2018年5月6日 サンデーモーニング

2018年5月6日 サンデーモーニング

2018年5月6日のサンデーモーニングの報告です。
まずは、米朝首脳会談関連の箇所を取り上げます。

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橋谷能理子アナウンサー(以下、橋谷):お伝えします。5月中にも開催かと言われる米朝首脳会談。関係国の動きに注目が集まっています。
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【VTR】
・米朝会談に向けた動きが加速。
・シンガポールや板門店などが開催場所の有力候補に
・強硬派として知られるアメリカのボルトン大統領補佐官は、北朝鮮の非核化について2003年にリビアのカダフィ政権に核開発計画を放棄させた際のいわゆる「リビア方式」を採用するべきと発言。しかし、核放棄後、アラブの春で、カダフィ政権が妥当されたことなどから、北朝鮮側は、この方式には消極的とされる。
・5月4日、トランプ大統領が北朝鮮に拘束されている3人のアメリカ人の解放について、前向きな見方を示したうえで、オバマ前政権の北朝鮮政策を批判した。

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【コメンテーターの発言】
橋谷:米朝首脳会談最大のテーマとされる非核化なんですが、双方の思惑に食い違いがあるようなんですね。金党委員長は段階的・同時的措置、段階的に核を凍結して、その都度経済制裁の解除を求める、そういった意向のようなんですが、ボルトン大統領補佐官は、最初に核を廃棄させて、そのあと経済制裁の解除をする、というリビア方式を想定している、というふうにちょっと食い違いが見られます。そんな中、韓国の安全保障のキーマンとされます鄭義溶(チョンウィヨン)国家安全保室長が訪米しまして、ボルトンさんと会談を行ったとホワイトハウスが発表しました。この双方の意向の食い違いを埋めるために、仲介に乗り出したとみられているんですね。

司会 関口宏(以下、関口):その米朝首脳会談がどこで行われるのかもう決まったと言いながらまだ発表はされてないんだね」。

橋谷:されてないですね。

関口:さあ、秀征さん、どうご覧になってますか?

福山大学客員教授 田中秀征(以下、田中):トランプ大統領、テンション高いですよね。明るくて元気すぎるくらい元気だから、上手くいってるのかな、ということになると。さっきのリビア方式の、さっきの。
それと、どうですかね、やっぱり板門店、板門店って言っちゃいけないんかね。僕はそのときにこう、拉致している3人を連れてね、階段を下りてくるんじゃないかっていうことまで考えてるんだけど、今、平壌にいるみたいで、その辺は分からないんだけど、なんかそういう演出まで考えていて、サプライズがあるっていうふうにトランプ大統領を見てるとわかるんで、問題はその、リビア方式で行けるかなんだけど、これちょっと曲がったら、彼すぐ不機嫌になるから、これ元気だから、どんどんその線で押してもらいたいですよね。どうしてもね。今までのことがありますからね。

関口:西崎さんどうご覧になってる?

東京大学大学院教授 西崎文子(以下、西崎):そうですね、あのボルトンさんっていうのは非常に挑発的な人なので、あそこでリビア方式とわざわざリビアの名前を出した、FOXニュースでですね、それは意図があると思うんですね。やはり、かなり北朝鮮に対して強く出るってことを示していると。で、トランプさんの方は恐らくそこら辺の摺り合わせが、私はちょっと田中さん、秀征さんと違って摺り合わせできてないんじゃないかなっていう気がして、トランプさんはもう自分の中間選挙もあるし、ノーベル賞なんて言葉も言われたし、自分のその会談の成果を、それに集中しているといいますか、それで有頂天な感じになってるんじゃないかなって先行きはかなり、まだ不透明だと思います。

関口:藪中さんの見方は。

藪中三十二(以下、藪中):そうですね、僕もすっとね、同じような感じをもってるんですけれど、トランプさんは、関心は何かっていうとですね、非核化っていうよりはむしろね、戦争を終わらせると。朝鮮戦争を終わらせるんだと。だから南北首脳会談もどんどんやれとか言ってましたですね、戦争を終わらせるんなら、がいいんじゃないかと。そんなこともあるかわかりませんですね。象徴的な場所として。本来は非核化っていうのをちゃんと道筋をつけて、その上で平和協定と。これがまあ戦争を終わらせるんですね。今同時並行的にやろうと、年内に、まさに平和協定作りましょうよと言ってますですね。で、本当は、非核化がどこまでいくのか。リビア方式ってのは言うのは簡単なんですけれどね、リビアと北朝鮮は全く違うんですね。リビアは全くまだ初期段階、開発も大したことやってなかったんですね。もう北朝鮮はあんなにやってますからね。ホントにこれがきちんとできるのかどうか。これをトランプさんはどこまで頭に入ってるか。ボルトンさんが言ってもですね、親分のトランプさんの頭は、「俺は戦争を終わらせるのがいいんだ」。これがちょっと心配なとこですね。

関口:谷口さんは。

大阪国際大学准教授 谷口真由美(以下、谷口):この間その、日本がどういうスタンスで、米朝に向き合ってるのかっていうのが、あんまり伝わってこないっていうところも気になるところで、先立て、日米首脳会談の際に在韓米軍を減らすっていう話が出ていて、それは朝鮮半島の危機がすごくあるから在韓米軍っていうのはもう置いとくべきだって言ってた、じゃあその後、日本に在韓米軍を減らした分が来るのかどうかとか、いろんなことを含めて、実はその米朝とか、いろんなところでですね、だから日本のスタンスを私はちゃんと見たいなっていう気がするんですよね、どういうスタンスでいってるのかっていうのを安倍さんからお伺いしたいなっていう気がするんです。

関口:青木さん。

ジャーナリスト 青木理(以下、青木):藪中さんがおっしゃったように、リビア方式って全くそんな簡単な話じゃないですよね。核放棄って簡単に言うんですけど、おそらく今の北朝鮮の状況、事実上核保有国になってるんじゃないかってことになってると、検証して、除去をしてとかってその後また検証してとか、おそらくね、数年単位でかかるはずなんですよ。その作業だけでね。だからリビア方式って言うほど簡単ではないので、おそらくね、どこかの段階でやっぱり段階的・同時的措置ってのは必要になってくるんだと思うんですよね。ただ、朝鮮半島を取材してて、大きく変わったなと思うのは、2000年の南北首脳会談のときには、金大中大統領が南北首脳会談をやったんですけど、その後ブッシュ政権に変わっちゃって、アメリカと韓国の動きが分かれちゃったんですよね。今回一応、文在寅政権とトランプさんが同じ方向に向かって動いているので、おそらく、何らかの成果、米朝首脳会談が行われれば成果は出ると思うんですよ。むしろ心配なのは、北朝鮮側は、米朝首脳会談をやるだけで大成果なんですよね。で、トランプ政権側もどうもあのはしゃぎっぷりを見ていると、国内に成果がない中で、これを何とか成果にしたいって思っている節があるので、あまり実は内容がないのに、成功した成功したっていうような米朝首脳会談になるっていう可能性があるっていうことですよね。そうなってくると、むしろ、谷口さんが仰ったように日本が心配で、トランプさんと100%一緒にいるって言ったんだけれど、梯子外されちゃって、日本だけ全く置いてけぼりになっちゃったっていうのがさらに深まるんじゃないかっていうのが、僕は今、ひょっとすると、日本の政権、外務省なんかが一番心配してるところなんじゃないかなっていう気もしますよね。

田中:僕が言ってるのはその、リビア方式を何が何でも貫けってことじゃなくて、落としどころとして言ってるんじゃなくて、その建前で押していかないとダメですよってことを言ってるんであって、落としどころを、早くしろっていう必要は全くないと思うんです。見方それについても。

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続いて日本の政界についての箇所に移ります。
【VTR】
・5月2日(水)衆院・厚生労働委員会の映像を流し、安倍内閣が今の国会の最重要法案とする、働き方改革関連法案の実質的な審議が始まったことを伝えた。
・野党6党は、この日も欠席。これは先月20日から続いている。
・野党の質問時間が過ぎるのを待つ「空回し」がおよそ4時間半も続く。
・柳瀬元総理秘書官が、加計学園関係者との面会を国会答弁で認めることにより、国会正常化を図る方向で調整に入った。
・柳瀬氏は昨年7月に国会で面会の事実を否定していた。
・森友学園をめぐる問題でも、国有地の売却交渉が行われていた当時財務省の理財局長を務めていた迫田元国税庁長官が、大阪地検特捜部に任意で事情聴取されていたことが、2日、分かったのです。
・5月3日、安倍総理は憲法改正を目指すグループが開いた集会にビデオメッセージを寄せた。
・5月4日、麻生財務大臣は、財務省の福田前事務次官のセクハラ問題について、
「セクハラ罪という罪はないんですよね、あなたもよく知っているように。これは殺人とか強わい(強制わいせつ)とは違いますから、訴えられないかぎりは親告罪ですから。」と発言した映像を放映。

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【コメンテーターの発言】
水野:今の国会では、森友・加計学園問題をめぐる疑惑や、財務次官のセクハラなど、問題が相次ぎました。これらを理由に、日本維新の会を除く野党6党は、先月20日から国会の審議に応じていません。質疑が行われず時間だけが消化される、いわゆる空回しの時間が、合計でおよそ13時間50分にのぼっています。
 そして柳瀬氏なんですが、今後、国会答弁で、加計学園の関係者と面会したことを認める方針だとされているんですが、国会招致の時期はまだ決まっていません。通常国会は来月20日に会期末を迎えますが、働き方改革関連法案などの審議は十分に行なえるのでしょうか。

関口:各党それぞれの事情はあるんですが、もうそろそろ何とかしてください。まあ、空回しっていうんですか。もうほんとに、止まっちゃってる感じがするんですよね。谷口さん、これどういうふうにご覧になってる。

谷口):働き方改革って、すごく大事な法案で、このままいったら、働かせ方改革になっちゃうんじゃないかっていうところで、野党も応じてないっていうのもやっぱりどうかと思うんですよね。だけど野党が応じなかった背景は、与党が誠実に対応してこなかったっていうのがあるはずなので、やっぱそもそも論に戻ると、映像だけ見ると、野党がなんかすごく悪いように思えちゃったりするんですけど、原点っていうのを考えなきゃいけないなっていうのはあると思うんです。やっぱり政府の、一連のこの誠実さに欠けるっていうのは、麻生さんのあのセクハラ罪っていう罪はないっていう言葉とかに出てると思うんですよね。セクハラは罪じゃ、刑事ほう助の罪じゃなかったらやっていいのかっていう話になってしまうと思うんですけど、それを迷惑行為として、処分したみたいなことになると、セクハラは迷惑行為じゃなくて性暴力なんだっていう認識を国のトップがもっていないっていうことにすら、やっぱり憤りすごく覚えるわけで、だからやっぱ誠実な対応っていう、柳瀬さんも仰っていましたけれど、本当にちゃんとしてくださいっていうところが、一番申し上げたいところですね。

関口:この状況を動かすためには、自民党としてはどうしたらいいと思ってます? 秀征さん。

田中:信頼回復ですよね。憲法憲法っていうけど、憲法っていうのも、ほんとに国民が納得できる形で手続きを進めなきゃいけないし内容もそうでなきゃいけないんで。性急すぎて、とても今の日程でできるとは僕は思わないんで、とにかく信頼を回復しなきゃいけないときに、こういう事態になっているっていうのは、やっぱりなんか、憲法をもってきて、他の問題から目をそらさせるっていうような感じに見えちゃう。どうしてもね、そういうふうに見えちゃうし。柳瀬って人は僕が見るに、毎日まあ、映像で見てて、自分のために嘘を言える人じゃないですよ。非常にこう誠実な感じになって・・・

関口:自分のためじゃなくて誰かのためとか?

田中:だから組織のためとか、そういうことで。で、大体あの認める方針か認めない方針かっていうのはおかしいでしょ。

関口:おかしい。

田中:事実はひとつしかないんだから。ほんとおかしいと思うんですよね。ですから、出てくるなら、ほんとに、腹を決めて、ほんとのことを言ってもらいたいですね。そうすると展開しますから。

関口:西崎さん。

西崎:やっぱりあの、基本的の森友、加計問題から始まって、いろんなことが、正直な答弁がなされていなかった、っていったらジャーナリズムの方からそれを暴露されたり、文書が出てきたり。それを全部言いつくろっている間に、こんなような状態になってしまったので、やっぱりそこはもとに立ち戻らないと、この状況は、国民も含めて納得しないと思います。

関口:なんかとにかく動かさないとね。なんか止まっちゃってますよ。藪中さんはどうご覧に。

藪中:そうですね、ですから、国会の働き方改革が必要かなと思いましてですね。国会自身がね、きちんとやらなきゃいけない。そういう意味で言うと、今まさに、信頼、国民の信頼が失われてると。それがまず第一ですね、それを回復すると。それから、まあ、役人をやってた者から言いますとね、官僚っていうのはもう、きちんと責任をもって真実を話すっていうのは当然のことですからね、そこがまあ、疑われるようでは話にならない思いましてですね。その辺のところをきっちりやっていただきたい、というのが第一歩じゃないでしょうか。

関口:青木さん、どう見てます?

青木:皆さんお話に出ましたけど、官僚の方は、記憶っていうのは調整したり方針を固めると蘇ってくるんだなって思っちゃいますよね。これそもそも、VTRの中にあった、整合性をとるために、愛媛県とか今治じゃなくて加計学園の関係者と会ったっていうのだったら整合性とれるっていうんだけど、加計ありきっていうならそっちの方がよっぽど問題なんですよね、だからそれもおかしな話だし。もうおかしなことだらけで、僕その、道徳なんてものをね、国家が押し付けるっていうのは基本的におかしいと思ってるんですけれども、この春から小学生に道徳の教科化が始まって、僕その指導要領を見たんですけれども、嘘ついちゃいけない。誤魔化しちゃいけないって書いてあるんですよ。なんすかね、こういう皮肉はともかくとして、こういうことが国家の最高機関で行われてるってことによる、ある種の社会のモラルっていうかね、根本的モラルの崩壊っていうのが、これちょっとほんとに取り返しがつかないことになりかねないっていうことを、国会の議員の皆さんも、官僚の皆さんも考えてもらいたいなっていう風に思いますよね、僕はね。

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【検証部分】
今回の放送の問題点は大きく分けて2点あります。
1点目は、米朝首脳会談関連の話題を取り上げたコーナーにて、トランプ政権、日本政府の姿勢について放送法違反に抵触しかねない批判を行っていたこと。
2点目は、加計学園問題関連の話題を取り上げたコーナーにて、コメンテーターがその時点で明らかになっていなかったことについて批判しており、印象操作ともとられかねない内容になっていること。
以上の2点です。

まず、1点目についてですが、スタジオにてコメンテーターの青木氏が
青木氏:藪中さんがおっしゃったように、リビア方式って全くそんな簡単な話じゃないですよね。(中略)今回一応、文在寅政権とトランプさんが同じ方向に向かって動いているので、おそらく、何らかの成果、米朝首脳会談が行われれば成果は出ると思うんですよ。むしろ心配なのは、北朝鮮側は、米朝首脳会談をやるだけで大成果なんですよね。で、トランプ政権側もどうもあのはしゃぎっぷりを見ていると、国内に成果がない中で、これを何とか成果にしたいって思っている節があるので、あまり実は内容がないのに、成功した成功したっていうような米朝首脳会談になるっていう可能性があるっていうことですよね。
この発言の中には、トランプ政権は米国内で成功していないからこそ、今回の米朝首脳会談を成果にしたいのだ、という趣旨の内容が含まれています。青木氏はトランプ政権の国内政策について「成果がない」と表しながらも、実際に米国ではどんな政策がすすめられているのか、また、アメリカ国民が今の政権に対してどんな感情を抱いているのかについて一切言及していませんでした。根拠もなく一国の政権の方針を批判することは放送法違反に抵触する可能性があります。
また、その後、青木氏は
青木氏:そうなってくると、むしろ、谷口さんが仰ったように日本が心配で、トランプさんと100%一緒にいるって言ったんだけれど、梯子外されちゃって、日本だけ全く置いてけぼりになっちゃったっていうのがさらに深まるんじゃないかっていうのが、僕は今、ひょっとすると、日本の政権、外務省なんかが一番心配してるところなんじゃないかなっていう気もしますよね。
と発言していますが、なぜ日本がはしごを外されるのかについては全く言及がありません。そもそも青木氏は「全く置いてきぼりになることがさらに深まる」としていますが、本当に日本が国際社会の中で孤立しているのかについては様々な意見があり、そのような状態にあることを前提として話しているのには少々違和感を感じました。これは視聴者に対して前提条件を強制している、と捉えられてもおかしくありません。

また、2点目についてですが、加計学園問題を取り上げたコーナーにて青木氏は
青木氏:皆さんお話に出ましたけど、官僚の方は、記憶っていうのは調整したり方針を固めると蘇ってくるんだなって思っちゃいますよね。(中略)もうおかしなことだらけで、僕その、道徳なんてものをね、国家が押し付けるっていうのは基本的におかしいと思ってるんですけれども、この春から小学生に道徳の教科化が始まって、僕その指導要領を見たんですけれども、嘘ついちゃいけない。誤魔化しちゃいけないって書いてあるんですよ。なんすかね、こういう皮肉はともかくとして、こういうことが国家の最高機関で行われてるってことによる、ある種の社会のモラルっていうかね、根本的モラルの崩壊っていうのが、これちょっとほんとに取り返しがつかないことになりかねないっていうことを、国会の議員の皆さんも、官僚の皆さんも考えてもらいたいなっていう風に思いますよね、僕はね。
と発言していますが、この放送があった時点では、柳瀬秘書官や政府、あるいは加計学園のいずれが虚偽の発言をしているのか、あるいはしていないのかということは一切判明していません。真実が明らかになっていない段階で、「嘘」や「誤魔化し」が国家の最高機関で行われているように断定することは視聴者への印象操作と疑われかねません。

以上のことから、今回の放送は放送法第4条2項「政治的に公平であること」、第3項「事実は曲げないで報道すること」に抵触している可能性があり、印象操作も強く疑われる内容となっていました。これは一向に改められる気配がなく、悪質なものと言えます。

今後も監視を続けます。

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