2019年3月10日 サンデーモーニング(後編)

2019年3月10日 サンデーモーニング(後編)

サンデーモーニング、2019年3月10日分の検証報告(後編)です。

今回の報告では、
① 統計不正問題の「隠蔽の意図の質問」について報道された部分
② 「風を読む」にて日本の原発政策について報道された部分
以上2点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを2つに分け、前後編でお送りいたします。

後編で検証するのは、
② 「風を読む」にて日本の原発政策について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

【VTR要約】
① 原発再稼働の動きについて
今年1月の経団連・中西会長による記者会見映像が映し出される。財界トップから原発再稼働を支持する声が上がったと伝えられ、政府も原発再稼働に本腰を入れつつあると伝えられる。「本当に再生可能エネルギーだけでは電力は賄えないのでしょうか?」と問題提起。岡山県にある日本最大の太陽光発電所が映し出される。南相馬市の映像に切り替わり、被災地にも太陽光発電設備が設置されていると伝えられる。この施設を設置した被災者・三浦広志氏の姿が映し出され、農業をする傍ら太陽光発電事業を始めたと伝えられる。三浦氏は「原発はリスクの塊。矛盾を先送りにしているだけ」と話す映像が流される。太陽光発電所は全国で51万か所以上あり、再生可能エネルギーだけで原発40基分以上の電力が生み出されていると説明。エネルギー基本計画においても再生可能エネルギーを主力電源化する方針が示されたとナレーション。

② 優先給電ルールについて
しかし、こうした方針に疑問を投げかける事態が起きていると伝えられる。
福岡県の太陽光発電所の出力状況を示すモニタールームが映し出される。発電所の職員は昼間の発電が制御された日は発電量がゼロであると説明。九州電力の記者会見映像に切り替わる。九州電力は再エネ事業者に対し「出力制御」を実施したと伝えられる。電力の需給バランスが崩れると大規模停電が起きるため、再エネの発電を停止させバランスをとったと説明。九州電力の原発再稼働が背景にあり、原発の電力を優先させる「優先給電ルール」があると説明した。原発再稼働が進むほど、こうした事態は全国に広がりかねないと伝えられる。このような状況になった原因には国の原発政策の変化があると伝えられ、CMへ。

③ 日本のエネルギー政策の変化について
震災で脱原発の機運が高まり、当時の民主党政権は原発ゼロを掲げたと伝えられる。当時の政策立案に携わった伊原氏のインタビューに切り替わる。井原氏は「このタイミングが唯一のタイミングだと感じた」と語り、当時世論の過半数が原発ゼロに賛成したと伝えられる。しかし5か月後、安倍政権はエネルギー基本計画を改定し再稼働推進へ舵を切ったとナレーション。政府は発電コストの安さを根拠としたが、専門家から疑問の声が上がっていると伝えられる。世界では太陽光電力の大幅なコスト低下を予測し、多くの国が再エネ中心の政策に転換しつつあると伝えられる。ドイツでは40%以上が再生可能エネルギーであると伝えられ、ドイツ・フランクコッホ上級顧問のインタビュー映像に切り替わる。ドイツは火力等の出力を柔軟に調整することで、再エネの電力供給の不安定さを克服する努力をしていると説明した。
一方、日本は原発重視の姿勢を変えず、原発輸出も成長戦略の柱として掲げているが、原発建設のコスト増により企業は相次いで計画凍結・撤退に追い込まれているとナレーション。去年12月の菅官房長官による記者会見映像に切り替わる。「原発輸出政策は行き詰っているのでは?」という記者の質問に対し、「日本の原子力技術に対する期待の声が寄せられている」と返答する菅官房長官の映像が流される。
“世界の趨勢に逆行するかのような日本のエネルギー政策。今後どこへ向かうのでしょうか?”という言葉を最後にVTRは終了した。

【アナウンサーによるパネル説明】
・安倍政権下での『第5次エネルギー基本計画』の内容(去年7月)
① 再生可能エネルギーの主力電源化
② 原発「重要なベースロード電源」
③ 2030年の原発比率20~22%
・原発比率20~22%を達成するためには、日本にある原発のほとんどを再稼働させる必要がある

【コメンテーターの発言】
目加田説子氏(全文):あの先ほどのデブリ(核燃料)の抽出が、いかに課題が大きいかということをまあ、VTRを通じて学んだわけですけど。もし原発を稼働していたならば、全国で、これだけの地震大国でいつ何時大きな地震が起きてもおかしくないと言われている日本で、また福島のようなことがですね。ほかの地域でも繰り返されるというふうに思うと、私は正義を振りかざしているのではなくて、純粋に怖いなというふうに思うんですね。それで先ほど、涌井さんから、諦めてはいけないと。いろいろ技術というのは革新もあるし、今後何が、いろんな形で可能になるということもあるということで言えば、例えば不安定だって言われているような再生可能エネルギーにしても、ドイツのように克服していくということが今後例えば50年間をかけてできないのか。十分に可能性があると思うんですね。要するに政治的な決断で、やっぱり原発に依存」しない。しかも再生可能エネルギーであれば純国産でエネルギーができるわけじゃないですか。ですからそういう国にしていくんだっていうことを政治的な決断でしていくこと。ということがまず何よりも大事なんじゃないかなというふうに思っています。

安田菜津紀氏(要約):そもそも福島で作られてきた電力はここ東京などで消費されてきた。その消費量を変えないまま発電方法だけを議論するのではなく、そもそも消費の在り方、私達の生活の在り方を少しずつ変える時にきていると思う。

寺島実郎氏(要約):8年間で、省エネが驚くべき進化をした。ものすごい効率化が進んでいる。ただ、入り口が間違っていて、ドイツの2倍の再生エネルギーの価格を固定価格で買い取る政策をした。それが逆に、全国で太陽光パネルだけが再生可能エネルギーの主力になって林立してる状況を作ってしまった。エネルギー政策は賢さと戦略性。絶妙なバランス感覚で進まなきゃいけない。じっくりと少しずつ前に進めるという考え方が大事。

松原耕二氏(要約):“日本の原子力の父”と呼ばれた伊原義徳氏がおっしゃった「一旦始めたら、日本人は方向転換をなかなかできないんだよね。戦争もそうだった。」という言葉がものすごく胸に残っている。
じゃあ日本はエネルギー政策をどうするのか。自分の意思で決める時なのにまだ逃げている。核の問題、ごみの問題が出て紀しまうから足がすくんでしまう。まず直視することから始めるしかないと思う。

涌井雅之氏(要約):パリ協定で、日本は2050年までに80%のCO2を削減するという目標がある。そこからバックキャストしたときに、我々はどういうエネルギー政策をとるか。これが問われてる。そこを忘れちゃいけない。何をメインにして何をサブにするのか。個人的には脱原発。リスクの面を考えたら絶対再生エネルギーがメインで、そのサブシステムとしてしばらくの間原発があるというなら納得ができる。そこが大きなこれからの課題だと思う。

九州大学名誉教授・工藤和彦氏(全文):一つ最初に申しますと、ドイツは日本と違う点で言えば、余った電気が出てきたら、それを国外のネットワークで簡単に輸出することができる。ただし、実はそれは大赤字で輸出しております。国際価格というが低いものですから。ということで、なかなかドイツのモデルは日本にはそのまま適用できないというのが一つ。それから、おっしゃったパリ協定・・・

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の2点です。

1、目加田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

1、目加田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
目加田氏は今回の報道で、以下のように述べています。

目加田氏(抜粋):もし原発を稼働していたならば、全国で、これだけの地震大国でいつ何時大きな地震が起きてもおかしくないと言われている日本で、また福島のようなことがですね。ほかの地域でも繰り返されるというふうに思うと、私は正義を振りかざしているのではなくて、純粋に怖いなというふうに思うんですね。(中略)例えば不安定だって言われているような再生可能エネルギーにしても、ドイツのように克服していくということが今後例えば50年間をかけてできないのか。十分に可能性があると思うんですね。要するに政治的な決断で、やっぱり原発に依存しない。しかも再生可能エネルギーであれば純国産でエネルギーができるわけじゃないですか。ですからそういう国にしていくんだっていうことを政治的な決断でしていくこと。ということがまず何よりも大事なんじゃないかなというふうに思っています。

要旨をまとめると、
・原発を今後稼働すると地震大国の日本だと福島のようなことが起きるかもしれない、そう考えると正義を振りかざすのではなく怖いと思う。
・不安定と言われている再生可能エネルギーも、ドイツのように克服していくことができるはず。政治的な決断で原発に依存しないことができ、そういう政治的決断をすべきだ。
というものです。

しかしながら、
・福島第一原発はイレギュラーの連続で起きたことで、日本の原発は極めて安全基準に配慮した設計、運用がなされている。
・再生可能エネルギーの普及は確かに重要だが、大陸に位置しており他国(原発大国フランスなど)からの電力の輸入や余った電力の他国への輸出ができるドイツと日本は背景が大きく異なるため、同列に扱うのは暴論で事実に基づかないといえる。
など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での目加田氏の発言は事実にそぐわないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3項「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「日本は脱原発にかじを切るべきだ」「民主党政権は脱原発を目指していた」「ドイツを参考にすべきだ」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「日本が安定的な電力供給をするには原発が必要だ」「そもそも福島第一原発の初動を間違えたのは民主党政権だ」「地続きで日本と状況の異なるドイツは参考にならない」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

今回このような報道姿勢が特によく表れたのが、放送最後の部分における九州大学名誉教授・工藤和彦氏の発言の扱われ方です。

工藤氏は放送で以下のように述べています。
工藤氏(抜粋):一つ最初に申しますと、ドイツは日本と違う点で言えば、余った電気が出てきたら、それを国外のネットワークで簡単に輸出することができる。ただし、実はそれは大赤字で輸出しております。国際価格というが低いものですから。ということで、なかなかドイツのモデルは日本にはそのまま適用できないというのが一つ。それから、おっしゃったパリ協定・・・

工藤氏は、日本と異なりドイツは電力の不足や過剰を輸出入でカバーできることや、過剰な電力の輸出が大赤字になってしまうこと、ゆえに日本においてドイツのモデルを導入することができないということを述べています。その後、パリ協定についても言及をしようとした途端、時間切れに追い込まれてしまいました。

つまり、放送において一貫して取られた立場と異なる意見を持つ工藤氏の発言時間を、番組側が取らせなかったのです。このような報道は、言うまでもなく一つの立場だけを取る悪質な偏向報道です。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4項「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の後編となります。後編では事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

① 統計不正問題の「隠蔽の意図の質問」について報道された部分
については、前編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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