2018年4月24日 報道ステーション

2018年4月24日 報道ステーション

報道ステーション、2018年4月24日の報告です。

この日一番長く時間を割いたテーマは、「元広島東洋カープ 衣笠氏死去」についてでした。

今回は冒頭の「財務事務次官セクハラ疑惑」について報じた箇所について検証していきます。
詳しく見ていきましょう。
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富川アナ「セクハラ問題の結論が出ないまま、処分されないまま。今日の閣議で財務省福田事務次官の辞任が正式に認められました。財務省の次官が任期の途中で辞任するのは20年ぶりのこととなります。一方で、今日の麻生大臣。辞任については遺憾だとしながらも、福田氏がハメられたのではないかとの意見もある、と言った発言も出ました」
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富川アナが冒頭、記者へのセクハラを疑われた財務省の福田財務次官が辞任したことを伝えました。その後、辞任に対する麻生大臣のコメントが伝えられた後、VTRがスタートしました。
——–【VTR】
VTRは麻生大臣の取材での発言の様子から始まりました。
麻生氏「ハメられられてるんじゃないですか、世の中意見はいっぱいありますし」

今回辞任した福田事務次官が玄関先で取材を受ける様子が映し出されます。
ナレーター「セクハラを認めず、処分もなく、政府は辞任を了承。麻生大臣への責任論が強まるなか、自民党幹部からは…」
自民党の幹部が記者会見する様子が映し出されます。
森山裕自民党国対委員長「国会が異常な状態だと…」
竹下亘自民党総務会長「辞めるのも一つ、しっかりと解明をしていくのも一つですし…」
ここで一旦CMが入り、CM明けは麻生大臣が取材に応じる場面から再開されました。

麻生太郎財務大臣「事務方のトップである事務次官ですんで、この、自身のセクハラ疑惑等々によって辞職するように…辞任に至ったことは甚だ遺憾思っております」
続いて福田氏が映し出されます。
ナレーター「『抱きしめていい?』『胸触っていい?』などのセクハラ発言が報じられ、先週辞任を表明した福田氏。当初、福田氏は『女性記者と会食をした覚えもない』『お店の女性と言葉遊びを楽しむようなことはある』と、会ったこと自体、否定していました。テレビ朝日は先週、女性社員に対するセクハラがあったと公表し、抗議。すると…」

自宅前で報道陣に囲まれる福田氏が映し出されます。
福田事務次官「全体を申し上げれば、そういうもの(セクハラ)に該当しないのはわかるはず」
ナレーター「と、変わりました」

画面は閣議決定の様子と、麻生大臣への取材の場面に変わります。
ナレーター「結局、財務省としての処分はないまま、今日閣議で辞任が了承されました」
記者「事実認定はいつできるんですか」
麻生大臣「向こう側からの話を聞いて、双方の話を聞いたうえで弁護士事務所でやると」
記者「裁判になると、その、長期化もありうると予想されていますが」
麻生大臣「ありうるでしょうね、そりゃ」

テレビ朝日本社の様子が映し出されます。
ナレーター「財務省の調査に関して、テレビ朝日は今日、弁護士事務所に質問状を提出しました。内容は、財務省と事務所の関係や、調査公表に関する権限などについてです。調査の結果、今後セクハラがあったと認められたとしても、辞任した福田氏が懲戒処分を受けることはありません」

ここで再び麻生大臣の記者会見で、2人の記者とのやり取りが映し出されます。
記者A「官房付にして処分し、辞任を求めるべきとの野党の意見がありますが…」
麻生大臣「官房付にして、給料は誰が払うの」
記者A「え…」
麻生大臣「どうして?税金よ?野党は税金で払うべきだって言ってんの?」
記者A「あ…」
麻生大臣「いや聞いてんだよ俺が。質問してんだから」
記者B「裁判が終わってじゃないと処分はしないと」
麻生大臣「処分の仕方というのは少なくとも週刊誌の報道だけでセクハラがあったと認定してその場で減給っていうことにはいかがなものかということですから。ハメられて訴えられてんじゃないかと世の中いろいろいっぱいありますんで」

ナレーター「『ハメられた』という言葉を使った麻生大臣。下村元文科大臣もおととい講演で…」
下村博文元文部科学大臣(録音)「隠しテープで撮っておいて、テレビ局の人が週刊誌に売ること自体がはめられていますよね。ある意味で犯罪だと思うけど」
ナレーター「ある意味で犯罪と発言した部分については、昨日謝罪して撤回しています」

続いて、野党合同ヒアリングや記者会見でこうした発言を批判する議員の様子が写されます。
ナレーター「野党は強く反発しました」
福島みずほ参院議員「財務大臣もこんな『はめられた』みたいなことを言って、これ第二次セクシャルハラスメントですよ。被害者の女がとんでもない女だった可能性があると言ってるわけで、セクシャルハラスメント正々堂々と財務大臣がやってるんですよ」
柳瀬護財務省参事官「あくまでも、その、仮定…可能性、可能性はダメですね。仮定。あくまでも仮定の問題としてご発言されたものというふうに認識しております」
福島みずほ議員・尾辻かな子衆院議員「認識が間違ってますよ」「土台の認識が間違ってますよ」
尾辻かな子衆院議員「権力関係の下でずっと声をあげられなかった人が、やっと声をあげたら、加害者側から、『いや違う。ハメられてるかもしれないから』っていうんですよ。この認識は、大臣が全くセクハラというものを、問題を分かっていない。これでどうやって調査するんですか、どうやって次の処分があるんですか」
柳瀬参事官「大臣のご発言は、あくまでも一般的に人事処分をやるにあたっては、客観的な事実を認定していかなければいけない、という原則について述べたものだというふうに考えております」

ナレーター「与党からも…」
取材に応じる野田聖子総務大臣が映し出されます。
記者「無断で録音したり、外部に持ち出したりといった手法への批判が党内で出ているようですがそれとかついての批判などはどうなんですか」
野田総務大臣「これ、そういう事が起きてしまった背景または土壌、そこをやっぱりしっかりと確認しなければなりません。行動を取られた女性がそこまでせざるを得なかったことについて、あれ、もう少し冷静に、他の事案を踏まえてご理解いただければなと思ってます」や↓
ナレーター「今回、自己都合での退職となった福田氏には、およそ5300万円の退職金が支払われます」
菅官房長官の発言がフォーカスされます。
ナレーター「菅官房長官は…」
菅官房長官「懲戒処分に相当すると判断された場合は、その処分に相当する金額を退職金から差し引くこととし、当分退職金の支払いを留保する」
ナレーター「政府は退職金を保留するとしましたが、辞職した人への懲戒処分はできません。退職金から一部を差し引くと言っても、禁固刑に当たるような重大なケースを除けば強制的な返納は法律上できない仕組みです。自主返納は可能ですが、本人が拒むこともできます」

衆院本会議で野党席が目立つ様子が写されます。
ナレーター「今日も野党は麻生大臣の辞任などを求め審議に応じませんでした。与党は明後日集中審議を開くことを提案。野党が欠席しても審議を進めたい方針です」

続いて、首相官邸を訪れる公明党の山口那津男代表が映ります。
ナレーター「今日、官邸で一時間近く安倍総理と会談した、公明党の山口代表」
山口代表「もっと早く対応すべきであったと。やはり世論の厳しい批判が起きるのを予測しながら対応が遅れたと、こういう側面があるということを私から申し上げました」

ナレーター「自民党幹部からは麻生大臣の責任に言及する声も」
竹下亘自民党総務会長「大臣なり総理大臣というのは政治的責任を負っております。やめるのもひとつですし、しっかりと解明していくのもひとつですし。それぞれの政治家個人の判断に委ねられている部分が大きいと…」
この竹下総務会長の発言を最後にVTRが終了しました。
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【VTR終了】
富川アナ「今日の閣議で福田氏の辞任を正式に認めましたけれども、処分を出す前、でしたね」
後藤氏「そうですね。今回の辞任、非常に姑息なやり方だと思うんですね。調査を理由に処分はしない、その一歩で国民の批判が根強い退職金の支払いについて留保する。調査結果次第で減額する。いかにもこう、狡猾な感じがしますよね。そして財務省は調査、調査というんですけども、あの、音源はもう公開されてるんですね。で、音源自体はもう財務省の中でも十分特定できるわけですね。福田さん自身は『全体を見てほしい』そう言うんですが、その個別部分を取っただけでも十分にセクハラ問題として成立する、そういう自覚がないんですね」
富川アナ「あの公開されてる音声だけでも充分ということですか。一方で、麻生氏の責任論についても、自民党、公明党幹部からも言及されてますね」
後藤氏「まあ当然だと思いますね。今回、麻生副総理の姿勢も非常に問題なんですね。セクハラ問題の本質、根源、それを全く理解してないというのが今日の麻生さんの発言なんですね。とりわけさっきVTRにもありました『はめられた』という意見もあるという発言が、本人もそう思ってると言われても仕方がないんですね。そしてこの麻生発言の問題は、被害である女性を加害者に追いやるというで、非常に問題ある、ひどい、すり替えだと言ってもいいんだと思うんですね。で、さらに今回の副総理という非常に極めてポストの重い人が、何の根拠もなく言うと。それ言われた人は大変な圧力を感じるとどこまで思ったのか、そこを問いたいですね。さらに麻生さんは外務大臣をやり、総理大臣をやり、この程度の国際感覚を持たないのかということは、ちょっと恥ずかしいと思うし、安倍総理がこの問題について何ら発言しない、そこもですね、やはり日本社会が抱えているひとつの隠れた暗部と言ってもいいと思いますね」
小川アナ「あの、非常に深刻だと思います。はめられたという発言があったということは、そういう意見があると発言されたことは、やはりはめられたですとか、ハニートラップだとかはめられたとかそういった反応があることが怖いから、それを受ける可能性を考えて声を上げられないという方が非常に多い中で、今回の件の当事者に限らず今苦しんでる方の傷を非常に深める発言だと思います」
後藤氏「やっぱり政治家ってのは、大きな想像力をもってること、これは非常に大切な仕事なんですが、想像力のかけらもないっていうのが今回非常によく現れましたね」
この後藤氏の発言を最後にこのコーナーは終了します。

【検証部分】
今回の放送の問題点は大きく分けて2つあります。
1点目は、VTRの使い方が不可解であること。
2点目は、スタジオでの後藤氏の発言が放送法に抵触する可能性があること。
以上の2点です。

まず、1点目についてですが、このコーナーのCMに入る直前、こんなVTRが放映されました。
森山裕自民党国対委員長「国会が異常な状態だと…」
竹下亘自民党総務会長「辞めるのも一つ、しっかりと解明をしていくのも一つですし…」
いずれも党4役と呼ばれる(ほかに幹事長、選挙対策委員長)自民党内でも非常に地位の高い人々が今回の事態について発言したものをVTR化し、放映したものです。
特に竹下亘総務会長に至っては、「(大臣が)辞めるのも選択肢の一つだ」と発言しており、視聴者にとっても大きな衝撃を受けるであろう内容であることは容易に想像がつきます。
しかも、報ステはこのVTRをもう一度、しかも後藤氏や富川アナがスタジオでコメントする直前で放映。具体的には
竹下亘自民党総務会長「大臣なり総理大臣というのは政治的責任を負っております。やめるのもひとつですし、しっかりと解明していくのもひとつですし。それぞれの政治家個人の判断に委ねられている部分が大きいと…」
と多くの時間を割いて放映していました。
確かに、自民党の党役員が麻生財務大臣や安倍総理大臣の責任論にまで言及するのは非常に重みがあり、構図的にもわかりやすいものです。しかし、番組はそれを繰り返して報じたうえ、1回目のVTR放映では「辞める」という言葉を意図的に切り取ったような編集をしていました。したがって今回の放送は印象操作の疑いがあります。

次に2点目についてですが、後藤氏はスタジオでのコメントの中で
後藤氏「今回、麻生副総理の姿勢も非常に問題なんですね。セクハラ問題の本質、根源、それを全く理解してないというのが今日の麻生さんの発言なんですね。とりわけさっきVTRにもありました『はめられた』という意見もあるという発言が、本人もそう思ってると言われても仕方がないんですね。(中略)で、さらに今回の副総理という非常に極めてポストの重い人が、何の根拠もなく言うと。それを言われた人は大変な圧力を感じるとどこまで思ったのか、そこを問いたいですね。さらに麻生さんは外務大臣をやり、総理大臣をやり、この程度の国際感覚を持たないのかということは、ちょっと恥ずかしいと思う(以下略)」
後藤氏は麻生氏が「根拠もなくセクハラについて発言している」と言っていますが、麻生氏はあくまで可能性について言及しただけであり、後に釈明をしています。しかも、麻生氏は「意見もある」という発言に留めており、後藤氏の言う「本人も思っている」という発言には根拠がありません。
後藤氏は畳みかけるように「国際感覚」が無いと麻生氏を評していますが、何が「国際感覚」なのかすら指摘せずに発言。このような一方的な発言は放送法第4条2項「政治的に公平であること」に抵触している可能性が濃厚です。

今後も監視を続けていきます。

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