2020年12月10日 サンデーモーニング(前編)

2020年12月10日 サンデーモーニング(前編)

12月10日のサンデーモーニングのレポート前編、新型コロナウイルス感染症の感染拡大と政府の対応について報道された部分です。

今回検証するのは以下の点です。

・政治的に公平な報道であったか
・事実をまげない報道であったか

まずは放送内容を確認していきます。
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【VTR】(要約)
 大都市圏中心だった感染の拡大が地方にも広がりつつある事態を受け、政府は「GoToトラベル」を12月28日から1月11日まで全国で一時停止すると発表した。これに対し野党は対応の遅さを批判、さらに菅首相が停止発表後、8人ほどで会食を行っていたことが波紋を広げた。16日に反省の言葉を述べたあと、2件の会食に参加したことも問題視されている。
また、勝負の3週間も感染者が増え続けており、野党からはより強い措置を求める声が上がっている。

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【パネル解説】
感染拡大の要因について厚労省、アドバイザリーボードの脇田座長は「特に地方において忘年会などでクラスターが増加」しており、また「飲食など社会活動が活発な20代から50代については、本人が意識ないまま感染拡大につながっている」としている。菅総理の会食に批判の声が上がるのはこうしたことも背景にあると思われる。一方、7日間の平均の感染者数を見ると、東京・大阪・北海道の3つの都市で違いが出た。大阪市と札幌市では一足早くGoToトラベルの一時停止の対象となったが、減少もしくは横ばいと感染者を抑えられている。GoToトラベルだけが要因かどうかは不明だが、この同時期にGoToトラベルの一時停止を行わなかった東京は感染が拡大している。東京都はようやく18日からGoToトラベルの予約停止を行った。

【コメンテーターによる解説】(一部要約)
尾崎治夫 氏:やはり東京(の感染者が)がどんどん増えていて、GoToトラベルがすべて悪いという話でなくても、人の移動を促進していたのは確かだと思うんですね。GoToトラベルを一時停止した大阪や北海道では感染が減っていますので、東京でも早く一時停止していただきたいと、私どもはずっと申し上げています。また、飲食など社会活動が活発な20代から50代を感染の抑えられない大きな原因になっていますので、ここをしっかり抑えていくということが今後、大事だと思います。勝負の3週間は確かにうまくいかなかったんですけれども、真剣勝負の3週間ここから年始にかけてやらないと、東京都、大都市はもう本当にもたないと思うんです。2番目の原因である20~50代の方は行動を見直してもらいたい、飲食も止めていただきたいと思いますね。メルケルさんのように、国のリーダーにも今、本当に切羽詰まっているということを、政治の力で訴えかけていただきたいです。(要約)

姜尚中 氏(以下姜氏):明治以来、公衆衛生というと、欧米のみと。現在、欧米と日本を比較すると100分の1なんですね、(日本の)ダメージが。だから何とか日本型モデルはうまくいっているんじゃないかという暗黙の了解がどこかにあって…。

関口宏 氏:うまくいってるとは思えませんけどね。

姜氏:思えないんですけど、欧米と比べるとはるかにいいんだというまことしやかなエビデンスによって、根拠によっては裏付けられていないと思うんです。結局、2つしかなくて、1つは重症者、死者が出ても経済を回すのか、ある程度これは組み入れてね。あるいは人を救って経済を回していくのか。これは2つしかないと。前者の場合は、経済も死者の数もひどくなっているというデータがもう出ている。ですから、まず人を救う。そのためには直接給付や、あるいは時短・休業に対してしっかりと手当をやる。そして経済を回していくというふうにしていかないと、今、じりじりと中途半端なことをやっていれば、おっしゃるとおりこれから3週間が大変な目に遭う。今ちょうど瀬戸際にあると思います。

目加田説子 氏:残念ながら、菅首相からは本気度が感じられないと思うんですね。この1年間で、何が失敗して、何がうまくいったのか、どうそこを評価しているのか、そしてその教訓を今後の出口戦略にどうつなげていくのか、一国のリーダーからはっきりと訴えて国民に呼びかけてほしいと思います。(要約)

安田菜津紀 氏:この間の動きを見ていると今の政権というのが何を見てどこを見て仕事をしているんだろうと思ってしまうんですよね。例えばGoToにしても専門家の方々からの懸念が示されてもかたくなに進めてきたと思いきや、支持率が急落したということが報じられたその後に、急転直下、方針が転換されたわけですよね。大きなこれだけの転換をするのであれば、まっとうな記者会見を開いて説明を尽くすべきだったと思いますが、その動きもないわけですよね。菅さん今週、別件でこういう言葉を引用されていて、問題を解決できない人はリーダーではないという言葉を引用されているんですけれども、私は、説明責任を尽くさないリーダーもやはりリーダーではないと思うので、誤解を与えたとおっしゃっていましたけど、誤解か否かという問題にすりかえないでいただきたいという風に思います。

【検証部分】
今回は新型コロナウイルス感染症とそれに対する政府の対応についての報道を取り上げました。
今回は放送の中で、政治的に公平ではない発言、また事実と異なる発言が、合わせて3か所見られました。該当する箇所を順に確認します。

まず、VTRの後に行われたパネル解説についてです。
パネル解説の中では、東京、大阪、札幌の3都市を比較し、GoToトラベルを停止した都市は感染者数が横ばいで、GoToトラベルを中止しなかった都市は感染者数が増加していると報じています。「GoToトラベルだけが要因かどうかは不明だが」という一言を付け加えてはいるものの、明らかにGoToトラベルが感染拡大を引き起こしているという印象を与える内容となっています。
実際GoToトラベルが感染拡大の要因であるかについては、はっきりとは分かっておらず、これまでの感染者数の推移などを見ても必ずしも相関関係が強いともいえません。GoToトラベルと感染拡大という、関連があるかどうか不明である2つの事柄は、基本的には安易に混ぜて論じられるべきではありません。
今回の放送のような、一時点での都合のよいデータを持ち出して、関係の定かではない2つの事柄を強引に関連するもののように扱う発言は、GoToトラベルに対しての印象操作の側面が強く、政治的に公平ではありません。

次に、姜氏の発言に関してです。
姜氏は、「日本型モデルはうまくいっているんじゃないかという暗黙の了解がどこかにあって…。」「欧米と比べるとはるかにいいんだというまことしやかなエビデンスによって、根拠によっては裏付けられていないと思うんです。」というように、日本型モデルはうまくいっておらず、うまくいっているという主張には根拠がないとしています。
しかし実際に日本と欧米とを比べると、感染症対策において日本がはるかにうまくいっていることは明らかです。日本では欧米で行われたようなロックダウンは行われておらず、それが必要という状況に陥ったこともないというのが一般的な認識です。また、死者数を見ても、日本ではこれまで約1年の累計で数千人程度の死者数に抑えられていますが、欧米では一日に千人を超える死者数が出ているような状況であり、日本が欧米に比べて圧倒的に感染を抑えられているというのは明白です。さらにこのような感染抑制には、3密の回避、マスクの着用といった基本的な公衆衛生が一定の役割を果たしたと考えられています。
このような事実を踏まえると、日本型モデルはうまくいっているという根拠はないという主張は事実と異なるといえます。

最後に、安田氏の発言に関してです。
安田氏はGoToトラベルの停止について、これまで専門家の意見を無視して進めてきた、そして支持率の低下を受けて方針転換がしたと批判しています。
しかし、実際には今回のGoToトラベルの停止は、分科会の提言を受けて決定されたものであり、菅政権が専門家の意見を無視してきたという指摘は当てはまりません。
もちろん、専門家の中には早期からGoToトラベルの中止を求めていた人もいます。しかし一方で経済的な理由からGoToトラベルの継続を求めていた専門家もいます。菅政権はこれらの意見のバランスを取りながら進めてきており、専門家の意見を無視してきたとは必ずしもいえません。
また安田氏は、支持率の低下を受けて方針転換がされたとしていますが、これには根拠が伴っていません。この2つがほぼ同時であったことは、因果関係が存在することの十分な説明とはなりません。
さらに、支持率の低下を受けて方針転換をしたこと自体は、一概に悪いこととはいえません。日本は民主主義国家ですから、政権が国民の意思を反映した政治を行うことは当然のことです。国民が直接的に政治に関与できるのは、選挙などのごく限られた機会のみなので、それ以外の時にも国民の意見に応じて政策を柔軟に調整する政府の姿勢は、むしろ望ましいことといえます。
しかし安田氏はこのような菅政権の姿勢を批判的な論調でコメントしています。

今回の報道では、パネル解説と安田氏の発言から政治的に公平でない内容が、姜氏の発言からは事実と異なる発言が見られました。

このような放送は次の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(2)政治的に公平であること
(3)報道は事実をまげないですること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。

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