2018年9月30日 サンデーモーニング

2018年9月30日 サンデーモーニング

サンデーモーニング、2018年9月30日放送回の検証報告です。

今回の報告では、
・トランプ大統領の国連演説と、第2回米朝首脳会談の計画について報道された部分
・新潮45の休刊について報道された部分
以上1点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

最初に検証するのは、トランプ大統領の国連演説と、第2回米朝首脳会談の計画について報道された部分となります。では、さっそく放送内容をみていきましょう。

【スタジオ】
関口 宏(以下、関口氏):この1週間を振り返ってみれば、ニューヨーク、国連に各国首脳が集まってね、いろんなことが起こりましたね。

橋谷 能理子アナウンサー(以下、橋谷アナ):はい、そうですね。まずは、トランプさんです。国連での演説に臨んだトランプ大統領。場で失笑を買うという異例の場面がありました。

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【VTR】
橋谷アナ:25日、国連総会で行われた一般討論演説。

トランプ大統領(字幕):この2年足らずで私の政権は アメリカの歴史の中で ほぼどの政権よりも多くのことを成し遂げた 本当のことだ

橋谷アナ:自らの成果をアピールするアメリカのトランプ大統領の演説に、会場からは失笑が。北朝鮮の国連大使も苦笑いです。

トランプ大統領(字幕):こんな反応は予想外だが まあいいさ

橋谷アナ:翌日の、ワシントンポスト紙は、「トランプ大統領は世界の笑いものになった」という専門家の論評を掲載しましたが、トランプ大統領はフェイクニュースと反論。

トランプ大統領(字幕):彼らは私を笑ったのではなく 私と一緒に笑ったのだ

橋谷アナ:議場をあきれさせたトランプ氏の発言は、これだけではありませんでした。

(CM)

橋谷アナ:国連総会での演説で失笑を買ったトランプ大統領。しかし、笑いごとでは済まされない発言も。

トランプ大統領(字幕):我々はグローバリズムのイデオロギーを根絶し 愛国主義を尊重する

橋谷アナ:世界の国々と協力すべき場である国連で、アメリカ第一主義を改めて鮮明にしたのです。これには、厳しい声が上がりました。

マクロン大統領:愛国主義は常に敗北につながるということを 世界が忘れないようフランスは努めていく

橋谷アナ:一方、北朝鮮についての演説は、去年とは様変わりしていました。去年は、金正恩党委員長を「ロケットマン」と揶揄しましたが、今年は。

トランプ大統領(字幕):我々は朝鮮半島の非核化の追求が 両国の利益になるとの考えで一致した 金党委員長の勇気と 彼が取った措置に感謝したい

橋谷アナ:翌日の会見では、こんな発言も。

トランプ大統領(字幕):我々の関係はとても良好だ 彼は私が好きだし 私も彼が好きだ

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・去年は北朝鮮への圧力強化を訴えた安倍総理の演説一変し、「金正恩党委員長と直接向き合う用意がある」と発言した。
・安倍総理は演説の前に、金党委員長の「適切な時期に日本と対話する用意がある」との言葉を韓国の文在寅大統領から聞いていた。
・北朝鮮の李容浩外相は、ポンペオ国務長官・河野外務大臣と相次いで会談し、中国の王毅外相とも密かに会談を行った。
・韓国の李外相は、国連総会で「アメリカは先に非核化だけを主張し、北朝鮮に制裁による圧力を更に強め、朝鮮半島の終戦宣言の発表まで反対している」と訴えた。

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【スタジオ】
橋谷アナ:米朝の姿勢の変化なんですけれども、去年の9月、国連演説でトランプ大統領は、「北朝鮮を完全に破壊する以外選択肢がなくなる」と話していました。一方北朝鮮の李容浩外相も、「軍事力行使の兆候を見せたら、容赦のない先制攻撃をとる」というふうに、お互い激しい言葉で批判していたんですね。ところが今回はというと、トランプ大統領、「金党委員長に感謝したい」。そして、李容浩外相も、アメリカに注文を付けつつも、「朝米両国が信頼関係の構築に力を入れるべきだ」というふうにトーンが変わってきています。
 そして注目の、2回目の会談なんですけれども、まず、日時です。日時について、ポンペオ国務長官は、10月か11月以降の可能性を示していますが、アメリカでは11月6日に中間選挙が行われますので、この前になるのか後になるのかというのが注目されています。また、場所についてはトランプ大統領、シンガポール以外の可能性を示しています。そこで、板門店とか、ソウルという観測も、今、囁かれ始めているんですね。

関口氏:ま、その結果は、いろいろあるんでしょうが、私は、国連が賑やかであるっていうことは、良いことだと思っているんですよ。あそこに、だから無視しちゃいけないと思って、皆がそこへ集まってきていろんなことを言うべきであると思っておりますが、今回はどういうふうに受け止めてらっしゃいますか、秀征さん。

田中 秀征(以下、田中氏):あの、2回目の首脳会談を開くって言ってるんだけど、何のために開くのか、今一つ分からないんですよね。だから、結局、トランプさんがはしゃいでるっていうふうにしか見えないですね、僕は。見てて。ですから、それで、非核化の日程的なことについてもね、なんか融通無碍で、いくらでも融通利くんだっていうような発言もしてるし、あるいはまた、その、核兵器。存在してる核兵器とか、そういうものについて、言及さえしてないですね、お互いにね。一番肝心のところに。だからもう、しばらく様子見る以外、ないなという感じがしますね。

関口氏:安田さん。

安田 菜津紀(以下、安田氏):特にあの、北朝鮮をめぐって国連の中での動きを見ていても、アメリカについて、日本はこう、アメリカの動きを追っていくような動きを続けてきたと思うんですけれど。ただこの北朝鮮問題、民間レベルで見ていくと、既にNGOなどを中心にして、例えば北朝鮮と日本の学生交流などが既に行われていたりするわけですよね。で、あの国連の演説の中で、安倍さんの演説の中で他にも、例えばパレスチナ・ガザから学校の先生達を平和教育の一環として招こうという言葉があったんですけれど、これはパレスチナ支援を打ち切っていこうというアメリカの動きとは、やはり異なる面だと思いますし、そうした中東諸国だけではなくて、じゃあ、近隣諸国ともこうした小さな交流の積み重ねから始めることができないのか。それは政府レベルでも模索が必要なんではないかと思います。

関口氏:そうですか。藪中さんの見方はどうでしょう。

藪中 三十二(以下、藪中氏):えっと、そうですね、トランプ外交なんですけれどもね。世界中で、多分一番心配してないのが日本じゃないかなと。

関口氏:どういうことですか?

藪中氏:この間も学生に聞いたんですけれどもね、どうだと。トランプ外交、心配か?っていうと、まあ60%ぐらいが、まあまあいいんじゃないですかと。それはね、やっぱりね、日米関係、安倍トランプって上手くやってるじゃないかっていう感じがあるんだろうと思いますね。ところが今、我々が見なきゃいけないのは、トランプさんってのは、世界のシステム、戦後七十数年間続いてきたシステムを壊そうとしてると。一つはまあ、NATO。日米同盟関係もそうですけれども、アライアンス、同盟の関係。NATOなんかもういらないんだって言ってますよね。

関口氏:そんなこと言いましたね。

藪中氏:で、経済だよね、自由貿易主義。あんなのはもう、全然アメリカの役に立たないんだという格好で言ってると。この2つってのが、まあ世界の戦後、曲がりなりにもね、戦後の平和と繁栄の礎になってきたと思うんですけれども、それを壊そうとしてるんだっていうところをよく見なきゃいけないと思うんですね。で、国連でグローバリズムなんかも反対だっていうことも言ってると。だから、まあ上辺だけでですね、まあいいんじゃないかって言ってる日本ってのは、いずれ日本にも跳ね返ってきますから、そういう意味ではもっと真剣にこれは問題なんだっていうことを見なきゃいけないと思いますですね。

関口氏:元村さん。

元村 有希子(以下、元村氏):トランプさんは本当にあの、愛嬌のあるというかね、ああいう場面でもこう、いなすというかね、間合いをまた取るという、テレビ的なスキルはすごく富んでる人だなと思いますけれども、ただ一方でやっぱり、北朝鮮にああやって感謝する一方でね、イランを攻撃したり、それから中国を攻撃していますよね、口でね。で、しかも国連で、ああいう協調、国際協調という前提の名に集まっているところに、遅刻をしてきて、演説でああいうことを言う。で、反グローバリズム。そして愛国主義と言う。あの、国連をどういうふうに彼は見ているのかなというのがとても気になりました。まあ元々国連っていうのはその、世界の平和を実現するために皆が集まった機関であると、私は理解していますけれども、関口さんがおっしゃるように、やはり、各国の首脳が、どんな奴でどんなことを考えてるかを見る、プレゼンの機会、みたいになっちゃっているところが、少し私は不安です。

関口氏:ああ、そうですか。青木さん。

青木 理(以下、青木氏):安倍政権を語るときに、外交はそこそこ上手くやってるじゃないかと思ってる方、印象を持ってる人多いと思うんですけれど、今、安田さんがちょっと言ったんですけど。この北朝鮮の問題ってのは、安倍さんにとっての、ある種ライフワークみたいのところがあったんだけれど、ここに来てみて、まさに引きずられてるんだなっていう印象ですよね。その、去年の国連演説では、圧力を最大限に高めると。ちょっと前まで100%トランプ政権とともにあると。そのトランプさんがコロッと態度が変わったら、今回は、まあ対話をするんだと。あの最大限の圧力ってのは、どこに行っちゃったんだろうな。つまり、韓国、まあ韓国は本当に、主導をしてて僕は非常にその、働きは、文在寅大統領の働きってのは、僕は評価するんですけれども、文さんが働き、それからトランプさんの動きに完全に引きずられてるだけで、一体日本の主体性、かつて日朝首脳会談をやったときのような、日本の外交が一つのその、朝鮮半島の平和と安定のために貢献するんだっていうような主体性ってのが、実はあんまりないなと、いうことが今回露わになったんじゃないか。だから外交、安倍政権の外交って何なのかなっていうのを、僕は改めてちょっと、今回は感じましたよね。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の2点です。

1、藪中氏の発言に視聴者にミスリードを生みかねない内容が含まれている
2、この報道全体が一つの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

①藪中氏の発言に、事実と異なる恐れのある内容が含まれている
藪中氏は今回の報道で、以下のように述べています。

藪中氏(抜粋):トランプさんってのは、世界のシステム、戦後七十数年間続いてきたシステムを壊そうとしてると。一つはまあ、NATO。日米同盟関係もそうですけれども、アライアンス、同盟の関係。NATOなんかもういらないんだって言ってますよね。

要旨をまとめると、
・トランプ大統領は戦後の国際関係を支えてきたシステムを壊そうとしてる
・だから、NATOや日米同盟は不要だと言っている

というものです。

しかしながら、トランプ大統領の就任以降アメリカが政策として日米同盟の破棄を明言したことはありません。トランプ大統領個人としても、日米同盟の破棄にまで言及したことはありません。日米同盟は現在でもアメリカの基本政策、米国外交の中核として機能しています。

よって、今回の氏の発言は放送法第2章第4条第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

②この報道全体が一つの立場・観点に偏っている

今回の放送では、この問題について全体を通して「トランプ大統領は外交面で成果を上げていない」「グローバル化に反対するトランプ大統領は非難されるべきだ」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「トランプ大統領は北朝鮮問題を始め一定の成果を上げている」「グローバリズムには問題点もある」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで不起訴はおかしい、という論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

続いて、新潮45の休刊について報道された部分と思います。
それでは、放送された内容を見ていきましょう。

【スタジオ】
関口氏:9月25日の火曜日です。LGBT、性的少数者について、生産性がないなどとする自民党の杉田水脈衆議院議員の原稿を掲載。さらに、杉田氏の主張を擁護する特集を組んだ月刊新潮45。差別的だと批判が相次ぐ中、新潮社はこの日、新潮45の休刊を決めたと発表しました。新潮社、部数低迷に直面し、編集上の無理が生じた。十分な原稿チェックが疎かになっていたとしています。そして。

——-
【VTR】
記者:新潮45が休刊になったことについて一言よろしいですか。
杉田水脈議員:関知していません。
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【スタジオ】
関口氏:28日、自民党本部の会合に出席した杉田議員。一連の問題について一切の説明を拒んでいますが、安田さんはどう見てますか、これ。

安田氏:この新潮45に関しては、業種を超えて抗議の声が挙がったと思うんですけれど、それに対して、LGBT当事者以外が、何故口を挟むのか。何故口を出してしまうのかという、そういった声も耳にするんですね。これまで、当事者だけに痛みを押し付けてきたからこそ問題が放置され続けてきたと思いますし、休刊というのは幕引きにならないはずなんですね。何が問題だったのか。何故起きてしまって、繰り返さないためにはじゃあ、必要なのか。今求められているのは具体的な検証ではないかなと思います。

関口氏:厳しい意見だ。青木さんどうでしょう。

青木氏:取材してものを書くって、記録文学とかノンフィクションとかいろいろ言われますけど、僕もその一員なので、残念ですよね。ただ、あの文章を、あの主張ってのは、考えるとやむを得ない。論外だったなと思うんですが、その、これネットがこれだけ優勢を迎える中ね、その出版、特に紙の雑誌ってどんどん厳しくなっていって。ああいうその、ネトウヨ的というかね、排外主義とか差別とかっていう、毒まんじゅうを食ってる出版社って他にもあるんですよね。だから決して新潮社だけの問題じゃないってのが一つ。それからもう一つだけ。杉田議員は何故自民党で、比例であんなに重用されたのか。ってことを考えると、政権との近さですよね。それから今回大問題になった痴漢とLGBTを同列視するような論文を書いた評論家の人っていうのは、安倍首相の礼賛本を書いて世の中に出た人なんですよ。で、その本ってのいうは、安倍政権。安倍首相のなんかその、政治団体が買ってるっていうんですね。買い取ってる。つまりやっぱりこの、政権がバックにいるっていうことで、ある種蠢いてる人達が今回の問題を起こしてるんだっていうことも、日本人っていうか我々はちょっと真正面から受け止めないと、単なる差別問題とか新潮社の問題っていうふうに、矮小化しちゃいけないんじゃないかって僕は思ってますけどね。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の1点です。

・青木氏の発言に視聴者にミスリードを生みかねない内容が含まれている

では、順を追って解説します。
青木氏は今回の報道で、以下のように述べています。

青木氏(抜粋):これネットがこれだけ優勢を迎える中ね、その出版、特に紙の雑誌ってどんどん厳しくなっていって。ああいうその、ネトウヨ的というかね、排外主義とか差別とかっていう、毒まんじゅうを食ってる出版社って他にもあるんですよね。(中略)杉田議員は何故自民党で、比例であんなに重用されたのか。ってことを考えると、政権との近さですよね。それから今回大問題になった痴漢とLGBTを同列視するような論文を書いた評論家の人っていうのは、安倍首相の礼賛本を書いて世の中に出た人なんですよ。で、その本ってのいうは、安倍政権。安倍首相のなんかその、政治団体が買ってるっていうんですね。買い取ってる。つまりやっぱりこの、政権がバックにいるっていうことで、ある種蠢いてる人達が今回の問題を起こしてるんだっていうことも…(後略)

要旨をまとめると、
・紙の雑誌は売り上げが難しいので、ネトウヨ的・排外主義的・差別的な記事で売り上げを稼いでいる、「毒まんじゅうで食っている」出版社は新潮45以外にもある
・LGBTへの差別発言で問題となった杉田水脈議員は自民党の比例で重用されていたことと、新潮45に問題の記事を書いた評論家がかつて安倍首相の「礼賛本」を書いたことがあること、そしてその本を安倍首相の配下の政治団体が買っていることを考えると、政権がこうした問題のバックにいる

というものです。

しかしながら、これらの主張は事実と異なる憶測に過ぎません。
まず、「ネトウヨ的・排外主義的・差別的な記事で毒まんじゅうを食っている(売り上げを稼ぐ)出版社」などという発言は、特定の主張を独善的な価値観に基づいて断罪しているだけでなく、そうした意見を掲載する出版社に対する誹謗中傷です。また、そうした出版社が存在すること自体も、存在したとしてそうした記事を書く理由が出版業界の困難さであるという主張も、根拠のない憶測の恐れがあります。

また、
・LGBTへの問題発言で非難された杉田水脈議員が自民党の比例で重用されていたこと
・新潮45に問題の記事を書いた評論家がかつて安倍首相に関する本を書いていたこと
・その本を安倍首相の政治団体が買っていたこと

という、全く異なるそれぞれの事象を都合よく解釈することで、証拠もないのに「安倍政権がこうした問題の背景にいる」などと断罪するのは、全く根拠のない妄想でしかありません。このような発言は、都合のいい事実だけを拾い集めて恣意的な解釈をすることで、無理矢理にでも安倍政権の仕業にしようとしているように取られてもおかしくはありません。

よって、今回の青木氏の発言は放送法第2章第4条2「政治的に公平であること」、第2章第4条3「報道は事実を曲げないですること」、放送法第2章第4条4「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が今回の報告となります。今回の放送では、政治的に公平でない内容を放送したり、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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