2018年4月1日放送分、TBS「サンデーモーニング」の報告です。
最初は金正恩朝鮮労働党委員長の中国電撃訪問についての話題から始まりました。
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【VTR】
・3月25日~3月28日にかけて、北朝鮮の金正恩党委員長が中国を電撃訪問。
首脳会談後の記者会見で、習近平は「時期的に特別で意義が重大」、金正恩は「朝鮮半島情勢は急速に前進」と述べ、非核化に言及。
・全体的に友好ムードを示していた。東京福祉大学の遠藤誉国際交流センター長はこの友好ムードを「中朝軍事同盟はまだ生きている」ということをアメリカに示して軍事オプションを取らせまいとする動きだと指摘。
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【スタジオコメント】
その後、スタジオに戻り朝鮮半島をめぐる会談の日程と米朝双方の「非核化」の意図(北朝鮮は在韓米軍撤退を視野に入れた朝鮮半島全体の非核化、アメリカは北朝鮮の核開発放棄という意味での非核化)の違いを説明された後で、コメンテーターの話が始まりました。
関口宏氏「辺さん、実に複雑な背景になってきましたよね」
辺真一氏「そうですね、全ての動きが米朝首脳会談に向けられてますね。ですから5月上旬に露朝首脳会談の可能性も考えられますね。すなわち金正恩委員長がロシアを訪問してプーチン大統領と会談すると。米朝首脳会談の前にセットされるかもしれませんね。そうなると米朝首脳会談でどう決着がつくかと。アメリカはとにかく核を差し出せば北の求めている体制保障、見返りを渡そう、と。これがアメリカのスタンスなんですけどね。一方で北朝鮮は『いや、非核化には時間がかかる』と。」
「すなわちStep By Stepで、一歩譲歩すればそっちも一歩譲歩してもらいたいと。そうなると北朝鮮が諸々条件を出してくるわけですね。今も核実験とミサイル発射実験を凍結しています。で今度は核施設を凍結しましょうと。でそれに対してですね、(北朝鮮は)『休戦協定を平和協定に変えてくれ』とか、『国交正常化してくれ』とかですね…あるいは『国連の制裁を取っ払ってくれ』とか諸々の要求をしてきますね、こうなると時間がかかるんですね。何年たっても既存の核を差し出さない。そうなるとトランプ政権は結局のところ『金正恩が会談を要求するのは時間稼ぎなんじゃないか』と。ICBM開発の時間稼ぎのために、と。トランプは歴代政権と同じ轍は踏まないと言ってますから。何はともあれですね、まずは非核化の宣言を北朝鮮から取り付けて、そして朝鮮半島の非核化と平和のための休戦協定を含めて何か発表ですね。一発勝負ですからね。」
関口氏「トランプはこれだけ複雑な背景をすべて理解して有効な手を打てるのか、僕はすごい心配なんですよ、その辺秀征さんどうなんですか」
田中秀征氏「あの、辺さんとだいたいおなじなんですけど。窮地に立ったってことですよね。経済面でも軍事面でも北朝鮮が窮地に立って中国にすがったように見えるんですよ。ですから私も露朝会談はありうると思ってるんですよね。(中略)アメリカと中国がある種の気まずさがある。だから中国も(北朝鮮を)受け入れる余地が出てきたと。こういう段階に来たのであればどういい方向に持っていけるかを考えたいですね。」
関口氏「大宅さんいかがですか」
大宅映子氏「報道の仕方ね。北朝鮮のメディアと中国のメディアとの間にすごくギャップがある。都合のいいトコロだけを切り取る技があるんだなぁってのがよーくわかります。北朝鮮のメディアは世界の嫌われ者だった金正恩が習近平と肩を並べたんだという事実を発表したいんだなと」
関口「安田さんどうお考えになりますか。」
安田菜津紀氏「米朝会談に向けて足場を固めているさなかだと思うんですけど、迎えるアメリカ側の動きにも気がかりな点がある。たとえば大統領補佐官になったボルトンさんは、根拠に欠けていたイラク戦争開戦に深くかかわった方ですし、今回北朝鮮でもイラクと同じように『差し迫った脅威』としてしまっている。開戦から15年たったイラクが今どのくらいの混乱に見舞われているかを教訓として振り返ってから望んでほしいと思います。」
関口氏「ボルトンさんってのはイラク戦争をどれだけ後悔してるかが伝わってこないんだよね。中西さんどうですか。」
中西哲生氏(以下中西)「ビックリしているってのが本音ですけどね、このスピード感に。ちょうど2か月前って平昌オリンピックの前なんですよね。で、オリンピックがあったってことがこの流れにつながってると思うんです。スポーツと政治がつながってはいけないという前提があるとはいえ、先日も金正恩とバッハ会長が並んで会見しましたけど、そういうの見てるといろんな駆け引きも使わざるを得ないというか、使われてしまっているなというのを改めて感じました。」
関口氏「松原さん」
松原耕二氏(以下松原)「そうですね、やっぱりトランプ大統領が首脳会談を受け入れると言ってから北朝鮮実は沈黙していたんですね。驚いていたんでしょうね。その答えがこれなのかと思いましたね、中国行ったの見て。ですからうまくいったとしたら朝鮮半島休戦協定の当事国である中国の同意は必要だし、うまくいかなかった、つまりトランプさんが席を立った時でも軍事オプションを減らすために中国を後ろ盾にできる、と。これは考えてるなと思いました。ただ、心配なのは核の廃棄のプロセスは想像以上に長いんですね。過去とは違うくらい核で武装してますから。そのなかでものすごく忍耐力が必要なプロセスを、ある意味最も忍耐力のない政権、ボルトンさんとか対話は時間の無駄だと思ってる強硬派が要る政権が向き合うと。これがどんな結果になるのかは正直ものすごく心配ですね」
——–【検証内容①】
北朝鮮関連の話題においては、コメンテーターによる、放送法第4条に抵触するような発言はあまり目立ちませんでした。
ただ、安田氏による発言の一部に印象操作の疑いがありました。
安田氏は
「たとえば大統領補佐官になったボルトンさんは、根拠に欠けていたイラク戦争開戦に深くかかわった方ですし、今回北朝鮮でもイラクと同じように『差し迫った脅威』としてしまっている。開戦から15年たったイラクが今どのくらいの混乱に見舞われているかを教訓として振り返ってから望んでほしいと思います。」
と発言。これに対して関口氏も
関口氏「ボルトンさんってのはイラク戦争をどれだけ後悔してるかが伝わってこないんだよね。」
と発言していました。
確かに、ボルトン新大統領補佐官は、イラク戦争開戦に深くかかわっていたといわれる人物の一人です。そして、彼が主導したイラク戦争が、イラクや中東全体の混乱をもたらしたのも事実です。しかし、今のところ、ボルトン氏は北朝鮮への軍事攻撃について「好ましくない」と発言しています。では、安田氏はなぜ北朝鮮の問題とイラク戦争を結び付けたのでしょうか
どのようなことを根拠としているのかがわからず、事実と反することを発言しているとすれば、放送法4条3項「事実は曲げないで報道すること」に抵触している可能性があります。
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CM明け後
関口氏「さて、そんななかで森友は…終わっちゃうの?」
という導入の元、森友学園問題についてのVTRが入ります。
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【VTR】
・3月27日に、財務省による決裁文書の改ざんについての佐川氏の証人喚問が行われた。
・佐川氏は証人喚問の際、刑事訴追の恐れがあるとして多くの答弁を拒否(50回)
・はっきり答えたのは、安倍総理と昭恵氏からの指示は「なかった」という否定の答弁
・二階幹事長は「疑惑は晴れた」としているが、野党側は「疑惑が深まった」としている
・麻生大臣の「森友の方がTPPイレブンより重大だと考えているのが日本の新聞のレベル」という発言をしたと放映。
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【スタジオコメント】
VTRからスタジオに戻ります。
アナウンサーから答弁の内容の確認があった後、関口氏が話し始めました。
関口氏「必死に終わらせようとしてる感を一生懸命出してる気がしますが、どう思われますか」
田中氏「証言拒否という奴ですけれども、すればするほど疑いが深まるんですよね。だから刑事訴追の恐れがあるから喋らない、というとやましいところがなかったら全然かまわず喋れるはずだ、と普通は思うんですよ。だからますます疑惑が深まったと言わざるを得ないんですよ。」
「それについて麻生さんがTPPと比べたわけですけれども、ある意味でTPPのほうが大事だってのは正しいんですけれども、そんなに大したことない問題であればさっさと晴らしてほしいですよ。そういう風に思いますね。僕は小泉さんが平成政治史の大事件と言ってましたが、彼は腹を決めて踏み込んだんだとおもいますね。覚悟を決めたというか、ただ口から出てきたわけではなくて、コレじゃいけない、自民党政治はコレじゃだめだと思った。だから行動宣言だと思いますね。」
関口氏「大宅さんどう思われますか」
大宅氏「与党側の質問の仕方なんですが、『ありませんでしたね?』『なかったんですね?』みたいな質問は初めて聞きました。それに対してものすごく明確に『ありません』とだけ言って断言してた。で、それをもって話が明白になった、って、わたしにはその筋がどうしても通らないと思います。指示なしのなしって言うのは証明できないでしょ?ちょっとあれですけど戦争中のメディアの報道ってのがありましたよね?、大本営発表があったじゃないですか?メディア側の人が言ってるのを何人か聞いたことがありますが、軍や官僚から指示はなかったと。日本は命令指示なくても忖度して空気を読んで動く国なわけです。それを言われてるのに『関与はございません』って、これで明白でチャンチャンっていう筋書きを考えた人はおかしいのじゃないかと思いますね。」
関口氏「松原さん今後どうなるか多少は読める?」
松原氏「とにかく今政権側が多分もくろんでるというか考えてるのは、発言から言うと捜査中だからと、あと財務省は内部調査しているからと、それを待ちましょうと。日報問題の時も業務監査室がやって、待って待って本部がやって、それで待って結局出てきたら政治家の関与がありませんでしたみたいな。曖昧になるんですよね。時間をかければみんな忘れていく、忘れたころに出して終わると。まあそれを何か狙っているように思えてなりませんね。」
関口氏「野党が要求している証人喚問は実現するんでしょうか?」
松原氏「どうなんでしょう。まあ、したとしてもまたそれでやり取りをしながら数か月かかったりしながら、何も出てきませんでしたってことになると思います。それよりは特別委員会作るですとか、あとは客観性を持った第三者委員会作るとか。とにかく国会が動かないと済まない問題だと思いますね。今日から新しい文章管理のルールが決まるみたいですし。」
ここで、4月1日から施行された「公文書の新ガイドライン」の説明がアナウンサーによりなされました。原則1年以上の保管期間を設けることや、外部のモノとの打ち合わせなどの記録の作成に当たっては相手方の確認などを通して正確性の担保を期する旨の説明があり、「これが都合の悪い発言が記録に残らなくなり、隠蔽に繋がる」との解説がなされました。
松原氏「結局改ざんとか隠すとか廃棄とか、それ以前にスカスカの中身のない丸い文章だけが残るんじゃないかと懸念しております。調べてみるとこれを主導したのが内閣官房で、去年問題になった時に『こうしてくれ』という方針を各省庁に出しているわけですね。公文書管理というのは客観的に決めたように見えてですね、実はここも官邸主導で『こうしなさい』という風に作り方も官邸主導のニオイがするわけですね」
田中氏「官邸主導というと組織的な感じがしますけど、実際にやってるのはほんの2,3人ですよ。これでだいたいそういうものをどんどん進めていくということですよね。」
関口氏「そうやってどんどん自分たちの都合のいいようなモノにしていっちゃう。これダメですよね。」
松原氏「改ざんについては何も入ってません。もう一回新たなルール作りが必要だと思います。」
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【検証内容②】
森友文書問題については、コメンテーターのいくつかの発言が、放送法第4条に抵触している可能性があります。
まず、冒頭の関口氏と田中氏のやりとり。
関口氏「必死に終わらせようとしてる感を一生懸命出してる気がしますが、どう思われますか」
田中氏「証言拒否という奴ですけれども、すればするほど疑いが深まるんですよね。だから刑事訴追の恐れがあるから喋らない、というとやましいところがなかったら全然かまわず喋れるはずだ、と普通は思うんですよ。だからますます疑惑が深まったと言わざるを得ないんですよ。」
このやりとりでは、関口氏が「必死に終わらせようとしている感を出している」と発言。それに田中氏も「疑惑は深まった」話を合わせ、流れが作られていきました。
また、この放送回でコメンテーターを務めた松原氏は
「日報問題の時も業務監査室がやって、待って待って本部がやって、それで待って結局出てきたら政治家の関与がありませんでしたみたいな。曖昧になるんですよね。時間をかければみんな忘れていく、忘れたころに出して終わると。まあそれを何か狙っているように思えてなりませんね。」という発言や
「(中略)やり取りをしながら数か月かかったりしながら、何も出てきませんでしたってことになると思います。」
「結局改ざんとか隠すとか廃棄とか、それ以前にスカスカの中身のない丸い文章だけが残るんじゃないかと懸念しております。」
と発言。どれも共通しているのは、「懸念」「憶測」の下に松原氏が発言していることです。それに対して他のコメンテーターが異論をはさむことはありませんでした。
森友文書問題のコーナーは放送法第4条2項「政治的に公平であること」、第3項「事実は曲げないで報道すること」の両方に抵触している可能性があります。
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今後も監視を続けていきます。