2019年4月7日 サンデーモーニング(前編)

2019年4月7日 サンデーモーニング(前編)

サンデーモーニング、2019年4月7日分の検証報告(前編)です。

今回の報告では、
① 「風をよむ」にて日本の安全保障について報道された部分
② カルロスゴーン氏の再逮捕について報道された部分
以上2点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを2つに分け、前後編でお送りいたします。

前編で検証するのは、
① 「風をよむ」にて日本の安全保障について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

【VTR要約】
①多国籍監視軍(MFO)について
政府はMFOに自衛官2人の派遣を閣議決定したとアナウンス。MFOについての簡単な説明とともに、今回の派遣は「国際連携平和安全活動」の初めての適用であると伝えられる。岩屋防衛相の姿が映し出され、記者からの質問に「部隊の派遣等は全く考えていない」と回答する映像の後、元内閣防衛官僚・柳澤氏のインタビュー映像に切り替わる。「(今後部隊の派遣を)求められた場合に、(部隊派遣を出さないという)説明ができるか心配」と述べる映像が流される。

②日米の軍事一体化について
安保法制の成立後、海外での自衛隊の活動を大幅に拡大し、安全保障政策が大きく転換したと伝えられる。駆けつけ警護や米艦防護、武器等防護を引き合いに、背景にはアメリカとの軍事面の一体化があるとアナウンス。菅官房長官の記者会見映像に切り替わり「日米同盟はかつてないほど強固になり、抑止力・対処力も向上した」と述べる映像が流される。再び柳沢氏の姿が映し出され、「抑止力というキーワードのもとに思考停止している」と述べる映像が流され、CMへ。
CM後、柳澤氏が「(日米が)一体化していけば当然(日本は戦争に)巻き込まれるが、その心配を(日本は)全くしていない。」と述べる映像の後、日米の一体化が防衛費の増大に反映されていると伝えられる。日米の防衛に関し有償軍事援助(FMS)という仕組みがあり、アメリカに有利な条件がつけられるとの懸念が出ているとアナウンス。オスプレイ・F35AはFMSにより調達され、イージス・アショアもこの仕組みにより購入予定であると伝えられる。

「アメリカの抑止力頼みの安全保障政策は、日本をどこに導いていこうとしているのでしょう?」という言葉を最後にVTRは終了した。

【アナウンサーによるパネル説明】
寺島実郎氏(要約):ここ数か月で中台危機に関する国際論壇が活発になっている。もし中国が台湾に侵攻したときには、台湾には米軍基地がないので沖縄の米軍基地が関わってくる。日本が米中の緊張関係・中台危機に巻き込まれる日が目の前に迫っている。どうやって主体的に日本の安全と平和を守るのか、もう少し深い知恵と戦略がいる段階に入ったと思う。

谷口真由美氏(全文):安保法についての問題点もさることながらなんですけれども、米国の、アメリカの対日貿易赤字解消の目的で、先ほど出てきた有償軍事援助っていうのが出てるっていう背景があるんですね。その兵器を、言うてみれば爆買いしている状況っているのは、日本の財政赤字をやっぱひっ迫させてますし。で、他方で生活保護費とか年金の切り下げっていうのが相次いでて、福祉予算ってのがどんどんカットされてると。で、もう一ついうと、学生が多額の借金を背負う奨学金という制度を考えてみると、確かに給付型の奨学金というのも去年、一昨年か。導入されたんですけども対象は住民税の非課税世帯に限られてるということがあるんです。で、実は2011年から16年の5年間で1万5000人を超える若者が、奨学金にからんだ自己破産をしてる国なんですよ。やっぱり教育費とか福祉にかけなくって、兵器にかけていってる国であることを考えてみると、日本の外務省が2000年代に、人間の安全保障っていうのを世界に先立って主導してたんですが、一人の人間の安全が守れない国で、どうして国家の安全が守られるんですかっていう概念で、日本がやってましたよねっていうことを、もう一回立ち返ってもらいたいなと思いますね。

安田菜津紀氏(要約):自衛隊の海外派遣については、これまでも日本の管理不備が指摘されてきた。こうした杜撰さを引きずったまま今以上に軍事一体化をしていくと、結局は派遣した国の現地の人の命の軽視にもつながりかねない。このまま手を広げてしまうと、足場がぐらついた土台の上に重荷を載せていくだけの状態になってしまうと思う。

涌井雅之氏(要約):敵を打ち負かすことが目的である軍隊を海外に派遣する法律的な根拠があるのか。これができていないうちに、なし崩し的に進めていくことに対して、非常に危機感がある。だとするなら正々堂々と憲法改正の議論をして国民の理解を深めるべき。

松原耕二氏(全文):VTRにもありましたけど、アメリカのある種、言い値で買わなきゃいけないFMSという買い方。これはある自民党の大臣経験者、防衛大臣経験者に聞いても、これは異常な状態だと。そういう人が言うほどの状態になってるわけですね。しかも金額だけじゃなくて我々は質もちゃんとみておかなきゃいけない。例えば「いずも」の空母化というのがありました。しかも例えば当初防衛用の滑空弾という使い方によっては他国を攻撃できる能力をもったミサイルの研究も始めてるわけですね。ですから、必要最小限度だったはずが、攻撃型に変わってきてるというのをちゃんと見とかなきゃいけないと思いますね。そしてじゃあ外交はというとですね、東アジア外交、主体的に日本が大きな構想を持ってるというふうには、なかなか見えないですね。だから、外交じゃなくて防衛ばかりが突出しているように見えてしまいますね。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の2点です。

1、 谷口氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、 松原氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、 この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

1、谷口氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
谷口氏は今回の報道で、以下のように述べています。

谷口氏(抜粋):有償軍事援助っていうのが出てるっていう背景があるんですね。(中略)爆買いしている状況っているのは、日本の財政赤字をやっぱひっ迫させてますし。で、他方で生活保護費とか年金の切り下げっていうのが相次いでて、福祉予算ってのがどんどんカットされてると。(中略)学生が多額の借金を背負う奨学金という制度を考えてみると、確かに給付型の奨学金というのも去年、一昨年か。導入されたんですけども対象は住民税の非課税世帯に限られてるということがあるんです。で、実は2011年から16年の5年間で1万5000人を超える若者が、奨学金にからんだ自己破産をしてる国なんですよ。やっぱり教育費とか福祉にかけなくって、兵器にかけていってる国であることを考えてみると、日本の外務省が2000年代に、人間の安全保障っていうのを世界に先立って主導してたんですが、一人の人間の安全が守れない国で、どうして国家の安全が守られるんですかっていう概念で、日本がやってましたよねっていうことを、もう一回立ち返ってもらいたいなと思いますね。

要旨をまとめると、
・有償軍事援助(FMS)で兵器を大量購入している現状は日本の財政赤字をひっ迫させている。
・生活保護や年金引き下げ、奨学金の破産といった問題に予算を使うべき
というものです。

しかしながら、
・FMSは米国製の兵器を教育訓練込みで購入できる制度で、通常よりも割安な価格で高性能兵器を大量購入できる利点がある。
・FMSはむしろ必要な兵器をなるべく安く購入するための手段であり、日本の財政をひっ迫しているのは社会保障費である。
・FMSと生活保護や年金、奨学金は何ら関係性がない
など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での谷口氏の発言は事実にそぐわないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、松原氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
松原氏は今回の報道で、以下のように述べています。

松原氏(抜粋):アメリカのある種、言い値で買わなきゃいけないFMSという買い方。これはある自民党の大臣経験者、防衛大臣経験者に聞いても、これは異常な状態だと。(中略)しかも金額だけじゃなくて我々は質もちゃんとみておかなきゃいけない。(中略)必要最小限度だったはずが、攻撃型に変わってきてるというのをちゃんと見とかなきゃいけないと思いますね。そしてじゃあ外交はというとですね、東アジア外交、主体的に日本が大きな構想を持ってるというふうには、なかなか見えないですね。だから、外交じゃなくて防衛ばかりが突出しているように見えてしまいますね。

要旨をまとめると、
・FMSは米国の言い値で買わなければならないため、異常な状態である
・必要最小限度の防衛が攻撃に変わるなど、兵器の質を見ていく必要がある
・外交より防衛が突出しているように見える
というものです。

しかしながら、
・FMSは必要な兵器をなるべく安く購入するための手段で、160か国が利用するなど異常な状態であるとは言えない
・兵器の質によって自衛隊の専守防衛が覆るものではない
・安倍政権は外交において非常に高い実績を上げており、この指摘は当たらない
など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での松原氏の発言は事実にそぐわないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「米国と日本が一体になれば日本は米国の戦争に巻き込まれる」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「日米の連携がなければ日本の国防が危機にさらされる」「全く別の問題だ」「日本は国際的な貢献をしていくべき」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の前編となります。前編では、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

この続きの
② カルロスゴーン氏の再逮捕について報道された部分
については、後編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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