞いていまして、やっぱりアメリカというのは民主的な国際秩序をけん引していく。そのためには我々が良き模範となって品格を示しながらこれを力にして、国際社会をリードするんだという非常に明確なメッセージを出してるんですね。しかし、一方今回、トランプさんが7100万票もとったということでこれはある意味、アメリカの内向き傾向を示していると思うんですよね。
したがって、バイデンさんが国際協調路線にのっとった外交を展開するにはまず国内政策。分断の現実を踏まえながら内政や経済できちんと、トランプ支持層に果実を示すことが必要じゃないかと考えますね。
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トランプ大統領が7000万票を超える得票を獲得したのは「アメリカの内向き傾向を示している」、「バイデンさんが国際協調路線にのっとった外交を展開するにはまず国内政策。」などとトランプ大統領の外交は内向きで国際強調路線に乗っていないものだったと発言しています。
これは政治的に公平ではなく、米民主党に寄った発言であるということができます。
米民主党は伝統的に他国に対して介入主義的な外交戦略をとり、共和党は自国にとって無益な干渉はしないという外交戦略があるからです。
トランプ大統領の外交上の成果を振り返ってみます。
まず周辺国と協力・妥協しながらISISIを速やかに掃討しました。さらにイランに対しても制裁を強化し、サウジアラビアとの協力関係を強化しました。中東、イラクからの撤退を進めています。
またタリバンとの和平交渉も進め、アフガンからの撤退も進めています。
無益な戦いによって米国を消耗させないという極めて平和的な撤退政策を取っていますが、これは共和党の伝統的な外交戦略です。
以上のような背景を考えると太田氏の発言は米民主党に寄った発言であり、次の放送法に抵触する恐れがあります。
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放送法4条
(2)政治的に公平であること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。