※自民党総裁選期間に限り、報道監視レポートを全ての会員の皆様に公開しております。
サンデーモーニング、2018年8月5日放送回の検証報告です。
今回の報告では、
・東京女子医大の入試不正問題について報道された部分
・安田順平氏が捕まった件について報道された部分
以上2点について検証し、その問題点を探りたいと思います。
検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。
最初に検証するのは、東京女子医大の入試不正問題について報道された部分となります。
では、さっそく放送内容を見ていきましょう。
——–
【VTR】
記者:接待を受けられた事実はありますか?
文部科学省 戸谷 一夫事務次官:何もお答えできませんので。
ナレーター:現役幹部2人が逮捕。そのうち1人が、起訴された汚職事件で揺れる、文部科学省。事務方トップの、戸谷次官が、事件の飲食接待の場に同席していたことが分かりました。発端となったのは、文部科学省の局長が東京医科大学に対し、息子を不正合格させてもらった罪に問われた汚職事件。その事件の舞台となった東京医大で、新たに、女性差別とみられる入試が行われていたことが明らかになりました。
抗議デモの参加者:怒りましょう。ふざけんなー!
抗議デモの参加者:女性に生まれただけで、一律減点って、本当に悲しいことです。怒っていいかなって。怒りましょう。怒りましょう。怒りましょう。ふざけんなー!
ナレーター:金曜日、東京医大の前で、行われた、抗議デモ。この前日、文科省の汚職事件の舞台となった、東京医大で、医学部医学科の女子受験生の得点を一律に減点し、女子の合格者を3割程度に抑えていたことが分かったのです。今年行われた入試では、受験生の男女比は3:2でしたが、合格者は、男子141人に対し、女子30人。男女比は、およそ5:1と、女子の合格率が低くなっています。医学部を目指す受験生からは、
医学部を目指す予備校の女学生A:将来の道をなくされちゃうっていうのは、すごいひどいなって思います。
医学部を目指す予備校の女学生B:やっぱり女子は少ないなあというふうには思っていました。皆、腹立たしい思いでいると思います。
ナレーター:この問題をめぐっては、海外メディアも高い関心を見せ、相次いで速報を流しました。大学の関係者は、その理由について、女性医師の離職率が高いこと、としており、入試業務に携わっていた元幹部も、取材に対し、「どこの医大でもやっている。不正という認識はなかった。体力的にきつく、女性は外科医にならないし、へき地医療をやりたがらない」と答えています。明るみに出た女性への差別。一方、差別に対する批判が収まらないのが、自民党、杉田水脈衆院議員。LGBT、性的少数者の人々を「生産性がない」などと雑誌に寄稿した問題で、党内からも、批判の声が上がりました。
自民党 小泉 進次郎:あれはあり得ない。多様な価値観とか、生き方がある中で、「あれは違う」ってことを言わなきゃダメですよね。そして、この問題で、新たな動きが。
ナレーター:自民党、杉田議員が寄稿した雑誌の発売から、およそ2週間経った水曜日。自民党は、ホームページ上で、“性的な多様性を受容する社会の実現を目指している”などと、党の見解を公表。さらに、杉田氏に対し、“問題への理解不足と関係者への配慮を欠いた表現があることも事実”として、十分に注意するよう指導したことも明らかにしました。これを受け、杉田氏は、“真摯に受け止め、今後研鑽に努めたい”などとコメント。ただし、寄稿の内容の撤回や謝罪の言葉はありませんでした。また、この問題について、安倍総理も、初めて言及。
安倍 晋三総理大臣:人権が尊重され、多様性が尊重される社会を作っていく。目指していくことは、当然のことであろうと思います。
ナレーター:日本社会に潜む差別に、相次いで光が当てられています。
【VTR終】
——-
橋谷能理子アナウンサー(以下、橋谷):自民党のLGBT。性的少数者への取り組みです。去年の政権公約では、多様性を受け入れていく社会の実現を図るとしまして、2016年には、性的指向・性自認に関する特命委員会というのも発足させて、パンフレットを作っているんですね。その中では、LGBTについて、本人の意思や趣味・嗜好の問題との誤解が広まっていると指摘しています。VTRにもありました杉田議員は、発言について謝罪も撤回もしていないんですけれども、そんな中、先週日曜日、同じく自民党の谷川議員が、同性婚などをめぐって、「趣味みたいなもの」「わざわざ同性婚を認める法律は作る必要はない」と発言しました。谷川氏は、差別するつもりもなく、多様性を認めていないわけでもありませんと釈明したんですが、この、「趣味みたいなもの」という発言についての言及はありませんでした。
司会 関口 宏(以下、関口):はい。そしてもう一つ前半の方のVTRで紹介したのが、こちらの問題ね。
橋谷:そうですね。女性医師の割合が各国と比べてどうなのかっていうのを比べてみました。OECD加盟国の中で実は日本は、最低の20%だったんですね。こうした状況の中で、東京医大は、女性研究者の支援をめぐって、3年間で8000万円を超える補助金を受け取っていたことも分かっています。
関口:さあ、皆さん。どちらでも結構でございます。関心のある方で、お話をいただきたい。寺島さん、どうでしょう。
寺島 実郎:僕あの、東京医大なんですけどね、門下官僚の息子に下駄を履かせて入学させたと。で、一方、女性については、いわゆる差別的な足切りをしてたっていうからですね、これ、大学の根源に関わることで、要するに、これから大人社会に挑戦しようとする受験生とか、高校生なんかの人達にとって見ればですね、その関門が公正であるっていうことが、もう本当に、根源的な問題なんですよ。ですから、そういう意味においてね、陣中に戯れ言なしっていう言葉がありますけれども、さっきあの、ふざけんなって女性が叫んでた気持ちってのは本当によく分かりますね。
関口:目加田さんはどちらを。
中央大学教授 目加田 説子:あの、私もこの問題なんですけれども、女性であるという本人に責任もないじゃないですか。落ち度も何にもないことを理由に不合格とさせられると。こんな不条理な話はないし、明確な本当にこれ差別だと思うんですよね。それで、その昇進とか昇給っていうのは、一般の職場だと、なかなか不透明で、女性が男性に比べると、不当な扱いを受けることってこれまでもあるんですよね。それで、あの、まあ資格であったりとか、それから免許などで、職業に就けるということで、とても弁護士であったり税理士であったり医師だったりっていうのは、その頑張りたい、本当社会で活躍したいという女性にとっては、憧れる職業だったんじゃないかと思うんですよね。それが今、寺島さんもご指摘になったように、入り口で閉ざされてしまうということは、本当にあってはならないことだというふうに思います。で、女性が離職してしまうというのは、どうしてもその過酷な労働実態もあるっていうことが指摘されてますよね。もちろん女性は、子育てとか、それから仕事ってなかなか両立しにくいってこともありながら、その非常に過酷な労働実態っていうのは、男性の働き方も含めて変えていかなければいけないと思うんですよね。で、どうしてそういう議論に及ばずに、女性のことをね、制限しようという発想になってしまうのかなという。これは本当に、情けないなっていうふうに思います。でこの、東京医大は、点数操作が行われていたわけですよね。これまで何年か行われていたという中で、やっぱり、情報をきちんと公開して、不当に不合格とかになってきた女性たちの救済。もちろん謝罪をまずしてですね、そして救済をするべきだと思いますし、文科省が、他の大学でも同じようなことが行われてないのかと、いうことを精査して、きちんと対策を講じてほしいというふうに思います。
関口:大崎さん。
関西学院大学客員教授・元国連職員 大崎 麻子:私も東京医大の方なんですが、あの女性医師が離職してしまうということの対処法が、この、非常に差別的な措置っていうことに本当に言葉を失う思いで、このニュースが出る直前に、外科や麻酔科の女性のお医者さんといろいろお話する機会があって、で、その中でやっぱり医療現場の過酷な現状であったりとか、その中で奮闘しておられる様子っていうのをお聞きしたばかりだったんですけれども、そこで感じたのは、女性活躍のための環境整備って結構進んでるんですね。で、例えば時短。短時間の勤務とか、一部の重要な仕事から外れるとか、そうった形であるんですが、それは、あくまでも、家事育児介護は女性の責任という性別役割分業の意識を前提とした女性のための措置になっていて、確かに妊娠出産は女性にしかできませんけど、家事とか育児っていうのは、男性だってできるし、実際やっておられる方はたくさんいますし、特に若い世代ってのは家事とか育児にちゃんと関与したいっていう人がすごく増えてるんですよね。なので、この問題はやっぱり男性対女性って構図にするのではなくって、あの先程目加田先生も仰いましたけれども、お医者さんたちが男性も女性もですね、人間らしい働き方ができるような環境整備。で、そのためにはやっぱり意識改革ってすごく重要だと思いますので、その両輪で。特に海外での経験がある男性の医師なんかは、ぜひですね、海外ではどうやってそういう現場を作ってるのかってのを提言していただきたいと思いますね。
関口:涌井さん。
造園家・東京都市大学教授 涌井 雅之(以下、涌井):まあ、大学に関係してる人間としてですね、この医療現場っていうのを垣間見る機会があるんですけれども、今お二方が仰ったように非常に過酷なんですね。で、まあブラック企業って言ってもいいぐらい。で、しかも尚且つですね、日本の場合には大学と病院が、不即不離の関係になってるんですよ。そうすると何が起きるかというとですね、結局大学を卒業したスチューデントドクターを、いかに要するに、教育という形で低賃金で働かせるかっていうことが、必然的な病院経営のメニューになってくる。で、そのときにですね、考えなきゃいけないことは一体何かっていうと、今お二方がお話になったようにですね、女性医師をどう働きやすい状況にするのかっていうことのシステムをきちっと考えてかないと、実は支えられないんですよ。医局に穴が開いてしまうとですね、それを今度は男性医師が負担しなきゃいけないと。こういうような悪循環が始まる。で、そこでやっぱり考えるべきことは、その女性医師を育てるというのではなくて、要するに、いかに病院の過酷な現場改善をやるのかっていうシステムに目をやると。で、これ、実は両方に通じるんです。杉田議員の、あの人の話にも通じるんですけども、我々はすぐですね、文化的感覚としてはこうだっていうふうに思いがちなんですね。私も含めて。例えば差別ではなくても、今まで自分の中にある常識からいうとこうだと。でもそれをですね、どうやって知性っていうもののフィルターの中で、咀嚼して認識に高めてですね、そうであってはいけないんだっていうふうに思い直していくかってことが特に大学人は求められるわけで、この病院と大学の関係ってものにそういう答えを出して欲しいっていうふうに思いますね。
関口:何かその意識を変えなきゃいけないところへきてるんだけれど、旧態依然とした人たちも、まだたくさんいるということなのかな。
松原 耕二:まさに、その通りだと思います。私、両方に共通するのが、やっぱり個人と国、あるいは個人と組織という問題があると思うんですけど、例えば、杉田議員の生産性がないって言葉は、あれは別に自民党内で突出した言葉ではないんですね。自民党内には昔ながら家庭・家族みたいなものの伝統を守りたいという人達がたくさんいて、ただ、例えば夫婦別姓のことで話をお聞きしてもですね、もうその、家の制度を守るためなら別姓なんて我慢しろよと。国のために個人の権利なんかはそんなの後じゃないか、ということをはっきり仰るわけですね。で、例えば、東京医大の話もですね、結局、これまでの運営方式を変えたくないから、組織の論理として個人の能力とかを犠牲にしてるわけですよね。だから、日本の社会も、さっき意識という言葉が出ましたけれども、一人ひとりがのびのびすることが、国とか組織も生き生きするんだと、そっちの考え方にですね、意識をシフトしていかないと、これ、ちょっと続くような気がしますね。
関口:何か一言言いたいことありますか?
橋谷:あの、本当、悲しいですね。頑張ってる、ねえ。女子学生たちが。可哀想だなーって思って。
関口:そうだね。
以上が放送内容となります。
では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは次の2点です。
1、性質の異なる2つの問題を混ぜて論じてしまっている
2、松原氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
それぞれ順を追って解説します。
1、性質の異なる2つの問題を混ぜて論じてしまっている
今回の報道で使用されたVTRに、以下のような発言がありました。
VTR(抜粋):明るみに出た女性への差別。一方、差別に対する批判が収まらないのが、自民党、杉田水脈衆院議員。LGBT、性的少数者の人々を「生産性がない」などと雑誌に寄稿した問題で、党内からも、批判の声が上がりました。
このように、この部分の報道では「東京医大の入試不正問題」と「杉田水脈議員のLGBTに関する問題発言」とを同列で扱っています。
しかし、そもそもこの2つの問題は私立医大と一政治家という、まったく別の主体によって引き起こされているうえ、その構造も動機もまったく異なるものです。こうした性質の全く違う問題を一緒くたに扱ってしまうと、あたかも東京医大問題の責任が自民党にあるかのような誤った印象を視聴者に与える恐れがあります。
以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
2、松原氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
松原氏は今回の報道で、以下のように述べています。
松原氏(抜粋):例えば、杉田議員の生産性がないって言葉は、あれは別に自民党内で突出した言葉ではないんですね。自民党内には昔ながら家庭・家族みたいなものの伝統を守りたいという人達がたくさんいて、ただ、例えば夫婦別姓のことで話をお聞きしてもですね、もうその、家の制度を守るためなら別姓なんて我慢しろよと。
要旨をまとめると、
・杉田議員の発言は自民党では突出したものではない
・なぜなら自民党では夫婦別姓など家庭・家族みたいなものの伝統を守りたい人が多いからだ
というものです。
しかしながら、杉田議員の発言に対する自民党の見解はあくまで「杉田議員に注意を与える」というものです。また、「家庭・家族みたいな伝統を守りたい人が多い」ということが、杉田議員の発言が自民党内で突出していないということの根拠には論理的になりません。よって、このような発言は視聴者に誤った認識を与える可能性があります。
したがって、今回の報道は放送法第2章第4条第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
続いて、安田順平氏が捕まった件について報道された部分について検証したいと思います。
それでは、放送された内容を見ていきましょう。
——–
【VTR】
安田 純平さんとみられる人物:今日の日付は、2018年、7月25日。とてもひどい環境にいます。
関口:3年前、シリアに入国後、行方が分からなくなっているジャーナリストの、安田純平さん。この日までに安田さんとみられる新たな映像がインターネット上で公開されました。黒いマスクをして銃を持った2人の男の前で安田さんとみられる人物が、日本語で助けを求めました。日本政府は、安田さん本人の可能性は高いという認識を示していますが、涌井さん。これ、どうとらえましょうかね。
【VTR終】
——–
涌井:これはですね、一番大きい問題は、邦人保護。日本政府が海外でこういうことにあったときの、日本人をどうするのかと。これが問われていると思うんですね。私が思い出すのは、ちょうどオバマ政権下でケネディー国務長官がですね、アメリカ人のフリージャーナリストを救い出した。で、20カ国以上のOECDを含めて、あるいは湾岸諸国とも交渉して救い出したときに、ケネディーが言った言葉なんですね。それは一体何かっていうと、「アメリカ政府はいつでも、人質本人と同時にその家族の思いに立っている」。この言葉は非常に重いと思うんです。こういうつもりで、やっぱりその、救済策っていうのをしっかり考えてくっていうことがですね、アメリカですら、要するに、人質と身代金交渉をしないという原則を出したアメリカですらそういう方向をとりながら、ましてやスペインやドイツの記者も皆、救援されてるわけですから、これは日本がですね、どのぐらい邦人保護に努力してるのかっていうことの証とイコールだというふうに考えますね。
以上が放送内容となります。
では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の1点です。
・安田氏とみられる人物の発言を意図的に編集した恐れがある
では、順を追って説明します。
今回の報道で、安田氏は以下のように発言しています。
安田 純平さんとみられる人物(VTR):今日の日付は、2018年、7月25日。とてもひどい環境にいます。
ですが、実際に公開されている映像では、冒頭の発言内容が違っています。
安田 順平さんとみられる人物(実際の映像):わたしの名前はウマルです。韓国人です。今日の日付は、2018年、7月25日。とてもひどい環境にいます。
安田氏とみられる人物が自身の国籍を偽ったのか、それとも本当に韓国人なのかは定かではありませんが、「安田氏とみられる人物が自身を韓国人と主張している」のはれっきとした事実です。にもかかわらずその発言をカットするというのは、視聴者に「安田氏は日本人だということに疑いはない」というミスリードを生む可能性があります。
ましてや今回の報道では、このVTRを根拠に「邦人救出は重要である」「日本政府が邦人救出をどうするかが問われている」という主張がされております。報道でなされている主張の前提が揺らぐようなこの冒頭発言を編集でカットしたというのは、報道内容の反証となる事実を意図的に排除した可能性があるということになり、したがって悪質な偏向報道である可能性があります。
よって、今回の報道は放送法第2章第4条第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
以上が今回の報告となります。今回の放送では、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。
公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。