サンデーモーニング、2019年10月20日分の検証報告(前編)です。
今回の報告では、
① 台風19号の被害について報道された部分
② 「風を読む」にてフェアプレーについて報道された部分
③ 自衛隊のホルムズ海峡派遣について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。
検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。
今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。
前編で検証するのは、
① 台風19号の被害について報道された部分
となります。
では、さっそく放送内容をみてみましょう。
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【VTR要約】
台風19号の影響で、災害ごみが今世紀最大になる可能性があり、現在死者は79人に上っている。台風の上陸前から気象庁が繰り返し警戒を呼び掛けたにもかかわらず、多くの命が失われたのはなぜか。
栃木県足利市で85歳の女性は濁流に車ごと流され、低体温症で命を落とした。足利市が避難勧告を出したのは、車が濁流に流された5分後だった。17人が車で移動中に亡くなっており(毎日新聞)、豪雨による災害の中で避難を出すタイミングの難しさが浮き彫りとなった。
福島県本宮市の自宅で亡くなった70代男性は、腰の高さまで浸水したが雨が小降りになっていたので避難しなかったところ、その後の増水で命を失ったという。また、茨城県では大雨特別警報が解除された3時間後に氾濫発生情報が出されていた。大雨と氾濫の間の時間差が被害を拡大させる要因となり、各地でこの時間差による犠牲が相次いだ。
多くの命を奪った台風被害により、様々な問題点が浮き彫りとなっている。
【アナウンサーによるパネル説明】
・神奈川県の箱根町では、一日の雨量が922.5ミリに達し、国内最多記録を更新した
・堤防決壊は全国で71河川130か所
・死者79人、行方不明者11人(10月20日現在)
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【コメンテーターの発言】
寺島実郎氏(全文):あの、まあコトの本質考えてみたいんですけれども、防災、つまり災害に対するですね、国土の強靭化なんていうことを我々も議論してたわけですね。ところが今回ですね、まあ被害が起こった川の、川上流域の地方っていうものをよく見てみるとですね、ものすごくやっぱり疲弊してるんですよ。で、なぜ疲弊してるんだっていうとね、それは国土とか土地とかって言うものに対してすごく愛着して支えてきた農業だとか林業だとかっていうものが急速に疲弊してるからなんですよね。で、考えてみると前の東京オリンピックの頃ね。50年前。日本の食料自給率なんてのはそれでも75%あったわけですよ。それから日本というのは工業生産力で外貨稼いで豊かな国に使用と走ったためですね、37%ですよ。去年のカロリーベースのいわゆる食料自給率がね。で、今全国には42万ヘクタールっていう農耕放棄地ってのがあるわけですね。でこういうものがね、積み重なってですね、地方の、まあいわば土地に対するね、つまり水を吸収しですね、水を制御していくっていうことを支える人たちの力っていうものをものすごく劣化させてですね。で昔ね、十数年前に限界集落っていう言葉がありましたけども、65歳以上の人が5割以上のいわゆる集落。全国に約8000あったっていうんですけれど、もう既に500近く消滅してね、この先に2000消滅するって、そうするとですね、いわゆる川の流域における、まさに水に立ち向かっていくですね、制御していく力っていうのがどんどん落ちていってしまうと。我々よく考えなきゃいけないのはね、食と農なんですよ。要するに東京の食料自給率なんかわずかに1%です。神奈川2%です。で、国づくりの根底が問われているっていうかね、さらに日本はですね、海外から食料を買う国に向かわせようとする動きが昨今またさらに加速してるわけですよ。我々自身がね、やっぱりこういう災害を機会にですね、国の在り方とかね、やはり産業のあり方というものを根底から考え直すような良い機会にしなきゃいかんなと僕は思います。
元村有希子氏(要約):台風が激甚化している背景に温暖化があるならば、対策を急ぐより食い止めなければいけないが、それだけで被害は絶対に減らせないので治水事業を見直していく必要がある。40年前より治水にかける金額は倍に増えているが、それでも追い付かないくらい気象が荒れている。ダムや堤防建設には時間がかかるので、ハード面だけでなくソフト面の対策を急がなければいけない。水害予測はきちんと当たっていたとの指摘がされているが、ハザードマップの周知が追い付いていない現状がある。
高橋純子氏(全文):経験のない災害だったので、やはり行政も私たち個人個人もですね、対応がどうしても後手に回った部分というものがあったと思います。ですからやはりここから教訓をですね、汲み取って次に備えなければならないと思うんですけれども、その意味でひとつ気になったのは、やはり東京の台東区でですね、ホームレスの方を避難所から締めだすというようなことがありまして、やはりこれは命の選別にですね、つながることなので、大いに行政の側も反省をしてほしいなというふうに思います。そしてその避難所もですね、じゃあ避難をしましょう避難をしましょうというんだけれども、まず避難所が圧倒的に足りない。そして避難所のその環境もですね、自治体によって大分バラつき、差があるということが指摘をされています。やはり長期的な課題にはなるんですけれども、減災。災害を減らす。そして防災。災害を防ぐ。それから復旧復興までをですね、総合的に担当する防災庁のようなですね、組織をやはり国として考えていくべきなんじゃないかなと。そういう検討も、本格的に始めるべきなんじゃないかなというふうに思いました。
中西哲生氏(要約):この番組の視聴者の中にも被害に遭われた方がたくさんいらっしゃるので、我々は何ができるのかを考えなければいけない。今回初めて自分自身が台風で命を失うかもしれないという危機感をもった。東京といえどもどこに危険が潜んでいるのか分からない。この後台風20号、21号がきているので、それに向かっても思ったことを更新していかなければならないと改めて感じた。
松原耕二氏(要約):リアルタイムで伝えるテレビはどういうふうに伝えればいいのかずっと考えていた。大雨特別警報が解除されて安心して自宅に帰ったら被災した人もいる。特別警報が解除された時に、同時に上流の流れも注意してくださいと言うべきか、もっと広い流域情報を同時に伝えるべきか。根本からテレビの伝え方、在り方自体も考えなければいけないと感じた。
以上が放送内容となります。
では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の2点です。
1、寺島氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、高橋氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
それぞれ順を追って解説します。
1、寺島氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
寺島氏は今回の報道で、以下のように述べています。
寺島氏(抜粋):国土の強靭化なんていうことを我々も議論してたわけですね。ところが今回ですね、まあ被害が起こった川の、川上流域の地方っていうものをよく見てみるとですね、ものすごくやっぱり疲弊してるんですよ。で、なぜ疲弊してるんだっていうとね、それは国土とか土地とかって言うものに対してすごく愛着して支えてきた農業だとか林業だとかっていうものが急速に疲弊してるからなんですよね。で、考えてみると前の東京オリンピックの頃ね。50年前。日本の食料自給率なんてのはそれでも75%あったわけですよ。それから日本というのは工業生産力で外貨稼いで豊かな国に使用と走ったためですね、37%ですよ。去年のカロリーベースのいわゆる食料自給率がね。で、今全国には42万ヘクタールっていう農耕放棄地ってのがあるわけですね。でこういうものがね、積み重なってですね、地方の、まあいわば土地に対するね、つまり水を吸収しですね、水を制御していくっていうことを支える人たちの力っていうものをものすごく劣化させてですね。で昔ね、十数年前に限界集落っていう言葉がありましたけども、65歳以上の人が5割以上のいわゆる集落。全国に約8000あったっていうんですけれど、もう既に500近く消滅してね、この先に2000消滅するって、そうするとですね、いわゆる川の流域における、まさに水に立ち向かっていくですね、制御していく力っていうのがどんどん落ちていってしまうと。我々よく考えなきゃいけないのはね、食と農なんですよ。要するに東京の食料自給率なんかわずかに1%です。神奈川2%です。で、国づくりの根底が問われているっていうかね、さらに日本はですね、海外から食料を買う国に向かわせようとする動きが昨今またさらに加速してるわけですよ。我々自身がね、やっぱりこういう災害を機会にですね、国の在り方とかね、やはり産業のあり方というものを根底から考え直すような良い機会にしなきゃいかんなと僕は思います
要旨をまとめると、
・国土の強靭化という議論があるが、今回の台風で被害が起きた川上流域は非常に疲弊している。土地を支えてきた農業や林業が急速に疲弊しているからだ。
・50年前の食料自給率は75%あったが、工業生産で外貨を稼ぐ方針を取ったため37%まで低下した。その結果42万ヘクタールという農耕放棄地が生まれ、土地の吸水力を支える力が劣化した。限界集落は今後どんどん減るのでさらにこの力は減っていく。
・考えるべきなのは食と農で、東京の食料自給率は低く国造りの根底が問われている。海外から食料を買う動きがさらに加速しているので、国の在り方、産業の在り方を考え直すべき。
というものです。
しかしながら、
・食料自給率の低下は変化する食生活への対応を誤った農地改革によるところが大きく、第二次産業への移行がその主たる要因だとする主張は事実に即していない。
・農耕放棄地の増加と限界集落の増加に因果関係はない。
・日本の食料自給率問題や海外からの食料輸入、第一次産業の問題は、豪雨災害対策とは全く無関係である。
など、発言内容とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での寺島氏の発言は事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
2、高橋氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
高橋氏は今回の報道で、以下のように述べています。
高橋氏(抜粋):やはり東京の台東区でですね、ホームレスの方を避難所から締めだすというようなことがありまして、やはりこれは命の選別にですね、つながることなので、大いに行政の側も反省をしてほしいなというふうに思います。(中略)やはり長期的な課題にはなるんですけれども、減災。災害を減らす。そして防災。災害を防ぐ。それから復旧復興までをですね、総合的に担当する防災庁のようなですね、組織をやはり国として考えていくべきなんじゃないかなと。そういう検討も、本格的に始めるべきなんじゃないかなというふうに思いました。
要旨をまとめると、
・台東区でホームレスを避難所から締め出すということがあったが、これは命の選別につながるので大いに反省すべきだ。
・減災と防災、復興を総合的に担当する防災庁のような組織を国として考えるべきだ。
というものです。
しかしながら、
・台東区の避難所におけるホームレス締め出しについては「強烈な悪臭や伝染病など衛生面でのリスクを考慮すれば拒否は当然」「極限状態で避難する区民にホームレスと一緒に過ごせと言うのか」などと様々な意見が存在する。にもかかわらず「大いに反省すべき」と一方の立場に立つのは政治的に公平とは言えない。
・防災や災害復興は総務省、国交省、防衛省など様々な専門分野を持つ省庁が連携して初めて可能になるもので、一つの機関に集約すべきという主張は事実に即していない。
など、発言内容とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での高橋氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」、同第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。
以上が報告の前編となります。前編では、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。
この続きの
② 「風を読む」にてフェアプレーについて報道された部分
については中編の報告をご覧ください。
③ 自衛隊のホルムズ海峡派遣について報道された部分
については後編の報告をご覧ください。
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