2020年12月13日 サンデーモーニング(前編)

2020年12月13日 サンデーモーニング(前編)

12月13日のサンデーモーニングのレポート前編、新型コロナウイルス第3波の拡大とGoToトラベル見直しについて報道された部分です。

今回検証するのは以下の点です。

・政治的に公平な報道であったか

まずは放送内容を確認していきます。
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【VTR】(要約)
 連日、新型コロナの新規感染者が過去最多を更新している。12月11日、コロナ対策分科会の尾身会長は、GoToトラベルの停止措置を含めた具体策を政府に提言。しかし同日ネット番組に出演した菅総理は、GoToの一時停止について「考えていない」と述べた。
 政府と医療関係者の温度差も浮き彫りとなっている。10日の会見で田村厚生労働大臣は「医療崩壊かどうかは見方による」と発言。一方地方を見ると、旭川市では病床や人手不足のために自衛隊の看護官が派遣される事態に。同じく自衛隊の派遣を要請した大阪府でも、医療のひっ迫は大病院にまで及んでいる。

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【パネル解説】(要約)
新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。重症者、死亡者の数、ともに11月の半ばごろから急増している。12日8日には47人が死亡、12月12日は重症者が578人。どちらも過去最多だ。そんな中、菅総理が一時停止を否定したGoToトラベルがこうした感染拡大の要因になっているのではという研究結果が発表された。GoTo利用者に症状を訴えた割合が多かったと分析されている。

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【コメンテーターによる解説】(一部要約)
松本哲哉氏(以下松本氏):GoToトラベルはもう停止すべきだと思います。東大の研究データでも、GoToトラベルを利用することで、新型コロナと確定はしていなくても感染を広がる原因になっているということは証明できると思います。これだけ(感染者数の)過去最多が続いている状態でキャンペーンを続けていくということはとてもありえないことですので、GoToトラベルについては一斉に全国で止めていただき、落ち着いたらまた再開するという方針に切り替えていただきたいと考えています。(要約)

関口宏氏:勝負の3週間と言われていましたね。勝負の3週間がこれじゃあどうするんだって私は思ってしまいますが。

松本氏:勝負の3週間も感染者数は増え続けていたわけで、結果は出せなかった。具体的に国民の方に対して何をすればいいのかというメッセージもありませんでした。国や自治体が本当の意味で感染を抑えるような方針を示さなかったということであれば、この3週間は残念ながら、ただ単に経過を見守っていくだけの3週間になってしまったと思います。(要約)

寺島実郎氏:世界で成功している国として見ているのが台湾モデルです。台湾では粛々と静かな日常をコントロールしようという形で、loTなどを使って戦っているわけで、日本もインセンティブをつけてGoToだなんていう議論に時間を費やしている場合じゃなくて、粛々と科学的に対応していくことに集中しなきゃ駄目ですね。(要約)

浜田敬子氏:もともと日本に医師不足は指摘されていましたが、コロナによって一気に危機的な状況になったと感じています。和歌山県は初期の病院でのクラスターをうまく封じ込めた経験を持っているんですが、知事は県のホームページで、医療に負担をかけないよう、保健行政が一丸となってバックアップしていると書かれていました。また、この経験は実は大阪にもアドバイスしたが、生かされていないと正直に明かされています。そして、同じ制度、同じ法律の中でできることは自治体のリーダーによってあるけども、本来であればこれは国が考えるべきだということで最後締められていました。(要約)

仁藤夢乃氏:こういう時だからこそリーダーがどういう発言をするかはその国の政治のレベルを表すと思うんですけど、国民へのメッセージを求められてガースーですとふざける大臣や、厚労大臣が医療崩壊の危機に瀕しているかは見方によるといった発言など、これだけ切実な声が現場から上げられているのに、直視しようとか本気で何とかしようとはしてないように感じてしまいます。国や自治体は市民に自己責任を押しつけるのではなくて、具体的な対策や支援をもって現状を変えていく、持っている力や権限を、こういう時だからこそ、人の命や生活を守るために使ってほしいということを思います。

【検証部分】
今回は新型コロナ第3波、そしてGoToトラベル見直しに関する報道を取り上げました。今回問題となるのは、仁藤氏の発言が政治的に公平ではないという点です。

該当するのは、「国民へのメッセージを求められてガースーですとふざける大臣や、厚労大臣が医療崩壊の危機に瀕しているかは見方によるといった発言など、これだけ切実な声が現場から上げられているのに、直視しようとか本気で何とかしようとはしてないように感じてしまいます。」「国や自治体は市民に自己責任を押しつけるのではなくて、具体的な対策や支援をもって現状を変えていく、持っている力や権限を、こういう時だからこそ、人の命や生活を守るために使ってほしいということを思います。」という箇所です。

仁藤氏は、菅総理や田村厚生労働大臣の発言を根拠に政府が本気で取り組もうとしていないとしています。そして、国や自治体の支援が足りないとし、具体的な対策を求めています。
これらの発言について順に検証します。

まず、政府が本気でないという指摘についてです。菅総理の発言は、冒頭の視聴者への挨拶で行われたものです。仁藤氏の指摘するような、国民へのメッセージを求められているにもかかわらず、「ガースーです」というふざけた発言で済ませてしまったわけではありません。さらに菅総理は同番組の中で「これ以上の感染拡大は何としても避けなければいけない」という、コロナ対策への本気を示すような発言もしています。

また、田村厚生労働大臣の「医療崩壊は見方による」という発言も、コロナ対策に本気で取り組んでいない根拠とはなりません。この発言の前には質問として、医療崩壊が具体的にいくつの自治体で起きているのかという質問がありました。しかし、医療崩壊の明確な定義が定まっていない以上、具体的な数字を用いてこの質問に答えることはできません。それゆえ、必然的に田村大臣のしたような「見方による」という回答にならざるを得ません。

実際に政府は、さまざまな困窮者支援、経済対策を実施しています。経済的に苦しくなった個人、家庭向けには子育て世代、ひとり親世帯への臨時特別給付金、感染症対応休業支援金・給付金、住居確保支援金などがあります。また事業者などには、持続か給付金、家賃支援給付金、雇用調整助成金などの支援制度があります。
仁藤氏は、政府は国民に自己責任を押し付け、具体的な支援を行っていないというような指摘をしていますが、この発言は今挙げた政府の行っている支援策を無視したものとなっています。

仁藤氏の発言は、現在の政府の行っている政策を無視し、菅総理の挨拶、田村大臣の答弁を一方的に解釈した指摘となっています。

このような放送は次の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(2)政治的に公平であること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。

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