2018年12月5日 報道ステーション

2018年12月5日 報道ステーション

12月5日の報道ステーションのレポートです。
今回の報道では序盤からいずも空母化が取り上げられていました。
早速見ていきましょう。
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【スタジオ】
徳永有美アナ:政府は、防衛力整備の指針となる防衛計画の大綱を見直し、来週にも閣議決定する見通しです。今日その骨子が示されました。

富川悠太アナ:中でも注目なのはですね、こちら、海上自衛隊の護衛艦「いずも」なんですね。今日は、横須賀沖にその姿がありました。このいずもはですね、事実上、空母化する方針だというんです。

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【VTR】
・神奈川・横須賀沖での護衛艦「いずも」のVTR映像。
・政府はいずもの甲板を改修し、戦闘機が着艦できるようにするという。事実上の空母化。そうした内容を、政府は来週に閣議決定する「防衛大綱」に盛り込む予定。
・防衛大綱は10年後を見据え、日本の防衛力のあり方などを示すもの。前回の改訂は2013年に改訂されたばかり。

・8月の映像。安倍首相「我が国の安全保障をめぐる環境は、現在の防衛大綱を策定した5年前に想定していたよりも格段に速いスピードで厳しさと不確実性を増しています。再び見直す必要があると判断しました」

・12月5日、防衛大綱与党ワーキングチームにおいて新防衛大綱の骨子が示された。政府は「いずも」を戦闘機の着艦が可能な「多用途運用護衛艦」にする方針。事実上の空母とする方針
・さらに戦闘機を護衛艦いずもに着艦できるようにするためには、垂直に着艦できる戦闘機が必要であり、政府はその戦闘機F35A・F35Bを計100機(約1.3兆円)購入の方針

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【VTR(国会議員の発言)】
与党のコメント
八木アナ:「いずも」の事実上の空母化という話も出ているようなんですけれども、そのあたりはいかがでしょうか。
自民党 小野寺五典 前防衛大臣:まずはあの、議論しているのは多用途で使える護衛艦という話ですので、空母という範疇には当たらないと思います。

アナウンサー:専守防衛に反するのではないかという声もあるようなんですが。
自民党 中谷元 衆院議員:やはり南西の島が不当に上陸された場合に、それを奪回したり、それを阻止するという意味においては、その作戦が可能な態勢というものはとっておかなければなりません。

野党のコメント
国民民主党 玉木雄一郎 代表:他国を攻撃できる能力を仮に持つようになるとすればですね、それはこれまでの専守防衛という防衛の基本的な考え方を逸脱する可能性がある。(編集で省略)やはりしっかりとまず説明を求めたい。

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【VTR】
富川悠太アナ:今回の防衛大綱の改定で焦点となっているのはこちらの二件なんですね。日本周辺の軍事活動への対応、そして「いずも」の事実上の“空母化”への検討ということで。ここからはですね、テレビ朝日政治部の防衛省担当 中丸徹記者に入ってもらいます。よろしくお願いします。

中丸徹記者:はい、よろしくお願いします。

富川アナ:あの、防衛大綱ってだいたい10年ごとで見直されてるイメージがあるんですけども、今回は5年。早いですね。

中丸氏:そうですね。今回イレギュラーでこの改訂を指示したんですが、安倍総理がこの改訂を指示したタイミングが去年の夏だったんです。つまり北朝鮮が次々とミサイルを発射しているあの時期で、それだけ厳しくなった安全保障環境に対応する必要に迫られた時期、とも言えるんですけど。一方でですね、やっぱりこう取材してますと、北の脅威を理由になかなか普段整備できない防衛力を、これを理由に整備したかったと。という思惑があったと思いますね。

富川アナ:でその後に南北首脳会談があったり米朝首脳会談が実現したりで、ねえ後藤さん、北朝鮮情勢変わってきてるんだから、いいんじゃないかって思っちゃいますよね。

後藤謙次氏:そうですね。この大綱の見直しについてもですね、朝鮮半島情勢の判断・評価は分かれてるわけですね。ですから非常に曖昧な形でおさまっている。それがこういういずもの問題になってきたと思いますね。

富川アナ:ただ、「いずも」を事実上の空母化しようとしているということで、じゃあいずもというのはどういうものなのか、こちらで確認します。(パネルを示して、)国内最大級の大きさで、全長は248mもあるんですね。見る限り空母なんじゃないのと思っちゃいますけれども。現在は対潜水艦ヘリ・哨戒ヘリなどを搭載しているというんですね。普段はトラックや人を運んだり、災害の時に役立っていると、活躍しているということなんですね。このいずもに、最新鋭のステルス戦闘機F35Bを搭載するという話が出てきているということなんです。このF35Bというのはどういうものなのか、映像がありますので、ご覧下さい。

《VTR:米軍F35B洋上発着訓練の映像》
富川アナ:こちら、噴射口に注目していただきたいんですが。……見えるかな?
徳永有美アナ:見えます。
富川アナ:下にね、ボーッと噴射口が向いて飛び立ってまた着艦したということなんですね。
中丸氏:そのエネルギーを下に向けることができる飛行機なので、短距離で離陸したり、垂直に着陸したりすることができる。ということで空母でも離着艦というのができるということなんですけども、下にジェットの熱が出ますので、非常に甲板が熱くなるので、これを耐熱処理する改修というのが必要になると。

富川アナ:なるほど。この模型でね、ちょっと見てみますと、これ縮尺はちょっと違うんですけども、F35Bがこの下に噴射してですね、ここにありますね、噴射口が(模型の噴射口を示す)。下にボーッていって離艦したり着艦したりするので、ここの面(甲板を示す)を耐熱化するということですね。

中丸氏:はい、そうですね。塗料を塗ると。

富川アナ:塗料を塗る? その改修はそんなに難しいことじゃない?

中丸氏:そうですね。技術的にはそんなに難しくないと。

富川アナ:ただね、そうやって戦闘機を搭載するということになったら、空母なんじゃないんですかこれ。

中丸氏:まあそもそも正確な定義というのは実はないんですが、まあ、周辺国は間違いなくこれを戦闘機と、空母だと受け取ると思います。

富川アナ:ですねぇ。だからまあ事実上のね、空母なのか空母と言っていいのかということもあると思うんですけど、事実上じゃあ空母化すると、何ができるようになるのか。これをですね、軍事ジャーナリストの黒井文太郎さんにお聞きしましたところ、こんな話があると言うんですね。実は昨日ですね、中国海警局四隻の船が、尖閣諸島近くを航行していたそうですね。でこういったことが今後またあった時に、たとえばですよ、那覇から戦闘機が飛び立ったら、尖閣諸島まで単純計算すると20分ぐらいかかるんですって。これを、空母化したいずもを尖閣諸島の近くに置いておけば、20分と言わずにすぐに対応できるんじゃないかと。こんな話もあるということなんですね。ただ僕思うんですけれども、この尖閣諸島のすぐ近くに空母がずっと待機しているような状態になってしまったら、中国を刺激することになりませんか。

中丸氏:まあ日本はですね、尖閣諸島はまあ守る側の立場ですので、中国を刺激するということにはならないんじゃないかなと思います。まあこの空母化した場合に、機能するパターンとして一番考えられるのは、この尖閣周辺で中国と制空権、空の、空を制する取り合いが起きたときに、やはりこの空母があればですね、このF335Bが、ここから飛び立ったり戻ったり、そしてまた補給をしてってことができますので、つまりこの――

富川アナ:ここですぐに対応できるから。

中丸氏:周辺で活動が続けられると、制空権の確保に役立つということがあると思うんですけれども。実はですね、これ防衛省の自衛隊の現場では、いらないんじゃないかという議論もありまして。

富川アナ:えっ、そうなんですか。

中丸氏:はい。空母というのはですね、通常3隻以上で運用・修理・訓練と、3隻をまわしながらいくと。さらに自分自身を守ることができないので、その空母を守るイージス艦、そしてまあ潜水艦、といった周りの護衛艦隊――

富川アナ:いっぱい補強しなきゃいけないですね、周りを――

中丸氏:そうですね。コストが高すぎて、機能が合わないんじゃないかと。ここで戦闘機を展開させるためにはこの南西諸島、那覇より南に基地がないんですけども、そこにですね、まあ小さめの滑走路をたくさん整備して、それを使ってこのへんで戦闘機を展開すればいいんじゃないか、という話もあるんです。

富川アナ:ほぉー。

徳永アナ:でも中丸さん、そういう話を聞くと、なぜじゃあそこまでして事実上の空母っていうものに辿り着かなきゃいけないのかって思うんですけれども。

中丸氏:はい。まあ難しいんですけども、それは多分、今が、時期が一番理由が立つからということなんだと思います。

富川アナ:はい。なるほど。まあ政府がね、「空母」という言い方ではなくて、「多用途運用護衛艦」という言い回しをしている。これはなんでなんですか。

中丸氏:まあ「空母」という言葉を避けたいということが一番の理由だと思いますね。「多用途運用母艦」というのもあったんですけど、まあそれも避けてですね、

徳永アナ:ものすごい難しい言葉ですよね。

中丸氏:まあ「いろいろ使える護衛艦」ということにしようと。空母というのも、空母の機能を今回持たせるけれども、常に空母じゃないよと。空母になることもできる船だよと。いうことでこの名前に。

富川アナ:やっぱり空母だと専守防衛というより攻撃的なイメージが強くなってしまうっていうのもあるんですか。

中丸氏:そうですね。まあその政府の答弁というのは、政府が禁止しているのは攻撃的空母、他の国を攻めて壊滅的なダメージを与えるためだけの船はダメだよと、いうことなんですけども。実は空母に攻撃的か防御的かという意味はなくてですね、まあ刀だって、相手を傷つければ攻撃だし、相手の刀を受け止めれば防御と。いう意味では何の能力を持つかと言うよりは、その他国を攻撃する意志を持つか、そういうことをする国なのかどうか、という信頼を勝ち取れるかというところなんだと思います。

徳永アナ:持ってるけどやらないよということなんですか。

中丸氏:そうですね。

富川アナ:いや持ってたらっていうね、ちょっと他国の不安はありそうですよね。

徳永アナ:そうですね。まあ後藤さん、来年の通常国会ではホントにこれ、相当な議論になりそうですよね。

後藤氏:そうですね。今回の大綱見直しの大きな要素にはですね、三年前に安保法制ができましたよね。この安保法制が憲法の解釈を一部変更しているわけですね。これに見合った大綱になってない。そこを部分的に手直ししようということなんで、このいずものようなですね、各論先行型になっているんですね。ですから全体としてパッチワークのようになってしまっている。ですからこれは前の大綱を作るときには、国家安全保障戦略という基本概念を作った上で大綱を作ったわけですね。今回はその基本概念がないまま大綱にいってますから、基本概念は何なのかということを国会で徹底的に議論する、そういう必要があると思いますね。

富川アナ:中丸さんありがとうございました。

徳永アナ:ありがとうございました。

今回の報道の問題点は大きく2点あります。
1点目は印象操作と取られかねない発言があったこと。
2点目は公平な報道であったか、それに関して放送法に抵触する恐れがあること。

今回のいずも空母化は島嶼部の防衛、奪還のためのもので防衛大綱の変更に合わせたものです。中国の継続的な尖閣諸島への接続水域侵入などの対策が主な要因と考えられています。
日本が先制攻撃を考えてのものなとでは断じてありません。中国への脅威に備えるためのものです。
にも関わらず以下のような発言がありました。

富川アナ:ですねぇ。だからまあ事実上のね、空母なのか空母と言っていいのかということもあると思うんですけど、事実上じゃあ空母化すると、何ができるようになるのか。これをですね、軍事ジャーナリストの黒井文太郎さんにお聞きしましたところ、こんな話があると言うんですね。実は昨日ですね、中国海警局四隻の船が、尖閣諸島近くを航行していたそうですね。でこういったことが今後またあった時に、たとえばですよ、那覇から戦闘機が飛び立ったら、尖閣諸島まで単純計算すると20分ぐらいかかるんですって。これを、空母化したいずもを尖閣諸島の近くに置いておけば、20分と言わずにすぐに対応できるんじゃないかと。こんな話もあるということなんですね。ただ僕思うんですけれども、この尖閣諸島のすぐ近くに空母がずっと待機しているような状態になってしまったら、中国を刺激することになりませんか。

(空母があったら抑止力になるとの発言を受け)
富川アナ:いや持ってたらっていうね、ちょっと他国の不安はありそうですよね。

「他国の不安」を煽っているのは日本ではなく、中国です。
今回の空母化は中国の動きを受けてのものなのですから。
このような日本が先制攻撃をする、中国を刺激するなどの印象を視聴者に与える放送でありました。

また今回の報道は空母化に賛成側からの意見がなく、反対側からの意見がほとんどでした。
これは以下の放送法に抵触する恐れがあります。

放送法4条
(2)政治的に公平であること
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること

公平公正なテレビ報道を実現すべく、視聴者の会は今後とも監視を続けて参ります。

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