2019年6月23日 サンデーモーニング(後編)

2019年6月23日 サンデーモーニング(後編)

サンデーモーニング、2019年6月23日分の検証報告(後編)です。

今回の報告では、
① 年金の報告書について報道された部分
② 中朝会談と日本の外交について報道された部分
③ 「風を読む」にて安倍政権が不都合な真実を隠していると報道された部分
以上3点について検証し、その問題点を探りたいと思います。

検証の手順としては、まず放送内容を書き起こし、その内容にどのような問題があるのか、公正な放送の基準である放送法第二章第四条と照らし合わせて検証します。

今回はレポートを3つに分け、前中後編でお送りいたします。

後編で検証するのは、
③ 「風を読む」にて安倍政権が不都合な真実を隠していると報道された部分
となります。

では、さっそく放送内容をみてみましょう。

【VTR要約】
野党合同ヒアリングにおいて、厚労省担当者が厚労相から「非正規」という言葉を使わないよう指示を受けていることを明かしたことが判明。言葉の言い換えや曖昧な説明などで不都合な事実をぼかしたり歪めたりするケースがここ数年しばしば見受けられるとナレーション。
森友学園問題では提出された資料が黒塗りであったこと、加計学園問題では怪文書と切り捨てられた文書が文科省により存在を認めたことが挙げられ、稲田元防衛相が「改めるべき隠蔽体質があれば私の責任で改善していきたい」と答弁する映像が流される。CM後、外国人技能実習生の失踪動機に関する聞き取り調査において「より高い賃金を求めて」という回答が86.9%だったと説明したが、実際はそのような項目はなく「低賃金だから」という回答が67.2%だったことが判明したとナレーション。その後、辻元議員が「不誠実だと思います」と話す映像が流され、イージス・アショア配備をめぐる調査ミスも複数発覚したと伝えられる。東京新聞・半田滋氏のインタビュー映像に切り替わり、「初めから結論ありきだったので、どうしてもデータがずさんな扱いになっている」と語る映像が流された後、麻生大臣が年金に関する金融庁の報告書を受け取り拒否したことについても批判の声が上がったと伝えられる。
 街頭インタビュー映像に切り替わり、「都合悪いことは隠したいんでしょうね(男性)」「私はもう日本の政治家は信頼置けないかなあって感じですよね(女性)」と話す映像が流され、VTRは終了した。

【コメンテーターの発言】
田中秀征氏(要約):国会予算委員会開いて、説明責任を果たすようなことをしないと、逃げてるように見える。集団的自衛権行使の閣議決定の土台となる内閣法制局の議論を記録しなかったことが許せない。一番大事なことを記録しないのは、隠蔽よりももっと悪い。雑なことが多すぎる。

大宅映子氏(全文):全く同感なんですけど、それともう一つ。失言とかね、なんかいろんなミスとかが出てくるものの程度が悪すぎる。昔だったらもうちょっと政策に直接絡んだようなことで問題になったのが、ちょっと計算間違いでしたとか角度がずれてましたとかね。中学生じゃないんだからっていうような感じのものがすごく多い。前だったら、もう大臣の首が何人も飛んでるんじゃないかっていう実感があるんだけど、そうならないのは、どこで何がっていうような。こちら側が、もしかしたらなんか、もう少し怒んなきゃいけないのかなというふうに思ったりします。

横江公美氏(要約):臭い物に蓋をして、中から腐っているような感じがする。どんな記録をどのくらい残すのか、何を消してもいいのかを決まりとして作らないと、日本の情報が世界からも信用されなくなってしまう危険性を感じる。

荻上チキ氏(要約):公文書管理法という法律がちゃんと適用されていない。公文書をもっと厳しく管理しなくてはいけない。各省庁が横断的に様々な問題が起きている。公文書の管理・公開についてのルールを、より厳格にしっかりと作るような法律を作ることが必要。

青木理氏(全文):皆さんおっしゃったのに賛成で、それで何が起きるかってことなんですね。つまり、都合の悪い事実とかデータとか文書は隠す、捻じ曲げる、改ざんすると。で、都合のいいデータばっかりかき集める。で、こういうことをすると、いわゆるどうも、チキさんが少し言ったんですけど、いわゆる官僚機構、この国のテクノクラートが、もう相当、その捻じ曲がって腐ってきてるんじゃないかってことなんですね。本来、テクノクラート、官僚組織っていうのは、政権が右に行こうとしてても左に行こうとしてても、基本的なデータをちゃんと提示して、この事実はこうですよ、データはこうですよと。そのうえで政治家が右に行くか左に行くか判断するんだけど、このデータが、全部、どうもおかしくなっちゃってきてる。これがおかしくなるということは、要するに、事実とかデータに基づかない政治になるんですね。で、政治家側だって今回、審議会が、あれはまあ事実でしょと出したら、これを拒否するんわけですよね。じゃあもう出さなくなりますよね。っていうことは、希望的観測だったりとか、事実に基づかなかったりとか。データに基づかない政治が進んでいく。これは本当に冗談抜きで、破滅への道ですよ、これ。かつて体験してるはずなんですけどね、日本はね。

以上が放送内容となります。

では、今回の報道にどのような問題があるのかを整理してみます。
今回の報道で、我々が問題だと考えたのは、以下の3点です。

1、大宅氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
2、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている

それぞれ順を追って解説します。

1、大宅氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
大宅氏は今回の報道で、以下のように述べています。

大宅氏(抜粋):全く同感なんですけど、それともう一つ。失言とかね、なんかいろんなミスとかが出てくるものの程度が悪すぎる。昔だったらもうちょっと政策に直接絡んだようなことで問題になったのが、ちょっと計算間違いでしたとか角度がずれてましたとかね。中学生じゃないんだからっていうような感じのものがすごく多い。前だったら、もう大臣の首が何人も飛んでるんじゃないかっていう実感があるんだけど、そうならないのは、どこで何がっていうような。こちら側が、もしかしたらなんか、もう少し怒んなきゃいけないのかなというふうに思ったりします。

要旨をまとめると、
・昔だったら政策の根幹にかかわるような話が問題になったが、今は計算間違いや角度のずれなどミスのレベルが落ちている。
・前だったら大臣の首が何度も飛ぶような話だが、そうならないのは追及が足りないからだ。

というものです。

しかしながら、
・計算間違いや計測ミスなどを「レベルの低いミス」とするのは氏の主観に過ぎない。
・何かあるたびに大臣の首を飛ばすことが正しいとする主張は非常に極端なもので政治的な公平性に欠ける。また、現在内閣不信任案の提出など大臣への追及は行われており、氏の指摘は事実に即しているとは言えない。

など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での大宅氏の発言は政治的公平性を欠き、事実に基づかないものである恐れがあります。したがって放送法第2章第4条第2号「政治的に公平であること」ならびに同第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

2、青木氏の発言に事実と異なる恐れのある内容が含まれている
青木氏は今回の報道で、以下のように述べています。

青木氏(抜粋):都合の悪い事実とかデータとか文書は隠す、捻じ曲げる、改ざんすると。で、都合のいいデータばっかりかき集める。で、こういうことをすると、いわゆるどうも、チキさんが少し言ったんですけど、いわゆる官僚機構、この国のテクノクラートが、もう相当、その捻じ曲がって腐ってきてるんじゃないかってことなんですね。本来、テクノクラート、官僚組織っていうのは、政権が右に行こうとしてても左に行こうとしてても、基本的なデータをちゃんと提示して、この事実はこうですよ、データはこうですよと。そのうえで政治家が右に行くか左に行くか判断するんだけど、このデータが、全部、どうもおかしくなっちゃってきてる。これがおかしくなるということは、要するに、事実とかデータに基づかない政治になるんですね。で、政治家側だって今回、審議会が、あれはまあ事実でしょと出したら、これを拒否するんわけですよね。じゃあもう出さなくなりますよね。っていうことは、希望的観測だったりとか、事実に基づかなかったりとか。データに基づかない政治が進んでいく。これは本当に冗談抜きで、破滅への道ですよ、これ。かつて体験してるはずなんですけどね、日本はね。

要旨をまとめると、
・今の日本の官僚は都合の悪い事実やデータを隠してしまう。時の政権が物事を判断する基準となるデータを提供することが官僚の仕事だが、データが全部おかしくなってきている。
・政治家側も今回審議会の提示を拒否しており、こうしたデータや事実に基づかない政治になると希望的観測が横行する。それはかつて第二次大戦で日本が経験した破滅への道である。

というものです。

しかしながら、
・都合の悪いデータを隠した、という主張は政治的に偏ったものであり、実際は記載義務のないものが取りざたされるなど事実に基づかない主張も多数見受けられる。
・今の日本の官僚が都合の悪い事実やデータを隠す、という主張は極端なケースを一般化して根拠としており、事実に即しているとは言えない。
・官僚の提供するデータが全部おかしくなっているという主張は明らかに事実に反している。
・第二次大戦の引き金はデータや事実に基づかない政治だけでなく国民の戦意を煽ったメディアの責任など多岐にわたる。また今回の問題を以て第二次大戦前の日本と現在の日本とを同一視する主張は事実に即したものだとは言えない。

など、発言の趣旨とは異なる事実が存在します。

以上のことから、今回の報道での青木氏の発言は事実に基づかないものである恐れがあり、したがって放送法第2章第4条第3号「報道は事実を曲げないですること」に違反する恐れがあります。

3、この報道全体がひとつの立場・観点に偏っている
今回の放送では、この問題について全体を通して「現在の官僚は都合の悪い事実やデータを言えずにいる」「現在の政権はもう信用できない」という立場に立った意見のみが出てきました。

ですがこの問題に関しては「反政権が目的化しているマスメディアこそ信用できない」「経済や外交など現在の政権はしっかり成果を出せている」「極端なケースを一般化して全体を語るのは不公平だ」といった反対の意見があります。にもかかわらず、今回の報道ではそうした意見を全く取り上げず、あくまで片方の視点に立った論点のみが放送されていました。

以上のことから、この内容は放送法第2章第4条第4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に違反する恐れがあります。

以上が報告の後編となります。後編では事実と異なる内容を放送したり、一定の立場に偏った内容だけを放送した恐れがありました。こうした報道は、放送法に違反する恐れがあり、視聴者への印象を誘導する偏向報道の可能性が極めて高いといえます。

① 年金の報告書について報道された部分
については前編の報告を、

② 中朝会談と日本の外交について報道された部分
については中編の報告をご覧ください。

公平公正なテレビ放送を実現すべく、視聴者の会は今後も監視を続けて参ります。

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