2019年2月25日 報道ステーション

2019年2月25日 報道ステーション

2月25日の報道ステーションのレポートです。
今回とりあげるのは沖縄の県民投票についてです。
投票率5割を超えその中の反対票も7割を超え、大きな注目を集めました。
その県民投票に関する放送で、今回検証する点は2点あります。

1点目は今回の県民投票の解説として不適切と思われる発言があったこと。
2点目は論点の少なさから放送法に抵触する恐れがあること。

この2点について検証していきます。

まずは放送内容を見ていきます。

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【スタジオ】
徳永有美アナ:続いてですが、こちらは今朝の玉城デニー沖縄県知事です。昨日行われた、辺野古埋め立ての賛否を問う県民投票で、反対票は7割を超えました。その県民投票の実施に向けて、大きな原動力となったのは沖縄の若者達なんですが、一票を投じた今、彼らは何を感じているのか、取材しました。

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【VTR】
沖縄県 玉城デニー知事:今回の県民投票によって辺野古埋め立てに絞った県民の民意が明確に示されたのは初めてであり、極めて重要な意義があるものと考えております。

ナレーション:昨日の県民投票。投票率は52.48%で、投票総数のうち埋め立て反対が43万4373票と、7割を超えました。反対の票が、有権者の4分の1を超えたことから、玉城デニー知事はこの結果を安倍総理とトランプ大統領に伝えることになります。今朝、記者団を前にして、安倍総理は――

安倍晋三総理大臣:今回の県民投票の結果を真摯に受け止め、これからも基地負担軽減に向けて全力で取り組んで参ります。世界で最も危険と言われる普天間基地が固定化され、危険なまま置き去りにされることは絶対に避けなければなりません。

ナレ:一夜明けた辺野古では、工事車両が次々とゲートの中へ。政府は、辺野古を唯一の選択肢だとする方針を変えるつもりはありません。県民投票の実現には、今回沖縄の若い世代が大きな役割を果たしました。

「辺野古」県民投票の会 元山仁士郎代表:沖縄の底力を感じたり、あるいは民主主義っていうのがこういうことなんだなっていうことを実感させられたと思っています。

ナレ:県民投票の条例制定を請求した、「辺野古」県民投票の会・元山仁士郎代表です。辺野古基地移設には反対の立場です。元山さんら若者が中心となって署名集めに取り組み、去年10月、「賛成」「反対」二択の条例が成立しました。しかし、宜野湾市など5市が市議会の反対などを理由に参加しないと表明し、元山さんはハンガーストライキを行うなどして県全体での投票実施を訴えました。

「辺野古」県民投票の会 元山仁士郎代表:主権者は私たちなわけですから、私たちが決めるべきことだと思うんですよ。

ナレ:このハンガーストライキも契機となり、県議会が「どちらでもない」を加えた三択とすることを決め、県全体での県民投票が行われることになったのです。元山さんは地元のラジオ番組に出演し、若者達と県民投票について意見を交わしました。この日参加した嘉陽宗一郎さんは、今回の県民投票では賛成にマルをつけました。嘉陽さんは去年の沖縄県知事選挙で与党が擁立した候補を支援する会で「青年部長」を務めていました。埋め立て賛成に投じましたが、その思いは複雑です。

嘉陽宗一郎氏:いろんな複雑な感情が、悲しみや悔しさとか、そういったものが湧いてきたのは事実ですね。諸手を挙げて賛成している人はきっと多くはないと思うんですね、ほとんどいないと思うんですね。

ナレ:懸念されたのは、投票率です。自民党は「自主投票」を決め、去年の知事選のように賛否をめぐって白熱する展開にはなりませんでした。投票率が50%を割ると、県民投票の結果が出ても「民意とは言えない」との批判を招く恐れがありました。投票日の昨日、沖縄本庁は雨でした。そんななか、投票への参加を呼びかけて歩く若者達の姿がありました。呼びかけを聞いた人は――

若者達:「行きました」「期日前投票で行きました」「まだ行ってないですけど、行きます」「日本政府がその答えに対し、どう答えるのかが楽しみです」

ナレ:注目された投票率は52.48%と、50%を超え、反対の票は去年の知事選で玉城知事の獲得した票を4万票近く上回りました。今日、二人に話を聞きました。

元山仁士郎氏(反対に投票):驚きました。投票という形でやってみたらどうなるか分からなかったので。でも蓋を開けてみたら、7割以上の人が反対だというような結果が出た。

嘉陽宗一郎氏(賛成に投票):土砂投入があってなおそういった意志を示す沖縄の強さ。沖縄は本当に強い場所だなってことを、今回の投票結果を見て強く感じました。

ナレ:県民投票をめぐっては、むしろ県民の分断を生むとの懸念もありました。しかし、元山さんと嘉陽さんの考え方はそうではありません。

元山氏:嘉陽くんも、他の賛成だ、容認だと言ってる人たちも、同じ島で生きている人なわけで、その人達のこともしっかり大事にしたい。なんでじゃあむしろ容認と考えているのか、賛成と考えているのか、あるいはなんで自分自身が反対だって思っているんだろうということも、ちゃんと疑問を持って話していくことでそれは解きほぐせると思いますし。

嘉陽氏:「じゃあちょっと僕は賛成だけど、反対の人の意見を聞いてみようかな?」とかいう動きがあったりとか、上の世代でも「確かにこういうの大事だね」と言ってくれるので、周りが変わってくれたっていうのが今回一番の面白かったこと。

元山氏:本当に一人一人が思っていることだとか、本当は言いたいことだとかをもっともっと言っていいんだよ、それで変えていけるんだよということを伝えたいなというふうに思いますね。

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【スタジオ】
富川悠太アナ:元山さんと嘉陽さんのようにですね、同じテーブルで意見が違ってもやっぱり議論していくっていうのは大事なことですよね。では改めましてですね、県民投票の結果、見ていきましょう。投票率は42.48%でした。反対票は43万4273票、賛成が11万4933票と、反対派が7割を超えるという結果になりました。後藤さん、この投票率と投票数、どのようにご覧になりますか。

後藤謙次氏:特に投票率についてはですね、自民党が投票運動をしなかったんですね。その中で5割を超えた。まったくこの正当性を補強した、そういう数字だと思いますね。

富川アナ:雨も降っていたっていうらしいですしね。

後藤氏:それからこの43万票。これ去年の9月の沖縄県知事選の玉城さんが得た得票より大きいんですね。それだけNOという意志が強かったっていうことだと思います。これによってですね、法的拘束力はないと言われてますけども、玉城知事が埋め立てNOだと言う、承認しないという根拠を与えた、そういう数字だと思いますね。

富川アナ:新たな反対の民意が示されたわけですけども、土砂の投入は今日も続きましたね。

後藤氏:そうですね。その意味ではですね、安倍総理は真摯に受け止めると。普通真摯という場合にはですね、それまでとは違う行動を取るということがあるんですが、これまでとまったく同じ行動を取られている。そしてこれまでですね、政府にとって沖縄が何かということは語られたんですが、昨日の県民投票はですね、政府は沖縄にどう答えてくれるんだと、そういう問いかけだと思うんですね。かつて橋本内閣で官房長官務めて、この普天間の返還を合意したときの官房長官ですが、梶山さんは常々ですね、これまで沖縄が辛苦を重ねてきた、それに国民一人一人が報いなければならない、そしてこう言ってるんですね。「各社一善」「各人一助」。つまり会社は一社ずつそれぞれ沖縄に何かしましょう。国民は一人一人沖縄に対して何かしましょう。そういう問いかけをしてるんですね。それに是非いま一歩立ち止まると、そういう責任が政府にあると思いますね。

富川アナ:世論調査を行ったところでですね、もう62%の人が県民の意志を安倍政権は尊重すべきだと答えているんですね。それをどうするかですよね。

後藤氏:そうだと思います。やっぱり国民全体もですね、この問題に強い関心を抱いていると。その証だと思いますね。

徳永有美アナ:安倍総理の真摯に受け止めるという言葉を信じたいところですよね。

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まず1点目の不適切な発言についてです。

今回の県民投票は、アメリカと日本という国同士の取り決めに意を唱える沖縄県という構図です。

この県民投票の結果によって、国が判断を変えるということが無くても問題はありません。
国同士の取り決めが優先されうる問題なのです。

その上で後藤氏の以下の発言は不適切と思われるものです。
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後藤氏:それからこの(反対票の)43万票。これ去年の9月の沖縄県知事選の玉城さんが得た得票より大きいんですね。それだけNOという意志が強かったっていうことだと思います。これによってですね、法的拘束力はないと言われてますけども、玉城知事が埋め立てNOだと言う、承認しないという根拠を与えた、そういう数字だと思いますね。
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法的拘束力はないが、43万票の反対票は基地移設反対の承認する根拠になる、と言っていますが、この発言の意図が不明瞭です。

反対票の数に関わらず、反対が示されたことの何の根拠になっているか分かりません。
さらに法的拘束力はないのですから、何かが県民投票によって変わるという確証もありません。

このような解説は県民投票の解説として、反対の結果を誇張するため以外の何ものでもないように思われます。

さらに後藤氏の発言を見ていきます。

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後藤氏:これまでですね、政府にとって沖縄が何かということは語られたんですが、昨日の県民投票はですね、政府は沖縄にどう答えてくれるんだと、そういう問いかけだと思うんですね。かつて橋本内閣で官房長官務めて、この普天間の返還を合意したときの官房長官ですが、梶山さんは常々ですね、これまで沖縄が辛苦を重ねてきた、それに国民一人一人が報いなければならない、そしてこう言ってるんですね。「各社一善」「各人一助」。つまり会社は一社ずつそれぞれ沖縄に何かしましょう。国民は一人一人沖縄に対して何かしましょう。そういう問いかけをしてるんですね。それに是非いま一歩立ち止まると、そういう責任が政府にあると思いますね。
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この後藤氏の発言をまとめると、
政府は沖縄に何をするかということが求められてきたが、国民1人1人が沖縄に対して何をするかということが求められているので、責任は政府にある、といったものですが、
論点をずらした解説になっています。

政府の責任の話かと思えば、国民一人一人の話になり、結論でまた政府の話をする。
何が言いたいか分かりません。

一般的に考えれば、普天間基地移設を唱えていた自民党を国民が選挙によって選んだため、
その基地移設もなされるべき、となるはずです。

この後藤氏の論もやはり無理があり、基地移設反対を言いたいだけという意図しか感じられません。

2点目として論点の提示が少なく、放送法に抵触する恐れがあります。

この沖縄基地移設の問題は民主党政権下の2010年にさかのぼります。
それまで13年間積み重ねてきた、交渉を民主党政権が一方的に反故にし、
アメリカはじめ、同盟国から日本は信用ができないと思われてしまい、
日米関係は過去最悪と言われるほど冷え込みました。

このように、辺野古基地移設問題を見ていくには当時の民主党政権を考えることが必要です。
にも関わらずそういった点には何も触れていません。
こういった論点を示さないことは以下の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。

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