2018年9月2日 サンデーモーニング

2018年9月2日 サンデーモーニング

※自民党総裁選期間に限り、報道監視レポートを全ての会員の皆様に公開しております。

サンデーモーニング、2018年9月2日分の検証報告です。

今回の報告では、
・自民党総裁選について報道された部分
・福島第一原発ともんじゅの廃棄物について報道された部分
以上2点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

最初に検証するのは、自民党総裁選について報道された部分となります。
では、さっそく放送内容をみてみましょう。

橋谷 能理子アナウンサー(以下、橋谷アナ):お伝えします。自民党総裁選、そして30日の沖縄県知事。2つの重要な選挙の構図が見えてきました。

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【VTR】
・先週日曜日、自民党総裁選をにらんだ地方行脚で訪れている鹿児島県で、安倍晋三首相が正式に出馬を表明。
・安倍首相は「あと3年。自由民主党総裁として、内閣総理大臣として、日本の舵取りを担う決意であります」と決意を表明
・出馬に意欲を見せていた野田総務大臣が一昨日に断念を表明したことで、今月7日告示、20日投開票の総裁選は、安倍総理と石破元幹事長の一騎打ちに
・「正直・公正」を掲げて出馬表明をした石破氏は、一部の批判を受けて、一時はキャッチフレーズの封印も検討。木曜日、石破支持を表明していた参議院竹下派の吉田幹事長も、安倍総理への個人攻撃ととられかねない言動を慎むように釘を刺した
・しかし、石破茂元幹事長は「個人攻撃ではない。私の政治信条として、ずっと言ってきたし…」などと、「正直・公正」というキャッチフレーズを取り下げる考えはないことを明らかに。
・既に国会議員票の7割を固めたとする安倍総理は、6年前の総裁選で石破氏に大きく差のつけられた地方票の獲得に力を入れている

・沖縄では水曜日、今月30日に迫った沖縄県知事選挙へ自由党幹事長の玉城デニー氏が立候補を表明
・玉城氏は先月死去した翁長氏の後継候補を自認。「しっかりと翁長知事の遺志を引き継ぎ、辺野古新基地建設阻止を貫徹する立場であることをここに表明いたします。」と発言。
・玉城氏を擁立したのは、前回の知事選でオール沖縄を掲げ、翁長氏を勝利に導いた県政与党の社民・共産・会派おきなわなどで、自民・公明・維新が推薦する前宜野湾市長の佐喜眞淳氏も、既に立候補を表明、事実上の一騎打ちの形に。
・今回の選挙の最大の争点とみられるのが、普天間基地の辺野古移設。移設阻止を訴える玉城氏に対し、佐喜眞氏は、移設の是非は明言しておらず、普天間基地が返還できるかが争点だと訴える。
・一方、前回の知事選で、保守革新を超えて結集したオール沖縄には綻びも。支援企業の代表格であるかりゆしグループが、翁長氏の死去に伴い、支持する理由がないなどとして、今回の知事選は自主投票にすることを決定。
・このような状況の中、謝花喜一郎副知事は、辺野古埋め立て承認を撤回。その理由として、承認後に軟弱地盤の問題が判明したことなどを挙げました。この決定に対し、小野寺五典防衛相は処分理由の精査を行い、その上で必要な法的措置を取ると発言。
【VTR終】
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【スタジオ】
橋谷アナ:沖縄県知事選なんですけれども、事実上の一騎打ちとなる構図です。まず、自民・公明・維新が推薦しています佐喜眞氏は、普天間基地を抱える宜野湾市の出身なんですね。2001年に政界入りし、2011年に宜野湾市長に当選しました。2期目となる2016年の市長選では、オール沖縄勢力が支援した候補を破って再選されました。一方、オール沖縄勢力などが支援する玉城氏は、現在のうるま市出身です。アメリカ人のお父さんを持ち、デニーというのは幼い頃の愛称なんですね。沖縄県で、ラジオパーソナリティーなどを務めた後政界入りしまして、2009年から衆議院議員となり、現在4期目です辺野古移設に関するスタンスなんですけれども、玉城さんの方は阻止。そして佐喜眞さんは賛否を示していません。この選挙の争点なんですけども、こちらは沖縄県に住む人を対象に行われたアンケートなんですが、どんな政策を重視しますかという質問に対しては、5割弱が、普天間基地の移設への対応と回答してしています。そして、辺野古への移設に関しては、反対。どちらかと言えば反対。これを合わせると、7割近くの人が移設に反対と答えています。

司会 関口 宏(以下、関口氏):このお二人は、普天間の返還については、同じ考えだよね。だけどそっから先の話だよね。

橋谷アナ:辺野古に関しては意見が分かれそうです。

関口氏:皆さんどう受け止められますか?

寺島 実郎(以下、寺島氏):まずあの、自民党総裁選なんですけどね。

関口氏:そっちの方がいいですか?

寺島氏:そっちから、つながりなんですがね。日本の舵取りをするっていう人を選ぶ割には、多くの国民にとって妙に距離のある議論だなと思うんですがね。で、そこでね、僕はですね、ドイツのトップを選ぶ選挙でもって、まさにそのディベートが行われたのを思い出してるんですけど、21世紀における世界史におけるドイツの役割っていう論点。これを置き換えてですね、例えば、21世紀の世界史における日本の役割っていうものを日本のトップとしてどう考えてるかってぐらいのことをですね、大きく、要するに、拘束力をもって提示してもらいたいと思うんですね、この段階で。なぜならば、沖縄の選挙と、国のこの、自民党総裁選挙ってやつの貫いてるテーマとして、やっぱり、ここに必要な大きなことは、米国とどう向き合うのかっていう論点はですね、この2つの選挙に貫いてるテーマなんですね。で、日本にとってね、まさにトランプにおびえてね、要するに、日本の進路を間違えてはいけないっていうのが僕の言いたいポイントで。中国の脅威ってのが、ちらついてる状況の中で、日米で連携して中国の脅威を封じ込めようっていうゲームを組み立ててるつもりで日本はいるんだけれども、中国にとって一番望ましいのが、まさに米国に封印されてる日本であってですね。で、そういう意味合いにおいて、本気で日本の21世紀っていうものを考える機会に、この9月っていうものをですね、沖縄と、この国のレベルでの選挙をにらんで考えなきゃいけないと僕は思ってます。

関口氏:自民党総裁選ね、我々も、こう白熱した議論を聞いてみたいんだけど、どうもそういう空気じゃないみたいでね。目加田さんどうお考えになってる?

中央大学教授 目加田 説子(以下、目加田氏):私も本当にそう思うんですけど、先ほどのVTRの中で、個人攻撃になるような発言は慎むべきっていうことを石破さんに、あの注意されてたじゃないですか。でも、えっていう、ちょっと本当に疑問で。その、お互いに、当然ですけれども。違いを鮮明にしながら、総裁選を戦うっていうのは当たり前のことだと思いますし、なんかそれで牽制するようなことをね。しかも、権力の座にある側がするっていうことに、ちょっと本当に、政党だったかなっていう感じがしましたし、勝負とかね、総裁選の結果。勝負とか、損得ではなくて、もうちょっと不変の正しさとか、政治理念であったり思想であったりというものに、なんかこだわって、それを主張し続けたいと思うような政治家っていないのかなっていうのところを、本当にちょっと、今残念に思っています。

関口氏:誠実さか。

橋谷アナ:正直・公正。

関口氏:ねえ。これ当然のこと・・・。そうじゃないんですか?政治家って。逆に僕は言いたくなるようなものがありますが。大崎さんいかがですか?

関西学院大学客員教授 大崎 麻子(以下、大崎氏):私はこの政策論争の中でやっぱり見たいテーマって、聞きたいテーマって女性活躍の推進をどう捉えていくかっていうことで。例えば地方創生っていうのも一つの重要な論点ですけれども、地方の問題の根幹的なものっていうのは、若い女性たちが流失してるから子供が減っているわけですね。で、あの私がかかわった調査も含めて、やっぱりなんで女性たちが流失していくかっていうと、そこでの生きづらさとか、働きにくさとか、意思決定の場に非常に女性が少ないとか、そういったものがやっぱり、明確に出てきてるので、そういった本質的な問題とどういうふうに向き合うのかってことを聞きたいですし、あと安倍総理は女性活躍を掲げていろいろおやりになって、で実際、女性の労働参加率とか、管理職割合ってのは上がってきたんですけれど、それでもまだ、賃金格差とか、セクシャルハラスメント、政治の場に女性が少ないってのは課題として残っていて、で、私はやっぱり単に女性の問題ではなくて、日本のこれからの経済とも直結してる問題だと思いますので、これは明確な争点にしてもらって、ぜひ政策論争をしてほしいなと思います。

関口氏:涌井さん。

東京都市大学教授 涌井 雅之(以下、涌井氏):はい。沖縄はですね、ご承知の通り、日本国土の面積の0.6%しかないんですが、33カ所の基地があってですね、そして、県民はですね、やっぱりその、基地問題と日常の生活の中でいつも関連してると。で、同時にですね、県民所得っていうのが、全国平均の、大体70%ぐらい。で、統計の取り方にもよるんですけど、最下位なんですね、47と。低いんです。で、こういう中で、基地問題の負担感って非常に見逃すことができない。ところがですね、一方で言うと、じゃあ、昭和48年の時代を考えてみると、実はその基地収入っていうのがかなりの収入があったんですよ。ところが今ですね、ものすごく低くなってましてね、平成27年で5.3%ですよ。で、観光がすごいんです。実はハワイを超えてるんです。入域客が。これはもちろん、国内も国外も入れてですが。で、そういう状況で経済が変わってる中で、県民の意識も変わってきたんですね。それは一体何かっていうと、60代70代は基地問題が非常に重要だと、そこにそういうデータが出てますけど、それとは全く違う、琉球新報とか沖縄タイムズとか朝日新聞で県民意識調査ってのをやったんですけど。そういう状況になってくると、非常に沖縄の中も変わりつつあると。で、そういう状況の中で、野党共闘、ここへ来て5回も選挙に負けてる野党共闘がですね、ちぐはぐな政策を出せば、ますますおかしいことになる。この辺一体どうするのかっていうことが、国政にも非常に大きな影響を与えますから、大きな問題点だろうというふうに思ってます。そういう受け止め方をしてますね。

関口氏:青木さんいきましょう。

ジャーナリスト 青木 理(以下、青木氏):両方とも重要な選挙なんですよね。総裁選も、沖縄の県知事選も。ただ、僕、両方とも選挙権ないんですよ。選挙権ないんですけど、だから、ある種、客観的に見てるんですけれども、その、特に総裁選に関していうと、総裁選とメディアって問題を考えるんですね。今回、安倍さん、先程VTRにもありましたけど、安倍さんが出馬表明したのは桜島の前で、そのいかにも大々的にやったんだけど、NHKが生中継してるんですよね。で、一方でメディア各社に、公平にやれ。公正にやれと言ってるわけですね。ああいうのを生中継したりとか首相としての活動ってのが日常的に出るわけなんですよね。そうなってくると、どう考えても首相の方が有利になっちゃう可能性が高いのに、公平公正にやれっていうようなことをメディアに言うっていうのはどういうことなのかと僕は疑問に思うし、それから、まさに皆さんがお話してた正直公正ですよね。これ、その個人攻撃じゃないですよね。個人攻撃だって言うんだったら、森友学園の問題、加計学園の問題。あるいは、公文書管理の問題は、この総裁選のテーマにすべきじゃないってことになっちゃいかねないわけですから、まさにこれ、正直公正ってのは、大きなテーマであるっていうことを掲げて、きちんと議論をしてほしいし、考えてみれば、関口さんが仰ったように、当たり前のことですよね。ってことはつまり、政策とか、イデオロギー以前の問題で、その総裁選の争点が大きく浮かんでるっていうのは、今この国の政治ってのはそういうところにあるんだなっていうのは、これはもう本当深刻に受け止めないと、その、政策とかイデオロギーとかいろんなその憲法改正とか以前に、信頼とか公正が疑われてるっていうような政治になってるっていう、それが総裁選で問われている情けない状況を、これは真剣に考えなくちゃいけないと思いますよね。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の2点です。

1、寺島氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている

それぞれ順を追って解説します。

1、寺島氏の発言に、視聴者に誤った印象を与えかねない内容が含まれている

田中氏は今回の報道で、以下のように述べています。

寺島氏(抜粋):で、日本にとってね、まさにトランプにおびえてね、要するに、日本の進路を間違えてはいけないっていうのが僕の言いたいポイントで。中国の脅威ってのが、ちらついてる状況の中で、日米で連携して中国の脅威を封じ込めようっていうゲームを組み立ててるつもりで日本はいるんだけれども、中国にとって一番望ましいのが、まさに米国に封印されてる日本であって…

要旨をまとめると、
・トランプ大統領におびえて日本のかじ取りを間違えてはいけない
・中国の脅威に対して、米国と連携しているつもりでいるが、中国にとって一番都合がいいのはアメリカに封印された日本である

というものです。

しかしながら、この発言における「トランプ大統領におびえる」「中国にとって都合がいいのはアメリカに封印された日本である」という内容は、事実と異なる恐れのある発言と言えます。トランプ大統領と安倍首相は就任以来貿易摩擦などで対立こそするものの、基本的に良好な関係性を保ってきています。また、「中国にとって都合がいいのは米国に封印された日本」という発言は、日米同盟によって在日米軍が日本に駐留しており、その抑止力によって中国の拡大を封じ込めている現状を鑑みれば、明らかな誤りであるといえます。

以上のことから、今回の報道での寺島氏の発言は事実にそぐわないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている

青木氏は今回の報道で、以下のように述べています。

青木氏(抜粋):今回、安倍さん、先程VTRにもありましたけど、安倍さんが出馬表明したのは桜島の前で、そのいかにも大々的にやったんだけど、NHKが生中継してるんですよね。で、一方でメディア各社に、公平にやれ。公正にやれと言ってるわけですね。ああいうのを生中継したりとか首相としての活動ってのが日常的に出るわけなんですよね。そうなってくると、どう考えても首相の方が有利になっちゃう可能性が高いのに、

要旨をまとめると、
・安倍首相の出馬表明はNHKによって生中継された
・その一方で、メディア各社に「公平にやれ、公正にやれ」と発言している
・首相としての行動が日常的に映るので、どうしても首相が有利になってしまう可能性が高い
ということです。

しかし、「首相としての行動が日常的にメディアで報道されるから、安倍首相が有利になる」という主張にはなんら論理的整合性がありません。安倍首相に批判的な偏った報道が繰り返されている現状では、なおさらこの主張は説得力に欠けます。また、メディア各社に公平・公正な報道を求めたのは安倍首相ではなく自民党の総裁選選挙管理委員会です。こうした要請は放送法の観点や昨今のメディアの放送姿勢を鑑みれば真っ当なものであり、したがってこの要請がメディアを委縮させるという主張は誤りだといえます。

以上のことから、今回の青木氏の発言は事実にそぐわないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

続いて、福島第一原発ともんじゅの廃棄物について報道された部分について検証したいと思います。
それでは、放送された内容を見ていきましょう。

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【スタジオ】
伊藤 友里アナウンサー:はい。お伝えいたします。福島原発の事故によりたまった処理水や、廃炉が決まったもんじゅの核燃料などの行く先が問題となっています。

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【VTR】
・高速増殖炉もんじゅの核燃料棒の取り出し作業が木曜日から開始
・もんじゅはプルトニウムとウランの混合酸化物MOXを燃料に発電しながら消費した以上のプルトニウムを生み出せる夢の原子炉として1994年に運転開始。しかしトラブルが相次ぎ、稼働僅か250日で、政府は一昨年、廃炉を決定。
・本格的な廃炉作業の最初の工程は、原子炉と燃料プールの核燃料530体の2022年度までの取り出し。
・原子炉などの機器や建物を解体し、廃炉を完了させるまでには、およそ30年かかる見通し
・もんじゅは、水や空気と激しく反応するナトリウムを冷却材に使っていて、普通の原発の廃炉にはない課題が存在。
・共同通信の太田昌克編集委員は、燃料の処分方法の問題を先送りした形で廃炉に踏み切っているので、燃料の行き場が今のところなく、場合によっては敦賀市に永久的に据え置かれてしまう可能性もゼロではない、と解説。
・一方で、福島第一原発の敷地内には現在およそ680基のタンクが設置、浄化処理しても残る放射性物質トリチウムを含む水が貯蔵。2020年末には、タンクはこれ以上増設できなくなるとみられている。
・そのトリチウム水の処理方法をめぐって木曜日、政府の有識者会議は、初めての公聴会を福島県で開催
・国は、基準値以下に薄めて海へ放出する案が、期間も短くコストも低く抑えられるとの評価を示しているが、福島県漁業連合の野崎哲会長をはじめ、風評被害などを懸念した反対の意見がみられる。

伊藤アナ:処理水の中には、放射性ストロンチウムなども含まれており、公聴会では、放出を危険視する声も挙がっています。膨大な処理水をどうするのか。決めるまでの猶予はそう残されていません。

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【スタジオ】
伊藤アナ:はい。今回の核燃料の取り出し作業というのは、2047年まで、およそ30年かかるとされる、このもんじゅの廃炉作業の第一段階なんですね。これを2022年までに完了される予定なんですが、この取り出した核燃料を、その後どうするのか。処分方法というのはまだ決まっていません。さらにそれ以降、第二段階以降でも、ナトリウム関連機器の解体作業の具体的な計画や方法なども決まっておらず、作業が難航し長期化する可能性というのも指摘されています。一方福島第一原発のトリチウムを含む処理水なんですが、現在のタンクに保管するという方法では、その設置場所に限界が近づいているとして、政府は5つの処理方法を検討しています。

関口氏:ここ、僕も2回見せてもらいましたけど、ここがどんどんどんどん増えてって、もう限界なんですよね。

伊藤アナ:そして政府が検討した5つの方法がこちらなんですが、地下深くに廃棄する方法や、VTRでも触れました海洋放出といった液体として処理する方法。それから、水蒸気や水素などに変えて、大気、ガスとして放出するという方法。それから固体化して埋設するという、この5つの方法です。で、この中でもっとも処理期間が短く、コストが低いとされているのが、この海洋放出で、有力視されてはいるんですが、公聴会では、漁関係者などが強く反発しています。これを受けて、タンクでの長期保管も含めて今後議論していくと・・・

関口氏:長期保管って、ずっと置いとくっていうことだから、どっちにしたって、このもんじゅにしてもね、取り出した燃料のもって行く先が決まっていない。水の処理でも、福島第一原発でも、これも決まってない。これどういうことでしょうね、涌井さん。

涌井氏:これ両方あの、基本的な問題は何かというとですね、やっぱり桁が違うんですよ。もんじゅの問題とこちらとは桁が違うんですけれども、両方共通してるのは、その科学的に安全なのか。それとも、心境的に安心なのかという、この違いなんですね。ただし、そのもんじゅの方はですね、実は非常に大きな問題がありましてね、あと30年で3600億かけて取り出すっていうんだけれども、実はナトリウムってのは、水と、その空気に触れると発火するんですよ。非常にだからデリケートなんですね。で、今まであの、実は1兆1000億以上かけてこれを作ってきた。これはですね、先程のあの、沖縄の話じゃないですけど、30年以上、約11兆1000億つぎ込んできた桁から考えてみると、これにつぎ込んできた金ってのは、ものすごいってことが分かっていただけると思うんですが、合わせてですね、その、そう簡単ではないっていうところに、非常に大きな問題があるのと、もう一つは、実は一番大きい問題は、パリ協定を盾にとって、要するに原子力を基幹的なエネルギーにするんだって考え方が変わってないと。で、それはパリ協定を盾に取ってるってところなんですね。これに大きな問題があって、もちろん安定したエネルギーの供給ってのは、非常に重要なんですけども、しかしですね、それを再生エネルギーなり何なりにどんどん切り替えてくっていう方向でやらないと、こういう危険性はものすごくいろんなもので含んでるっていう事実に目を向けなきゃいけないなと。で、トリチウムの方はですね、科学的に見れば、半減期間、減少期間も非常に短いし、その、実は普通の発電所も海水にどんどん出している中に若干トリチウムは入ってるんですよね。だからそういうところでは、大きな問題が、科学的に見れば、安全といえるかもしれないけど、でも、福島の原発事故を考えてみると、そういう対応の仕方はあまりにも安易だっていうふうに言わざるを得ないと。こういう場面だと思います。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の点です。

・涌井氏の発言に視聴者をミスリードする恐れのある内容が含まれている

順を追って解説します。

涌井氏は今回の報道で、以下のように述べています。

涌井氏(抜粋):で、トリチウムの方はですね、科学的に見れば、半減期間、減少期間も非常に短いし、その、実は普通の発電所も海水にどんどん出している中に若干トリチウムは入ってるんですよね。
だからそういうところでは、大きな問題が、科学的に見れば、安全といえるかもしれないけど、でも、福島の原発事故を考えてみると、そういう対応の仕方はあまりにも安易だっていうふうに言わざるを得ないと。こういう場面だと思います。

確かに、トリチウム(三重水素)は自然界に存在する物質であり、またごく微量の放射線量しか放出しないので毒性も薄く、半減期も比較的短期、さらには水と特性が似ているため体内に取り込んでも蓄積されずに代謝によって排出されるなど、科学的には人間に対する毒性は限りなくないと言える放射性物質です。VTRやその後の解説でも一切触れられていなかったので、こうした内容について涌井氏が言及したことについては評価できます。

ですが、「福島の原発事故を考えると、そういう対応の仕方はあまりにも安易だ」という言説については疑問符を付けざるを得ません。福島の原発事故への対応については、初期対応こそ評価の分かれるところではありますが、その後の除染処理や廃炉プロセスはすべて化学的な見地に基づいて行われています。したがって、処理水にのみこうした反論をするのは論理的整合性にかけ、根拠に乏しい主張と言えます。

以上のことから、今回の報道は実態にそぐわないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

以上が今回の報告となります。今回の放送では、事実と異なる内容を放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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