2019年6月3日 報道ステーション

2019年6月3日 報道ステーション

6月3日の報道ステーションのレポートです。
今回検証するのは以下の点です。

・後藤氏の日朝会談に関する解説

早速放送内容を確認していきます。
——-

【VTR】
ナレーション:無条件での日朝会談に対し意欲を見せる安倍総理を、北朝鮮は突き放しました。

朝鮮アジア太平洋平和委員会 報道官声明(テロップ):“前提条件のない首脳会談”についてあれこれ言っている安倍一味は、面の皮がクマの足の裏のように厚いようだ。

ナレーション:「面の皮がクマの足の裏のように厚い」、とても図々しい、という意味です。きっかけは河野外務大臣の発言です。

河野太郎外務大臣:「正しい決断をすれば制裁解きますよ」と申し上げている。抜け道をきゅっと締めて「さあどうしますか?」と。

朝鮮アジア太平洋平和委員会 報道官声明(テロップ):あたかも我々の生殺与奪の権利を握っているかのように振る舞った。島国の守銭奴のけちくさい見識と下品な俗物根性にうんざりしている。

菅義偉官房長官:相互不信の殻をやぶり、次は自ら金委員長と向き合う決意であり、条件をつけずに金委員長と率直に虚心坦懐に話をしたいという考えであります。

——-
【スタジオ】
森川夕貴アナ:日本としては無条件で対話をしようよと言っているにも関わらず、北朝鮮は「ずうずうしい」などときつい言葉を使っているんですけれども。後藤さん、なんでこんなにきつい言い方をされるんでしょうか。

後藤謙次氏:政権幹部の受け止めは、北朝鮮は「本当に安倍さんはその気なんですか」と本気度を量っているんじゃないかと。いわば神経戦を今やっている。宣伝合戦を今やってるということなんですが、日本側とすれば、どういう条件なら受け容れてくれるんですかと、つまり日本は無条件ですけども、北朝鮮は当然条件をつけてくるわけですね。じゃあどういう条件が考えられるか。一つは日本が強く主張している「制裁を解除してほしい」。これは必ずありますね。それから植民地支配時代の賠償金を含めた経済協力。これは日朝平壌宣言で言ったものです。これをどれくらいやってくれるんだということを明示しなさいと。それからもう一つは拉致問題なんですが、これについては北朝鮮が受け容れ可能な拉致の解決策を日本側から提示してもらいたい、こういう条件をつけているんですね。それから最後にもう一つのコメ支援の履行というのは、拉致被害者の方が5人帰ってきました。そのあと家族が北朝鮮に残りました。その家族を取り返しに小泉さんが2004年5月に北朝鮮に2度目の訪朝をしていて、そのとき25万トンのコメ支援を約束しているんですが、そのうち履行されているのが12万5千トン。残りをコメでちゃんと支援してほしいと、今なお間接的に伝えてきているようなんですね。ただもう一つ、小泉訪朝に深く関わって、自民党の当時の大幹部ですが、その人が言うには、北朝鮮側、今回の米朝首脳会談の失敗で、さまざまな幹部の粛清が行われているという見方がありますよね。つまりおっかなくて、とても日朝交渉に加われないという政府内の腰が引けていることが今回の動きをストップさせたと。そういう意味では非常にまだ時間がかかりそうな感じがしますね。

富川悠太アナ:一方でアメリカと上手くいっていない中で北朝鮮が日本を頼ってくれるような状況を作れるかどうかっていうことですね。

後藤謙次氏:それもあると思いますね。

——-

【検証部分】

今回検証するのは以下の発言部分です。

———————————————————————————————
後藤謙次氏:政権幹部の受け止めは、北朝鮮は「本当に安倍さんはその気なんですか」と本気度を量っているんじゃないかと。いわば神経戦を今やっている。宣伝合戦を今やってるということなんですが、日本側とすれば、どういう条件なら受け容れてくれるんですかと、つまり日本は無条件ですけども、北朝鮮は当然条件をつけてくるわけですね。じゃあどういう条件が考えられるか。一つは日本が強く主張している「制裁を解除してほしい」。これは必ずありますね。それから植民地支配時代の賠償金を含めた経済協力。これは日朝平壌宣言で言ったものです。これをどれくらいやってくれるんだということを明示しなさいと。それからもう一つは拉致問題なんですが、これについては北朝鮮が受け容れ可能な拉致の解決策を日本側から提示してもらいたい、こういう条件をつけているんですね。
それから最後にもう一つのコメ支援の履行というのは、拉致被害者の方が5人帰ってきました。
そのあと家族が北朝鮮に残りました。その家族を取り返しに小泉さんが2004年5月に北朝鮮に2度目の訪朝をしていて、そのとき25万トンのコメ支援を約束しているんですが、そのうち履行されているのが12万5千トン。残りをコメでちゃんと支援してほしいと、今なお間接的に伝えてきているようなんですね。ただもう一つ、小泉訪朝に深く関わって、自民党の当時の大幹部ですが、その人が言うには、北朝鮮側、今回の米朝首脳会談の失敗で、さまざまな幹部の粛清が行われているという見方がありますよね。つまりおっかなくて、とても日朝交渉に加われないという政府内の腰が引けていることが今回の動きをストップさせたと。そういう意味では非常にまだ時間がかかりそうな感じがしますね。
———————————————————————————————
この発言の問題点は次の2点です。

・多くの論点提示した発言ではなかった可能性がある
・政治的に公平な発言ではなかった可能性がある

2つの問題点を合わせて見ていきます。

この解説は北朝鮮の考えについてです。
後藤氏は、北朝鮮が安倍総理の北朝鮮との会談に向けた本気度を量っている、と述べていますが、この発言には、根拠がなく後藤氏の主観に基づくものです。
北朝鮮が日本に様々な条件をつけて、「神経戦」を行っているとも述べています。

この解説は北朝鮮視点での解説がメインで、日本に対して北朝鮮が優位に立っているように思われるものです

しかし、外交は相手がいるものであるため、北朝鮮側からの視点だけでなく、日本や北朝鮮を取り巻く国からの視点についても解説が必要です。

こういった解説は政治的に公平であるとは言えず、以下の放送法に抵触する恐れがあります。

———————————————————————————————
放送法4条
(2)政治的に公平であること
———————————————————————————————

また外交を語るうえで、その国の内政についても見ていく必要があります。

北朝鮮は金一族が独裁を敷いて、強権的な政治が行われています。その独裁を維持するためには、国民に不満を貯めすぎないようにする必要があります。
しかし北朝鮮は経済制裁などによって苦しんでおり、国民に自立経済樹立を促すなど国内の状況は厳しいと思われます。

こういった北朝鮮の状況を考えると、外交で譲歩を見せる可能性もあります。

また北朝鮮と他の諸国との関係を見ても、アメリカや中国との関係が良好であるとは言えません。

内政的にも外政的にも厳しい状況下にある北朝鮮にとって日本がどのように映るのか、こういった観点からの解説が必要といえます。

このように、外交を語るうえで内政・外政というそれぞれで論点を欠いた解説は以下の放送法に抵触する恐れがあります。

———————————————————————————————
放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
———————————————————————————————

視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。

報道ステーションカテゴリの最新記事