2018年7月15日 サンデーモーニング

2018年7月15日 サンデーモーニング

※自民党総裁選期間に限り、報道監視レポートを全ての会員の皆様に公開しております。

サンデーモーニング、7月15日放送回の検証報告です。

今回の報告では、
・豪雨災害関連について報道された部分
・参院選挙制度改革関連について報道された部分
以上2つについて検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

最初に検証するのは、豪雨災害関連について報道された部分となります。
では、さっそく放送内容を見ていきましょう。

司会 関口 宏(以下、関口):先週のこの時間にもお伝えした、西日本の大豪雨でございますが、その後この一週間でさらに被害が大きくなりましたね。

橋谷能理子アナウンサー(以下、橋谷):お伝えします。広範囲に及ぶ家屋の崩壊。200人を超す死者。西日本豪雨の被害の実態が、徐々に明らかになってきました。

——–
【VTR】
・西日本豪雨は、平成最悪の被害をもたらした
・広島県や岡山県などに大雨特別警報が出されてから8日後の昨日も、行方不明者の捜索活動が続く
・14日午後7時時点で、死者は202人・心肺停止3人・行方不明33人(JNNのまとめ)
・被災地である広島県府中町では榎川が氾濫し、二次災害の恐れが続く
・13日、気象庁は西日本豪雨の原因について、東シナ海と日本の南の海上にある多量の水蒸気を含んだ大気が西日本で合流したことで大雨が発生したとする解析結果を発表。
・バックビルディング現象も発生したとみられる
・岡山県倉敷市真備町では、小田川の堤防が決壊したことで、町の4分の1が水没。死者50人
・「正常性バイアス」と呼ばれる心理が避難行動を妨げ、多くの犠牲者を出したのではないかと専門家は指摘
【VTR終】
——-

関口:前から梅雨明け前には大雨が降るってことはあったんだけど、ちょっと年々激しすぎるんじゃないかという感じになってきましたね。

橋谷:読めなくなってきましたね。被害をまとめます。亡くなった方が202人。そして心肺停止3人。いまだに行方不明の方が33人いらっしゃいます。広島・岡山・愛媛で、非常に被害が大きくなっています。そしてちょっとここで非難について見ていただきたいんですが、自死体が出す避難情報は3段階あります。 “避難準備・高齢者等避難開始”。これが出されましたら、高齢者や乳幼児などは速やかに避難を求められます。そして“避難勧告”。これが出ますと、これ以外の方たちも速やかに避難する必要があります。そして“避難指示(緊急)”。これ実は、「避難を完了させてください」という意味なんですね。これを今回被害が大きかった倉敷市真備町に当てはめてみますと、6日の午後10時に避難勧告が出されました。そしてその40分後、気象庁が、数十年に一度の異常事態に出す大雨特別警報を出しました。6日の夜11時45分には、小田川の南側に避難指示。そして明けて午前1時半には、北側に避難指示が出されたんですが、実はその4分後には、堤防が決壊されたことが確認されていまして、もうこの時点では避難できない状況になってる地域もあったんですね。つまりこの避難勧告のときに、スムーズに避難をしていれば、もっとより多くの命が助かった可能性があるわけですね。

関口:そしてもうひとつね、先程専門家の方が仰ってたけど、正常性バイアスっていうんですか。うちは大丈夫だ。うーん、これは、何とも言えないですが。秀征さん、これをどういうふうにご覧になってますか。

福山大学客員教授 田中秀征(以下、田中):僕はあの、40年ぐらい福山の大学に行ってるもんですから、他人事じゃないっていうか、教職員や学生にまで影響出てるんですよね。それで、毎日毎日心配してる中で思うのは、災害は続いているという認識ですよ。まだ災害は続いているという認識。ですから、当面、どうしても先にやるべきことをとにかく優先させること。例えばその、行方不明の問題。それから感染症、熱中症。そういう問題。それから支援の問題。とにかく、今、この瞬間必要だってところから、どんどんどんどん、関係者の皆さんやボランティアの皆さんに頑張ってもらいたいと、そういう気持ちですよね。

関口:そこへまた急激な暑さがきてますからね。

田中:そう。本当に困るんですよ。

関口:ボランティアの方達はね、本当頭下がりますけど、それはそれで気をつけてくださいとお願いしたい。大宅さんどうでしょう。

評論家 大宅 映子(以下、大宅):避難をせよっていうのは避難の中身なんですけど、言葉は分かりますと、避難しなきゃいけないのはね。それは、どこへ、どうやって、ってとこまで、住民に伝わってるのかっていう。あのハザードマップであれだけ重なってるのみるとね、つまり分かってた。予想できた。でも、こういうふうになってしまいましたって、これソフトの面ですよね、心理面も含めて、もう一つはハードの面で、今回初めて知ったんですけど、こんな災害大国なんで、日本はあの、堤防とかね、整備率いいのかと思ったら、イギリスやアメリカに比べて低いんだそうですね。ダムとかね。だったら、分かってるんだったらもっと。それで予算も減ってるんですって。かける予算が。それは問題ですよね。で、多額にかかるので、日本の単年度予算みたいなことをやってたら、ちゃんとした予防はできないと思うんで、もう少し先に作ってしまって、あとは予算は後からっていうようなやつとかね、もう根本的に考えないといけないっていうふうに思います。

関口:岡本さんいきましょう。

岡本 行夫(以下、岡本):ねえ、これを見てますとね、日本は豊かな四季と優しい自然の国なんかじゃなくてね、世界で指折りの自然災害発生国ですよね。で、それに対して今、大宅さんが言われたように、危機が発生しないように堤防の高さとかももちろんありますけども、後起こっちゃったときのね、対応。これは、アメリカなんかだと、連邦緊急事態管理庁っていうのがあって、起こったときに全勢力で軍隊を派遣し、州兵を派遣し、自分たちは非常時体制をひいてるわけです。ですから、日本も自治体レベルで対応することになってる、自衛隊の要請なんかも自治体ですけど、それをそろそろ、これからもこういうことが起こるんですから、中央で一元的にやる体制を作るべきじゃないですかね。

関口:かもしれませんね。亀石さん。

亀石 倫子(以下、亀石):やっぱり、亡くなった方の中には高齢者の方が多かったと思うんですけど、その逃げ遅れた原因として、例えば、私たちであれば、携帯電話に警報が鳴ったりとか、SNSで情報を受け取ったりするんですけれども、高齢者の方で携帯を持ってない方もいらっしゃるでしょうし、例えば、耳が悪くって、その警報が聞こえなかったって方もいらっしゃるかもしれなくて、その伝わり方が本当にこう、適切に伝わっていたかっていうところを検証する必要があるのかなって思いましたのと、それと、避難所で亡くなってる方っていうのも、いらっしゃって、その避難所の環境が非常に過酷で、プライバシーの面ですとか、それから衛生面とか。まだまだ避難所を改善する余地もあるのかなっていうふうに思いました。

関口:はい、青木さん。

ジャーナリスト 青木 理(以下、青木):戦後のその、数百とか数千とかの単位で亡くなってる災害を見ると、大体2つなんですよ。一つは地震。それからもう一つは水害なんですよね。つまり、台風とか豪雨による水害なんですよ。で、地震ってのは予これは測が基本的に非常に難しいんですけれど、水害ってのはある程度予測ができるわけですよね。だから今回検証しなくちゃいけないのは、一口に今回202人亡くなったって言ってるんですけど、だいたい河川の氾濫とかね、土砂崩れとか、すごく多様なんですよね。形態としてはね。で、自治体の避難指示とかがきめ細かくきちんと出たかってことを、検証するってのが必要なんですけれど、これ、後でもいいんですけど202人の方が、きちんと、適切に指示を受けたり勧告を受けたりとかして逃げていれば、どれくらいの命が助かったんだろうかっていうことを検証すると、先程正常性バイアスって仰いましたけれど、「俺は大丈夫だ」って思ってた人達が、何人死んじゃったんだと。そうすると、次の災害のときに、やっぱりこれは良くないんじゃないか、ちゃんと指示に従って逃げないと、前回、こんだけの人が亡くなっちゃったんだっていう、その、死者の方々には本当に失礼ですけれども、それを教訓にするような、202人のうち何人が逃げてれば助かったのかっていう検証作業っていうのがこれからちょっと必要なんじゃないかっていう気はしますよね。

関口:それはありますね。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の1点です。

・大宅氏の発言に視聴者にミスリードを生みかねない内容が含まれている

これについて、順を追って解説します。

大宅氏は今回の報道で、以下のように述べています。

大宅氏(抜粋):避難をせよっていうのは避難の中身なんですけど、言葉は分かりますと、避難しなきゃいけないのはね。それは、どこへ、どうやって、ってとこまで、住民に伝わってるのかっていう。あのハザードマップであれだけ重なってるのみるとね、つまり分かってた。予想できた。でも、こういうふうになってしまいましたって、

要旨をまとめると、
・ハザードマップを見れば、今回犠牲になった人たちも避難しなきゃいけないのは分かっていた
・しかし、「どこへ」「どうやって」というところまで住民に伝わっていたのかが疑問だ
というものです。

しかしながら、国土交通省が作成している「水害ハザードマップ作成の手引き」によると、避難活用情報として避難場所の記載をするよう明記されています。また、水防法第15条には「避難施設その他の避難場所および避難路その他の避難経路に関する事項」として、ハザードマップに避難場所と避難経路を記載するよう定められています。

よって、今回の大宅氏の発言は放送法第2章第4条第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

続いて、参院選挙制度改革関連について報道された部分を検証します。
では、見ていきましょう。

関口:豪雨で被害が出続ける中で、国会はあったんですよね。

水野真裕美アナウンサー(以下、水野):はい、お伝えします。豪雨のすさまじい爪痕に日本列島が沈痛な空気に包まれる中、国会では注目の法案が採決されました。

——–
【VTR】
・カジノ整備法案の実質審議が参議院でスタート
・参議院の定数を6増やす公職選挙法改正案の採決が参議院で行われた
・この法案は、合区で選挙区から出られなくなった自民党の候補者の救済が狙いとみられる
・立憲民主党など一部野党が退席する中、与党などの賛成多数で可決
・野党側は、激しく反発
・1970年、沖縄の本土復帰に備えて選挙区が新設されたときを除けば、戦後初の参院定数増
・2012年、民主党政権下の野田総理が、党首討論で野党総裁の安倍総裁に対し、衆議院解散の条件として、議員定数の削減などへ協力を求めていた
・国会議員の定数を削減する“身を切る改革”は、これまで衆参ともに必要だという議論がされていた
・自民党は、今の国会での成立を目指す構え
【VTR終】
——-

関口:さ、批判の多い、ちょっとややこしい問題から説明します。

水野:はい。自民党が提出したこの6増案とはどんなものなんでしょうか。前回、2016年の参院選から初めて合区が導入されて、島根県と鳥取県。高知県と徳島県が、それぞれ1つの選挙区になりました。これによって、2人の候補者が議席を失うことになったんですが、今回の自民党の案では、比例区を2議席、このように増やして、しかもこれを、特定枠として優先的に当選させることにしました。議席を失った2人をここにもってくることで救済するのが狙いとみられています。これに対して、野党側は、党利党略だと批判しています。その一方で、今回の案では、一票の格差の是正のために、その差がもっとも開いている埼玉選挙区の定数を1増やすことになっています。参議院は、1回の選挙で半数を改選するため、全員を改選する2回の選挙では、かける2となって、6議席増えることになるわけです。国会議員の定数を削減すべきという身を切る改革とも逆行していますし、JNNが行った世論調査では、この法案の賛否を聞くと7割近くの人が反対と答えています。

関口:私あの、高知の人に伺ったことがあるんですよ。「選挙にならない、知らないもんこの人」って、こういう感じにこの合区ではなってるんですが。さあ、秀征さんこれをどうご覧になってますか。
田中:今あの、上手く説明してもらったんですけども、分かってもらうには30分説明しなかったら分かんない。

関口:これ、ややこしいんですよ。

田中:ほとんど分からないんですよ。我々でも難しいんですから。で、僕も、自民党がここまで落ちぶれたかって思いますね。もう一つはですね、こういうものを出してくる参議院ってのも、ここまできちゃったかと。それくらいね、重大な問題だというふうに僕は思うんですが、野党の方は、傾聴に値するような位置にいるのね、抜本改革案ってのは、出してるんですよね。こちらが、え、これいいんじゃねえかっていうような感じの。ところが本気じゃないんでしょうね。どうも。だから、自民党だけじゃなくて、野党も駄目だと言わざるを得ないんですけれども、これ、抜本的な改革をやるってことを、この前の法律改正のときに書いてるあるんですよ。抜本的な改革をするってことを附則でね、書いてある。それをやらないで、だから、僕は思い出すのは、その、昔の長屋の障子張り。一つ枠のところを、ちょっと破れたからそこだけ張り替えるって形で、そこら中違う紙で張り替えてきて、訳分からなくなっちゃってるっていうのが今の選挙制度。

関口:ああ、分かりやすいですね。

田中:だからこれは衆議院も参議院も併せてですね、その小選挙区制度の見直しも含めて、ほんとに大抜本改革をやらなきゃならないとこまできてるなあということをつくづく感じますね。

関口:はいはい、大宅さんいかがでしょう。

大宅:どういう代表、議員さんを出すかってことを決める選挙制度っていうのは、民主主義の根幹なわけですよね。そうでしょう。で、それを、多数が、多数決で決めてしまうって話になると、自分たちに有利な選挙制度にいくらでも変えられるって話ですよね。

関口:そういう批判も出てます。

大宅:そうすると、民主主義の根幹から崩れてしまうって話です。それともう一つはやっぱり、参議院は、一人頭のその、一票の格差って話ですよね。ずっと憲法違反状態であるってずっと言われ続けているわけで。3倍以内にするって今度も言ってるんだけど、ほとんどそれ、出来ていないわけですよね。で、ほんとに難しいんだけど、私衆議院の方の選挙区画定審議会をずっとやってたんですけど、例えば、20万人で1人議員を出せるとこと、60万人でやっと1人出せるとこがあるのが不公平じゃないかって話になって、いろいろやってるんですけど、その根本は県単位にしてるところなんですよね。アメリカなんかは県単位は、上院は州単位だけど、っていうのがあって、全く衆議院と参議院が違う形でいろいろやってる。で、存在する意味がある。今の日本の参議院はほとんど衆議院と同じようなことやってますから、意味がない。で、その改革をしなきゃいけないのに、しかも人口が減ってるって言ってし、財政赤字も増えてるってときに、何で増やすのかって。あまりにも身勝手。口がアングリ。

関口:亀石さんどうご覧になってる。

亀石はい。今回の法案は、当選順位を有権者でなくって政党が決められるようなことになってしまって、益々民意が反映されにくくなるんではないか。それから定数を増やすべきなのか、削減するべきなのかっていうところにも、いろいろな議論、いろんな意見があると思うんですけれども、たった6時間ほどの審議でこれが通ってしまったっていうところで、私たちはその中身もよく理解できないまま、可決されてしまって、先程秀征さんも仰ったように、野党がどれくらい本気で、今回の法案に反対していたのかなっていうふうに思うんですよね。だから、野党にとっても、これはある程度メリットのあることなのかなとか、だけどこれは、民主主義の土台になるような選挙制度のことだから、もっともっと時間をかけて、議論しなければいけなかったっていうふうに思います。

関口:そうですね。ええ、ちょっと急ぎましょう。先。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは次の点です。

・この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

では、順を追って解説します。

今回の放送では、この問題について全体を通して「参議院の定数増は自民党の党利党略のための暴挙である」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「各県それぞれに代表者がいない現状こそおかしいので、今回の改正は正当なものである」「自民党が有利になるのは結果論でしかない」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで今回の参院6増はおかしい、という論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が今回の報告となります。今回の放送では、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

サンデーモーニングカテゴリの最新記事