サンデーモーニング、2019年5月26日分の検証報告(中編)です。
今回の報告では、
① 議員の暴言と衆参同日選挙について報道された部分
② 「風を読む」でトランプ米大統領の来日について報道された部分
③ 徴用工問題について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。
検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。
今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。
中編で検証するのは、
② 「風を読む」でトランプ米大統領の来日について報道された部分
となります。
では、さっそく放送内容をみてみましょう。
【VTR要約】
①日米関係について
ゴルフ場で並んで歩くトランプ大統領と安倍首相の姿が映し出される。令和初の国賓として来日したトランプ大統領への手厚いもてなしには、強固な日米関係をアピールしたいという思惑が透けて見える、とナレーション。戦後日本が外交の基軸としてきた日米関係。敗戦国日本が復興の柱としてきた社会システムや経済成長への歩みの背後には、常にアメリカの影があったと伝えられる。
オスプレイが上空を飛行する映像に切り替わる。不平等と批判される「地位協定」の抜本的な改定はされず、思いやり予算は今年も1974億円に上り、様々な議論が残る中で集団的自衛権の行使容認を含む安保法制が成立したとナレーション。
トランプ大統領が視察する予定の護衛艦「かが」は、事実上の空母に改修されることが決定し、その際、F35Bが多数導入されることが念頭にあると伝えられる。先月の日米首脳会談後、トランプ大統領は「日本はものすごい量の防衛装備品の購入に同意した」と話し、日本に対してもアメリカファーストを前面に押し出していると伝えられる。
政治学者・白井聡氏のインタビュー映像に切り替わる。白井氏は「国体」の有り様の変化について指摘し、「戦前の国体は天皇中心だったが、戦後、いつの間にかアメリカの存在が日本にとって慈悲深いありがたい存在であるかのようになってしまった(要約)」と話す映像が流される。日本は戦後アメリカの支援を足掛かりに復興を果たしたが、日本を自由主義陣営に引きとめたいアメリカの思惑があり、緊密な日米関係には、他の外交にも影響を与えていると伝えられる。
②日露関係・日朝関係について
強固な日米関係を警戒するロシアは、北方領土を引き渡せばいずれ米軍基地が設置されかねないという懸念を盾に、交渉を停滞させている、とナレーション。北朝鮮問題についても、アメリカと歩調を合わせてきたが、ここへきて一転、前提条件なしで日朝首脳会談の実現を目指す方針を固めたものの、「めども立っていないのは事実」と話す安倍首相の姿が映し出され、停滞している旨伝えられる。
再び白井氏のインタビュー映像に切り替わる。「アメリカの属国だと見られている限り、日本の存在が重く見られることは決してない」と話す白井氏の映像が流される。
「令和に変わり、初の国賓として来日したトランプ大統領。この来日から何が生まれるのでしょう?」と疑問を投げかける言葉を最後に、VTRは終了した。
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【コメンテーターの発言】
寺島実郎氏(全文):これいま、まさに我々ね、日米蜜月をアピールする状況っていうのをもう一回してることになるんですね。例えばその、ロン・ヤス関係以来、ゴルフだとかキャッチボールだとかで、やけに蜜月をアピールするっていうのが繰り返されてるんですけれども、私まあ、日米関係の専門家とずっと向き合ってきてるんですけれども、このフロリアでのゴルフ以来ね、彼らが僕に言った言葉がですね、「目を見てないよね。」と。「トランプは安倍さんの。」っていう言い方をするんだけれども、それは目を見るっていうことは、男として、あるいはリーダー同士としてですね、相手の目を見てね、この男一体、どういう信念を持ってる男なのかなって意味でですね、目を見るっていうんですど。日本がね、じゃあアジアに対して世界に対してですね、譲れない価値観。例えば、アジアの非核化ってことについて、どういう交渉とか、どういう理想をもって引っ張ってるのかってことになったら、刮目して目をぐっと見ますよね。例えばですね。ですから、今日本に問われてるのはね、リクエスト外交。なんとかその場をこなしてですね、頼みごとするとかね。向こうの頼みごとをきくとかっていう力学の外交じゃなくてね、交渉力ですよ。ですから、一回日本はどういう世界を作っていきたいと思ってる国なのか。例えば、資本主義社会の未来についてもっていう意味においてね、これ僕、ものすごく大事な局面に日本人としてね、きてると思います。
幸田真音氏(全文):どうしてもあの、日本ってアメリカ側に立ちたいっていうか、どうしてもそうみてしまうと思うんですけど、この間私、北京の友人と話をしてて。この米中の対立を、中国からどう見てるかって話をしたんですけど、アメリカはもうテンション高めて、中国を追い込もうとしてると。でも、中国はなんとかその衝突を避けたいと。で、アメリカは世論を巻き込んで反中に火をつけてるけど、中国はとにかく自分の国の愛国にはもうあまりいきたくない。で、今回の交渉を見てると、ライトハイザーってあの、かつてね、対日交渉で、日本の資料を紙飛行機で飛ばしたぐらいの人ですよね。かたや、中国は、本当に中国きっての学者であり劉格を送ってきたと。で、その辺でね、とにかくその、そうは言っても、中国の中でも、これを機会に構造改革をしたいっていう動きがあるんですね。だから、日本もね、とにかくアメリカ側に立つんじゃなくて、逆にこういう状況だから、追われてる中国に対して、日本とアメリカが世界を巻き込めるような方向で、きちっとその中国の改革を進めていくと。中国のIT産業はトップを行くわけですし、明確にいくらやっても、トップにいくのは間違いないので、日本が国際社会の中でどういうふうな役割をするか。北風と太陽みたいな役割をね、上手くやってほしいと思います。
谷口真由美氏(要約):日本がアメリカの属国化について、日本国憲法を読むべきだと思う。「われらは、いずれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」「この法則に従うことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立とうとする各国の責務であると信ずる。」と書いてある。だから、日本のリーダーは、各国のリーダーに「自国ファーストになったらだめだよ」と言わなければいけない。それが日本の取るべき道。
涌井雅之氏(要約):日本は、十分アメリカに貢献できるだけのものをもっている。中国・北朝鮮を含めた大陸との関係でも地政学的な優勢を持ち、経済力もあるのだから、対等・互恵平等の関係っていうのは当たり前だと思う。日本とアメリカとの関係が補完的・従属的・隷属的な関係のどこに属するのかを冷静に見ていかなければならない。隷属的な関係にならないような方向で、きちっと整理をしてほしい。
青木理氏(全文):政治とか外交って、多分、理想と現実の間でいろいろ揺れ動くものだと思うんですね。で、理想だけを追求してたりとか、押し付けても、もちろんダメなんですけれども、やっぱり、一方で、現実に追随するだけだと、イノベーションも起きないし進歩も起きないし、主体性も保てないし、それから、その尊敬も受けられない。で、日本の今、外交の今ってのは、やってる感だけは、日露にしても万歳だったんだけれども、特に日米に関して言うと、この今のゴルフの映像もそうですけども、ひたすら現状を追認する。現実を何とか守り抜くんだみたいなものしか見えないですよ。で、こういう状況を見てね、例えば、今回の相撲の末席もそうだけども、ノーベル平和賞もそうなんだけれども、国際的な信用とか信頼っていうものが日本がどうなってるのか。これ、中・長期的に見たときに、日本の理想っていうのはどうなるのか。あるいは、子どもがこの外交を見てて、こういうふうにふるまうべきなんだっていうふうに思うことも含めて言うと、相当な僕は損失が将来的に生まれるんじゃないかなっていう恐怖感を抱きますけれどもね。
以上が放送内容となります。
では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の4点です。
1、寺島氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、幸田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
4、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
それぞれ順を追って解説します。
1、寺島氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
寺島氏は今回の報道で、以下のように述べています。
寺島氏(抜粋):私まあ、日米関係の専門家とずっと向き合ってきてるんですけれども、このフロリダでのゴルフ以来ね、彼らが僕に言った言葉がですね、「目を見てないよね。」と。「トランプは安倍さんの。」っていう言い方をするんだけれども、それは目を見るっていうことは、男として、あるいはリーダー同士としてですね、相手の目を見てね、この男一体、どういう信念を持ってる男なのかなって意味でですね、目を見るっていうんですど。日本がね、じゃあアジアに対して世界に対してですね、譲れない価値観。例えば、アジアの非核化ってことについて、どういう交渉とか、どういう理想をもって引っ張ってるのかってことになったら、刮目して目をぐっと見ますよね。例えばですね。ですから、今日本に問われてるのはね、リクエスト外交。なんとかその場をこなしてですね、頼みごとするとかね。向こうの頼みごとをきくとかっていう力学の外交じゃなくてね、交渉力ですよ。ですから、一回日本はどういう世界を作っていきたいと思ってる国なのか。例えば、資本主義社会の未来についてもっていう意味においてね、これ僕、ものすごく大事な局面に日本人としてね、きてると思います。
要旨をまとめると、
・ゴルフの時にトランプ米大統領が安倍首相の目を見ていない、という指摘が存在する
・目を見るという行為は、男として・リーダーとしてどういう信念を持っているかを知るために行う
・トランプ米大統領がもしアジア非核化などについての安倍首相の信念を見極めたいのであれば、安倍首相の目をぐっと見るはずだ
・日本に問われているのは、アメリカに頼みごとをするリクエスト外交ではなく、資本主義社会の未来についてどういう考えを持っているのかを見極め、アメリカと交渉ができる国になることだ
というものです。
しかしながら、
・安倍首相と会っている間、トランプ米大統領は常に安倍首相の目を見続けているわけではない。メディア報道の一場面だけを根拠に「安倍首相と目を合わせていない」という主張をしても、それは事実に基づいているとは言えない。
・トランプ米大統領と安倍首相は来日中何度も目を合わせる場面があり、「安倍首相と目を合わせない」という主張は事実に基づかない。
・そもそも「人物を見るためには目を見る必要がある」という主張は極めて主観的なものである。また、「目を見ていないからトランプ米大統領は安倍首相と向き合う気がない」という主張はまったく論理的でなく、何ら根拠がない。
・国際的に日本はトランプ米大統領との交流を非常に上手く行っていると考えられており、また日米間で互いに条件を出し合って交渉を行っているため、「アメリカに頼みごとをするリクエスト外交だけだ」とする主張は虚偽である。
など、発言内容とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での寺島氏の発言は事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
2、幸田氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
幸田氏は今回の報道で、以下のように述べています。
幸田氏(抜粋):どうしてもあの、日本ってアメリカ側に立ちたいっていうか、どうしてもそうみてしまうと思うんですけど、この間私、北京の友人と話をしてて。この米中の対立を、中国からどう見てるかって話をしたんですけど、アメリカはもうテンション高めて、中国を追い込もうとしてると。でも、中国はなんとかその衝突を避けたいと。で、アメリカは世論を巻き込んで反中に火をつけてるけど、中国はとにかく自分の国の愛国にはもうあまりいきたくない。で、今回の交渉を見てると、ライトハイザーってあの、かつてね、対日交渉で、日本の資料を紙飛行機で飛ばしたぐらいの人ですよね。かたや、中国は、本当に中国きっての学者であり劉格を送ってきたと。で、その辺でね、とにかくその、そうは言っても、中国の中でも、これを機会に構造改革をしたいっていう動きがあるんですね。だから、日本もね、とにかくアメリカ側に立つんじゃなくて、逆にこういう状況だから、追われてる中国に対して、日本とアメリカが世界を巻き込めるような方向で、きちっとその中国の改革を進めていくと。中国のIT産業はトップを行くわけですし、明確にいくらやっても、トップにいくのは間違いないので、日本が国際社会の中でどういうふうな役割をするか。北風と太陽みたいな役割をね、上手くやってほしいと思います。
要旨をまとめると、
・一連の動きをみていると、日本はどうもアメリカ側に立ちたいように思える。
・しかし北京の友人によると、世論を巻き込んで反中に火をつけるアメリカと違い、中国としてはこうした衝突や「愛国」を避けたいと考えている。
・対日交渉の関係者としても、強硬派のライトハイザーを送ってきたアメリカと国きっての学者を送ってきた中国を見れば中国が構造改革を志向していることが分かる。
・中国のIT企業はトップを行くので、中国の改革を進めるためにアメリカと一緒になるのではなくけん制する立場であるべきだ
というものです。
しかしながら、
・日米関係は日本の安全保障戦略、外交戦略の基本であり、日本が中国とではなくアメリカと外交上の姿勢を一にするのは当然のことである。
・市場の自由化や知的財産保護などを取り決めていた米中貿易交渉の内容を白紙に戻す要求が、自国の体制を維持したい中国によって出されたことなどを考えると、「問題を起こしたいのはアメリカで中国は衝突を避けたいと考えている」という主張は明らかに事実に反していると言える。
・対日交渉に誰を送ってきたか、ということがそのまま中国の構造改革の進捗を表すものではない。
・ファーウェイが問題化しているのは安全保障上の懸念があるからであり、中国の改革を進めるという目的が自国の安全保障に優先しないのは当たり前の話である。
・以上のように、アメリカに問題があるかのように事実をねじ曲げて発言し、かつ中国の抱える問題に言及せず、一方的にアメリカではなく中国の見方をすべきだと主張するのは事実に基づかないだけでなく、政治的公平性を欠く主張である
など、発言内容とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での幸田氏の発言は政治的に公平でなく、また事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」、同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「日本は米国だけに立つのではなく中国側にも立つべきだ」「戦後日本はアメリカの言いなりだ」という立場に立った意見のみが出てきました。
ですがこの問題に関しては「アメリカは日本の安全保障戦略、外交戦略上最も重要な国だ」「日米貿易摩擦など、米国と対立することも当然あった」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。
以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。
以上が報告の中編となります。後編では政治的に公平でなかったり、事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。
この続きの
② 「風を読む」でトランプ米大統領の来日について報道された部分における
検証4「青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている」
ならびに
③ 徴用工問題について報道された部分
については、後編の報告をご覧ください。
① 議員の暴言と衆参同日選挙について報道された部分
については前編の報告をご覧ください。
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