2019年1月27日 サンデーモーニング(前編)

2019年1月27日 サンデーモーニング(前編)

サンデーモーニング、2019年1月27日分の検証報告(前編)です。

今回の報告では、
FCレーダー照射問題で韓国が自衛隊機の「威嚇非行」を非難した件について報道された部分
県民投票の全市町村での実施について報道された部分

以上2点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを2つに分け、前後編でお送りいたします。

前編で検証するのは、
① FCレーダー照射問題で韓国が自衛隊機の「威嚇非行」を非難した件について報道された部分

となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

【VTR要約】
「日本側が一旦幕引きを図ろうとした途端に、韓国側が新たな問題を持ち出しました」という橋谷アナの言葉からVTRが始まる。まず自民党・国防部会の会合の映像が流される。韓国に厳しい対抗措置を取るように求める意見が出ており、山本部会長が「堪忍袋の緒が切れた」と意見を述べる映像が流される。その後、防衛省が証拠として公開した火器管制レーダー音が流され、防衛省が協議継続が困難だとして打ち切りの考えを示している一方で、韓国側は強く反発していると報じた。続けて韓国・国防省の会見映像に切り替わり、日本側に正確な証拠と謝罪を求めたと説明している。
 CM後、韓国国防省の緊急会見映像が流される。会見では日本の自衛隊機が低空威嚇飛行したと発表し、日本を非難したとアナウンサーによる説明がされ、日韓外相会談の映像に切り替わる。会談では康外相が「威嚇飛行したことを遺憾に思う(字幕)」と述べたのに対し、河野外相は「近距離での飛行はしていない」と反論したが、韓国側は証拠写真を公開するなど一歩も引かない構えだとアナウンス。これに対し岩屋防衛相が「事実とは異なっている」と記者団の質問に答える映像が流される。また、韓国の前最高裁長官の逮捕を報じ、文大統領は捜査の推移をみて徴用工問題の対応を決めることを示唆しており、日韓関係に影響を及ぼす可能性があると説明。「(日本と韓国の)関係を修復する道筋は見えないままです」というアナウンサーの言葉とともにVTRは締めくくられる。

【アナウンサーによるパネル説明】
・韓国の強硬姿勢の背景には世論の存在があり、14日の世論調査によると、日本への対応について「強硬姿勢を支持する※」と答えた人が83%にのぼっている(世論調査 今月14日 リアルメーター)
※「現状通りに」37.6%、「より強硬に」45.%を合わせたもの
・一方で、朝鮮日報・中央日報・世界日報は外交による解決を訴えており、冷静な対応を求めるメディアもある

【コメンテーターの発言】
藪中三十二氏(要約):徴用工問題は国と国との約束事だから、守ってもらわなきゃいけない。日本にとって大事なことは、原理原則守るということ。文大統領にとっては、中国が黙ってることは計算外だったと思う。慰安婦問題では、中国と韓国が一緒になってアメリカの世論に働きかけた。今回は中国の存在がないので、日本のやっていることは真っ当なことなんだと言いつつ距離を置いて、韓国国内でも「こりゃいかんな」という感じが出てくるといいなと思う。

谷口真由美氏(全文):韓国の主要なメディアが、そうやって冷静なことを呼びかけているのに、ずっと日本のメディアは、割と私は煽り気味なのかなという気がするんですね。で、結局なんかこれを続けてくことで、一体だれが得をするんだろうかという気もしていて、結局、なんかその、これ幸いとこれをネタに使っている、使える人がいるんじゃないかなっていうようなことを考えてしまうわけです。それは、両国の国民にとって、果たして得する話なのかっていうと、決してそうではなくって。だから冷静な対応もそうですし、今こそ民間外交としては、政府はなんか揉めてはるけど、私たちは違うよねっていうような冷静な対応。それから、前にも申し上げましたけれども、在日のコリアンの人々に対するヘイトとか差別がこれによって起こるようなことは絶対にあってはならない話なので、そこときちんと政府の話は区別して世論というのを形成していかないといけないんじゃないかなと思います。

寺島実郎氏(要約):日韓関係悪化の背景を考えてみると、北朝鮮の脅威が後退していることで、問題が日本に向かっているという構図がある。中国の台頭のエネルギーを受けて、中国と関係をもって中国とともに進もうとしているという部分が韓国にあり、アメリカ側への信頼感のなさがそれを後押ししている。そのあたりの苛立ちが、日本という関係に突き刺さってきているということを我々は考えるべき。大事なのは両国の指導者。指導者が国民の目線を上げるべき。日韓が連携しなければ北朝鮮の問題も次のステップには進まないんだとか、そういうことを語りかけて説得すべき。韓国の新聞メディアにもそういう流れが出てきていて若干安堵感がある。

西崎文子氏(全文):やっぱり韓国と日本との関係って本当に歴史的に複雑ですし。それから、やっぱり層が、やっぱり細いと思うんですね。ですから、政府と政府との対立というのが、さっき谷口さんがおっしゃったように、世論をこう、火をつけてしまうと。逆でなくてはならなくて、やはり政府同士というのはいろんな複雑なものを抱えていて、日韓基本条約も、やはり朴政権の下であって、それが、政権が倒れて軍事政権が倒れていくっていう。そういう民主化の経緯が韓国にあるので、そこは理解はできるわけですが、その部分を政府間関係で正すっていうのは難しいと思うんですけども、世論とか、それこそ市民とか、そういったレベルでは、いろいろ対話を続けることができるわけですよね。ですから、やはり厚い関係というのを、もっともっと培っていかなきゃいけないと。その中で、政府と政府が対応していくってことが、可能になってくるんだろうと思います。

松原耕二氏(要約):自衛隊の元幹部の方とお話してると、これまでの日韓関係は政治同士が熱くなって、現場と軍は冷静だった。しかし今回は軍も感情的になってるという。これはとても危険だと思った。もう一つ懸念するのは、3月1日が独立運動100周年という大きなイベントがある。これで初めて南北共同作業が行われる。対日批判という面で南北がさらに接近する。これは日本にとってだけでなく、核問題にもかなり影響があると思う。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の2点です。

1、谷口氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
3、西崎氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている

それぞれ順を追って解説します。

1、谷口氏の発言に、視聴者に誤った印象を与えかねない内容が含まれている
谷口氏は今回の報道で、以下のように述べています。

谷口氏(抜粋):韓国の主要なメディアが、そうやって冷静なことを呼びかけているのに、ずっと日本のメディアは、割と私は煽り気味なのかなという気がするんですね。で、結局なんかこれを続けてくことで、一体だれが得をするんだろうかという気もしていて、結局、なんかその、これ幸いとこれをネタに使っている、使える人がいるんじゃないかなっていうようなことを考えてしまうわけです。それは、両国の国民にとって、果たして得する話なのかっていうと、決してそうではなくって。だから冷静な対応もそうですし、今こそ民間外交としては、政府はなんか揉めてはるけど、私たちは違うよねっていうような冷静な対応。それから、前にも申し上げましたけれども、在日のコリアンの人々に対するヘイトとか差別がこれによって起こるようなことは絶対にあってはならない話なので、そこときちんと政府の話は区別して世論というのを形成していかないといけないんじゃないかなと思います。

要旨をまとめると、
・韓国の主要メディアが冷静になるよう呼びかけているのに、日本のメディアはずっと煽り気味
・これをネタに使っている人がいる
・両国の国民にとって得な話ではない
・民間外交は政府と違い冷静になるべき
・在日コリアンへのヘイトがこれによって起きてはいけない
というものです。

しかしながら、
・日本はレーダー照射をされた側であり、韓国を非難する報道が増えるのは自然
・ネタに使うという言葉の定義があいまいで、かつ根拠に欠ける
・この問題は両国の損得の話ではなく、国際常識と安全保障上の極めて重大な問題。問題を矮小化するようなこうした主張は政治的公平性を欠くものと言わざるを得ない
・民間外交がヒートアップしているということを示すものはない
・在日コリアンの問題はこの問題とは全く無関係で、かつそれを示す証拠もない

以上のことから、今回の報道での谷口氏の発言は政治的に公平性を欠き、かつ事実にそぐわないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2項「政治的に公平であること」、ならびに同第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「この問題を長期化させることは双方の得にならない」「日韓共に冷静になるべきだ」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「国家間の信頼にかかわる問題であり、真剣に向き合うべき」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の前編となります。前編では、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

この続きの
FCレーダー照射問題で韓国が自衛隊機の「威嚇非行」を非難した件について報道された部分の
検証3「西崎氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている」

ならびに、
県民投票の全市町村での実施について報道された部分
については、後編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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