2020年11月15日 サンデーモーニング(中編)

2020年11月15日 サンデーモーニング(中編)

11月15日のサンデーモーニングのレポート中編、ネット誹謗中傷の投稿者情報開示案について報道された部分です。

今回検証するのは以下の点です。

・さまざまな論点を取り上げた報道であったか

まずは放送内容を確認していきます。
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【コメンテーターによる解説】
関口宏 氏:11月12日の木曜日、インターネット上での誹謗中傷対策を検討している総務省の有識者会議この日、最終報告書案がまとめられました。誹謗中傷する投稿をした人物の情報開示を早めるために現在、2回の裁判手続きが必要なところ1回の非公開の手続きで済む新たな裁判手続きの創設が盛り込まれました。一方で有識者会議は制度の設計に当たって表現の自由やプライバシーといった発信者の権利保護にも最大限の配慮が必要だと言っています。

仁藤夢乃 氏:私も活動する中でさまざまな誹謗中傷やデマにさらされてきたんですが、発信者を特定しようとしても手続きが非常に複雑で、裁判に持ち込めないということを私自身も体験したんですね。ネットでの書き込みというのは、その投稿が消されたとしてもいくつかのまとめサイトに転載されたりとかそのあとも流されたデマを信じる人からの攻撃があったりして、外出が難しくなったり日常生活にも影響が出ることがあります。表現の自由はもちろん大切だと思うんですが、それは基本的人権に基づくことなので、誰かの人権を侵害することとかヘイトスピーチに当てはまらないと思うんですけど、特にツイッターなどのSNSでは、これまで匿名であることを理由にそうした悪質な書き込み、差別的発言というのが結構やりたい放題という部分があったので、そうしたところを抑制して被害者を救済するためにも、すごく大切なことだと思っています。

【検証部分】
今回は、インターネット上の誹謗中傷対策に関する報道を取り上げました。この報道の中で問題となるのは、仁藤氏の発言が論点の狭い内容となっている点です。

該当する箇所は、「表現の自由はもちろん大切だと思うんですが、それは基本的人権に基づくことなので、誰かの人権を侵害することとかヘイトスピーチに当てはまらないと思うんですけど、特にツイッターなどのSNSでは、これまで匿名であることを理由にそうした悪質な書き込み、差別的発言というのが結構やりたい放題という部分があったので、そうしたところを抑制して被害者を救済するためにも、すごく大切なことだと思っています。」という部分です。つまり仁藤氏の発言では、表現の自由は他者の人権の侵害やヘイトスピーチには当てはまらない、そのため今回の制度改正は評価すべきだということでした。

ここで、発信者特定のための手続きの趣旨を確認します。発信者の特定のために一定の手続きが必要になるのは、それが発信者のプライバシーを侵害する恐れがあるからです。発信者の氏名、住所、電話番号などが明らかになってしまうのは、発信者のプライバシー侵害にもなりかねませんし、みだりに行われれば自由な言論空間を奪うことにもなります。ですから発信者の発信内容が誹謗中傷等にあたるのかどうか、また情報開示が必要であるかを、公平な手続きによって検討する必要があります。
そして今回の制度改正に関して論点となっているのは、この手続きを簡素化しすぎることによって、誹謗中傷にあたらない、もしくは情報開示の必要性がないにもかかわらず、誤った判断によって開示されてしまうリスクがあるという点です。

しかし仁藤氏の発言は「表現の自由はもちろん大切だと思うんですが、それは基本的人権に基づくことなので、誰かの人権を侵害することとかヘイトスピーチに当てはまらないと思うんですけど」というものであり、つまりこの発言は表現の自由が人権侵害やヘイトスピーチにはあてはまらないという一般論にすぎません。
当然のことですが、情報開示の請求が行われるのは、明確に誹謗中傷、人権侵害にあてはまる場合ばかりとは限りません。
仁藤氏はその点を無視し、表現の自由は人権侵害にあてはまらないという一般論のみを用いて、情報開示の簡素化について論じています。これは、全ての情報開示の請求が明確な人権侵害にあたっているという前提に基づいた発言であり、論点を狭めた報道といえます。

このような放送は次の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。

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