報道ステーション、2018年6月25日分の報告です。
今回の報告は、当日の国会審議についてです。
それでは見ていきましょう。
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小川アナ「さて、続いてのニュースに参ります。国会です。来月下旬までの大幅な会期延
長が決まってから初めての総理が出席する論戦となったんですけれども、森友加計問題か
ら北朝鮮までテーマとなるなか、審議は立て続けに6回も中断・紛糾しました」
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小川アナが当日の国会審議について、議論が紛糾し、中断なども相次いだことを伝え
VTRがスタートしました。
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【VTR】
安倍首相「記者会見は、この、独特の雰囲気がありますから、不慣れな人にとっては一問
一答でたたみかけられると、時には質問の趣旨を取り違えて答えてしまったといったこと
がありよるんだろうと思っておりますが…」
VTRは安倍首相の答弁から始まりました。
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続いて、加計理事長の記者会見の様子が映されます。
ナレーター「安倍首相が擁護したのは、40年代の友・加計学園の加計孝太郎理事長。先週
ようやく開いた記者会見で、獣医学部新設について『総理と話をしたことはない』と説明
しました」
国会答弁で国民民主党の原口一博議員がこの記者会見について糾弾する様子が映されます
。
原口議員「25分、短い記者会見でしたけども、加計理事長の説明責任は果たされたと総理
はお考えですか」
安倍首相「政府として、その内容や評価についてコメントする立場にはございません」
原口議員「加計理事長の記者会見で、やっぱり安倍総理のこれまでの発見との食い違いが
あるんですよ…」
↓
ここで、去年7月の安倍首相の国会答弁の様子が流されます。
安倍首相「『新しい学部や学科の新設に挑戦していきたい』という趣旨の話は聞いたこと
ございます…」
続いて、加計理事長の記者会見の様子が流されます。
記者「これまで理事長は総理に対して獣医学部新設の話はまったくしていないんですか
?」
加計理事長「しておりません」
この発言の相違を原口議員が質問します。
原口議員「これ話が全然矛盾してます。食い違ってます。加計理事長、この国会に証人喚
問としてお呼びすることを求めたいと思います」
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ナレーター「国会での発言について、加計理事長は…」
加計理事長の発言が流されます。
加計理事長「それは私が決めることではございませんので、お待ちしております」
↓
国民民主党の伊藤議員が安倍首相に国会へ加計理事長を証人喚問するよう要求します。
伊藤議員「今総理がすべきことはただ一つです。今、与党の理事席に向かって、すぐに(
国会招致を)やってくれということだと思います」
安倍首相「私が内閣総理大臣として自民党の理事に指示を出すことは、これはまことに越
権行為であり、あってはならないことではないかと…」
ナレーター「政府与党は、加計理事長を国会に呼ぶ必要はないとしています」
ここで場面が変わり、野党議員が委員長席に詰め寄る場面が流されます。
野党議員「おいなんだよ!」
ナレーター「紛糾したのは、森友問題をめぐってです。先月財務省は、森友学園との交渉
記録を公表しました」
↓
ここで画面が変わり、共産党が入手したとされるメモを朗読する場面が入ります。
ナレーター「しかし、その公表を前に財務省と国交省がやり取りしていたとされるメモを
、共産党は独自入手」
国交省作成とされる文書(注:左上のテロップの表記ママ)「近畿財務局と理財局のやり
取りについては、最高裁まで争う覚悟で非公表とするのだろう」
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ナレーター「都合の悪い交渉記録を隠し通そうとしたのではないかと追及しました」
この文書について共産党の大門実紀史議員が質問する様子が映されます。
大門議員「調査して文書の存在の有無を公表するのは当然のことではないかと思いますが
、大臣いかがですか?」
石井啓一厚生大臣「出所が不明でありまして、体裁から見えましても行政文書とは思えま
せん。どういう性格の文書か分かりかねますので、お答えは差し控えさせてさせていただ
きたいと思います」
大門議員「調べるぐらい何故できないんですか、調べることを何故拒否するんですか」
石井啓一厚生大臣「責任をもって作成されたものかどうか、文章は不明であることでそう
いった意味で確認することは差し控えさせていただきたいと考えております」
この答弁ののち、大門議員は委員会の席を離れて石井大臣の席に詰め寄り、ほかの野党議
員もヤジを飛ばします。
野党議員(ヤジ)「調査してくださいよ」
野党議員(ヤジ)「財務省は調査したんだから」
野党議員(ヤジ)「国交省は調査すらしないのか」
ナレーター「調査を拒む国交大臣の対応に、審議は6回も中断。それでも大臣は…」
石井啓一厚生大臣「どういう対応ができるか検討したいと思います」
ここで野党議員が再び抗議のヤジを飛ばす場面を最後に、話題は北朝鮮問題へと移ります
。
↓
ナレーター「北朝鮮問題についても、議論に…」
立憲民主党の福山哲郎幹事長が安倍首相に質問する様子が映されます。
福山幹事長「最近総理は、金正恩委員長に対して、評価をして前向きな言葉を使われるよ
うになりました」
ここで、18日の安倍首相の発言が取り上げられます。
安倍首相(18日)「金正恩委員長には、米朝首脳会談を実現したという、そういう指導力
があるのは事実であります」
福山幹事長「これまで『対話のための対話はしない』と言っていたことを思えば様変わり
だと思います」「(非核化への)手応えを総理はトランプ大統領との電話会談などでつか
まれたのですか、と…」
安倍首相「手応えはどうかといわれればですよ、もうどんどん進んでいく具体的な行動を
取っているわけではないわけでございますが、北朝鮮の委員長がトランプ大統領に直接「
完全な非核化」と述べているんだと米国が理解していると、説明を受けているわけでござ
います」
福山幹事長「拉致問題も同様だと思います」「金正恩委員長から何らかの形でオープンな
議論をしてもいいという反応があったのでしょうか」
安倍首相「金正恩委員長がどのように反応したかということについても、大統領から話を
聞いておりますが、そのやり取りについては、ここでご紹介させていただくことは控えさ
せていただきたいと思います」
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【VTR終】
VTRが終わり、富川アナがコメンテーターの後藤謙二氏に話を聞きます。
富川アナ「国会の会期は7月22日までに延長されましても、野党としては今日明日あさっ
てと、総理を直接追求できる格好の場となった訳なんですね」
後藤氏「はい、ただ今日その一番のポイントはやはり先週19日に加計孝太郎氏がやった記
者会見の中身について安倍総理はどう答えるかということなんですが、我々の想定内でし
たね。やはりはぐらかしに終始してしまった。ただ、安倍総理はですね、『加計さんの質
問が嘘をついてるんじゃないか』と追及された時にさっきVTRにもありましたように、記
者会見で不慣れな人がですね、一問一答形式で畳み掛けられると、質問を取り違えてしま
うようなことがあるんだとですね、加計さんをかばうような発言があったんですね。と同
時に、加計さんはじめ関係者全員を証人喚問すべきだとする要求に対しては、『自分は内
閣総理大臣だ、自民党に対して指示するのは越権行為だ』と事実上拒否してしまったんで
すね。まあそこには安倍総理が言う『膿を出し切る』と、こういう姿勢は微塵も感じられ
なかったと言っていいと思いますね」
富川アナ「はい。安倍総理は明日明後日とね、また答弁に立ちますけれども、どうやった
らこう、問題の本質に近づいていけるんですかね」
後藤氏「やはり野党側がひとつの論点を絞りながら追及していく、それからやっぱり国民
の盛り上がりってことは非常に大切だと思ってます。つまりこういうもやもやっとした形
で大きなことが決まってから、それが曖昧のまま処理されていく、これは民主主義にとっ
て一番いけないことなんですね。さらに安倍総理、明後日の党首討論がありますけども、
これが終わるとですね、8月20日の会期末まで安倍さんがまともに矢面を断つような場面
がなくなってしまうわけですね、途中一週間、ヨーロッパ・中東も行くと言われてますが
、こう外遊があるとなるとですね、安倍総理、22日まで消化試合で、参議院予算成立とそ
の間に9月に予定される自民党総裁選に向けて着々と準備を進めていく、そういうことに
なってしまうんですね。ですから我々も含めて、やはり些細なことでもいいですから監視
の目を強めていくということはとても大切だと思いますね」
富川アナ「問題の本質にたどり着けないまま自民党総裁選になだれ込んでしまうというこ
とは…」
後藤氏「ちょっと納得できないですね」
この後藤氏の発言を最後にこのコーナーが終了しました。
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【検証部分】
今回の放送の問題点は大きく分けて2点あります。
1点目は、VTRの中で取り扱った質問者に偏りがある可能性があること。
2点目は、スタジオでの後藤氏の発言に放送法違反に抵触する可能性があること。
以上の2点です。
まず、1点目ですが、この6月25日に質問に立った議員は全部で9人。その内訳は自民、公
明が1人ずつ。国民民主が2人、立憲民主、共産、維新、社民、無所属クラブが各1にんず
つでした。そのうちVTRで取り上げられたのは国民、共産、立憲が各1人ずつの合計3人
でした。
確かに、野党議員による質問が首相に対して行われる構図は視聴者にとってもわかりやす
く、番組の構成としても作りやすいという点はあるでしょう。しかし、当日行われた与党
議員の質問などは一切触れることなく番組を制作することはあってよいことなのでしょう
か。
この話を取り上げたのが、当日の自民党・二之湯武史議員でした。二之湯議員は「地元に
戻ると国会は森友・加計問題ばかりやっているのかと言われる。確かに今回の問題を引き
起こした財務省には大きな過失がある。しかし、国民生活に直結する問題を国会で取り上
げても、マスメディアがあまり報じないのは残念」と発言していました。自らに不利益に
なりかねない情報には触れない姿勢には違和感を覚えました。
次に2点目についてですが、後藤氏はスタジオにて
後藤氏「はい、ただ今日その一番のポイントはやはり先週19日に加計孝太郎氏がやった記
者会見の中身について安倍総理はどう答えるかということなんですが、我々の想定内でし
たね。やはりはぐらかしに終始してしまった。(中略)加計さんはじめ関係者全員を証人喚
問すべきだとする要求に対しては、『自分は内閣総理大臣だ、自民党に対して指示するの
は越権行為だ』と事実上拒否してしまったんですね。まあそこには安倍総理が言う『膿を
出し切る』と、こういう姿勢は微塵も感じられなかったと言っていいと思いますね」
と発言しています。安倍総理の姿勢を「はぐらかした」とか「膿を出し切る姿勢は微塵も
感じられなかった」といった形で揶揄しています。これまで多くの場面で安倍総理が質問
に立ち、安倍総理のおひざ元である行政が様々な文書を提出してきたことなどは触れられ
ず、批判に終始する姿勢には疑問符を抱かざるを得ません。
したがって、今回の放送は放送法第4条2項「政治的に公平であること」、第3項「事実
は曲げないで報道すること」に抵触している可能性があり、印象操作も疑われる内容とな
っていました。
今後も監視を続けます。