サンデーモーニング、2018年9月23日放送回の検証報告です。
今回の報告では、
・自民党総裁選の結果について報道された部分
以上1点について検証し、その問題点を探りたいと思います。
検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。
では、さっそく放送内容を見ていきましょう。
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【VTR】
・得票総数は国会議員票と地方票合わせて、安倍氏は553票(68%)、石破氏は254票(31%)
・石破氏は圧倒的劣勢とみられていたが、国会議員票で「隠れ石破支持」とみられる約20票を獲得
・安倍氏は国会議員票で82%を獲得したが、地方票では55%にとどまった
・石破氏が獲得した地方票が安倍氏を上回ったのは、地方で10県にも及ぶ。
・国会議員と党員の乖離を指摘する声が上がっている
・内閣改造・党役員人事は、麻生副総理・菅官房長官・二階幹事長は留任の見通し
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【スタジオ】
橋谷能理子アナ:来月予定されています内閣改造、そして党役員人事なんですけれども、核となる菅官房長官、麻生副総理、二階幹事長の3人に加えて、総裁選への立候補を断念した岸田政調会長を留任させる方針を固めました。また、茂木経済再生担当大臣、そして河野外務大臣も留任の見方が強まっていまして、総裁選で安倍陣営の責任者だった甘利氏の処遇も注目されています。そして安倍総裁、これからの3期目なんですけれども、今月30日には沖縄県知事選があります。また来年4月には統一地方選挙、そして天皇陛下の退位もあります。7月か8月には参議院選が行われまして、10月には消費税率10%に引き上げる予定です。これらをどう乗り切っていくのか、今後も正念場が続くという感じですね。
関口宏氏:体制は変わりませんが、これから起こることはね、いろんなことがあるんだろう。あの、与田さん久しぶりに来ていただいて、ちょっとボードを使って説明してください。与田正男氏:あの、私たち新聞やテレビのですね、政治記者ってのはとりわけ、やれ内閣改造がどうなるとか、前のめりになっちゃうんですけど、やっぱもう一回きちんと振り返ってみましょうということで。VTRにも出てましたけれど、総裁選の結果は、まあこの通りでしたと。これもVTRの通りですけれども、やっぱり注目すべきは地方票、党員・党友票ですね。安倍さんが55%しか取れなかったと。当初、安倍さんの陣営は、党員票でも7割近く取って、もう石破さんを完膚なきままにっていうような勢いだったんですけれども、やっぱり55%にとどまってしまった。石破さんが45%。それから村上誠一郎さんが話した通り、これはやっぱり、永田町と国民、まあ地方票ってのは党員ですから、より有権者全体に近いんだと思うんですけども、この乖離・ギャップ・落差ってのいうのはやっぱり本当に、それそのものが深刻だと思いますし、やっぱり党員・党友の間には、この間の6年間の安倍政治に対して不満・批判がものすごく根強いなということを表す数字だったと思うんですね。これは我々も予想外で、驚きました。もう一つ驚いたのが、その後の安倍首相、総裁の決まった後の記者会見でした。安倍さんは、この地方票の話について一切触れずに、この下、合計ですね。合計では、私は69%、7割近い数字を取ったんだということを強調してました。何故ここに触れないんだろうと思うわけですよね。これはまあ、よく言うですね、やっぱりこうだと思うんですね。“不都合な事実”、まあ真実と言ってもいいんでしょうけど、事実に正面から向き合わない。都合のいい数字ばかりしか、見えない。これはもうアベノミクスも同じで、経済指標、雇用であるとか税収であるとか、都合のいい数字ばっかり取り上げて、都合の悪い数字は目をつぶってしまうと。やっぱりここに、こういうところに、こういう政治姿勢にもやっぱり不満はね、党員・党友。まあ森友・加計問題、まさにそうですけども、あったのではないかと。で、今後の日程を見ますと、これも先ほど出てた通りですが、ポイントになるのは、もちろん来年の参議院選をクリアしないと、安倍さん3年間ってのは分かりませんよということだと思いますけど、やっぱりここで強調したいのは、この内閣改造が終わってですね、臨時国会が開かれます。で、そこにですね、安倍首相は憲法改正の自民党案、まあ恐らく軸になるのは、自衛隊を明記するということだと思いますけども、これを、自民党案を提案したいと。加速すると言ってるわけですね。まあご存知の通り憲法改正ってのは、まあ安倍首相の宿願ではあると思いますけれども、果たして本当にこれ、緊急課題かという問題。それからもう一つ重要なのは、総裁選の最中に石破さんは、やっぱり憲法改正に国民投票っていうのはね、国民の6割から7割ぐらいがやっぱり賛成する必要があると。ところが安倍さんは、1票でも勝てばいいんだというような言い方でした。まあ確かに民主主義ってのは最後は多数決ですけれども、その間のプロセスっていうのも大事で、国民が賛成・反対に二分するんじゃなくって、敵か味方に二分するんじゃなくって、いかに国民の意識っていうのを統一させてくか。一致点を、とことん議論して一致点を見出すかだと思うんですよね。それがやっぱり、安倍さんは分かってないな。分かろうとしないな、っていう結果だったと。まあその後のことだと、と思います。ですから、僕はこれから変わるかどうかについて、ものすごく悲観的です。
関口氏:そうですか。さあ皆さんにも伺いましょう。寺島さん。
寺島実郎氏:国民のですね、静かに感じてる違和感って何だろうってこう考えてみてね、一言でいうと代議制民主主義のパラドックスってのに直面してるのかなと。で、自民党員ってのは大体有権者の僅か1.5%に過ぎないと。そういう人がですね、まあ中でさえ、ある種の違和感を持った人が45%いると。国民にとってはさらにギャップがあるってのはまあ今回の結果だった。でも、そういうルールなんだからっていうふうに考える人いると思いますけど、この6年間のね、日本の政治の変化っていうことを静かに考えてみるうちにですね、つまりね、要するに、何も決まらない政治っていうのかな。政治主導・官邸主導っていう流れをどんどんつくっていって、解釈改憲さえ、官邸が主導してできるっていうような流れをつくってたっていうか。大統領制でもないのに、大統領に近いような権限・リーダーシップをもつ官邸っていうことを、国民の側も薄っすら期待した部分もあるし、結果、そういう流れにいったと。で、それがですね、代議制民主主義のパラドックスで、これから、国会でこの人決めるわけですけど代議制民主主義が選ぶ首相ってのはですね、国民が直接投票した大統領とはまた違ってですね、ある種のこのギャップを見つめる謙虚さってのがないと、成り立たないはずの制度なんだけども、いつの間にかね、こういう罠みたいなものの中にスッと我々自身も吸い込まれていったっていうかですね、ですから本当に考えなきゃいけないのは、代議制民主主義を国民の意識をも反映したシステムにするためにね、どういうふうに変えてったらいいんだってことを真剣にやっぱり国民も考えなきゃいけないっていうかですね、ため息ついてるだけではダメだと。こうも思いますね。
関口氏:大宅さんいきましょう。
大宅映子氏:私はあそこの国会議員の82%ってのに引っかかってですね、これ、どこぞの独裁国みたいな感じがします。それぞれの意思がちゃんと自由に表明できなくて、こう封殺されてしまうっていうね。で、そんなことはないと思いたいけれど、って思って思いましたが、カツカレー食べ逃げ事件っていう話があって。その投票しないのにカツだけ食べた人がいると。それを犯人捜しをするっていうことがね、結局そういうことですよね。歯向かったら、歯向かったらそういうことになるよと、吊し上げようって思ってるっていう。だから、党議党則で、縛る。嫌々従う。みたいなことで、がリーダーシップではない。さっき与田さんおっしゃったように、民主主義っていうのは、最後は多数決。仕方がない最後の手段として多数決なのにそれが先にあっていいっていうのは、私は困ると思う。与田さんが悲観的っておっしゃったんですけど、私は党員の方の、私たちが抱えてる不満と不安がね、共有できてるってことにちょっと光を見出してます。
関口氏:安田さん。
安田菜津紀氏:この総裁選の結果自体ももちろんなんですけれども、大宅さんが少しおっしゃったように、そこに至るまでの過程そのものにもやはり、目を向けていく必要性があると思うんですね。例えば今回は、党側から事前に各都道府県連に向けて、取材対応を自粛するようにっていうことを求めたりですとか、あるいはその安倍さんの街頭演説の中では、公共のスペースで、公共の場でやってるにも関わらず、聴衆用のスペースには支援者しか入れないっていう選別があったりっていうこともあったと思うんですね。で、こうして真摯な政治ということをもし掲げるのであれば、例えば言葉であったり、あるいは知る権利っていうのを封じるような、その矛盾とも向き合っていく必要があるんではないかと思います。
関口氏:松原さん。
松原耕二氏:そうですね、今回の総裁選で、まあいろんな地方の県連の方ともお話をしてみたんですけど、やっぱり、森友学園の問題、あるいは加計学園の問題、あるいはこの強権的な主導については、ものすごくやっぱり批判的なんです。安倍さんにおそらく一票入れた人の中でも、相当そこについては批判的な人がたくさんいると。まあ
その数字っていうのは、地方票の数字はそういうことなんだと思いますね。で、一つぜひ、やっぱり要望したいのが、長期的なものをちゃんとやって欲しいという。今回まあ、久しぶりにこういう討論があって、厳しい質問を記者から浴びて、ものすごく大事なことだと、改めて当たり前のことなんですよ。本当は。思ったんですね。やっぱりどんなに都合のいい数字を並べ立てて、成果を強調しても、先程与田さんがおっしゃった不都合な真実ってのがやっぱり見えてきちゃうわけですよね。例えば、借金の問題、あるいは社会保障の問題、原発の問題とか、あるいは大規模緩和でリスクがものすごい増大しているとか、そういうのを、強い政権だから本当は何とかできるはずだ、向き合えるはずなんですよね。これが今回向き合ってもらわないと、何のためにルールを3年、わざわざ任期を伸ばして、さらに3年の任期を与える、長期政権を与えたかっていう、国民からしたら何のためかという問いになると思いますね。
関口氏:なんか流れがね、非常に偏った流れをしてないかなって私なんかも感じる。これでいいのかな。でもまあ、とりあえずは新しいスタートを切ったという。
橋谷アナ:そうですね。
以上が放送内容となります。
では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは次の2点です。
寺島氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
大宅氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
この報道全体が特定の立場・観点に偏っている
それぞれ順を追って解説します。
1、寺島氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
寺島氏は今回の報道で、以下のように述べています。
寺島氏(抜粋): (自民党員でさえ)ある種の違和感を持った人が45%いると。国民にとってはさらにギャップがあるってのはまあ今回の結果だった。
要旨をまとめると、
・総裁選の地方票ですら45%が安倍首相に投票しなかったのだから、国民全体ではさらに安倍首相に違和感を感じる人がいる。
というものです。
ですが、日本経済新聞の世論調査によると、内閣支持率は8月と比べ7%上昇し、55%となっています。また、自民党総裁選の結果についても、「よかった」が55%を占めているのに対し、「よくなかった」が38%にとどまっていることから、今回の総裁選の結果に国民がギャップを感じているというのは事実に基づかない恐れがあります。
以上より、今回の寺島氏の発言は放送法第2章第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
2、大宅氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
大宅氏は今回の報道で、以下のように述べています。
大宅氏(抜粋):私はあそこの国会議員の82%ってのに引っかかってですね、これ、どこぞの独裁国みたいな感じがします。それぞれの意思がちゃんと自由に表明できなくて、こう封殺されてしまうっていうね。
要旨をまとめると、
・自民党総裁選で国会議員票の82%が安倍首相に集中している。これは党員が自らの自由に意思を表明できず封殺されていることを示しており、これではまるで独裁国家のようである。
というものです。
ですが、今回の投票に際し自民党や安倍首相による党員への投票の強制などといった事実はありません。得票率85%という結果はあくまで自由投票の結果であり、その結果がたまたま安倍首相優位だったことを以て独裁だと批判するのは事実に基づかない恐れがあります。
以上より、今回の大宅氏の発言は放送法第2章第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「安倍首相が自民党総裁を3期務めるのはおかしい」「安倍首相は今回石破氏に苦戦を強いられた、安倍首相のやり方への疑問の表れだ」という立場に立った意見のみが出てきました。
ですがこの問題に関しては「安倍首相が3期務めるのは実績からも妥当だ」「結果を見れば安倍首相が善戦しているのは明らかだ」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした立場を全く取り上げず、あくまでメディアは正しいという立場にのみ立った形で放送がされていました。
以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。
以上が今回の報告となります。今回の放送では、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。
公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。