サンデーモーニング、2018年11月18日放送回の検証報告です。
今回の報告では、
・トランプ米大統領をマクロン仏大統領が糾弾した件について報道された部分
以上1点について検証し、その問題点を探りたいと思います。
検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。
では、さっそく放送内容を見ていきましょう。
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【スタジオ】
橋谷能理子アナ:100年前、大きな犠牲を出した戦争が終結しました。人類はそこから何を学んだんでしょうか。
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【VTR】
・第一次世界大戦終結100周年記念式典がパリで開かれた。
・フランスのマクロン大統領は演説の中で、「今 古い悪魔が再び現れつつあり 混沌と死をもたらそうとしています」を訴え、「ナショナリズムは裏切りだ」とナショナリズムへ警鐘を鳴らした。
・イギリスガーディアン紙とアメリカのワシントン・ポスト紙は、ナショナリズムの高まりについて大きく取り上げた
・1920年に国際連盟は設立されたが、世界恐慌後、国際連盟は機能せず、自国本位のナショナリズムが高まる中で第二次世界大戦が勃発
・国際連盟が機能しなかった原因について油井教授は、“各国が排他的なブロックを作り自国の市場を守ろうとした結果、強烈なナショナリズムがおこって第二次世界大戦が勃発した”と述べた
・第二次世界大戦後、世界平和のための国際機関として国際連合が設立されたが、綻びが生じつつある
・国連の役割を議題とする安全保障理事会で、グテーレス事務総長は多国間主義の重要性を訴えた
・これに、アメリカのヘイリー国連大使が反論し、多国間主義はアメリカにとって悪しきディール(取引)であると主張した
・油井教授は、国際連合は5大国がまとまらないと機能しないため、国連は改革をするなら3分の2多数で支持された政策は大国は拒否権を発動できないなどの方針を出していく時期だと述べた
・しかしポーランドでは、ナショナリズムを叫ぶ極右団体による大規模デモがおこり、不穏な空気が世界を覆いつつある
・世界に再び現れつつある古い悪魔に、私たちは有効に対処できるのか?
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【VTR】
関口宏氏: 世界平和のための国連。でも、戦勝国5大国が拒否権を持ってる。ここに矛盾があって、油井さんがおっしゃったね、あの方がおっしゃってるように、あそこを改革しないとね、先へ進まないのかなって僕は常に思ってます。いかがでしょうか、皆さん。
姜尚中氏:短く言うとですね、ナショナリズムっていうのは単なる迷妄で病気なのかと。じゃあなぜ病気が起きるのかと。その原因はグローバリズムの暴走にあるわけですよね。で、それが国を分裂させたり、アメリカではそのトライバリズムといって、もう部族社会みたいにバラバラになっちゃってると。で、それを一つに統合したい。で、国連ってのは結局国民国家の集まりですから、国家ってのをなくすことはできないので。で、結局問題は、処方箋を何か結果としてできた病気を、じゃあその病気を根治するために、その何から出てきたのかってのを考えない限り、極めてこう表層な意見になってしまって。だからそのためには、やっぱり私は差し当たり、国家を超えた、しかし国連とも違う地域主義をね、いくつかこう積み重ねていく。だから、日本が例えばまあ、PCTを入れたりとか、APECをやったりとか、こういうものがまあランダムに出てきて、やがて少し、その国家主義を抑えていけるような、まあそういう状態を作っていった方が現実的かなあと。ただこうやって高みから憂いてても何の解決もしないと思うんですよね。だから僕からみるとマクロンの言葉ってのは綺麗すぎて、実際は彼自身もグローバリズムの紋章みたいな人だから。
関口氏:そうなのかな。大宅さんどうでしょう。
大宅映子氏:今、VTRの中にもありましたけども、国際連合っていうと、何かとても平和のための理想的な組織のように聞こえるじゃないですか。でも英語でいうとUnited Nationsで、連合国って言ってるだけなんですね。戦勝国、イコール。それが美と思ってるって話で。まだ、敵国条項が残ってるわけですから、日本は悪さをした国っていうことになってる。そのままで平和を訴えてもまあ矛盾があると思いますし、今あの、自国ファーストがいけないって言い方思いますけれども。それにくっついてる排他的。この排他的な方が罪は深いと思う。なぜならば、追い詰めてしまうから。日本がABCD包囲網であそこに突っ込んでってしまったのと同じように、追い詰められるって状況を作り出すっていう方が、私は罪は深い。より深いんじゃないかなという気がしています。
関口氏:岡本さんいきます。
岡本行夫氏: 国連はね、今、大宅さんがおっしゃったように、そもそもロシアと中国が気に入ったことしかできない組織としてまあ、発足した。それは終戦の経緯を見てみれば、しょうがないのかもしれませんけれども、我々はもっとそれを上回る知恵を出してね、戦後社会を築き上げてきたと思ってきたわけですね。冷戦が終わった後は普遍的な価値ですね、自由主義とか民主主義とか法による支配とか、人権尊重とか、貧困国支援とか、そういうのがずーっと、あの、に向かって各国が集結していくと思ったら、そうでもなかった。姜さんさっき、グローバリズムの暴走とおっしゃったけども、むしろグローバリズムに対するより戻しの暴走という意味でおっしゃったんじゃないかと思うんですが、我々がその知恵を何とか前に進めていかなきゃいけない。だから、マクロン大統領の応援演説というのは私の心は打ちましたがね、一体いつになったら日本の政治家がね、勇気をもって言ってくれるのかと思います。
(CM)
関口氏:第一次世界大戦が終わって100年目。さあ、どんなことをお感じになるか。
浜田敬子氏:今あの政治のリーダーたちが感情むき出しの言葉を本当に、もうそれしか言わないようになってきた時代に、やっぱり私はマクロン大統領の理想かもしれないけどもあの言葉は本当に意味があるというふうに思っています。特にその、SNS時代になって、無知の拡散っていうか、歴史的事実に基づかないことが拡散される中で、理想も繰り返しやっぱり、拡散していかなきゃいけない。その中で、デジタル時代の新しいリーダー像というのをぜひ作ってほしいというふうに期待したいですね。
関口氏:そうですか。松原さんいきましょう。
松原耕二氏:そうですね、悪魔という言葉が出ましたんで、良い面に目を向けていきたいんですけど、スティーブンピンカーという心理学者がこう唱えてるんですが、この100年っていうのは戦争ホロコースト、ものすごく暗い時代に見える。ところが1000年単位でみると、暴力が減り続けてる。人間は共感力を得てるんだと。だからそういう意味でも歴史を直視して理想を掲げ続ける、時には人の、人間の良い面もみて、ぜひ前に向きたいというふうに思いますね。
関口氏:同感です。
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以上が放送内容となります。
では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の2点です。
1、大宅氏の発言内容に、事実と違う事柄が含まれている恐れがある
2、岡本氏の発言内容に、事実と違う事柄が含まれている恐れがある
それぞれ順を追って解説します。
1、大宅氏の発言内容に、事実と違う事柄が含まれている恐れがある
大宅氏はこの問題について、以下のように発言しています。
大宅氏(抜粋):今あの、自国ファーストがいけないって言い方思いますけれども。それにくっついてる排他的。この排他的な方が罪は深いと思う。
要旨をまとめると、
・自国ファーストは問題がある
・そして、それに付随する排他的な傾向も問題である
というものです。
しかし、自国ファースト、つまり他国に干渉せず自国の利益を優先することですが、これはあくまで外交における国家の姿勢です。つまり、少数派や移民などに対する社会における排他的な傾向とは無関係です。こうした無関係な事柄をあたかも同じ事柄のように扱う発言は、視聴者に事実と異なる認識を与える可能性があります。
従って、大宅氏の発言は放送法第2章第4条第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
2、岡本氏の発言内容に、事実と違う事柄が含まれている恐れがある
岡本氏はこの問題について、以下のように発言しています。
岡本氏(抜粋):姜さんさっき、グローバリズムの暴走とおっしゃったけども、むしろグローバリズムに対するより戻しの暴走という意味でおっしゃったんじゃないかと思うんですが、我々がその知恵を何とか前に進めていかなきゃいけない。
要旨をまとめると
・姜氏の発言はグローバリズムが暴走していると発言したが、その意図はグローバリズムに対するより戻しの暴走である
というものです。
しかし、姜氏の発言を抜粋・要約すると、以下のようになります。
姜氏(抜粋):ナショナリズムっていうのは単なる迷妄で病気なのかと。じゃあなぜ病気が起きるのかと。その原因はグローバリズムの暴走にある(中略)結果としてできた病気を、じゃあその病気を根治するために、その何から出てきたのかってのを考えない限り、極めてこう表層な意見になってしまって。(中略)高みから憂いてても何の解決もしないと思うんですよね。だから僕からみるとマクロンの言葉ってのは綺麗すぎて、実際は彼自身もグローバリズムの紋章みたいな人だから。
姜氏の発言を要約すると、以下のようになります。
・ナショナリズムが病気なら、その背景はグローバリズムの暴走にある
・根治のためには何から病気が生まれたのか考えないと、表層的な意見になる
・高みから憂いても解決しない。だからグローバリズムの紋章のような人物であるマクロン仏大統領の言葉は綺麗事に聞こえる
つまり、姜氏は「グローバリズムのより戻しが暴走した」という趣旨の発言をしたわけではなく、「グローバリズムそのものが暴走した」という趣旨の発言をしていたのです。にもかかわらず、岡本氏はそうした意図を無視し、あたかも姜氏がグローバリズムのより戻しを批判したかのように発言の意図をねじまげて取り上げました。その目的は断言できませんが、番組のほかのコメンテーターやVTRの主張と同じ反グローバリズム批判の立場に姜氏がいるかのように見せるためだとすれば、この放送全体の立場を偏らせた可能性があります。
以上を踏まえると、岡本氏の抜粋発言は姜氏の発言の趣旨を捻じ曲げたもので、事実と異なる認識を視聴者に与える恐れがあると言えます。また、番組全体をひとつの立場に偏らせた可能性があります。
従って、この放送内容は放送法第2章第4条第3項「報道は事実を曲げないですること」、ならびに同第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。
以上が今回の報告となります。今回の放送では、政治的に公平でない内容を放送したり、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。
公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。