2019年1月22日 報道ステーション

2019年1月22日 報道ステーション

1月22日の報道ステーションのレポートです。今回取り上げるのは厚労省統計不正に関する報道です。昨年から障害者雇用枠の水増しなど、組織としての信用を落としている厚労省の問題ですが、そこは本質ではないのではという報道がありましたので取り上げていきます。

——-
【スタジオ】
富川悠太アナ:厚生労働省の統計不正によりまして、のべおよそ2千万人が失業給付などを少なく支払われていた問題です。今日、夕方ですね、根本厚生労働大臣が記者会見を行いまして、事務次官ら幹部22人に対しまして訓告などの処分をすると発表しました。大臣自身も給与の自主返納などをするということです。

——–
【VTR】
《VTR:記者会見の様子》
根本匠厚労大臣:厚生労働省としての組織的関与はなかったと考えております。むしろ組織的不関与が問題であったとされていると聞いております。

ナレーター:この直前、厚労省が設置した特別観察委員会も――

特別監察委員会 樋口美雄委員長:厚生労働省としての組織的関与はなかった。むしろ組織的不関与が問題ではないか

ナレ:本当に、不正は組織的ではなかったのでしょうか。特別監察委員会が職員らに聞き取りを行い、今日、調査結果を公表しました。

樋口委員長:なぜ行われてきたのか。そしてどこに、誰に責任があるのか。

ナレ:賃金などの動向を調べる勤労統計調査では、従業員500人以上の事業所はすべて調べるルールです。しかし厚労省は2004年から、勝手に、東京都では一部を調べる抽出調査に切り替えていました。

樋口委員長:担当課である統計情報部雇用統計課の担当係長は、“企業からとくに苦情が多く、大都市圏の都道府県からの要望に配慮する必要があった”

ナレ:さらに厚労省が去年1月から“全数調査”をしているように見せかけるためにデータの補正を始めたことについても、明らかになったことがあります。指示したのは現場の室長で、2017年の5月以降のことだったと言います。そしてこの室長は、幹部である政策統括官に“全数調査をしていない”ことを説明していたそうです。統括官は全数調査をしていると公表しているのに、それと異なるのであれば問題であり、しかるべき手続きを踏んで修正すべきと指示したと言います。このとき、担当部署では問題自体に気付いていたことになります。

インタビュアー:公表していないってことは隠蔽したと受け止められてもおかしくないのでは?

樋口委員長:ですから隠蔽というのを本人が認めているかどうか。

インタビュアー:公表しなかった判断の合理的理由がない。だからそれは隠したということではないんですか?

特別監察委員会 荒井史男弁護士:問題だということを認識していて、それについて手続きを踏んでやるべきだと指示しているわけですね。管理が行き届いていなかったという意味の組織的な問題をもってるということは言えると思います。真っ白ということを言い切っているわけではないです。しかしそれを委員会として隠蔽の意図があったと認定するには無理がある、ということでございます。

ナレ:夕方、厚労省の事務次官は自民党本部で加藤前厚労大臣と会っていたそうです。

インタビュアー:加藤大臣からどういったお話があったのでしょうか。

厚労省 鈴木俊彦事務次官:大変なときなのでしっかり目配りをするようにと。

ナレ:全容が分からないなか、事務次官をはじめとする職員22人の処分が発表されました。

インタビュアー:何か幕引きを急いでいるような印象を国民に与えることになるのでは。

根本厚労大臣:先ほど委員長からも話があったと思います。隠蔽しようとするまでの意図は認められなかったとされております。まあ私はやはり委員会でしっかりやってもらった。これがポイントだと思います。

——-

【スタジオ】
徳永有美アナ:何度も公表するタイミングってあったんじゃないかと思うんですけれども、こうやって問題が明るみになってから22人急に処分する。

後藤謙次氏:非常にスピード感あるように見せかけながらですね、実情はお手盛り調査と言っていいと思うんですね。今回非常にスピード感がある、あるいは人数が多い。いかにも厳しい処分をしているように見えるんですが、実は明後日、衆参両院のですね、厚生労働委員会の閉会中審査があるんですね。つまりいったんそこで俎上に出してある面で粗ごなしをしようという政治的思惑も見えるんですね。さらに28日から通常国会、召集されますから、ここでも大いに議論になると。でも一旦われわれはこう言う結論を出してますよということを、まあある種のアリバイ作りと見られてもしょうがないと思うんですね。ただ今回も、組織的な隠蔽がなかったと。さきほど委員長が言ってましたけども、その根拠が非常に曖昧なんですね。しかもこの基幹統計と言われる重要な統計でですね、この日本の経済動向にも大変な影響を与えているわけですね。じゃあこれまでアベノミクスは非常に成功だったんだと、いう数字自体もですね、ホントなんですかという疑念が湧いてしまうわけですよね。その意味では今後どうするのかという指針が今日の会見でもはっきりしてこなかった。そこが一番問題だし、それこそまさに国会で徹底的に追及してもらうしかないと思いますね。

徳永アナ:これで終わりというふうには思いたくないですよね。

富川アナ:そうですね。真相をちゃんと解明して貰わないとですよね。

後藤氏:始まったばっかりってことですよね。

—–
今回の放送の問題点は2点あります。
1点目は印象操作と取られかねない発言があったこと。
2点目は放送法に抵触する恐れがあること。
1点目に関してです。
今回の厚労省統計不正の問題は非常に重要な問題であるのは間違いないです。政策を立案する時にも使われる統計の信頼が揺らぐことはあってはならないことです。この統計不正は2004年から続いてきた問題であり、厚労省という組織の体質、あるいは官僚の役割に関しても再考すべき問題であります。しかし後藤氏は安倍政権批判をする道具として今回の問題を使っているように思われる発言がありました。それが以下の発言です。

後藤氏「この基幹統計と言われる重要な統計でですね、この日本の経済動向にも大変な影響を与えているわけですね。じゃあこれまでアベノミクスは非常に成功だったんだと、いう数字自体もですね、ホントなんですかという疑念が湧いてしまうわけですよね。」

アベノミクスを評価するのも今回の統計不正問題によって疑念が湧く
と言っていますが、アベノミクスによって失業率を下げたのは間違いない事実であり、日銀人事にも介入し、政治が経済を変えうるということを安倍総理は示しました。
今回の問題の本質はそこでなく、厚労省の組織としての体質、腐敗を防止するために官僚のポジションをコロコロ変えることによってスペシャリストが生まれにくいという土壌によって問題の発見が遅れたことなど、行政を担う省庁の問題であります。この問題に政府が介入していたなどとの印象を与えかねない発言は筋違いであるように思われます。
続けて2点目にですが、このような事実を曲解し伝える報道は以下の放送法に抵触する恐れがあります。

放送法4条
(3)報道は事実をまげないですること

問題の中心は行政を担う官僚・省庁の体質であり、政府の関与ではありません。ましてや2004年から続いてきた問題であるため安倍政権だけの問題ではなおさらありません。
その中での政府の関与を印象付ける発言は適切ではないと思います。

視聴者の会は公正な報道を実現すべく監視を続けてまいります。

報道ステーションカテゴリの最新記事