2019年5月12日 サンデーモーニング(中編)

2019年5月12日 サンデーモーニング(中編)

サンデーモーニング、2019年5月12日分の検証報告(中編)です。

今回の報告では、
① 米国の対中関税25%発動について報道された部分
② 「風を読む」でトランプ大統領の支持率上昇について報道された部分
③ 憲法審査会にてCM規制に関する聴取実施について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

中編で検証するのは、
② 「風を読む」でトランプ大統領の支持率上昇について報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

【VTR要約】
①トランプ大統領の支持率とロシア疑惑
トランプ大統領の支持率は、就任以降過去最高の46%を記録し、共和党支持者の支持率は91%と驚異的な支持を得ていると伝えられる。一方、ロシア疑惑スキャンダルについて、元米検事らは現職の大統領でなければ訴追されただろうという声明を発表し、司法妨害の疑いは完全には否定されていないとアナウンス。

②トランプ政権の政策(イラン・イスラエルとの関係)
アメリカはイランが核開発を大幅に制限する見返りに経済制裁が解除するという核合意から離脱し、イランへの圧力を強めてきたと伝えられる。イラン最高指導者ハイメイ師の姿が映し出され、イラン側もイラン核合意で定められた一部の義務に従わないと表明を発表。再び核開発への道に戻る可能性が出てきたとアナウンス。
一方、イスラエルとは親密な関係を築いたと伝えられる。ゴラン高原におけるイスラエルの主権を認めると発表して世界の反発を招いたが、これまでもエルサレムをイスラエルの首都と認定するなど、中東地域のバランスを壊しかねない政策をしてきたと伝えられる。

③トランプ政権の支持層
上智大前嶋教授のインタビュー映像に切り替わる。トランプ大統領の支持者について、前嶋教授は「キリスト教福音派はイスラエルを強い親であり、敵であるイランをもっと締め付けろと主張している」と話す映像が流される。福音派はトランプ政権の有力な支持基盤であると伝えられ、トランプ大統領の演説映像に切り替わる。トランプ大統領が「中国がアメリカの労働者を利用し職を奪うマネをやめるまで引き下がらない」と話す映像の後、トランプ政権は中国からの輸入品の関税を25%にまで引き上げたとアナウンス。再びインタビュー映像に切り替わり、「白人ブルーカラー層は、アメリカから中国に移ったモノ作りの拠点をアメリカ戻してくれると思っている」と話す映像が流される。
 CM後、トランプ大統領は、地球温暖化を否定した上でパリ協定の離脱を発表し、国内の環境規制を次々に緩和・撤廃してきたと伝えられる。しかし世界の流れに逆行する姿勢を支える支持層が存在する伝えられ、再びインタビュー映像に切り替わる。「アメリカの富裕層の一部である投資家や経営者は、自分のビジネスを制限する規制を取っ払うトランプ大統領を評価している」と話す映像が流され、自国第一の道を突き進むトランプ流の政治は他国にも広がっているとアナウンス。再度インタビュー映像に切り替わり、「世界各国が人気取りで自分の政治をしていけば、エゴとエゴとの対立になっていく」と話す映像を最後に、VTRは終了した。

【コメンテーターの発言】
関口宏氏:今ご指摘があがったようにね、エゴとエゴっていうのは、上手くいくわけないんだから、絶対どっかで、何かが起こってしまう。それに気がついてるのかな、トランプさん。で、私、支持者の方たちもね。増えてるっていうことは、危険だなあと僕なんかは思います。どうでしょうか。

寺島実郎氏(全文):これ、アメリカの深層心理っていうのかな。その、僕自身もこの番組でね、福音派のプロテスタントがね、1/4から3割近くいるっていうことがね、岩盤支持層になってるんだと。トランプよくやってるんじゃないかっていうですね、雰囲気を支えてるんだっていうことなんですけど。加えてね、振り返ってみると、まあちょうど平成が終わったところなんですけど、冷戦が終わってから30年と。で、アメリカ自身が掲げてきてた旗だったんですね。グローバリズムだとか。その背後にある新自由主義っていってですね。規制緩和だと。グローバル競争だって言って一生懸命走ってきた。アメリカのモノ作り自身がですね、その流れの中で、海外に出て行った。競争力の確保のためにと。そしてそれを埋めるかのように、アメリカに移民が入ってですね、安い労働力を支えるなんていう構図を作ったと。そういう中で西海岸にシリコンバレーのようなものがぐーっと伸びてきてですね。そのIoT、ITによってアメリカ経済を支えるっていうんで、結構アメリカ経済は堅調ですよというときの柱になってきた。ところがやはり、中西部だとか、モノ作りだとかですね、取り残された人々の苛立ちとか悲しみってのが、ものすごい深いっていうかですね。で、そういうのに対してまるで手を差し伸べてるかように見えるトランプっていうかですね。気をつけなきゃいけないのは、日本人のなかでも、議論してると、トランプよくやってるじゃないかと。というのは、中国に対する脅威心・脅威感っていうのが逆にその中国を追い詰めるトランプに対する支持みたいに心理につながってるっていうところがあるんですよ。で、我々、気をつけなきゃいけないのはですね。そういう流れの中でね、やっぱり合理的、理性を持ってね、次なる世界をどうしていくのかっていうことを真剣に考えてないと、単純なことでは、歴史はまた落とし穴に落ちますよっていうことだと思います。

西崎文子氏(要約):トランプ大統領が自国第一主義を言う度支持層は、自分達を守ってくれてると思っている。それは福音派やブルーカラー層もそうだが、富裕層も同様である。皆がエゴの下にトランプ大統領を支持している。政治とは何かを一人ひとり考え、どこかでストップをかけないとアメリカの憲法体制は瓦解していく可能性がある。

藪中三十二氏(要約):アメリカの良識派がアメリカのTwitter政治にやられてしまっている。共和党の中も今やトランプ党になった。トランプ大統領が外交で混乱ばっかり引き起こしている。一番の問題は、出口戦略がないこと。目的がない中で混乱ばかり引き起こしている。選挙モードのトランプ大統領とだけ付き合っていて日本は本当にいいのだろうか。

元村有希子氏(全文):アメリカって移民の国。っていうのは皆さんご存知だと思います。トランプさんももちろんヨーロッパから渡ってきた人たちの子孫ですよね。移民の人たちは故郷に思いを残しながら、自由を信じ、夢を信じて作り上げてきたのが今のアメリカですよね。強いアメリカであることは間違いないんですけれども、渡ってきた人たちが移民を排斥してるっていうおかしなことになっている。なんか皆さんがやっぱり、強いアメリカの共同幻想にそのままはまり込んで。で、内向きになっちゃってるっていうのをすごく感じますね。日本もそれに近い空気を感じますし、やはり強くなる、豊かになる富んだ国はそういうふうに仕組み的になっていくのかなとちょっと諦めに近い気持ちも持ちました。

青木理氏(全文):なんか、ちょっと意外で、一体どんな奴がトランプ支持してるトーンのVTRでしたけど、でも考えてみたら、国際的には、一番トランプさんを支持してるのは日本なんですよね。だって、武器は爆買いするわ、ノーベル平和賞に推薦するわ、挙句の果てに新天皇になってからの最初の国賓にトランプさんを招くわけでしょ。で、アメリカ国内で福音派とか宗教保持ってのが支持してるっていうんだけど、さきほどVTRで出てきたけども、没落して中国に対してライバル心を燃やしている層とか、あるいは経営者とか投資家ってのが支持してるっていうと、日本はなんなのかなって考えると、やっぱり没落して中国を敵視する人達だったりとか、既存の体制にしがみついてる人達。つまり人類の普遍の価値よりも、既得権が大事なように、国際的に日本も見えてるっていうところにも気づかなくちゃいけないような、僕は気がしました。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の2点です。

1、寺島氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、元村氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
4、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている

それぞれ順を追って解説します。

1、寺島氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
寺島氏は今回の報道で、以下のように述べています。

寺島氏(抜粋):やはり、中西部だとか、モノ作りだとかですね、取り残された人々の苛立ちとか悲しみってのが、ものすごい深いっていうかですね。で、そういうのに対してまるで手を差し伸べてるかように見えるトランプっていうかですね。気をつけなきゃいけないのは、日本人のなかでも、議論してると、トランプよくやってるじゃないかと。というのは、中国に対する脅威心・脅威感っていうのが逆にその中国を追い詰めるトランプに対する支持みたいに心理につながってるっていうところがあるんですよ。で、我々、気をつけなきゃいけないのはですね。そういう流れの中でね、やっぱり合理的、理性を持ってね、次なる世界をどうしていくのかっていうことを真剣に考えてないと、単純なことでは、歴史はまた落とし穴に落ちますよっていうことだと思います。

要旨をまとめると、
・米国中西部の取り残された人々のいら立ちにトランプ大統領が手を差し伸べているかのように見えることが、トランプ大統領が支持される理由である
・日本人のなかには、中国への警戒心ゆえに対中強硬路線を取るトランプ大統領を支持する声がある
・こうした流れによりトランプ大統領を支持するなど理性を失ってしまうと、歴史の惨禍を繰り返すことになる

というものです。

しかしながら、
・トランプ大統領は非常に幅広い支持基盤を持っており、特定の属性を持つ人々だけがトランプ大統領の支持者だとする言説は事実に基づかないものである
・安全保障上の脅威となりうる中国に対して日米が連携して対処することは当然のことで、それを理由に日本人がトランプ大統領を支持することが問題だとする言説は事実に基づかず、政治的にも公平とは言えない
・トランプ大統領の支持が広がることを理性を失うことだとする言説は事実に基づかず、また政治的に公平ではない

など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での寺島氏の発言は事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、元村氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
元村氏は今回の報道で、以下のように述べています。

元村氏(抜粋):アメリカって移民の国。っていうのは皆さんご存知だと思います。トランプさんももちろんヨーロッパから渡ってきた人たちの子孫ですよね。移民の人たちは故郷に思いを残しながら、自由を信じ、夢を信じて作り上げてきたのが今のアメリカですよね。強いアメリカであることは間違いないんですけれども、渡ってきた人たちが移民を排斥してるっていうおかしなことになっている。なんか皆さんがやっぱり、強いアメリカの共同幻想にそのままはまり込んで。で、内向きになっちゃってるっていうのをすごく感じますね。日本もそれに近い空気を感じますし、やはり強くなる、豊かになる富んだ国はそういうふうに仕組み的になっていくのかなとちょっと諦めに近い気持ちも持ちました。

要旨をまとめると、
・アメリカは移民の国であるにも関わらず、その子孫が移民を排斥するというのはおかしなことである
・排他的で内向きな空気は日本にもあるため、豊かで強い国は内向きになっていく

というものです。

しかしながら、
・アメリカで現在問題になっている移民は、法的な手続きによらずに密入国をする不法移民である
・アメリカが移民の国であることが、移民を受け入れるかどうかの判断基準にはならない
・豊かで富んだ国には排他的で内向きな空気があるという主張は何ら根拠がなく、事実に基づかない

など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での元村氏の発言は事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「トランプ大統領の支持が米国で広がることは問題である」という立場に立った意見のみが出てきました。実際に、

関口氏(抜粋):(トランプ大統領の)支持者の方たちもね。増えてるっていうことは、危険だなあ
など、こうした姿勢が顕著にみられる発言もありました。

ですがこの問題に関しては「トランプ大統領がアメリカで支持されるにはそれ相応の理由がある」「経済が好転し、外交でも強気で出ることは悪いことではない」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第3号「政治的に公平であること」、同第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の中編となります。後編では事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

この続きの
② 「風を読む」でトランプ大統領の支持率上昇について報道された部分における
 検証3「青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている」

ならびに
③ 憲法審査会にてCM規制に関する聴取実施について報道された部分
については、後編の報告をご覧ください。

① 米国の対中関税25%発動についてについて報道された部分
については前編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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