2019年2月17日 サンデーモーニング(前編)

2019年2月17日 サンデーモーニング(前編)

サンデーモーニング、2019年2月17日分の検証報告(前編)です。

今回の報告では、
自民党大会での「悪夢のような民主党政権」発言と国会での与野党論戦について報道された部分
「天皇謝罪」発言など日韓関係の悪化について報道された部分
以上2点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを2つに分け、前後編でお送りいたします。

前編で検証するのは、
① 自民党大会での「悪夢のような民主党政権」発言と国会での与野党論戦について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

【VTR要約】
 まず、自民党大会が行われる様子が映し出され、「安倍総理の発言が議論を呼んだ」と伝えられる。

「悪夢のような民主党政権」発言について
安倍総理の姿が映し出され、「悪夢のような民主党政権が誕生しました」と演説をする映像が流される。予算委の映像に切り替わり、岡田元副総理が安倍総理を厳しく批判・撤回を要求したのに対し、安倍総理は「まさに言論の自由」「取り消しません」と反論。論戦を展開する映像が流される。

自衛官募集と憲法改正について
CM後、再び自民党大会の映像が流される。自衛官募集をスムーズにするためにも憲法に自衛隊を明記すべきだと演説する安倍総理に対し、石破茂議員「(自衛官募集は)憲法とは無関係」と指摘する映像が流される。

統計不正問題について
再び予算委の映像に切り替わる。「激怒したのか」と質す立憲民主党・小川議員に対し、官房長官「私が激怒することはありません」と答える映像とともに、統計不正により平均賃金が低下したことが伝えられる。アニメーションとともに勤労統計の調査内容を説明。2015年の検討会で結論が先送りとなっていた調査方式の変更案を、厚労省が導入していたと伝えられる。続けて、不正調査とその後のデータ補正の効果により均賃金が大きく上昇したとアナウンス。再び予算委の映像に切り替わり、「何らかの政治的な力学が働いたのではないか」と指摘する小川議員に対し、中江前秘書官が「問題意識を伝えた」「政府に都合のいいデータを取らせる意図は全くない」と反論する様子が映し出される。厚労省への圧力を全面的に否定したことを伝えられる。

「野党側は週明けからも追及を続ける構えです」という言葉を最後にVTRは終了した。

【アナウンサーによるパネル説明】
主な論点は、①「悪魔のような民主党政権」発言、②自衛隊と憲法改正、③統計不正問題の3つ

②自衛隊と憲法改正について
・総理が会見の必要性にからめて「新規隊員募集で都道府県の6割以上が協力を拒否」と述べたことも国会論戦のテーマである
・野党は、党所属国会議員に文書で各自治体の状況確認を求めたことも圧力だと批判している

③統計不正問題について
・野党は、アベノミクス偽装がなかったのか、加計学園問題と同じように官邸の関与はなかったのか追及する構えである

【コメンテーターの発言】
田中秀征氏(要約):かつて統計数字を発表する立場にあったので疑ってもみなかった。信頼してて。中国が発表する統計数字に半信半疑だったが、胸を張って他国の数字に目を向けることができなくなってきてる感じがする。経過を見てると、偽装と取られても仕方がないという印象を受ける。民主党政権が悪夢の時代だったのは同意だが、それを招いたのは自民党政治の失敗。それを(自民党側が)胸張って言う話ではない。

西崎文子氏(全文):自民党大会での総理の発言というのは、これは仲間内の発言だと思うんですね。ですから今の「悪夢のような」というのも、やはり受けるから言ってるってところがあると思うんですけれども。2つめの自衛隊と憲法改正もそうで、憲法改正をしようじゃありませんかと言うためにいろんなことを持ち出したと思うんですけれども、でもその憲法改正が自衛隊の人員確保のためにやるのかって言ったら、それは問題の矮小化だと思いますね。1つは本当に問題の矮小化であるというふうに思いますし、日本のその平和政策、安全保障政策の将来をかけてる問題だと思うので。リクルートの問題に矮小化することはできないと思うんですが、同時に、その政権の権限拡大を多く前提とした発言でもあって。実際に総理の発言の後に議員たちに自治体の協力実態を調査させてると。これは協力しろっていう圧力がまたかかるわけですね。そうすると統計不正と全くつながってきて、結局は政権が圧力をかけているっていうことにつながっていくと思います。

安田菜津紀氏(全文):安倍さんの発言の中で、例えばその住民基本台帳のコピーが認められないような自治体、市町村は、自衛隊の募集にあたってコピーが認められない自治体はじゃあ、自衛隊の方々がそれを手書きでその情報を写してるんだと。その市町村というのは、協力しているとは言えないという発言があったと思うんです。(関口氏の「安倍さんがそうおっしゃった?」という発言に対し)そうですね。ただ、例えばその振り返ってみてみると、昨年に失踪した外国人技能実習生の聴取表。これのコピーが認められないので一部の議員が、大量の情報を手書きで写さなければならなかったということがあったと思うんですね。じゃあそれって同じ理論を当てはめてみると、それって政府与党が、その実態の把握にじゃあ協力をしていなかったっていうことになると思うんですね。今年これから選挙に臨んでいくにしても、じゃあ、その一貫性のなかった態度をまずやっぱり省みて、改めていく必要性ということがあるんじゃないかというふうには思います。

竹下降一郎氏(要約):私も民主党政権は悪いところがたくさんあったと思うが、悪夢と言ってしまうと単なる悪口になってしまう。民主党政権誕生は、日本で二大政党制が上手くいくのかどうか考える大切な財産だと思う。民主党政権下で自民党は反省や振り返りがあったと思うが、悪口としてしまうことで、財産を生かせないんじゃないかと思ってしまう。

青木理氏(全文):僕はだから、悪夢って。本当に民主党政権は悪夢だったのかなと疑問なんですけれども。でもね、こういう言われ方をされれば、例えば、公文書が改ざんされてですよ。統計が偽装されたんじゃないかって言われてて、言論の自由が萎縮をして、国会のチェック機能、行政のチェック機能が著しく落ちている。今だって、悪夢じゃないですかと、僕は申し上げたくなっちゃうんですよね。で、言論の自由と首相はおっしゃいましたが、首相は結構そういうことをおっしゃるんですけれど、言論の自由っていうのは、権力とか強者に対して、市民が自由にものを言える権利のことであって、最高権力者である首相が、言論の自由だからっていうふうなことをいうっていうのは、これ、大いなる勘違い。むしろ、首相っていうのは、今、自民党総裁選から選ばれてますけれども、基本的に僕らの首相なわけですよね。だったら、それなり振る舞いというかそれなりの発言というか。あるいはそれなりのその、なんていうのかな。品性みたいなものを保っていきたいなと本当にこれは心から思います。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の2点です。

1、西崎氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、安田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
4、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

1、西崎氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
西崎氏は今回の報道で、以下のように述べています。

西崎氏(抜粋):(中略)自衛隊と憲法改正もそうで、憲法改正をしようじゃありませんかと言うためにいろんなことを持ち出したと思うんですけれども、でもその憲法改正が自衛隊の人員確保のためにやるのかって言ったら、それは問題の矮小化だと思いますね。1つは本当に問題の矮小化であるというふうに思いますし、日本のその平和政策、安全保障政策の将来をかけてる問題だと思うので。(中略)同時に、その政権の権限拡大を多く前提とした発言でもあって。実際に総理の発言の後に議員たちに自治体の協力実態を調査させてると。これは協力しろっていう圧力がまたかかるわけですね。そうすると統計不正と全くつながってきて、結局は政権が圧力をかけているっていうことにつながっていくと思います。

要旨をまとめると、
・憲法改正の理由の一つに自衛隊の人員確保を上げているが、憲法改正は平和政策、安全保障政策にかかわる問題なので、このような取り上げ方は問題の矮小化だ
・総理の発言の後に与党議員が自治体の協力実態を調査していることから、この発言は政権の権限拡大を前提とした発言で、圧力へとつながり非常に危険だ
というものです。

しかしながら、
・総理の発言の趣旨は非常事態等における自衛隊への協力体制について(人員確保はその一例)であり、人員確保だけを主題としたものではない
・したがって、問題は矮小化されておらず、西崎氏の発言はあたらない
・首相の意に従って与党議員が動くのは当然のことで、政権の権限拡大には全く当たらない
など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での西崎氏の発言は事実にそぐわないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、安田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
安田氏は今回の報道で、以下のように述べています。

安田氏(抜粋):安倍さんの発言の中で、例えばその住民基本台帳のコピーが認められないような自治体、市町村は、自衛隊の募集にあたってコピーが認められない自治体はじゃあ、自衛隊の方々がそれを手書きでその情報を写してるんだと。その市町村というのは、協力しているとは言えないという発言があったと思うんです。(中略)ただ、例えばその振り返ってみてみると、昨年に失踪した外国人技能実習生の聴取表。これのコピーが認められないので一部の議員が、大量の情報を手書きで写さなければならなかったということがあったと思うんですね。じゃあそれって同じ理論を当てはめてみると、それって政府与党が、その実態の把握にじゃあ協力をしていなかったっていうことになると思うんですね。

要旨をまとめると、
・安倍首相の発言のなかで、住民基本台帳のコピーが認められないことを理由に自治体が自衛隊への協力を拒否しているという趣旨の発言があった
・だがこの理論が正しいとすると、外国人技能実習生の聴取表のコピーが認められないことがあったので、政府与党がこの問題に協力していないという理論が成立する
というものです。

しかしながら、
・住民基本台帳と外国人技能実習生聴取表はそれぞれ所管の役所も取り扱いの基準も全く違う
・よって、コピーが認められない=非協力的という理論を聴取表に当てはめることは理論的に不可能
など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での安田氏の発言は事実にそぐわないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

3、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
青木氏は今回の報道で、以下のように述べています。

青木氏(抜粋):僕はだから、悪夢って。本当に民主党政権は悪夢だったのかなと疑問なんですけれども。でもね、こういう言われ方をされれば、例えば、公文書が改ざんされてですよ。統計が偽装されたんじゃないかって言われてて、言論の自由が萎縮をして、国会のチェック機能、行政のチェック機能が著しく落ちている。今だって、悪夢じゃないですかと、僕は申し上げたくなっちゃうんですよね。で、言論の自由と首相はおっしゃいましたが、首相は結構そういうことをおっしゃるんですけれど、言論の自由っていうのは、権力とか強者に対して、市民が自由にものを言える権利のことであって、最高権力者である首相が、言論の自由だからっていうふうなことをいうっていうのは、これ、大いなる勘違い。むしろ、首相っていうのは、今、自民党総裁選から選ばれてますけれども、基本的に僕らの首相なわけですよね。だったら、それなり振る舞いというかそれなりの発言というか。あるいはそれなりのその、なんていうのかな。品性みたいなものを保っていきたいなと本当にこれは心から思います。

要旨をまとめると、
・安倍首相は「悪夢の民主党政権」と述べたが、公文書改ざんや統計偽造、言論の自由の萎縮などがあることを考えれば今こそ悪夢だ
・「言論の自由」は権力や強者に対して自民が自由にものを言える権利であり、最高権力者である首相が言論の自由を権利として主張することは勘違いも甚だしい
・安倍首相は僕らの首相なので、それなりの振舞いや品性を保ってほしい
というものです。

しかしながら、
・公文書改ざんや統計偽造に安倍政権は違法性のある形での関与しておらず、また言論の自由が委縮されたことはなく、こうした発言は根拠のない妄言でしかない
・言論の自由は「検閲を受けることなく自身の思想良心を表明する自由権の一種」であり、権力の有無によってこの権利が失われるとする主張は明確な誤りである
・今回の発言が品性を欠くという主張は個人の主観であり、また同種の発言を幾度となく繰り返しているマスコミや野党を批判せず安倍首相の発言だけを批判することは政治的に公平性を欠く
など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での青木氏の発言は政治的に公平性を欠き、かつ事実にそぐわないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2項「政治的に公平であること」、ならびに同第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

4、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「『悪夢の民主党政権』という発言は不適当だ」「自衛隊のリクルーティングのために憲法改正を行うべきではない」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「民主党政権の経済や外交を見れば悪夢だという見解は当然だ」「自衛隊のリクルーティングだけが憲法改正の目的ではない」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の前編となります。前編では、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

この続きの
② 「天皇謝罪」発言など日韓関係の悪化について報道された部分
については、後編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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