2019年3月12日 報道ステーション

2019年3月12日 報道ステーション

3月12日の報道ステーションのレポートです。
この日の放送では安倍政権が進めている幼児教無償化に関するニュースが取り上げられ、野党の主張をメインに、批判的な報道がなされていました。
そういった放送の中で今回検証する点は2点あります。
1. 多くの論点を取り上げて放送がなされていたか。
2. 事実に基づいた報道がなされていたか。
この2点について検証していきます。

まずは報道内容を見ていきます。
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【スタジオ】
富川悠太アナ:3歳から5歳までの子供達の保育園などの利用料を原則無料とする、幼児教育無償化法案が、きょう衆議院で審議入りしました。安倍総理の肝いりなんですが、野党側からは、高い所得の人が恩恵を得てしまうと、批判の声が上がりました。

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【VTR】
安倍晋三総理大臣:少子高齢化という困難に正面から取り組むため、子育て世代・子供達に大胆に政策資源を投入し、社会保障制度を全世代型へと変えていく。

ナレーション:政府は、原則3歳から5歳の子供がいる全世帯を対象に、消費税が上がる10月から、保育園などの利用料を無償化する方針です。しかし、野党は――。

国民民主党 山岡達丸衆院議員:無償化のより大きな恩恵は、所得の高い人が得てしまうという批判は免れません。

ナレ:すでに所得が低い人たちの負担は減っていて、低所得者対策にならないと追及しました。

国民民主党 山岡達丸衆院議員:所得の高い人がより得をするという制度設計を良しとしますか。今回の無償化をめぐるこうした批判に対してどのような考えなのか。

安倍晋三総理大臣:低所得世帯を中心に先んじて段階的に無償化の範囲を拡大してきており、高所得者層ほど大きな恩恵を受けるとするご指摘は当たらないと考えています。

ナレ:さらに野党は、無償化よりも待機児童をなくす方が先だとしました。

立憲民主党 岡本あき子衆院議員:「#保育園落ちた」のハッシュタグが今年も立っています。これを毎年の風物詩にしてはなりません。改めて第一に取り組むべきは、受け皿を32万人増よりも拡大して待機児童解消を行うことです。総理、いかがでしょうか。

安倍晋三総理大臣:保育の受け皿整備32万人分については、女性の就業率が他の先進国並みの8割まで上昇することを想定して、必要な整備量を推計したものであり、保育のニーズの増加に十分対応できるものと考えています。

テロップ:街の人は――(都内での取材)

待機児童(1歳)の母親:保育園がそもそも認可が今年入れなくて、無償化というのは生まれるまではうれしいなと思ってたんですけど、実際にはそもそも保育園入るのが難しいんだなと。保育園の数とかも増えれば良いのかなと。

3歳児の母親:私たちみたいな世代はありがたいんじゃないかなと。それでどこかにしわ寄せが来るとか、そういうことでないといいなと思いますけど。

1歳児の母親:うちは保育園に入れたから良かったんですけど、入れてなかったら入れるようにして欲しいなと思っていたと思います。ある程度預ける以上は個人が負担しても良いと思うので、待機児童がやっぱり少なくなる方が優先なのかなというふうに個人的には思います。

ナレ:保育に取り組むNPOは、無償化する予算があれば、必要な保育の整備ができるはずだと指摘します。

認定NPO法人フローレンス 駒崎弘樹代表理事:頑張って働こうと思ったときに保育園がないみたいな状況、これを先にカバーしていく必要があったのではないかなと。保育園が足りないだけではなくてですね、一時保育、または病児保育、あるいは夜間保育、こうしたものが全て足りないという状況になってるんですね。足りないインフラから先に充実させるべきだったのではないかと、いうふうに思わざるを得ません。

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【スタジオ】
富川悠太アナ:今も周りでは認可保育園には入れないという声、やっぱり聞きますから、私も保育園増やしたり、保育士の待遇良くして人数を増やすといったような、待機児童対策が優先かなという気がしますけどね。

徳永有美アナ:そうですね。

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放送をまとめると
1. 幼児教育無償化に関して、「高所得者層の恩恵が大きい」という野党の主張をとりあげる。
2. さらには幼児教育の無償化よりも待機児童の解決が先手という野党の主張が取り上げられる
3. 待機児童に関して都内でのインタビュー

このように野党の主張を軸に放送がなされていました。
1点目の検証点・広く論点を取り上げていたかということに関して見ていきます。
そもそも幼児教育無償化そのもののメリットなどは一切取り上げずに、待機児童の話に論点をずらしていった点で、幼児教育無償化に関する報道としては不十分でした。

さらに後半、メインで取り上げられていた待機児童に関してですが、この問題に関しても論点とされている点が非常に少なかったです。
今回の放送で待機児童に関して取り上げられていたのは、
「待機児童がいることは問題であるから幼児教育無償化よりも待機児童を解決すべきである。」
といった論点のみでした。

しかしこの待機児童という問題は国の問題というよりは都市部の問題という面が大きいのです。

都道府県別の待機児童の数を見てみると、待機児童が最も多いのはダントツで東京です。
2位と約6000人の差をつけて、8500人の待機児童がいます。
その他待機児童が多い自治体は関東圏・関西圏の都市部が多くなっています。

この原因は端的に都市部に人口が集まりすぎていることです。

都市部の人口を地方などに分散することは現実的に不可能ですし、保育園を作る際の規制・保育士の数なども問題です。

一部の都市部の問題である待機児童を解決するよりも、日本全体に恩恵をもたらす幼児教育無償化を打ち出していくことは、おかしな話ではないと思われます。

このような論点を提示せずに、都市部だけの声を取り上げて、放送することは以下の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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さらに事実を曲げての報道があった可能性があります。
それは以下の野党の主張に関してです。総理の答弁も合わせて振り返ります。

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国民民主党 山岡達丸衆院議員:無償化のより大きな恩恵は、所得の高い人が得てしまうという批判は免れません。

ナレ:すでに所得が低い人たちの負担は減っていて、低所得者対策にならないと追及しました。

国民民主党 山岡達丸衆院議員:所得の高い人がより得をするという制度設計を良しとしますか。今回の無償化をめぐるこうした批判に対してどのような考えなのか。

安倍晋三総理大臣:低所得世帯を中心に先んじて段階的に無償化の範囲を拡大してきており、高所得者層ほど大きな恩恵を受けるとするご指摘は当たらないと考えています。

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「所得の高い人がより得をする」とはどういうことでしょうか?
幼児教育は所得の低い層から漸次的に対策が進んできており、今後無償化が拡大していきます。
教育にかかる負担が減るのは高所得者層も低所得者層も同じです。
そして自治体・都道府県によって別々に対策せねばならない待機児童の問題とは違い、国が主導し、一律に進めることができます。

安倍政権が「高所得層優遇の対策をしている」という事実はこの一件で判断できるものでなく、野党の主張をそのまま放送するのは以下の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(3)報道は事実をまげないですること
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公正なテレビ放送を目指して視聴者の会は今後とも監視を続けてまいります。

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