2018年3月7日 報道ステーション

2018年3月7日 報道ステーション

2018年3月7日 テレビ朝日「報道ステーション」の報告です。

今回の放送で一番時間を割いた話題は「財務省文書書き換え」についての話題でした。

今回はこの話題について検証していきます。
詳しく見ていきましょう。

【放送内容1】
富川アナ「まずはこちらをご覧ください。こちらも相棒と言っていいんですかね。安倍総理大臣と自民党の二階幹事長が急遽二人で会談を行ったんですね。1時間ほど前に日本料理店から出てきました。二階さんはすぐ携帯をとって、安倍さんは笑顔も見られたんですね。えー、森友学園に関する文書を巡って、書き換えられた疑いを巡ってですね、国会が空転する中で二人はどんなことを話し合ったんでしょうか。」
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番組冒頭、富川アナウンサーが安倍総理と自民党の二階幹事長が都内の日本料理店から出てくる様子を背景にコーナーの前振りを行い、VTRがスタートしました。

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VTRはまず、当日の夜に安倍総理と二階幹事長が料理店から出入りする様子を放映しました。
リポーター「えー時刻は午後6時41分です。安倍総理が乗った車今、こちらに到着しました。えー車から降りて会談に向かう料亭に足早に向かっていきます。」
ナレーター「森友問題に関する財務省の文書が書き換えられたとされる疑惑。政府の対応を批判していた二階幹事長は今夜、総理と2時間にわたり会談しました。」
リポーター「(安倍首相が料理店から出てくる様子を捉えながら)お酒も入っているんでしょうか。顔もかなり赤らめて今、料亭から出てきました。」
沿道からのヤジ「安倍やめろ。早くやめろ。」(特に言及はされず。マイクには拾われていた。)
記者「(料亭から出てくる二階幹事長に向かって)総理とはどんなお話を。」
「財務省の文書を巡って国会が紛糾していますが。」
自民党・二階俊博幹事長「(何も答えず)」

場面は変わり
ナレーター「この会談より、10時間前の今朝8時。二階氏は公明党幹部と会談。この場ですでに政府に要求を突き付けていました。」
自民党・森山裕国対委員長「省庁挙げて資料の調査と関係者の聞き取りを可及的速やかに行う必要がある。一両日中に報告をすべき。」
記者「財務省は原本は押収されてないと説明してきたが。」
森山国対委員長「コピーを取ってきておられますから、そういうことをしっかりと対応していただく。」
記者「写しを国会に示せないかと。」
森山国対委員長「そういうことだと思います。」

場面は当日の午前11時に行われた菅義偉官房長官の会見に移り
記者「党側から連絡はあったか。政府の対応は。」
菅官房長官「与党のご指摘ご要請を踏まえて財務省にしっかりと対応させたい。」
続いて、当日の午後3時に行われた民進党の那谷屋正義参院国対委員長の会見に移り
那谷屋参院国対委員長「コピーを明日の予算委員会の理事会でしっかり出せると。」

また、VTRは3月2日、5日の参院予算委での麻生太郎財務大臣の答弁を映し出し
ナレーター「問題となっている文書は大阪地検にあり手元にないとしていた、財務省。」
2日・麻生大臣「私どものところにその資料がありません。」
5日・麻生大臣「今捜査の途中ですから資料も大阪地検が持っておられます。」
ナレーター「ところが、今日になって実は文書のコピーが残っていたと明らかにし、それを国会に提出するとしたのです。」
「今日も野党の反発で空転した国会。自民党内からの苦言も相次いでいます。」
中谷元衆院議員「(報道では)発表した文書が改ざんされたという内容だから、しっかりと説明を立法府は求めている。真摯に真実を(説明することを)行政はやるべきだと思う。」
ナレーター「引き金となったのは、昨日のこの発言。」
二階幹事長「(文書を)出せないということは我々もちょっと理解できないですね。」
ナレーター「二階氏はちょうど1週間前、裁量労働制を巡る不適切なデータ問題で国会が紛糾していた際も総理と会談していました。その直後、総理の姿勢は一変。裁量労働制を法案から削除すると表明したのです。」
(ここでは、2月28日の衆院予算委の様子を放映。ヤジが飛び交い、野党議員が自民党の河村建夫予算委員長に詰め寄る中、安倍総理が委員会から退席した模様を編集して放送していました。)
ナレーター「今回の、いわゆる森友文書を巡る二階氏の動きを麻生派はこう見ています。」
麻生派関係者「二階さんが麻生さんを追い込もうとしているんだろう。麻生さんは今、じっと誰がどういうスタンスをとっているのか見極めている。」
ナレーター「一方、二階派からは」
二階派関係者「官僚が責任を取るだけでは許されないよ。麻生大臣はなあ、総理が泣いて馬謖を切ることが出来るかどうかだな。」

続いて自民党の岸田政調会長へのインタビューを放映。
記者「場合によっては大きな政局が来るかもしれない。」
「二階さんは大変危機感を持っているが、政局との関係については。」
岸田政調会長「書き換えられた、改ざんしたことがあったらこれは言語道断。あってはならない、許しがたいことであります。そういった疑惑を招いているのだから、財務省がしっかりと説明を、説明責任を果たさなければいけない。これは政府の責任だと思います。」
ナレーター「昨日のゼロ回答から一転。政府が国会に提出することになった、文書のコピー。これで書き換えがあったのか、無かったのか。はっきりするのでしょうか。」

続いて、当日の野党合同ヒアリングに場面が移り
ナレーター「実は明日、政府が示すのはこれまで国会議員に開示した文書と同じものになるようです。」
希望の党・階猛衆院議員「原本のコピーはこれでいいんですか。我々が持ってるのが原本のコピーだということでいいのか。」
財務省の担当者「はい。」
自由党・森ゆうこ参院議員「これが原本ですってごまかされるわけにはいかない。いくらでも差し替えてるんだから皆さん。」
ナレーター「野党は書き換える前の文書が別にあるはずだとし、反発しています。」

続いて立憲民主党の福山哲郎幹事長の記者会見の模様を放映。
福山幹事長「最初に作成された文書があるのかどうかの方が本質的な問題なので、別のものがあるのかどうか。2種類あるのかどうかについての存否をまず明らかにするしか始まりません。」
自民党幹部「もし本当に書き換えがあったとすれば、信頼は地に堕ちる。霞が関全体の問題だ。」
自民党関係者「このままじゃ政府だけじゃなくて自民党もふざけるなという話になる。」

ナレーター「明日は参議院で、安倍総理が出席し予算委員会が開かれる見通しです。」
最後に、当日の午後8時過ぎの国会前でのデモの様子を放映し、カメラはスタジオへと戻ります。【放送内容2】
富川アナ「与党内からも厳しい意見が聞こえてきますけれども、二階幹事長は急遽総理と二人で会って、どんなことを話していたんですか。」
後藤謙次氏「実はこの会談急遽じゃなくてですね、実は1月の下旬に安倍総理から二階幹事長に1度会って話をしたいと、そういう申し入れがあったんですね。そこに設定されたんですが、総理日程は非常に立て込んでますから、その時点で3月のこの日ということになったんですが、たまたまこのタイミングにかぶったということなんですね。」
富川アナ「もともとはいつだったんですか。」
後藤氏「もともとは、あの頃を思い出していただきたいんですが、安倍総理が平昌五輪の開会式に出席するかと、こう非常に躊躇することがありましたよね。その時に二階幹事長がその出席の流れというのを作ったんですね。以来やや両者の関係政権ナンバー1とナンバー2がぎくしゃくした感じがあったので、安倍総理としては円滑な関係を取り戻したい。そういう思いが非常にあったと思うんですね。そして今日の会談になったと。この中で話されたことはまだ我々の下に伝わってきてないんですが、まあ二階さんは今日は森友関係の話は出なかったというのを周辺に説明したそうなんですが、事前にそれを二階さんの側近に取材しましたら、その話は出ざるを得ないだろうと。そしてこれをどう収めるのかという、出口の方向性についてお互い大きく確認をしあうと。そういう会談じゃないかと。こういってましたから、そうなってるんだと思いますね。」
富川アナ「なるほど。」
後藤氏「これは国会運営だけじゃなくてですね。秋の総裁選も含めた非常に大きなターニングポイントになるとそういう可能性があると思いますね。」
富川アナ「色んなすり合わせが行われている可能性があるということですね。ところで、麻生大臣の責任論はどうなるんでしょうか。」
後藤氏「そこまでまだ具体的にですね、あの文書があるのか無いのかというのは確認されてませんから、そこまでいかないと思いますね。ただ二階幹事長としてはですね、今日非常に政府に注文を付けていましたね。これ注文を付けておかなければ、自民党に対する批判も高まるわけなんですね。それを野党と同じレベルの発言をするということで自民党への批判をかわす、ひいてはそれで政権批判が回避できると。非常に百戦錬磨の二階幹事長らしい対応だったと思いますね。」
富川アナ「だから昨日から急に二階さんが厳しい姿勢を取り始めたということなんですね。」
後藤氏「そう思いますね。」

【検証部分】
今回の放送の問題点は大きく分けて3つあります。
1点目は番組冒頭から事実誤認があり、のちに訂正されたものの、視聴者に誤ったイメージを抱かせる可能性があること。
2点目はVTRの使い方に問題があり、印象操作の疑いがあること。
3点目は後藤謙次氏のコメントに中立性を損ねる可能性があること。
以上の3点です。

まず、1点目についてですが、冒頭のVTR振りで富川アナは「安倍総理大臣と自民党の二階幹事長が急遽二人で会談を行ったんですね。」と発言しました。しかし、のちにコメンテーターの後藤謙次氏は「実はこの会談急遽じゃなくてですね、実は1月の下旬に安倍総理から二階幹事長に1度会って話をしたいと、そういう申し入れがあったんですね。(以下略)」と発言しています。つまり、富川アナの発言は事実誤認であったと言えます。その後の番組内で訂正する発言などはありませんでした。
これについて、ただの勘違いだととらえることもできますが、1月中から予定されていた会談が”たまたま”この日に設定されたにもかかわらず、それを森友問題とつなげて報じることで、あたかも森友問題について政府に過失があり、その対応のために二階幹事長との会談が設定されたかのような印象を与えているようにも感じられました。

次に2点目のVTRの使い方についての疑義ですが、疑われる部分は2つ。
1つ目は安倍総理が日本料理店から出たときにマイクに拾われた「安倍やめろ。早くやめろ。」という言葉。テロップなどが出されたり、出演者によって言及されることはありませんでしたが、明らかに視聴者の耳には届くような音量で聞こえてきました。このヤジがわざと聞こえるようにこの部分を切り取った可能性が疑われます。
2つ目は安倍総理が28日に二階幹事長と話し合いを持った後、働き方改革法案から裁量労働制の拡大を削除することを命じたことについてナレーターが触れた場面です。この際にVTRとして使われたのは、その当日の2月28日の衆院予算委で自民党の河村委員長が野党議員に囲まれている場面でした。
実はこの映像、その日の質疑限りで委員会での予算の採決を行うことに対して野党が抗議していた映像でした。しかし、ナレーターが裁量労働制について触れているために(また他の説明などは無かったために)、視聴者がそのことで政府が抗議されているような印象を受けます。つまり、報ステは全く関係のない映像と音声を組合わせていたことになります。これは一種の印象操作ということが出来るのではないでしょうか。
VTRの使い方についての疑義は以上です。

次に3点目についてです。後藤氏は「二階幹事長としてはですね、今日非常に政府に注文を付けていましたね。(中略)野党と同じレベルの発言をするということで自民党への批判をかわす、ひいてはそれで政権批判が回避できると。非常に百戦錬磨の二階幹事長らしい対応だったと思いますね。」と発言していました。これは、「二階氏は本音ではなく、政権を守るために抗議を繰り返している」という印象を視聴者に与えかねません。後藤氏はこのような判断をした根拠も述べていません。したがって、放送法第4条2項「政治的に公平であること」という文言に抵触している可能性があります。

以上の点で、今回の番組は放送法違反と印象操作の疑いがあります。

今後も監視を続けていきます。

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