2019年3月15日 報道ステーション

2019年3月15日 報道ステーション

3月15日の報道ステーションのレポートです。

この日の放送では北朝鮮とアメリカの関係をめぐる報道が大きく取り上げられていました。
北朝鮮が非核化協議を中止する意向を表したことを受け、今後の北朝鮮の動きを解説する報道でした。
こういった報道の中で今回検証する点は2点あります。
政治的に公平な報道であったか
様々な論点をとりあげた放送であったか
この2点について検証します。

まずは放送内容を見ていきます。

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【スタジオ】
小木逸平アナ:再び瀬戸際外交を仕掛けるようです。こちらはですね、北朝鮮のチェ・ソンヒ外務次官です。今日平壌で会見を開きまして、アメリカとの非核化協議を中止するとの意向を示しました。さらにですね、近く金正恩委員長が、核実験やミサイルの実験の再開を決断するともしています。米朝の緊張が一気に高まる恐れがあります。

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【VTR】
ナレーション:北朝鮮は、またいつか通った道を歩もうとしているのでしょうか。きょう平壌で一部のメディアと大使館関係者が呼ばれた会見で発表された内容は、世界を暗澹たる気持ちにさせるものでした。

北朝鮮 チェ・ソンヒ外務次官(テロップ):朝鮮民主主義人民共和国は米国との非核化協議を中止する意向である。ミサイル発射と核実験の停止を維持するか否かを決断する。

ナレ:アメリカと非核化について協議中の北朝鮮は、核実験は2017年の9月、ICBMの発射実験は、同じく2017年の11月を最後に行っていません。一年以上もやめていたのに、それらの実験再開を示唆したのです。理由は、アメリカです。

北朝鮮 チェ・ソンヒ外務次官(テロップ):米国が「15ヶ月のミサイル発射と核実験の停止」という変化に見合った措置をとり、政治的計算を変化させなければ譲歩するつもりも対話を続けるつもりもない。

ナレ:2018年初頭まで、米朝関係は最悪の状態でした。北朝鮮は挑発を繰り返し、アメリカは軍事オプションの検討を始めていました。

北朝鮮 金正恩委員長(テロップ):アメリカ本土すべてが我々の核攻撃の射程内にあり、核のボタンは常に私の執務室の机の上にある。

トランプ大統領(テロップ):私も同じく核のボタンを持っているが、私の方がはるかに巨大で強力だ。しかも実際に機能するのだと彼に教えてやってくれ。

ナレ:その最悪だった関係は、韓国の文在寅大統領の仲介などにより、大きく変化することになります。

《ニュース映像》キャスター:2018年4月21日から核実験と大陸間弾道ロケット発射実験を中止する。核実験中止の透明性を担保するため、北部の実験場を廃棄する。

ナレ:北朝鮮は、核開発関連の実験を中止し、アメリカもそれに応えるように直接対話へと舵を切りました。その結果が歴史的なシンガポールでの米朝首脳会談でした。

金正恩委員長(テロップ):いま世界中の人がこの瞬間を見ていると思う。多くの人々は映画のワンシーンのようだと思うでしょう。

ナレ:北朝鮮が望んでいたのは、少しずつ非核化を進め、その段階に応じて経済制裁の解除などをしていくというものです。中国やロシアも、この方法を支持していました。

ロシア ラブロフ外相:北朝鮮のポジティブな行動を引き出すためには、段階的な対応が効果的だ。

ナレ:北朝鮮の非核化と経済制裁の解除はどういう形で行うのか、その方法については合意に至らなくとも、会談後の両者の関係は悪くないものでした。

アメリカ トランプ大統領:会談以来最近まで誰も想像し得なかった、有望な措置が次々と講じられてきた。ミサイルやロケットが飛ばなくなり、核実験も止まっている。

ナレ:二度目の首脳会談についても意欲的でした。

アメリカ トランプ大統領:金委員長と会うのが楽しみだし、多くの成果が期待できる。最初の会談をきっかけにいい関係を築けたし成果も得られた。

ナレ:この頃の北朝鮮。アメリカには強気で交渉できると考えていました。

日本政府関係者:北朝鮮からすると、「米韓合同軍事演習の費用が高い」とか言ってるトランプが本当に戦争を始めるのはあり得ない、北朝鮮はそこはもう見切っている。トランプは口だけだと。

ナレ:トランプ大統領は妥協するはずだ。そう目論んで、北朝鮮は二度目の米朝首脳会談に臨みます。

記者:金委員長、非核化の意志は。

金正恩委員長:その意志がなかったらここに来ていなかったでしょう。

トランプ大統領:いい答えだな。君たちが聞いた中で一番の回答かもしれないな。

ナレ:しかし会談は、まさかの何も合意せずという結果に。北朝鮮の目論見は、外れました。

アメリカ トランプ大統領:問題は制裁だった。彼らは制裁の解除を求めていたが、我々が非核化を求めた対象の施設について譲らなかった。あの国のことはインチ単位で把握している。

ナレ:アメリカが北朝鮮に突きつけたのは、すべての核関連施設の閉鎖でした。北朝鮮側は首脳会談が物別れに終わった後、チェ・ソンヒ外務次官がアメリカ側の滞在するホテルを訪問します。

北朝鮮 チェ・ソンヒ外務次官:寧辺にあるすべての各施設を閉鎖するかわりに、制裁の一部を解除して欲しい。

ナレ:トランプ大統領の帰国直前まで調整に奔走しましたが、それが結実することはありませんでした。

北朝鮮 チェ・ソンヒ外務次官:今後このような機会が再びアメリカ側に与えられるかどうか…。我が方の提案をアメリカが受け入れないのは、千載一遇の機会を逃すことになると思います。

ナレ:北朝鮮はこの後、再びあの瀬戸際外交のような動きを見せていきます。《CM後》二度目の米朝首脳会談、アメリカは「段階的な非核化はあり得ない」という立場を鮮明にしていきます。

アメリカ 対北朝鮮担当ビーガン特別代表:我々は段階的な非核化を進めるつもりはない。大統領も明確にしているし、アメリカ政府もその見解で一致している。

ナレ:また、国連に対しては、「制裁の完全な履行」を申し入れました。一方の北朝鮮、一度は解体し始めたミサイルの発射場を、復旧させました。また、控えていたアメリカ批判も、再開の兆しを見せています。

北朝鮮サイト「わが民族同士」:米当局者は反対派たちの不当で破廉恥な主張に振り回されてはならない。

ナレ:そして今日のチェ・ソンヒ外務次官の会見です。

チェ・ソンヒ外務次官:人民や軍・軍需部門の当局者らが核計画を絶対に放棄しないよう、何千もの誓願を送ったにも関わらず、金正恩委員長は信頼醸成のためにハノイに訪れた。帰国の際、我が国務委員長は「何のためにこの列車旅行を繰り返す必要があるのか?」と話された。我々には米国に対しいかなる妥協もするつもりはなく、そのような交渉を進める希望も計画もない。

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【スタジオ(要約)】
小木アナ:北朝鮮の電撃的な発表、何を意味するんでしょうか。ここからは北朝鮮政治がご専門の礒﨑敦仁准教授にお話を伺います。さらにですね、アメリカ・韓国・中国に中継を繋ぎまして、それぞれの国の受け止め方・反応についても聞いていきます。まずは礒﨑さん、発表について率直にどう受け止められていますか。

礒﨑氏:ちょっと危険な感じがしてきたわけですね。すでにハノイでの首脳会談から一週間経過し、北朝鮮はその間戦略の立て直しを迫られていた。しかし金正恩委員長は中国や韓国の首脳と協議することなく、国内だけでものごとを決定しているように見える。チェ・ソンヒ外務次官はこれまでも金正恩委員長の言葉を代弁する役割を果たしてきたわけですから、アメリカに対して率直な不満を述べたことになります。

ワシントン支局長 布施哲氏:公式の発表が出てきた。ポンペオ国務長官「我々は対話の継続を望んでいる」。ボルトン大統領補佐官もホワイトハウスで記者団に対して「現在、北朝鮮の意図について分析をしている最中だ」とコメント。出勤前のアメリカ政府高官から話を伺ったところ、「金委員長の公式声明を聞いてみないと分からないが、北朝鮮一流のある種のはったりではないか。アメリカ政府に対して牽制球を投げてきているんだろう」とコメント。

ソウル支局長 高橋政光氏:韓国政府は表向き動揺しているわけではないが、内心不安を感じているのは間違いない。「いかなる状況でも韓国政府は米朝の交渉再開に向け努力する」とコメントし、引き続き橋渡し役をする意向を示している。ただこうしたなか、文在寅大統領の支持率は政権発足以降最低に下落。ベトナムでの米朝首脳会談が物別れに終わり、肝いりの南北交流もままならず、政権運営に影響が出る恐れがある。方向転換を迫られる可能性もあり、今後のアメリカの動向に注目している。

小木アナ:まず整理してみます。今日の会見でチェ・ソンヒ外務次官はこのように話をしました。「朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)は米国との非核化協議を中止する意向である」と述べ、そしてアメリカのポンペオ国務長官、ボルトン大統領補佐官を名指しして「敵対と不信感の雰囲気を醸成して両首脳の建設的な努力を妨害したせいで朝米首脳会談は何の成果もなく終わってしまった」と激しく批判した。

礒﨑氏:ポイントがいくつかあります。
・北朝鮮としては最初から人工衛星の発射・打ち上げ、核ミサイル実験に移行することも選択肢としてありうるわけだが、それはあまりにも危険であるため、金正恩委員長の発言や行動に移すよりも前にチェ・ソンヒ外務次官を使ったということになる。
・今回の記者会見は海外のメディアを呼んだもので、北朝鮮国内では一切知らせない。つまりアメリカに対して本音で不満をぶつけて、反応を見たい。実際には本音としては交渉を続けたいのではないか。あくまでトランプ大統領への批判はせず、部下への批判に終始していた。ここに交渉継続の余地はまだ残されている。

小木アナ:強気に出ているようで、観測機器を上げているような態度であると。ではなぜこのような態度に出たのか。礒﨑さんらと注目したのは、去年の1回目の米朝首脳会談が決定した6月より前の、5月の出来事です。

礒﨑氏:去年のシンガポール会談の前、5月24日には同じチェ・ソンヒ外務次官が「我々はアメリカに対話を哀願しない」「(ペンス副大統領は)政治的に愚かだ」と批判。これに対してトランプ大統領はかなり本気で怒り、「むき出しの敵意を考えると現時点での会談は不適切だ」とし、米朝首脳会談の中止を伝える書簡を北朝鮮に送った。すると北朝鮮は単に牽制をかけただけなのに会談の中止はまずい、とでもいうように、翌日北朝鮮のキム・ゲグァン外務次官によって「開かれた心でアメリカに時間と機会を与える用意がある」と対話継続の意向を示した。こうした経緯で6月1日に米朝首脳会談が決定したという、いわば「成功体験」がある。今回もまたチェ・ソンヒ外務次官が不満を吐露したとしても、最終的にはアメリカの譲歩を引き出せるのではないかという目論見が読める。

小木アナ:しかし今回もそれに当てはめると危険な外交ゲームになるのではないか。

礒﨑氏:その通りです。いくら北朝鮮がアメリカのことを分析していたとしても、部下は都合のいい内容しか上司にあげてこない可能性がある。実際にハノイの首脳会談では北朝鮮はトランプ大統領の出方を読み違えていた部分もあり、今回も読み間違えている危険性がある。

小木アナ:ではアメリカ側が軍事オプションのような選択肢を考える可能性はあるのでしょうか。

ワシントン支局長 布施哲氏:アメリカ政府で軍事オプションが真剣に検討される可能性はきわめて低いと言える。というのも、軍事オプションということになると同盟国である韓国が巻き添えになることになり、アメリカ本土を射程内におさめたICBMが配備されていればアメリカ本土ですら攻撃されるリスクが出てくる。今やアメリカですら簡単には手が出せないというのがアメリカの認識です。今後のアメリカの対応としては、二つのシナリオが考えられる。
①トランプ大統領は国内でロシア疑惑の追及に晒されており、ますます防戦一方の展開になるのではと言われているなかで、北朝鮮問題に対する関心を失ってしまうのではないか。②あるいは、ロシア疑惑に足を取られて成果が上げられていないからこそ、外交(とりわけ北朝鮮問題)で成果を上げようと、何か大きな動きに出るのではないか。いずれにせよ、どう出るか分からないトランプ大統領の怖さは最後までつきまとう。

小木アナ:では中国の反応は。

中国総局長 千々岩森生:中国政府にとっては寝耳に水だった様子。というのも今日は中国の政治で最も重要な全人代の閉幕式が行われており、そしてこのニュースが飛び込んできたタイミングというのが、李克強首相が1年に一度だけロングラン会見を行う、そのまっただ中のこと。しかし目の前の李克強首相は「いま北朝鮮とアメリカは雰囲気がいいから成果を出してほしい」とニュースと真逆のことを言っている。北朝鮮があえて中国の全人代にぶつけてきたのかはわからないが、少なくとも中国にとって面子を潰されるような形になったのは確か。

小木アナ:そうなると、今後中国と北朝鮮の関係が悪化していく可能性も十分ありそうですね。

中国総局長 千々岩森生:そうですね。実は来月、中国の習近平主席が就任後初めて北朝鮮を訪れて金正恩委員長と会談を行う検討も進んでいた矢先のことだった。米朝が緊迫してしまうと、そんな時に平壌に行って蜜月ぶりをアピールすれば、トランプ大統領を逆なですることになるかもしれない。そうなると中国にとって一番大事なアメリカとの貿易交渉に悪影響を与えてしまうかもしれない。中国にとっても一番押されたくないボタンを最悪のタイミングで押されてしまった形。

小木アナ:より北朝鮮の出方が不透明になってくる。

竹内由恵アナ:それにしても、一時は北朝鮮が非核化への道を歩み始めたかと思ったが、むしろさらに危機的状況にあるように思える。野村さんはどう思われますか。

野村修也氏:北朝鮮の行動を合理的に分析することに疑問。というのも、トップは合理的に行動しようと思っているし、周りもそう思っているだろうが、国家体制がその合理性を担保できているかどうか。独裁国家なのでちょっとした判断のミスが大きく間違った方向に向かってしまう可能性もある。またその独裁者を支える体制というのが、情報が上がりにくいだとか、場合によっては粛正されてしまうというような、我々とはまったく異なった特別な体制である。そういうところだということを前提に我々は分析しなければならない。特に北朝鮮は、これから核は作りませんとは言っているが、既に作ったぶんは持っているはず。さらに日本に届くミサイルも持っているわけで、我々としては何かの間違いで偶発的な出来事が起こるかもしれないという危機感を持って見ていかなければ危ないんじゃないか。

小木アナ:今のところ北朝鮮は国民には話をしているわけではないが、今後金正恩委員長による公式な「協議の中断」を国民・世界に向けて話すことがあれば、後戻りはできなくなりますよね。

礒﨑氏:しづらくはなると思います。国務委員長声明、政府声明、あるいは「お言葉」という形で金正恩委員長自ら話してしまうと、変更するのに手間が掛かる。そのため今の間に各国がきちんと北朝鮮に対しても、トランプ大統領に対しても、対話を続けることの意義を訴え続ける必要がある。

野村氏:(トランプ大統領に対して)「完全な非核化」は譲らないでほしい。

礒﨑氏:おっしゃる通りです。

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まずは、北朝鮮・アメリカのそれぞれの思惑を整理してみます。
北朝鮮のとしては経済制裁の解除を得るために、アメリカとの継続的な交渉を行うパイプを得ることが目的であると考えられます。

そもそも北朝鮮は「失敗が許されない国」・「失敗を認めない国」です。
これは北朝鮮の国営メディアの報道を見ていても分かります。
北朝鮮が自国民に伝えるニュースは北朝鮮にとって有利なものしか取り上げられません。
例えばオリンピックに関する北朝鮮の国営メディアの報道は開会式から報道することはありません。
北朝鮮の選手がメダルをとって初めて報道がなされます。
こういった点で見ていくと、第1回の米朝首脳会談の際は、会談が終わってから報道がなされました。
しかし第2回の米朝首脳会談では金正恩委員長が北朝鮮を発った段階で報道されました。
ここからもこの会談での北朝鮮の目的はアメリカとの継続的な交渉を行うパイプを築くことである、ということが伺えます。

北朝鮮からしてみれば、金正日書記の時代からの長年の目的であった米朝首脳の1対1の会談が実現できたことは非常に大きなことなのです。
加えてアメリカがアジアまで出向いての交渉であったこと、つまりアメリカを引っ張り出すことができる強い国であることを示すこともできました。

こういった文脈で考えると、北朝鮮の「非核化を行わない」という意向は、国営メディアでは大きく報道されておらず、外交カードの1枚でしかない可能性が高いと言えます。

続いてアメリカの思惑ですが、アメリカの思惑は端的に北朝鮮の非核化です。
この点に関して、アメリカはこれまで北朝鮮に譲歩してきた歴史があります。
北朝鮮が部分的な核・ミサイル実験を中止する代わりに、アメリカも部分的に経済制裁を解除する、このような交渉を続けてきた結果、北朝鮮が核やミサイルの技術を手にし、現在の状況に至っているのです。

トランプ大統領としてはこれを許すことはできません。
なぜなら同じことを繰り返してしまえば、これまで批判してきたオバマ前大統領と変わらないことになるからです。

こういったアメリカの思惑があるにも関わらず、今回の報道ステーションの放送は北朝鮮に寄ったものであった可能性があります。
それは以下の部分です。

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ナレ:北朝鮮が望んでいたのは、少しずつ非核化を進め、その段階に応じて経済制裁の解除などをしていくというものです。中国やロシアも、この方法を支持していました。

ロシア ラブロフ外相:北朝鮮のポジティブな行動を引き出すためには、段階的な対応が効果的だ。

ナレ:北朝鮮の非核化と経済制裁の解除はどういう形で行うのか、その方法については合意に至らなくとも、会談後の両者の関係は悪くないものでした。

アメリカ トランプ大統領:会談以来最近まで誰も想像し得なかった、有望な措置が次々と講じられてきた。ミサイルやロケットが飛ばなくなり、核実験も止まっている。

ナレ:二度目の首脳会談についても意欲的でした。

アメリカ トランプ大統領:金委員長と会うのが楽しみだし、多くの成果が期待できる。最初の会談をきっかけにいい関係を築けたし成果も得られた。

ナレ:この頃の北朝鮮。アメリカには強気で交渉できると考えていました。

日本政府関係者:北朝鮮からすると、「米韓合同軍事演習の費用が高い」とか言ってるトランプが本当に戦争を始めるのはあり得ない、北朝鮮はそこはもう見切っている。トランプは口だけだと。

ナレ:トランプ大統領は妥協するはずだ。そう目論んで、北朝鮮は二度目の米朝首脳会談に臨みます。

(中略)

ナレ:しかし会談は、まさかの何も合意せずという結果に。北朝鮮の目論見は、外れました。

アメリカ トランプ大統領:問題は制裁だった。彼らは制裁の解除を求めていたが、我々が非核化を求めた対象の施設について譲らなかった。あの国のことはインチ単位で把握している。

ナレ:アメリカが北朝鮮に突きつけたのは、すべての核関連施設の閉鎖でした。北朝鮮側は首脳会談が物別れに終わった後、チェ・ソンヒ外務次官がアメリカ側の滞在するホテルを訪問します。

北朝鮮 チェ・ソンヒ外務次官:寧辺にあるすべての各施設を閉鎖するかわりに、制裁の一部を解除して欲しい。

ナレ:トランプ大統領の帰国直前まで調整に奔走しましたが、それが結実することはありませんでした。

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これまで見てきたように北朝鮮がカードとして切ってきた
「寧辺にあるすべての各施設を閉鎖するかわりに、制裁の一部を解除」
はトランプ大統領として飲み込めるはずがありません。

北朝鮮の核施設・ミサイル基地は寧辺近辺以外にも、嶺底里・サンナムニ・舞水端里・豊渓里・新浦・平山などにも存在するからです。

これらの施設での非核化が約束されなければ、これまでの交渉と変わらず、さらなる北朝鮮の増長を許してしまいかねません。

しかし上記の報道では、中露も賛同した段階的な非核化という北朝鮮の対話路線をアメリカが崩した、といったことしか分かりません。
アメリカの意図が解説された報道ではなかったと言えます。
これは以下の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(2)政治的に公平であること

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2つめの検証点として、取り上げるべき論点が取り上げられていないのではないか、という点ですが、これは端的に日本の話が放送で出てこないことです。

上記であげたようなアメリカの思惑と日本の思惑が必ずしも一致することはありません。
アメリカとしてはアメリカ本土への影響が出ないように北朝鮮を抑え込むことが目的ですので、北朝鮮による日本への影響については日本で考えるべきですが、そういった論点が放送ではほとんど取り上げられていません。

たとえば核兵器以外の通常のミサイルはすでに日本に届くこと、拉致被害者をどう取り戻すのか、などといった、北朝鮮の脅威にどう対処していくのかという話は述べられていません
日本がとり得る選択肢としては、軍事費の増額や米軍との連携を強めるといったことが挙げられますが、こういった点は触れらませんでした。

もちろん、憲法の解釈にもかかわる問題とも言えるため様々な意見が出るでしょう。
しかし日本が北朝鮮に対し、どういった対策を講じていくのかという重要な論点を取り上げないことは以下の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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公正なテレビ放送を目指し、視聴者の会は今後も監視を続けてまいります。

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