2018年10月28日 サンデーモーニング

2018年10月28日 サンデーモーニング

サンデーモーニング、10月28日放送回の検証報告です。

今回の報告では、
・安田純平氏の解放について報道された部分
・伊方原発再稼働について報道された部分
以上2点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

最初に検証するのは、安田純平氏の解放について報道された部分となります。では、さっそく放送内容をみていきましょう。

——-
【スタジオ】
橋谷能理子アナ:次は、ジャーナリストの安田さんのニュースです。木曜日、無事帰国を果たした安田純平さん。その日記には、過酷な拘束生活の実態が、詳細に記されていました。

——–
【VTR】
・安田純平氏は、シリアで40か月間拘束されていたと語った。
・安田氏は、新聞社の記者からフリージャーナリストへ転身し、内戦を取材するため2015年6年にシリアへ入国した直後、武装組織に身柄を拘束された
・武装組織はシリアの反体制派と見られているが、合従連衡を繰り返しており特定は難しく、さまざまな組織を転々とさせられた可能性もあるという
・安田氏の開放にあたって日本政府は身代金の支払いを否定している
・安倍総理は、カタールのタミーム首長とトルコのエルドアン大統領に対し、電話で謝意を伝えたと話した

——-
【スタジオ】
関口宏氏:そこも時期にというね。特にね、カショギ氏の問題があるから、トルコがね、やたら、今主役だなあ。まあちょっとこの裏側を。

橋谷アナ:なぜ今解放されたのか。青山教授によりますと、シリアの内戦は現在、アサド政権側が圧倒的に優位な状況で、安田さんを拘束したとみられる反体制派は劣勢に立たされているんですね。で、アサド政権は、反体制派が支配していたこのイドリブ県へ総攻撃を準備していまして、反体制派を支援しているトルコとカタールは、このままでは反体制派が負けると判断して、内戦の終結を模索していました。反体制派の側にしますと、もう戦わなくていいとなると、身代金をとったり、人質をメディアに露出する必要性もなくなるので、安田さんを解放したのではないかと青山先生は見ているそうです。

関口氏:うん。まあ、安田さんがそのうち記者会見を開くと言っておりますから、さらに新しい事実が出てくるでしょうが、ちょっとこの反応についてね、青木さん、よろしくお願いします。

青木理氏:あの、またぞろ、いわゆる自己責任論っていうのが出てきてるんですよね。で、もうバカバカしくって本当は話もしたくないところもあるんですけれども。例えばこれ、2004年だったですかね、イラクで、ボランティアに行った女性、日本人の女性たちが捕まった時に、これも自己責任ってことが言われたんだけど、当時パウエル、ブッシュ政権のパウエル国務長官が、外国にまで行って困ってる人を助けようっていう日本人がいることを、日本はもっと誇るべきだというふうに言って。そもそも国民の保護ってのは国家の責務ですから、これは自己責任なんていうのは僕はもうここで、くだらなすぎてあまり議論もしたくないんですけれど、ただ紛争地取材とジャーナリズムってことについてちょっと考えてみたいんですね。なんでそのジャーナリスト達は、危険な紛争地に行くのかってことなんですけれども、日本でもその、今これ安田さんも解放されましたけれども、例えば2015年に後藤健二さんなんかも亡くなってるんですけれども、これ、世界的に言うと、もっとジャーナリストが犠牲になってるんですね。毎年100人以上が亡くなってるって言われていて、シリアでは、2012年から2016年の5年だけとっても、110人以上がこれ犠牲になってるんです。で、これ日本だけじゃないんで、アメリカなんかでもこれ、ジャーナリストの紛争地での安全性ってのをどうやって守るかってことを真剣に議論をしていて。例えば、アメリカの国務省なんかは、ちょうどこの後藤健二さんが亡くなったくらいのときに、メディアの人たちを集めて勉強会を開いてるんですね。そこでケリー国務長官が言ったことっていうのが、これあえて政府当局者の主張ですけれども、非常にその、勉強になるのでぜひ紹介したいんですけれども、ケリー国務長官はこう言ったんですね。紛争地でのメディアとかジャーナリストの危険性をゼロにするってのは非常に難しいと。ほぼできないと。これは無理なんだと。で、しかし、これゼロにする方法が唯一、一個だけあると。それは何かって言ったら、沈黙することだと。つまり、沈黙ってのがどういうことかっていえば、もう取材しなくちゃいいんだと。取材しなければ、危険性はゼロになるんだと。しかし、ケリーさんはこうおっしゃるんですね。それを我々は降伏とか放棄とみなすと。つまり、目と耳をふさいでしまって、外で何が起きてるのかっていうことが伝わらなくなってしまうと。だから、降伏や沈黙、放棄はしちゃいけないんだ。沈黙はすべきじゃないんだっていうふうにケリーさんはおっしゃってる。さらにケリーさんがおっしゃってるのは、さらに、ジャーナリスト・メディアってのは、政府や公的機関からは独立してなくちゃいけないと。っていう原則があるので、政府としてもあれこれ言えないと。しかし、政府にもできることがあるので、何かあればおっしゃってくださいっていう趣旨のことを言ってるんですね。これ、政府当局者の発言ですけど、メディアのその、ある種原則論っていうかですね、メディアと政府の関係の原則論みたいなことを、アメリカの政府、アメリカのメディア界ってのはそれなりに、分かっているってことなんですね。まあアメリカも、過去にはいろんな戦争を引き起こして、とてもじゃないけれども、そんな偉そうなことを言う資格がないって面もあるんだけれども、しかし、沈黙しちゃいけないんだ。降伏・放棄すると、圧制者とか、略殺者とか、虐待者に力を与えてしまうんだっていうことを、アメリカのメディア界ってのはそれなりのコンセンサスを、国民ももってるってことなんですね。で、もう一個最後に、これ紹介したいんですけれども、ダルビッシュ有選手が、Twitterをいろいろ更新してるんですけれども、新聞の漫画なんかを引用してこう書いてるんですね。Twitterで。日本が戦争になってたくさんの人が殺されているとき、世界のどの国からも知らんぷりされたら、どうしますかと。つまり、ジャーナリストの活動がないと、世界がそこで何が起きてるのかってことが伝わらない。だから、危険を冒してでも入る人たちがいる。それに、政府とか市民社会はどう向き合うかっていうことを、今回改めて考える機会になったんじゃないかなというふうには思います。
関口氏:涌井さん。何をお感じになりますか。

涌井雅之氏:いやまあ、青木さんのおっしゃった通りだと思うんですけども、やはりあの、伝えるってことがすごく大事ですよね。それからその、背景に何があるのかってことを皆で考えるのがすごく大事で。安田さんが解放されて良かったっていうだけじゃなくて、なぜ拘束されたのか。なぜ解放されたのかってのはですね、今地すべり的な化学変化を起こしてる中東情勢ってのと本当に、密接不可分で、しかもそれが極めて日本の将来と深い関係にあると、しっかり認識する必要があると思うんですよね。

関口氏:大崎さんいきましょうか。

大崎麻子氏:紛争におけるジャーナリズムの役割。私が実感したのは1990年代で、当時は旧ユーゴスラビアとかアフリカで内戦とか、民族紛争ってのがもう頻発してた頃なんですけれども、あの国連の安全保障理事会の議論の中では、その女性や子供がどういうふうに紛争から影響を受けてるかっていう視点っていうのが完全に欠落してたんですね。ところが現地のNGOなどからは、女性たちがこの組織的な性暴力に晒されているとか、あと子ども兵が養成されて先頭に駆り出されているっていうことも報告されていて。でもなかなか議題にならない。そのときに、やっぱりこのジャーナリズム、あの国際的なメディアっていうのがちゃんと発信して、世論を動かして安保理でも、子どもと女性に特化した決議ができて、それが今の国際的な安全保障とか平和に関する、その政策っていうのも、非常に大きなこう影響を及ぼして道筋を作ってきたんですね。ただその、90年代に比べてやっぱり、今インターネットとかソーシャルメディアがあるので、現地からの情報って結構入ってくると思うんですよ。海外メディアも、すごく専門的な知識で報道してるので。で、その中で安田さんがあえてその現地に赴いて、紛争からすごく遠いところに住んでる日本の私たちに伝えたかったこと、どういうふうに世論、それから政府に問題提起したかったのかっていうことを、私はすごく関心をもっています。

関口宏氏:そうですね。そういう人たちがいてくれないとね、分からないことってたくさんあるんですよね。西崎さんいかがです?

西崎文子氏:まあ確かに、自己責任論ってのは、そういうところに行ったら、自己責任だとか自業自得だっていうのが、ちょっとでも、そのそのようなことを書いたら、自己責任だとか自業自得だとか。その書く内容にまで波及してくる可能性があると思うんですね。そこは非常に、恐れるんですけれども。つまり、気に入らないことを書いたんだから、だからしょうがないじゃないかってあの、カショギ氏のような、権力に対する批判を書いたときに、それは自己責任だっていうような議論につながりかねないと。で、あのアメリカの話で一つだけあの、ワシントンにニュージアムって、ミュージアムとニュースをかけた、とても大きな博物館があるんですけれども、そこであの、その常設展示の中にやはり、倒れたジャーナリストを顕彰する、称える部分があって。2300人ぐらいですかね。あの顕彰されていて、その中に後藤健二さん、それから山本美香さんも入ってるんですけども、すごく面白いのが、そのときに彼らの国籍は書いてないんです。どこの人かっていうのは書いてない。ただ、どこで倒れたのかっていうのは書いてると。ですからやはり、そこにあるのは、こういうジャーナリストの人たちっていうのは、我々の未来のために、仕事をしてくれてるんだと。受益者であると。で、国籍は関係ないっていう。やはりその視点ってのが重要じゃないかなって思います。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の2点です。

1、西崎氏の発言に事実と異なる認識を視聴者に与える恐れのある内容が含まれている
2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

西崎氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
西崎氏は今回の報道で、以下のように述べています。

西崎氏(抜粋): 自己責任だとか自業自得だっていうのが、ちょっとでも、そのそのようなことを書いたら、自己責任だとか自業自得だとか。その書く内容にまで波及してくる可能性があると思うんですね。

要旨をまとめると、
・紛争地域へ行くことが自己責任、自業自得と言われてしまえば、今度は書く内容に波及してしまう
というものです。

しかしながら、紛争地域を始めとした海外での取材によって拘束されることを自業自得とする主張があったとして、それが書く内容にまで波及するという根拠はありません。無謀な取材への批判が言論弾圧にまで発展するということは極めて考えづらく、したがって今回の西崎氏の発言は「危険な取材に疑問を呈することは報道の内容に疑問を呈することと同義だ」などという誤った認識を与えかねません。

よって、今回の西崎氏の発言は放送法第2章第4条第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「安田氏を自己責任と批判するのは政府の役割とジャーナリズムの役割を考えれば有り得ない主張だ」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては、「テロリストと交渉できない以上、事前に渡航中止を要請した日本は役割を果たしている」「安田氏は『自己責任で行くから政府は口や手を出すな』『日本は世界でもまれにみるチキン国家だ』と発言している」「ガイド1名と自身だけで戦地へ取材に行くとは、あまりに準備が足りないのではないか」「テロリストへ資金が渡ってしまったことも問題視すべきだ」といった反対の観点からの意見が多数あります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げられませんでした。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

続いて、伊方原発再稼働について報道された部分となります。
それでは、放送された内容を見ていきましょう。

——-
【スタジオ】
関口宏氏:愛媛県にある四国電力伊方原発3号機、この日、およそ1年ぶりに再稼働しました。伊方原発3号機は、広島高裁が、去年12月、運転差止めを命じる仮処分を出したため停止していたんですが、先月、別の裁判長が仮処分を取り消したため運転が認められた。そんなもんかなって青木さんこれ、僕は思うがなこれ。

青木理氏:これいくつも問題があって、一つはこれ細い新潟原発の立地と一致してるんですよ。で、避難ができるのかって問題、これ解決してないんですね。それから、南海トラフ地震の震源域に近いんですよ。地震は大丈夫なのか。それから、なぜこれ一回差止めになったかっていうと、原子力規制委員会には火山影響評価ガイドってのがあるんですね。で、これ160キロ、原発から離れているところの火山については、噴火に伴う危険を評価せよと。やっぱり130キロのところに阿曾山があるんですよ。で、その9万年前に破局的噴火を起こしてるから、いずれにしても、ガイドに従えば立地視点としては、ふさわしくない、認められないという結論になっちゃうんだけれども、今回は社会通念上この程度のリスクだったらこの程度のリスクだったら容認されるって変わっちゃったんですよね。つまり、福島の事故っていうのは、予想外の事故が起きてああいうことになったんじゃないかってことを考えると、地震にしても火山にしてもそれから避難にしても、その教訓をほとんどくみ取らないまま再稼働しちゃった。僕はどうなのかな。疑問に思いますけどね。
——-

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の1点です。

・青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている

では、順を追って解説します。
青木氏は今回の報道で、以下のように述べています。

青木氏(抜粋): それから、南海トラフ地震の震源域に近いんですよ。地震は大丈夫なのか。(略)原子力規制委員会には火山影響評価ガイドってのがあるんですね。で、これ160キロ、原発から離れているところの火山については、噴火に伴う危険を評価せよと。やっぱり130キロのところに阿曾山があるんですよ。で、その9万年前に破局的噴火を起こしてるから、いずれにしても、ガイドに従えば立地視点としては、ふさわしくない、認められないという結論になっちゃうんだけれども、今回は社会通念上この程度のリスクだったらこの程度のリスクだったら容認されるって変わっちゃったんですよね。

要旨をまとめると、
・南海トラフ地震の震源域に近いので大丈夫なのか
・9万年前に破局的噴火を起こしている阿蘇山があるから火山影響評価ガイドに抵触しているという根拠で伊方原発は止まっていたにもかかわらず「社会通念上認められる」という判断が下されてしまった
というものです。

しかしながら、伊方原発の重要な設備は緑色片岩という頑丈な岩盤の上に建築されており、地震の際はこれが揺れを吸収する(1/2~1/3程度)ことが分かっています。活断層の位置についても厳密に認識し、それを前提とした安全措置を建設の段階や自動停止のプロセスなどで実施しています。
また、大規模噴火が起きるのは1万年に1回程度とされており、これは原発に限らず防災対策全般において想定されていない頻度です。したがって、最後の大規模噴火が9万年前の阿蘇山をリスクが低いと判断するのは自然と言えます。社会通念上認められたのではなく、限りなくリスクが低いと判断しただけです。

よって、今回の青木氏の発言は放送法第2章第4条第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

以上が今回の報告となります。今回の放送では事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

サンデーモーニングカテゴリの最新記事