2018年2月27日 報道ステーション

2018年2月27日 報道ステーション

2018年2月27日 テレビ朝日「報道ステーション」の報告です。

今回の放送で一番時間を割いた話題は「平昌オリンピック」についての話題でした。

オリンピックで銅メダルを獲得した女子カーリングチームが地元の北海道北見市に凱旋する様子を生中継で伝えたほか、当日に行われたオリンピックの選手報告会の模様をVTRにして放送していましたが、特に印象操作や放送法違反に抵触するような箇所は見当たりませんでした。

さて、今回検証していきたいのは「働き方改革法案」について報じた部分です。
詳しく見ていきましょう。

【放送内容1】
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小川アナ「働き方改革を巡って与野党の攻防が続く国会。今日は野党6党が合同集会を開きまして、法案の提出の断念を求める声を挙げました。徹底抗戦の構えですけれども、議論の焦点となっている裁量労働制。実際の職場はどうなっているんでしょうか。ある男性のケースを見てみます。」

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冒頭、小川アナが野党合同院内集会の模様を映した画面を背景に、裁量労働制を含む働き方改革法案を巡って与野党の攻防が続いていることを伝えました。そして、焦点の裁量労働制の下で働いていた男性の例を紹介し、VTRがスタートしました。

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VTRは当日正午過ぎに行われた、野党6党による合同院内集会の様子を伝えました。
希望の党古川元久幹事長「再調査をする。その決断がなぜできないのか。」
共産党小池晃書記局「日に日に間違いが見つかっている。これは撤回断念するしかない。」
ナレーター「裁量労働制拡大の法案を巡り、これまでに見つかった不自然なデータは365件に。野党は再調査と法案の断念を要求しました。しかし、政府与党は。」

VTRが厚労大臣の会見の様子に切り替わり
加藤勝信厚生労働大臣「まずその精査に全力で取り組みたい。」
記者「調査をやり直す考えは」
加藤大臣「今は持っていません。」
記者「やらない?」
加藤大臣「いや今は持っていません。」

続いて首相官邸で安倍総理と面会直後の自民党二階幹事長の記者会見へと画面が切り替わり
記者「(総理と)提出する方針で一致?」
二階俊博幹事長「もちろん当然です。」
ナレーター「再調査はせず、法案を提出し成立を目指す考えに変わりはありません。」
「こうした中、与野党攻防の最大の焦点は2018年度予算案の採決の時期ですが、今夜与党は野党の反対を押し切って明日、衆議院で採決する手続きをとりました。」

続いて、ナレーターがVTRを基に過去の裁量労働制の拡大についての経緯を説明しました。
1987年に専門業務であるデザイナーなど5業種に認められていたものが、経済界の要望などで2002年に19業務にまで拡大したこと、1998年には企画業務の中でも企画立案の事務職にも対象を広げたことが述べられました。
また、今回の法案の趣旨がその企画業務の中の営業職の一部にも裁量労働制の適用を認めることであることも併せて述べられました。

続いて2月20日の衆院予算委で総理が「裁量労働制拡大の意義について説明した」答弁を紹介。
安倍晋三総理大臣「会社が決めた9時から18時などの定時にとらわれることなく、業務調整が可能となることで子供の送り迎えやリフレッシュのための半日休みなどが自在にできるようになる。希望する方にはこういう働き方を選んでいただけるようにするために必要な改革。」

ここでVTRは冒頭に小川アナが述べた、裁量労働制で働いていた男性、そしてその相談に乗った労働組合の代表へのインタビューの模様へと変わります。
ナレーター「ただ、裁量労働制で働く人の相談に乗る専門家は」
裁量労働制ユニオン・坂倉昇平代表「実は裁量が無い人にいくらでも長時間働かせる、そういう制度になってしまっている。」
ナレーター「実際に裁量労働制で働いていた人を取材しました。」
裁量労働制で働いていた男性「たとえ3時4時の明け方に家に帰ろうが次の日は10時出社と決められていた。ずっと個人の時間が無いような状態。」
この男性の発言を最後に一旦CMが挟まれました。

【放送内容2】
CMが明け
ナレーター「20代の男性。去年の夏まで社員10人ほどの会社にWEBデザイナーとして勤めていました。この日裁量労働制ユニオンへ相談に訪れていました。」
男性「一番長い日ですと10時から27時半。」
「10時から24時。10時から26時。10時から23時という形で。繁忙期ですと会社に泊まることもありました。」
続いて男性の基本給が17万3500円、残業代が「定額で」6万6500円だったことが紹介され、どんなに残業しても男性は月額で24万円しか給与を受け取れなかったことが語られました。月によっては1時間当たりの賃金が最低賃金を下回っていたことも併せて紹介され
ナレーター「そもそも男性が自分の雇用形態が裁量労働制だとは知りませんでした。」
男性「募集要項には特に残業代とかの話はなくて、裁量労働制とかも特に記載はなかった。」
雇用形態についての具体的な説明も会社側からは無く、初めから裁量労働制で働いていたこと、にもかかわらず自分の裁量で勤務することはできなかったという、男性の声が紹介されました。
また、ナレーターがWEBデザイナーは裁量労働制が適用されることを伝える一方で、本来は認められていない「営業の仕事」まで男性が行っていたことも伝えられました。
男性「営業担当という者が一人いたんですけれども、その方が辞めて以降(営業も)行っていた。日中は営業の仕事をして会社に帰ってからデザインの制作進行を行うと、どうしても定時はオーバーしてしまう。」
ナレーター「会社に働き方の改善を訴えましたが叶わず、男性は去年夏退職しました。」
再び裁量労働制ユニオンの坂倉代表へのインタビューに画面が切り替わり
坂倉氏「長時間労働とか残業の不払いとか対策するという流れが出てくる中で、会社としても対策を逃れるために裁量労働制を導入しようとする。労働基準監督署対策として裁量労働制を適用している、そういった会社が増えてきているんじゃないか。」
坂倉氏のこの発言を最後にカメラはスタジオへと戻ります。

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富川アナ「こうした実態の調査をしないまま、今の国会での法案の成立を目指すということなんですね。で、今日は国会での審議が空転しましたけれども、これはどういう風に見ればいいんでしょうか。」
後藤謙次氏「そうですね。私に言わせると、作られた空転と言っていいと思うんですね。つまり自民党にとってはですね、野党に押し込まれて空転したという風に見えるんですが実は昨日までの非常に激しい議論の中で、野党が押せ押せの中で一呼吸入れると。そして野党の勢いをそいだところで次の手を打つと。これは自民党の古典的な国会対策の一つなんですね。」
富川アナ「それで明日衆議院の本会議で採決すると。」
後藤氏「そうですね。ところが問題はここにあるんじゃないんですね。国会のテクニックじゃなくてですね、裁量労働制の拡大について国民の多くが疑念を持っているわけですね。それをどこまで政府側がきちっと説明できるか。そこが欠けてるんだと思いますね。」
富川アナ「昨日もお伝えしましたけれども、世論調査の結果、65%がこのまま進めるべきではないと思っている。この国民が納得しないまま進めるというのであれば、やっぱりまたかとおもってしまいますよね。」
後藤氏「そうですね。私そこで思い出すのが30年前にですね、消費税を導入した時の竹下総理なんですね。この時は消費税が導入されると、こういう懸念がありますよというのを6つ挙げた。最終的に8つになったんですが。その懸念はこうやって解消していきます。ですから皆さん消費税は協力してください。ということをですね、安倍総理も今回、裁量労働制の拡大についてこれだけの不安、問題点があります。そこはこうやって緩和していきますので是非そこは協力してくださいと。国民に働きかければですね、国民も耳を傾けると。そこが原点だと思いますね。」

【検証部分】
今回の放送の問題点は大きく分けて2点あります。
①裁量労働制の拡大についての取り上げ方が偏っていること。
②スタジオでの富川アナウンサーの発言について放送法違反が疑われること。
以上の2点です。

詳しく説明していきます。

まず、1点目についてですが、今回の放送では元WEBデザイナーの男性や裁量労働制ユニオンの代表の男性がインタビューを受ける映像が放映され、このコーナーの重要な要素の一つとなっていました。この部分に関しては「現場の声を反映した」という点では、特に問題があるとは言えません。
しかし、「裁量労働制の取り上げ方」には問題がありました。今回のインタビューには裁量労働制の下で働き体を壊した男性と、裁量労働制の問題点について語るユニオンの男性が登場しました。しかし、裁量労働制の下で満足した働き方をしている方、あるいは裁量労働制のメリットについて語るような方はインタビューには登場しませんでした。その上、今回の放送では富川アナ、あるいは後藤氏は裁量労働制の拡大に対する懸念を中心に語っていました。
つまり、今回の番組内容では視聴者が裁量労働制について多角的に知るという機会が与えられていないのです。これは放送法第4条4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。」という部分に抵触しているように感じられました。

次に2点目についてですが、富川アナは発言の中で
「世論調査の結果、65%がこのまま進めるべきではないと思っている。この国民が納得しないまま進めるというのであれば、やっぱりまたかとおもってしまいますよね。」
と発言しています。この発言の中で使用している「また」という言葉。富川アナは過去のどんな事例を参考にしてこのような発言を行ったのでしょうか。富川アナが過去の事例について言及した上で発言をしなかったため、視聴者は具体的な事例を思い出すことなく、「過去に国民が納得しないままに法案の審議が進められた」という印象だけが独り歩きしてしまう可能性があります。これは印象操作であり、放送法の第4条2項「政治的に公平であること」という文言に抵触しているように感じられます。

以上の2点より、今回の放送には大きな疑問符を抱かざるを得ません。

今後も監視を続けます。

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