2018年4月10日 テレビ朝日「報道ステーション」の報告です。
今回の放送で一番時間を割いた話題は「加計学園問題」についての話題でした。
今回はこの話題について検証していきます。
詳しく見ていきましょう。
■放送内容①
【VTR】
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富川アナ「公文書をめぐって問題が相次いでいますが、今度は加計学園の獣医学部をめぐる文書が出てきました。朝日新聞のスクープ、今日の朝刊一面です。この文書はですね、2015年の4月2日午後3時に総理官邸で柳瀬、当時の総理秘書官と愛媛県が面会した時の記録なんですね。その際に柳瀬氏から、本件は首相案件となっており、と言われたと記録してあるんですね。そしてこのメモについて、愛媛県の書いた本人が間違いないと認めました。さらに夕方にはですね、朝日新聞は朝日新聞デジタルにこの面会記録の全文を掲載しました。——–
番組の冒頭、富川アナが、朝日新聞が加計学園に関する新たな文書が発見されたと報道したことに触れました。また、背景には大きく「首相案件」と書かれたバナーが掲げられており、いつもとは少し違う雰囲気の中、番組が始まりました。
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ナレーター「本件は首相案件。愛媛県の職員らにそう語ったとされる当時の総理秘書官。
記者「絶対に会っていないという確信があるか。」
柳瀬唯夫元首相秘書官「コメントの通りです。」
記者「面会されたか?」
(柳瀬氏側の回答は無し)
ナレーター「しかし愛媛県側は」
愛媛県・中村時広知事「国の方は正直に言われたらいいんじゃないか。」
次に午後6時の首相官邸の様子を放映。
記者「愛媛県知事が文書の存在を認めましたが?首相案件は事実ですか?」
(安倍総理は答えず)
ナレーター「さらに新たな疑惑が浮上しています。」
この発言を最後に、一旦CMに入ります。
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CMが明け
ナレーター「これは今朝の朝日新聞一面。2015年4月2日に愛媛県や今治市の職員、そして加計学園の幹部が官邸を訪れた際、愛媛県の職員が作成した面会記録です。それによると、対応したのは当時の総理秘書官、柳瀬唯夫。柳瀬氏はこう語ったと言います。」
ナレーター②「本件は首相案件となっており、内閣府藤原次長の公式のヒアリングを受けるという形で進めていただきたい。自治体がやらされモードではなく、死ぬほど実現したいという意識を持つことが最低条件。」
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ナレーター「夕方、事態が動きました。」
記者「午後5時です。首相案件などと記された文書ができた件について、愛媛県が知事会見を開きます」
中村時広愛媛県知事「一人一人の担当職員に私も直接聞きました。新聞に出てるこの文書どうなのかという確認をしたところ、当時その担当職員が出席した会議の口頭説明のための備忘録として書いた文章であると。」
記者「面会については当時どういう報告を受けたんでしょうか。」
中村知事「非常に積極的に前向きに取り組んでいただいてるという感触は受けた。
記者「加計学園の新設を巡って、総理の関与についてどう受け止めている?」
中村知事「わかりません。本当にわかりません。コメントのしようがないです。」
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ナレーター「首相案件と発言したとされる柳瀬氏は去年、国会でこう答弁していました。」
今日7月24日の国会でのやり取りを放映。
民進党(当時)今井雅人衆院議員「今治市の課長と課長補佐にお会いになられましたか。そしてどんな話をされましたか。」
柳瀬秘書官「お会いした記憶はございません。」今井議員「会っている可能性も否定できないですね。そこだけ確認してください。言えない話じゃないでしょう。」
柳瀬秘書官「覚えてございませんので、会っていたとも会っていないとも申し上げようがございません。」
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ナレーター「今朝柳瀬氏はコメントを発表しました。」
ナレーター②「自分の記憶の限りでは愛媛県や今治市の職員の方にお会いしたことはありません。」
ナレーター「そして首相案件という発言もあり得ないと否定しました。しかし愛媛県の知事は。」
記者「首相案件と発言したことも本人は認めてるのか?」
中村知事「というか県の職員は何も文章をいじる必然性は全く無いわけで。ただ言えることは県庁職員は本当にまじめな職員ですから。しっかりと出席したものを、報告のために記述したというのは間違いないと思ってます。」
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愛媛県知事の記者会見後の柳瀬氏へのインタビューの様子を放映し
記者「会見を受けてどうですか」
柳瀬元秘書官「先ほど会見は拝見しましたけれども、今朝の私のコメント通りです。」
記者「しかし、職員を信じるという知事の発言と真っ向から対立すると思うんですが。」
(回答はなし。)■放送内容②
4月3日の加計学園の入学式の様子を放映し
ナレーター「当の加計学園では一週間前に入学式が行われたばかりです。開学を宣言する加計孝太郎理事長。」
加計学園・加計孝太郎理事長「取り組んでまいりましたこのプロジェクトが評価されたことと、獣医学部の新設がいかに強く待ち望まれていたからということを如実に示しているということを改めて認識をいたしました。」
ナレーター「獣医学部の新設に深く関わってきた、愛媛県の加戸前知事。」
前愛媛県知事・加戸守行氏「国家戦略特区諮問会議、民間有識者委員の魔法の発言で岩盤規制を突破して認められたということですから、本当に魔法をかけられることによって存在した、出産した獣医学部かなと思います。」
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ナレーター「52年ぶりに作られた獣医学部。しかし去年国会では」
去年3月13日の国会の様子を放映。
社民党・福島瑞穂参院議員「長年の友人じゃないですか。極めて長年の友人です。だからと聞きをしているんです。政策が歪められてるんじゃないかっていう質問です。」
安倍晋三総理大臣「まるで私が友人だから何かこの特区、様々な手続きについてですね、何か政治的な力を加えたかの如くの今、質問の仕方ですよね。それあなた責任取れるんですか全く関係なかったら」
ナレーター「疑惑の目が向けられた理由の一つは、加計孝太郎理事長が安倍総理の学生時代からの友人だったからです。そしてもう一つの理由、それはこの獣医学部が作られた国家戦略特区のプロセスにあります。」
ナレーター②「官邸の最高レベルが言っていること。これは総理のご意向だと聞いている。」
ナレーター「おととし文科省が作成した複数の内部文書には、特区を推し進めた内閣府の発言としてこんな言葉が記されていました。」
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去年5月17日
菅義偉官房長官「まったく怪文書みたいな文書じゃないでしょうか。出所も明確になってない。」
ナレーター「しかし文科省の調査が行われると、文書の存在を確認。そして総理のご意向を巡って。」
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去年7月24日
文科省前事務次官・前川喜平氏「和泉補佐官からこのことは、総理が自分の口からは言えないから自分が変わって言うのである、こういう話がございました。」
和泉洋人総理補佐官「まったく記憶にございませんし、したがって言ってございません。」
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ナレーター「獣医学部新設には京都産業大学も名乗りを上げていましたが、最終的には今治市と加計学園に決まります。」
去年6月5日
安倍総理大臣「正々堂々たる一点の曇りもない議論をしてきたのに、総理の意向で決めたかのごとく言われるのは憤懣やるかたない。」
ナレーター「しかし選定が適正だったと裏付ける記録は十分に残されておらず、加計ありきだったのではないかという疑いが今なお拭えていないのです。新たな文書の存在に。」
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当日の各党の政治家の記者会見を放映し
自民党・二階俊博幹事長「明けても暮れてもこういうことに終始するのは、国民の方もうんざりしているだろうと思いますが、我々も実際はうんざりしています。」
石破茂元国家戦略担当相「今まで政府がやってきたことが正しいのだということを証明する挙証責任は政府の方にあるんだと思います。」
立憲民主党・辻元清美国対委員長「まるで官邸は疑惑の館になってしまったんじゃないかと。総理のご意向というよりも、総理の主導があったからと思わざるを得ない。」
ナレーター「前川前次官は」
前川氏「柳瀬さんが面談したという事実は、これ自身がすでに首相案件であることを示すかなり明確な証拠だと思いますね。総理ご自身の関与を示す、かなり明確な証拠だと思う。(政府は)正直に認めた方が良いかと思います。」
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ナレーター「そして午後6時前、朝日新聞が文書の全文をネット上に掲載しました。総理官邸での面会でこんなやり取りがあったと記されています。」
ナレーター②「加計学園から先日安倍総理と学園理事長が会食した際に下村文科大臣が、加計学園は課題への回答もなくけしからんと言っている、との発言があった。今後策定する国家戦略特区の提案書と併せて課題への取り組み状況を整理して文科省に説明するのがいい。」
ナレーター「これまで安倍総理は、獣医学部の計画を初めて知ったのは去年1月20日だったと説明していました。」
■放送内容③
去年7月25日の国会の様子を放映。
「私と加計氏は政治家になるずっと前からの友人であります。しかしその立場を利用して何かを成し遂げようとしたことは、ただの一度もないわけでありまして、具体的に獣医学部を作りたいとか、あるいは今治にという話は一切なかったわけであります。」
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野党合同ヒアリング
ナレーター「首相案件だったのか。今日野党は。」
希望の党・山井和則衆院議員「首相案件だったんじゃないかと。皆さん違和感を感じられたんじゃないか。知っていたんでしょ。首相案件ということは。」
内閣府地方創生推進室・塩見英之参事官「首相案件であるかどうか。そして内閣府としてどういう認識があったかということについてはちょっとまだ私個人の事情でお話することは適当でないと思います。」
山井議員「ということは否定もされないということでいいですか。首相案件であったということは否定されないということでいいですか。」
塩見参事官「今私が首相案件だったと内閣府が認識していたかどうかについてお答えすることができない。」
ナレーター「野党は柳瀬秘書官の証人喚問を、求めていくなど反発を強めています。」
このナレーターの発言を最後にVTRが終了します。
【VTR終了】
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【スタジオ】
富川アナ「面会記録に書かれていた発言、こちらでちょっとまとめました。主な発言です。藤原、当時の内閣府次長は、要請の内容は総理官邸から聞いており、ですとか、かなりチャンスがあると頂いて良いというようなことを話したということなんですね。そして柳瀬、当時の総理秘書官こちらは首相案件となっておりと述べたとされています。」
「さらにですね、こちら。加計学園から先日、安倍総理と加計理事長が会食した際に下村文科大臣が、加計学園は課題への回答もなくけしからんと言っているとの発言があったとのことであり、これは状況説明ですね。その対応策について、愛媛県が柳瀬、当時の首相秘書官に意見を求めたところ、今後策定する国家戦略特区への提案書と併せて課題への取り組み状況を整理して文科省に説明するのが良い、という助言があったということなんですね。後藤さんはどこに注目を。」
後藤謙次氏「やはりその注目は首相案件という言葉ですね。これ何と言っても総理を想定されるような言葉ですよね。それからこの下ですね。この助言っていうのですよね。これ言ってみればですね、試験官が問題を教え、答え方まで教えてと言っていいですね。これずっと去年から問題になってました、加計ありき、という判断する上で誰が見てもおかしいよねっていう証拠が出てきたと言っていいと思いますね。」
富川アナ「ともかく加計ありきで進んでいて、しかも官邸が主導だったという証拠が出てきたと言えますね。そうですね。」
後藤氏「でも最大のポイントはですね、今治市が国家戦略特区に指定される前に地元自治体の職員と柳瀬秘書官があってたってことなんですね。柳瀬秘書官というのは、役人のせいにはしづらい、非常に総理に近い、ある意味一心同体と言ってもいい人に会ったという事実ですね。これによって一定の流れができてしまった。その意味でしかも県知事がですね、今日公の場で信じている、こう言ってるのは非常に大きいと思いますね。ともかく、今までの官邸の主張が大きく崩れていると。つまり、加計ありきという問題。総理の意向とかですね。官邸の最高レベル。これを裏付ける表裏一体の文書と言っていいと思いますね。」
富川アナ「あれは文科省でしたけれども、今度は愛媛県から出てきた。」
後藤氏「そうですね。言うなれば、ジグソーパズルの一番重要な1ピースが出てきた。そう言っていいと思いますね。」
富川アナ「安倍総理のこれまでの国会の発言も正しかったかどうかっていうことになってきますね。」
後藤氏「そうですね。この問題、一連の安倍総理の一強の忖度政治。その一端が表に出てきた言うことなんで、ちょっと振り返ってみますとこの加計の問題から森友問題、日報問題。いずれも去年の大きな問題だったんですね。一度火が消えかかったかに見えたもの、ぶり返してさらに大きく拡大してるっていうのが今の政治状況の特徴だと思いますね。」
富川アナ「柳瀬氏は現在逃げているような状況ですけれども、しっかり説明はしていただきたいですよね。」
この富川アナの発言を最後にこのコーナーは終了します。
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【検証部分】
今回の放送の問題点は大きく分けて3つあります。
1点目は印象操作ともとられかねない、過度な演出が見受けられること。
2点目は加計学園に関する情報が少なく、視聴者に誤解を与えるような内容であること。
3点目はスタジオでの富川アナ、後藤氏の発言が放送法違反に抵触する可能性があること。この3点です。
1点目ですが、まず冒頭の富川アナがVTRの振りをする際、富川アナの背後に置かれたのは、「首相案件」と書かれたバナー。番組は「首相案件」という印象を視聴者に植え付けたいと感じさせるような、言い換えれば誤解を招く内容になっていました。
また、記者がインタビューを試みたものの、その相手が答えない、または回答を控えるシーンを放映するということも併せて行っていました。
具体的には、冒頭で中村時広愛媛県知事の会見の一部を報道した後、記者たちが安倍総理に対して発言を求めるシーンが放映されました。
具体的なやり取りとしては、
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ナレーター「しかし愛媛県側は」
愛媛県・中村時広知事「国の方は正直に言われたらいいんじゃないか。」
次に午後6時の首相官邸の様子を放映。
記者「愛媛県知事が文書の存在を認めましたが?首相案件は事実ですか?」
(安倍総理は答えず)
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この演出はこの場面だけにとどまりません。
他にも中村知事が記者会見を行った後、経済産業省の内部で、現経済産業省審議官で元首相秘書官の柳瀬氏に対して記者がインタビューを試みるシーン。このシーンに至ってはCM前に1回、CM明けに一回放送されるなど繰り返し使用されました。
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記者「絶対に会っていないという確信があるか。」
柳瀬唯夫元首相秘書官「コメントの通りです。」
記者「面会されたか?」
(柳瀬氏側の回答は無し)
また
愛媛県知事の記者会見後の柳瀬氏へのインタビューの様子を放映し
記者「会見を受けてどうですか」
柳瀬元秘書官「先ほど会見は拝見しましたけれども、今朝の私のコメント通りです。」
記者「しかし、職員を信じるという知事の発言と真っ向から対立すると思うんですが。」
(回答はなし。)
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「答えない」というシーンは視聴者に「何かこの人たちは隠しているのでは。」という疑念を与えかねません。安倍総理が立ち去るシーンを放映した場合には、安倍総理と記者の距離は離れており、「聞こえなかった」という可能性が無いわけではありません。柳瀬秘書官の場合にも、本人が「答えるべきことには答えている」という意思表示をしているという側面を無視しているといわざるを得ません。
今回の過剰な演出は放送法第4条3項「事実は曲げないで報道すること」に抵触している可能性があります。
次に2点目についてですが、ナレーターは番組の中盤で
ナレーター「しかし選定が適正だったと裏付ける記録は十分に残されておらず、加計ありきだったのではないかという疑いが今なお拭えていないのです。」
と発言していますが、どんな文書や会議の記録を根拠にしてこの発言をしているのかが番組中に明らかにされることはありませんでした。「疑い」を持つ場合、疑いを持った根拠を示すことは当然ではないでしょうか。テレビ朝日のような巨大なメディアがそのような順序を飛び越えてしまっていることに対しては、違和感を感じざるを得ません。
最後に3点目ですが、後藤氏はスタジオで
後藤謙次氏「やはりその注目は首相案件という言葉ですね。これ何と言っても総理を想定されるような言葉ですよね。(以下略)」
「(中略)つまり、加計ありきという問題。総理の意向とかですね。官邸の最高レベル。これを裏付ける表裏一体の文書と言っていいと思いますね」
と発言。そもそも「首相案件」というのが安倍首相肝いりの「国家戦略特区」である可能性などを排除し、安倍総理による直接的な働きかけがあった、と断じる後藤氏の姿勢には疑問符を抱かざるを得ません。少なくとも、もう一つの意見を述べるべきだったのではないでしょうか。今回の放送は放送法第4条第2項「政治的に公平であること」に抵触している可能性があります。
今後も監視を続けます。