サンデーモーニング、2019年6月2日分の検証報告(中編)です。
今回の報告では、
① 冒頭にて川崎での事件について報道された部分
② トランプ米大統領の訪日について報道された部分
③ 「風を読む」にて川崎での事件について報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。
検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。
今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。
中編で検証するのは、
② トランプ米大統領の訪日について報道された部分
となります。
では、さっそく放送内容をみてみましょう。
【VTR要約】
トランプ大統領はTwitterで「大きな進展があった」と述べ成果を強調したが、アメリカのメディアは、“丸一日を観光客のように過ごした”と訪日の接待攻勢を辛辣に伝えたとナレーション。
日米首脳会談の冒頭でトランプ大統領が「おそらく8月に両国にとって素晴らしいことを発表するだろう」と述べたことについて、共同会見で記者から質問された安倍総理はトランプ大統領の発言に言及しなかったと伝えられる。
これに対し野党は、「国民や国会があずかり知らないようなことが決まっていっているとしたら大問題(国民民主党玉木代表)」「はっきり国民の前でおっしゃって選挙に臨むべき(立憲民主党辻元国対委員長)」と批判する映像が流される。
貿易交渉については具体的な進展が見えなかったが、トランプ大統領は海上自衛隊の艦艇(かが)にアメリカ大統領として初めて乗艦。両首脳は「日米同盟はこれまでになく強固なものになった(安倍首相)」「同盟国の中でF35を最も保有する艦隊を持つことになる(トランプ大統領)」と話し、日米同盟の絆の強固さ示すとともに、両国の軍事一体化をアピールしたと伝えられ、VTRは終了した。
【アナウンサーによるパネル説明】
野党が「密約を交わしたのではないか」と追及する発言について
・トランプ大統領は「おそらく8月、両国にとって素晴らしいことを発表するだろう」と、あたかも貿易交渉の合意時期が決まっているかのような口ぶりで話した
・安倍首相とのゴルフの後、トランプ大統領はTwitterで「日本との貿易交渉で大きな進展があった。7月の選挙が終わるまでしばし待つことになるが、その後(日本への輸出)が大きく増えることを期待している」と投稿した
・一方、安倍首相は記者が合意時期について質問をしても、明示することはなかった
・野党は「夏の参院選が終わるまで妥結内容を公表しないよう密約があるのでは?」と追及を強めている
【コメンテーターの発言】
寺島実郎氏(全文):日本がいま、置かれている状況をね、自問自答するときに、僅か3年前のですね、オバマ大統領の広島訪問を思い出してみるべきだと思うんですね。あの時、戦勝国だろうが敗戦国だろうがね、やはりですね、戦争というものの悲劇・悲惨さを共有して決して謝罪したわけではなかったけどですね、ある種のメッセージが通ったと思うんですね。ところがあれから3年たってね、今回、横須賀でトランプ大統領がですね、力による平和っていうところでね、強調してるんですね。で、日本としてね、同盟国ではあっても、賛成できないロジックってのがあるわけですよ。力による平和こそね、日本としておやっと踏みとどまらなきゃいけないところで。それこそですね、戦後の憲法は武力によって、紛争を解決する手段としないってことを戦後の日本人として誇りとしてきたわけですよ。憲法においてですね。で、そういう中で、今我々が何を問われてるのか。アメリカの論壇を目をやるとですね、同盟外交を支える価値に関してね。欧州方面からアメリカに対して問題提起がどんどんなされてる。日本もですね、同盟国として、アメリカの、やはり同盟国外交を考える人達に対するメッセージとしてね、日本はこう考えてるんだっていう筋をですね、過剰同調しないで伝えなきゃいけない時期が今なんだってことを、僕は、言っておきたいですね。
西崎文子氏(要約):今回はトランプの懐に飛び込んで、接待に接待を重ねて日米外交の良好さを強調したいという思いが安倍総理にあったと思う。これは国内に向けたもので、安倍総理の頭の中には選挙がちらついてた思う。日本はアメリカに同調することで、「アメリカ・ファースト」を掲げるトランプ外交を後押ししていると受け取られる。トランプ大統領は予測不可能でイレギュラーなことをすることにも日本は注意すべき。
藪中三十二氏(全文):トランプフィーバーってのはすごかったなあと。テレビ見てましてね。多分、世界で、日本ほどですね、トランプさんの人気が高い国はないんじゃないかと。皆もうおもてなしですからね。で、しかもね、世界から見ますとね、最初に発したtweetってのがあるんですね。日曜の朝。それは、「ミサイルって大したことないんだよ、北朝鮮が打ったのは。」って言ったんです。世界からみると、えらい日本にとってはショックなことだろうと。長距離ミサイルはまずいけれども、短距離ならいいんだと。これは日本はショック受けただろうと報道してですね。それを日本は、全然それをお構いなくですよ、ゴルフから大相撲と、こういう感じでですね、ちょっと世界の見方と違うなというのが正直なところですね。しかも歓迎式典の前にね。これも本来は歓迎式典というのが最初の一番正式な行事なんですけどね、国賓の場合は。その前にこういって、されるのかなと思いました。ただ一つね、世界に、今、アメリカとの同盟関係って、ヨーロッパはガタガタなんですね。で、日本は大丈夫かって言ったときに、一定の効果はあったと思うんですね。日米同盟関係はしっかりしてるんだと世界へのメッセージ。ただ、さっき寺島さんも言われましたようにね、それだけに頼っていて本当に大丈夫なのということがありますからね。だから日本は、NATOにおいてアジアとも共生もしていくんだと。そういうことはより必要だなと、むしろ強く感じました。
安田菜津紀氏(要約):来日の直前から物々しい雰囲気があったが、トランプ大統領は来日して観光客として過ごしていたという批判もある。トランプ大統領が何を話し合ったのかも大事だが、都心の中にどうして都心の中に米軍基地があるのか、沖縄への基地負担の問題も見えてくると思う。
松原耕二氏(全文):これもう外交なんでしょうけど、まあ、演出ばかりが、なんかこう目立ったような三泊四日だったような気がしますね。その中でやっぱり本当の外交ってのを日本は本当にしてるんだろうかという思いがどうも拭えないんですね。例えば、共同会見でも、日朝の首脳会談、めどは立っていないと安倍総理、言われたわけですが、じゃあ、これまで自分が向き合うとこれまで何度も何度もおっしゃってきたのは何だったんだろうか。国内向けのアピールだったんじゃないかと。まあ、北方領土についても国内向けのアピールがずっとあったなかで、結局まあ、進展してないというより、もしかしたら後退してるかもしれない。まあ、外交は結果ですから、そのあたりもちゃんとこう、見極めていく必要があるなということを実感しましたね。
以上が放送内容となります。
では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の4点です。
1、寺島氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、薮中氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、松原氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
4、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
それぞれ順を追って解説します。
1、寺島氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
寺島氏は今回の報道で、以下のように述べています。
寺島氏(抜粋):3年前のですね、オバマ大統領の広島訪問を思い出してみるべきだと思うんですね。あの時、戦勝国だろうが敗戦国だろうがね、やはりですね、戦争というものの悲劇・悲惨さを共有して決して謝罪したわけではなかったけどですね、ある種のメッセージが通ったと思うんですね。
ところがあれから3年たってね、今回、横須賀でトランプ大統領がですね、力による平和っていうところでね、強調してるんですね。で、日本としてね、同盟国ではあっても、賛成できないロジックってのがあるわけですよ。力による平和こそね、日本としておやっと踏みとどまらなきゃいけないところで。それこそですね、戦後の憲法は武力によって、紛争を解決する手段としないってことを戦後の日本人として誇りとしてきたわけですよ。憲法においてですね。
で、そういう中で、今我々が何を問われてるのか。アメリカの論壇を目をやるとですね、同盟外交を支える価値に関してね。欧州方面からアメリカに対して問題提起がどんどんなされてる。日本もですね、同盟国として、アメリカの、やはり同盟国外交を考える人達に対するメッセージとしてね、日本はこう考えてるんだっていう筋をですね、過剰同調しないで伝えなきゃいけない時期が今なんだってことを、僕は、言っておきたいですね。
要旨をまとめると、
・オバマ元大統領の広島訪問は、戦争というものの悲惨さをメッセージとして伝えたものだった
・一方で今回のトランプ米大統領は横須賀で力による平和を強調している
・日本は憲法9条で紛争を解決する手段として武力を放棄しており、こうしたアメリカの動きには同調してはならない
・また、アメリカは同盟関係にある欧州各国から問題提起をされており、日本も同盟国であるとはいえこうした動きに乗るべきだ
というものです。
しかしながら、
・オバマ元大統領が広島を訪問したことが、安全保障を含めたオバマ元大統領の外交が致命的なものだったという事実を変えるわけではない。
・トランプ米大統領の横須賀訪問は覇権主義を唱える中国の台頭に対してけん制するものであり、安全保障において非常に大きな意味を持つものである。
・日本は憲法にて自衛権を放棄したわけではなく、同盟国と連携して安全保障に対処することに何ら問題はない。したがって、昨今のアメリカの動きに対して矛盾を抱えるものではない。
・国家の安全保障を「力による平和」「武力」などと単純化する主張は事実に基づかず、また政治的に公平とは言えない。
・欧州各国とアメリカとの対立は個々の事情の上で発生しており、アメリカに対して日本が対立すべきという主張の根拠にはならない。
など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での寺島氏の発言は政治的公平性を欠き、事実に基づかないだけでなく、視聴者に対し安全保障の重要性を軽視する認識を与えかねない、公安を害する危険なものである恐れがあります。したがって放送法第2章第4条第1号「公安及び善良な風俗を害しないこと」、同第2号「政治的に公平であること」ならびに同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
2、薮中氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
薮中氏は今回の報道で、以下のように述べています。
薮中氏(抜粋):
トランプフィーバーってのはすごかったなあと。テレビ見てましてね。多分、世界で、日本ほどですね、トランプさんの人気が高い国はないんじゃないかと。皆もうおもてなしですからね。で、しかもね、世界から見ますとね、最初に発したtweetってのがあるんですね。日曜の朝。それは、「ミサイルって大したことないんだよ、北朝鮮が打ったのは。」って言ったんです。世界からみると、えらい日本にとってはショックなことだろうと。長距離ミサイルはまずいけれども、短距離ならいいんだと。
これは日本はショック受けただろうと報道してですね。それを日本は、全然それをお構いなくですよ、ゴルフから大相撲と、こういう感じでですね、ちょっと世界の見方と違うなというのが正直なところですね。しかも歓迎式典の前にね。これも本来は歓迎式典というのが最初の一番正式な行事なんですけどね、国賓の場合は。その前にこういって、されるのかなと思いました。
ただ一つね、世界に、今、アメリカとの同盟関係って、ヨーロッパはガタガタなんですね。で、日本は大丈夫かって言ったときに、一定の効果はあったと思うんですね。日米同盟関係はしっかりしてるんだと世界へのメッセージ。
ただ、さっき寺島さんも言われましたようにね、それだけに頼っていて本当に大丈夫なのということがありますからね。だから日本は、NATOにおいてアジアとも共生もしていくんだと。そういうことはより必要だなと、むしろ強く感じました。
要旨をまとめると、
・日本ほどトランプ米大統領の人気が高い国はない。トランプ米大統領が北朝鮮のミサイルを「たいしたことはない」とツイートしたにも関わらず、日本は様々な行事でトランプ米大統領をもてなした。世界の見方とは違う。
・日米関係にだけ頼って大丈夫か不安を感じる。アジアとも共生していくべきだ。
というものです。
しかしながら、
・トランプ米大統領のツイートや「世界の見方」は、日本のトランプ米大統領人気を異常だとする主張の根拠にはならない。
・日本の最大の同盟国はアメリカであり、アメリカと上手くやっていくことは日本外交の基本である。また、覇権主義を唱える中国や核兵器を持つ北朝鮮、徴用工問題やレーダー照射問題で対立する韓国をアメリカより優先すべきだとする主張は明らかに客観的根拠に欠け、事実に反している。
・トランプ米大統領の訪日以降、安倍首相はマレーシア、カンボジアといった東南アジア各国の首脳などから表敬訪問を受けており、アジアと共生していないとする主張は事実に反している。
など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での薮中氏の発言は事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
3、松原氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
松原氏は今回の報道で、以下のように述べています。
松原氏(抜粋):これもう外交なんでしょうけど、まあ、演出ばかりが、なんかこう目立ったような三泊四日だったような気がしますね。
その中でやっぱり本当の外交ってのを日本は本当にしてるんだろうかという思いがどうも拭えないんですね。例えば、共同会見でも、日朝の首脳会談、めどは立っていないと安倍総理、言われたわけですが、じゃあ、これまで自分が向き合うとこれまで何度も何度もおっしゃってきたのは何だったんだろうか。国内向けのアピールだったんじゃないかと。
まあ、北方領土についても国内向けのアピールがずっとあったなかで、結局まあ、進展してないというより、もしかしたら後退してるかもしれない。まあ、外交は結果ですから、そのあたりもちゃんとこう、見極めていく必要があるなということを実感しましたね。
要旨をまとめると、
・演出ばかりの目立つ3泊4日だった
・そのなかで日本は「本当の外交」をしていない。日朝首脳会談の目途が立っていないということは北朝鮮に向き合うつもりもないし、北方領土についても進展していない。
・外交は結果なので、こういったことを見極めていくべき。
というものです。
しかしながら、
・今回のトランプ米大統領訪日は中国へのけん制としての演出という目的が存在している。また演出だけではなく日米首脳会談などの実務も当然実施されており、演出ばかりだという主張は全くの事実誤認である。
・「本当の外交」という主観的かつ抽象的な概念は今回のトランプ米大統領訪日を批判する根拠たりえない。また日朝首脳会談や北方領土交渉はすべて交渉途中のものであり、過程を以てして判断を下すのは事実に即しているとは言えない。
など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。
以上のことから、今回の報道での松原氏の発言は事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。
4、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「トランプ米大統領の訪日は中身のないパフォーマンスだ」という立場に立った意見のみが出てきました。
ですがこの問題に関しては「実務も当然行われた」「新天皇陛下へのご挨拶も当然重要な目的だ」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。
以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。
以上が報告の中編となります。後編では事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。
この続きの
③ 「風を読む」にて川崎での事件について報道された部分
については、後編の報告をご覧ください。
① 冒頭にて川崎での事件について報道された部分
については前編の報告をご覧ください。
公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。